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司法書士試験・本試験問題
(平成12年・民法)



【H12-01】 次の対話は,取り消し得べき法律行為の追認に関する教授と学生の対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
教授: Aは,Bの詐欺により錯誤に陥り,Bから,ある動産を買い受ける旨の売買契約を締結しましたが,その後に,Bの詐欺が発覚したため,Aは,売買契約を取り消したいと考えています。Aは,いつまでに取り消さなければなりませんか。
学生:ア 売買契約を締結した時から5年を経過すると,取消権は時効により消滅してしまいますので,それまでに取り消す必要があります。
教授: 設例の売買契約の締結後に,Bが売買代金請求権をCに譲渡し,その旨をAに通知したとします。Aとしては,Bの詐欺にもかかわらず,売買契約を追認しようと考えている場合,追認の意思表示は誰に対して行うことになりますか。
学生:イ 追認とは,取り消し得べき法律行為の効力を有効に確定する旨の意思表示であり,その意思表示は,取り消し得べき法律行為の相手方に対してするものですので,設例の場合には,Cに対してではなく,Bに対してしなければなりません。
教授: それでは,以下は,法定追認について聞きます。まず,AがCから売買代金の弁済を請求された場合,この請求を受けたという事実をもってAは追認をしたものとみなされますか。
学生:ウ 取消権者であるAが,履行の請求をされただけでは,法定追認があったことにはなりません。
教授: Aが売買代金を弁済する前にBから売買の目的物である動産の引渡しを受けた場合は,どうですか。
学生:エ この場合も,Aは,Bによる債務の履行を受領しただけであり自らの債務を履行したわけではないので,法定追認には当たりません。
教授: AがCからの強制執行を免れるために売買代金を弁済した場合は,どうですか。
学生:オ 売買代金の弁済は,Aが債務者として履行しなければならないことですが,追認する趣旨ではないことを示した上で弁済をしていれば,追認をしたものとはみなされません。
1 アエ   2 アオ   3 イウ   4 イオ   5 ウエ


【H12-02】 不動産の仮差押えによる時効中断の効力について,次の二つの見解がある。
第1説 仮差押えによる時効中断の効力は,仮差押えの登記の記入によって終了する。
第2説 仮差押えによる時効中断の効力は,仮差押えの登記の記入によっては終了せず,登記による執行保全の効力が存続する間,存続する。
 次のアからオまでの記述のうち,第2説の根拠として適切なものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 確定判決で確定した権利も10年で時効消滅することとの均衡を考慮すべきである。
イ 仮差押えの登記があることにより,債権者の権利行使の意思は明らかである。
ウ 仮差押えの債務者は,債権者に対し,起訴命令の申立て等の対抗手段を講ずることができる。
エ 仮差押えは,他の時効中断事由に比べて,比較的簡易に実現することができる。
オ 登記されている抵当権も,被担保債権が消滅時効にかかることにより消滅する。
1 アイ   2 アオ   3 イウ   4 ウエ   5 エオ


【H12-03】 Aは,Bの代理人として,Cとの間で金銭消費貸借契約及びB所有の甲土地に抵当権を設定する旨の契約(以下両契約を合わせて「本契約」という。)を締結した。この場合における次の1から5までの記述のうち,誤っているものはどれか。
1 Aが未成年者であることについて,Cは本契約が締結された当時から知っていたが,Bは本契約の締結後に知った場合,Bは,Aの無能力を理由として本契約を取り消すことができる。
2 BがAに対し,代理人として金銭消費貸借契約を締結する権限は与えていたが,甲土地に抵当権を設定する権限は与えておらず,Cもこれを知っていた場合,Bが追認をしない限り,設定した抵当権は無効である。
3 Aが借入金を着服する意図でCとの間で本契約を締結し,Cから受領した借入金を費消したが,CもAの意図を知っていた場合,設定した抵当権は無効である。
4 本契約がAのCに対する詐欺に基づくものである場合,Bがこれを過失なく知らなくても,Cは,本契約を取り消すことができる。
5 本契約が第三者DのAに対する強迫に基づくものである場合,Cがこれを過失なく知らなくても,Bは,本契約を取り消すことができる。


【H12-04】 民法第94条第2項の規定によって保護される善意の第三者からの転得者の地位について,次の二つの考え方があり,後記アからオまでの記述は,その一方の考え方から他方の考え方に対する批判である。各記述における「この説」が第1説を指すものはいくつあるか。
第1説 善意の第三者が絶対的・確定的に権利を取得するので,転得者は,通謀虚偽表示について悪意であっても,有効に権利を取得する。
第2説 処分行為の効力は当事者ごとに相対的・個別的に判断すべきであり,転得者は,通謀虚偽表示について悪意であれば,権利を取得しない。
ア この説では,取引関係について綿密に調査した者が保護されず,逆に,調査を怠った者が保護される結果となる。
イ この説では,権利の譲渡性・流通性が大幅に制限される。
ウ この説では,善意の第三者は追奪担保責任を問われることになり,善意の第三者を保護した実質が失われることになる。
エ この説では,原権利者はいったん権利を喪失したにもかかわらず,その後に,その権利が復活することになる。
オ この説では,他人を「隠れみの」として利用することを回避することができない。
1 1個   2 2個   3 3個   4 4個   5 5個
(参考)
民法第94条 相手方ト通シテ為シタル虚偽ノ意思表示ハ無効トス
A 前項ノ意思表示ノ無効ハ之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス


【H12-05】 AがBに対して金銭債権(甲債権)を,BもAに対して金銭債権(乙債権)を有し,両債権の弁済期がいずれも到来しないうちにAの債権者Cが甲債権を差し押さえた場合において,Bが乙債権を自働債権とし,甲債権を受働債権とする相殺を行うことの可否に関し,次の二つの見解がある。
第1説 Bは,乙債権の弁済期が甲債権の弁済期よりも前に到来する場合に限り,相殺をもってCに対抗することができる。
第2説 Bは,両債権の弁済期の先後を問わず,相殺をもってCに対抗することができる。
 次のアからオまでの記述のうち,第2説の根拠として適切なものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 弁済期にある債務の支払を怠りつつ,相殺適状に達するのを待って相殺をすることを認めることは,不誠実な債務不履行を助長することになる。
イ 甲債権を差し押さえたCが,甲債権の債権者であるAよりも有利な立場に立つべきではない。
ウ 甲債権は,Aの一般財産を構成しており,Cを始めとするAの一般債権者にとっての引当てとなっている。
エ 民法第511条は,差押え後の相殺を例外的に制限する規定であり,限定的に解釈すべきである。
オ Bは,期限の利益を放棄することができる。
1 アウ   2 アエ   3 イエ   4 イオ   5 ウオ
(参考)
民法第511条 支払ノ差止ヲ受ケタル第三債務者ハ其後ニ取得シタル債権ニ依リ相殺ヲ以テ差押債権者ニ対抗スルコトヲ得ス


【H12-06】 被害者の生命侵害による財産的損害の賠償請求権の相続について,これを認める説と認めない説がある。
 次のアからオまでの記述のうち「この見解」が同じ説に立つと考えられるものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 「この見解」は,被害者が重傷を受けた事例よりも,即死した事例の方が,加害者が支払うべき賠償額が低くなってもやむを得ないとする。
イ 「この見解」によれば,生前に被害者と長年交際のなかった者が損害賠償請求権を取得することもあり得ることになる。
ウ 「この見解」によれば,他方の見解による場合よりも,年少者が即死した事例において加害者が支払うべき賠償額が低くなり得る。
エ 「この見解」によれば,他方の見解による場合よりも,損害賠償の請求権者の範囲が明確になる。
オ 「この見解」では,被害者が即死した事例においても,受傷と死亡との間に観念的な時間的間隔を認める。
1 アイエ  2 アウエ  3 アウオ  4 イウオ  5 イエオ


【H12-07】 債権者代位権に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 交通事故により受傷したAは,加害者であるBに対する損害賠償請求権を保全するため,Bの資力の有無にかかわらず,Bが保険会社との間で締結していた自動車対人賠償責任保険契約に基づく保険金請求権を代位行使することができる。
イ 不動産がAからBへ,BからCへと順次売却されたが,それらの所有権移転の登記が未了の間に,Dが契約書等を偽造して,その不動産につきAからDへの所有権移転の登記を経由してしまった場合,Cは,Bの債権者として,BがAに代位してDに対し行使し得る所有権移転の登記の抹消請求権を代位行使することができる。
ウ 高名な画家によるとされた絵画がAからBへ,BからCへと順次売却されたが,その後に,これが偽物と判明した場合において,無資力であるBがその意思表示の要素に関し錯誤のあることを認めているときは,Cは,Bに対する売買代金返還請求権を保全するため,Bにはその意思表示の無効を主張する意思がなくても,Bの意思表示の無効を主張して,BのAに対する売買代金返還請求権を代位行使することができる。
エ 不動産がAからBへと売却されたが,所有権の登記名義人はいまだAである場合において,Bの配偶者であるCがBとの間で離婚の調停を行っているときは,Cは,Bとの離婚によって生ずべき財産分与請求権を保全するため,BのAに対する所有権移転登記請求権を代位行使することができる。
オ 不動産の売主Aの所有権移転登記義務をB及びCが共同相続した場合において,Bがその義務の履行を拒絶しているため,買主Dが同時履行の抗弁権を行使して代金全額の弁済を拒絶しているときは,Cは,自己の相続した代金債権を保全するため,Dの資力の有無にかかわらず,DのBに対する所有権移転登記請求権を代位行使することができる。
1 アウ   2 アエ   3 イエ   4 イオ   5 ウオ


【H12-08】 建物所有を目的とする借地権の対抗力に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 借地人Aが借地上に養母B名義で登記をした建物を所有している場合において,その借地が第三者Cに譲渡され,その後にBが死亡し,その建物につきAがBから相続した旨の所有権移転の登記を経由したときは,Aは,Cに対し,その借地権を対抗することができる。
イ 一筆の土地の全部の借地人が借地上に自己名義で登記をした建物を所有している場合において,その後に借地につき分筆の登記がされたときは,借地人は,分割後の土地のうち建物が存在しない土地の所有権を取得した者に対し,その借地権を対抗することができる。
ウ 借地人が借地上の建物につき自己名義で所有権保存の登記を経由した場合において,その後に建物につき改築がされ,構造や床面積に変化が生じたときであっても,建物の同一性が失われない限り,借地人は,その表示の変更の登記を経由しなくても,その後に借地の所有権を取得した者に対し,その借地権を対抗することができる。
エ 甲土地及び乙土地の二筆の土地の借地人が,甲土地上に自己名義で登記をした建物を所有している場合において,両土地の周囲に塀が設けられるなどして,乙土地がその建物の庭として一体として使用されていることが明らかなときは,借地人は,その後に乙土地の所有権を取得した者に対し,その借地権を対抗することができる。
オ 借地人が借地上に自己を所有者とする表示の登記をした建物を所有している場合,その表示の登記が職権によってされたものであっても,借地人は,その後に借地の所有権を取得した者に対し,その借地権を対抗することができる。
1 アウ   2 アエ   3 イエ   4 イオ   5 ウオ


【H12-09】 次のTからVまでは,不動産の取得時効と登記に関するある見解を分解して要約したものである。この見解に関する下記AからCまでの批判についての後記1から5までの記述のうち,誤っているものはどれか。
〔見解〕
T 時効期間の満了前に原所有者が当該不動産を譲渡して所有権移転の登記を経由した後,時効期間が満了した場合,占有者は,譲受人に対し,登記なくして時効による所有権の取得を対抗することができる。
U 時効期間が満了した後,原所有者が当該不動産を譲渡して所有権移転の登記を経由した場合,占有者は,譲受人に対し,登記なくして時効による所有権の取得を対抗することはできない。
V 時効期間の起算点は客観的に占有を開始した時点であり,その起算点を任意に選択して時効取得を主張することは許されない。
〔批判〕
A 原所有者による当該不動産の譲渡が,時効期間が満了する前である場合と時効期間が満了した後である場合とを比較すると,占有期間の長い後者の方が占有者の保護が弱くなる。
B 原所有者が当該不動産を譲渡して所有権移転の登記を経由するまでに占有の開始から10年を経過しているが,20年は経過していない場合,占有者が善意・無過失であるときの方が保護が弱くなる。
C 不動産の時効取得について占有の継続だけを要件とする民法の原則に反する。
〔批判についての記述〕
1 Aは,T,Uの結論を採り,Vとは逆の結論を採る見解からの批判となり得る。
2 Aは,U,Vの結論を採り,Tとは逆の結論を採る見解からの批判となり得る。
3 Bは,T,Uの結論を採り,Vとは逆の結論を採る見解からの批判となり得る。
4 Bは,T,Vの結論を採り,Uとは逆の結論を採る見解からの批判となり得る。
5 Cは,U,Vの結論を採り,Tとは逆の結論を採る見解からの批判となり得る。


【H12-10】 共有物に関する次のアからオまでの行為のうち,共有者が単独ですることができるものをA群,共有者が全員でなければ,又は他の共有者の同意を得なければできないものをB群,A群とB群のいずれにも属しないものをC群に整理した場合,判例の趣旨に照らし各群の個数の組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
ア 共有地につき,共有者でない登記簿上の所有名義人に対し,その登記の抹消を請求する行為
イ 共有地の不法占有者に対し,損害賠償を請求する行為
ウ 一筆の土地の全体につき抵当権が設定された後に,その土地の単独所有者から共有持分を取得した第三者が抵当権の滌除をする行為
エ 共有地である畑を宅地に造成する行為
オ 共有地を目的とする賃貸借契約を賃料不払を理由として解除する行為
1 A群:1個   B群:2個   C群:2個
2 A群:1個   B群:3個   C群:1個
3 A群:2個   B群:1個   C群:2個
4 A群:2個   B群:2個   C群:1個
5 A群:2個   B群:3個   C群:0個


【H12-11】 建物の取得時効の成否に関する次の1から5までの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。ただし,取得時効の要件のうち,「平穏かつ公然」の要件は,いずれも満たされているものとする。
1 甲建物に居住して善意・無過失の自主占有を8年間続けたAから甲建物を買い受けた善意・無過失のBは,その買受けと同時に甲建物をAに賃貸し,Aが甲建物に引き続き居住して更に2年間が経過した。Bは,甲建物について取得時効を主張することができる。
2 甲建物に居住して悪意の自主占有を3年間続けたAは,甲建物をBに賃貸して引き渡した。Aは,その5年後に,甲建物を善意・無過失のCに譲渡し,Cの承諾を得て,Bに譲渡の事実を通知し,その後,更に10年間が経過した。Cは,甲建物について取得時効を主張することができる。
3 甲建物に居住して悪意の自主占有を8年間続けたAは,甲建物を善意・無過失のBに譲渡して引き渡した。Bは,自ら8年間甲建物に居住した後,甲建物を悪意のCに譲渡して引き渡し,Cがこの建物に居住して2年間が経過した。Cは,甲建物について取得時効を主張することができる。
4 甲建物に居住して善意・無過失の自主占有を8年間続けたAは,甲建物をBに賃貸して引き渡した。ところが,その1年後,Bは,甲建物の真の所有者はCであり,自分は改めてCから甲建物を賃借したので,今後Aには賃料を支払わない旨をAに通知し,そのまま居住を続け,更に1年間が経過した。Aは,甲建物について取得時効を主張することができる。
5 甲建物の所有者Aは,甲建物をBに賃貸して引き渡した。その2年後,Bが死亡したところ,善意・無過失の相続人Cは,甲建物はBがAから買い受けたものであるとして,賃料の支払を拒絶して甲建物に居住を始めたが,Aがこれを放置してうやむやになったまま,更に10年間が経過した。Cは,甲建物について取得時効を主張することができる。


【H12-12】 「無権利者から動産を譲り受けた者が民法第192条の規定によりその所有権を取得し得るためには,占有改定の方法による占有の取得では足りない。」という見解がある。
 次のアからオまでの記述のうち,この見解の根拠として適切でないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 譲受人への占有改定により,真の権利者と譲渡人との間の代理占有関係は消滅する。
イ 占有改定では,真の権利者の譲渡人に対する信頼が裏切られたということは現実化せず,譲受人の譲渡人に対する信頼も現実化していない。
ウ 占有改定では,譲渡人は依然として直接占有者であり続けるため,動産が更に譲渡される可能性がある。
エ 真の権利者が譲渡人に対し動産の返還を請求した場合に,譲渡人が譲受人の権利を理由としてこれを拒否し得るとするのは不都合である。
オ 民法第192条の趣旨は,無権利者の占有に基づきこれを真の権利者と信じて取引をした譲受人を保護する点にある。
1 アウ   2 アオ   3 イエ   4 イオ   5 ウエ


【H12-13】 立木に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア BがA所有の甲土地上に無権原で立木を植栽した場合,Aは,Bに対し,当該立木を収去して甲土地を明け渡すよう請求することができる。
イ AがBに甲土地上の立木を譲渡した後,AがCに甲土地を立木も含めて譲渡し,Cが甲土地について所有権移転の登記を経由した場合,Bは,Cが所有権移転の登記を経由する前に立木に明認方法を施していれば,立木の所有権をCに対抗することができる。
ウ Aがその所有する甲土地上の立木の所有権を自己に留保して甲土地をBに譲渡したが,Bが甲土地を立木も含めてCに譲渡し,Cが甲土地について所有権移転の登記を経由した場合,Aは,立木に明認方法を施していなくても,立木の所有権をCに対抗することができる。
エ Aが甲土地をBに譲渡し,Bが甲土地上に立木を植栽した後,Aが甲土地を立木も含めてCに譲渡し,Cが甲土地について所有権移転の登記を経由した場合,Bは,Cが所有権移転の登記を経由する前に立木に明認方法を施していれば,立木の所有権をCに対抗することができる。
オ BがA所有の甲土地上に無権原で立木を植栽した場合において,Bが所有の意思を持って平穏かつ公然に20年間立木の占有を継続した後に当該立木をAが伐採したときは,Bは,Aに対し,立木所有権の侵害を理由として損害賠償を請求することができる。
1 アイ   2 アウ   3 イエ   4 ウオ   5 エオ


【H12-14】 抵当目的物についての将来の賃料債権の包括的譲渡と同債権に対する抵当権の物上代位との優劣に関する次の第1説及び第2説のいずれの説の根拠にもなり得ないものは,後記1から5までのうちどれか。
第1説 物上代位による差押えがされた時を基準とし,それよりも債権譲渡の対抗要件の具備が先行する場合には,債権譲渡が優先する。
第2説 抵当権の登記がされた時を基準とし,それよりも債権譲渡の対抗要件の具備が先行する場合には,債権譲渡が優先する。
1 抵当権者は,引渡命令や詐害的短期賃借権の解除によって対処することができる賃借権以外の賃借権による抵当目的物の減価を甘受すべきである。
2 差押えがされるまでは抵当権設定者に抵当目的物の用益権が留保されているから,賃料債権の処分権限は抵当権設定者にある。
3 物上代位権は,抵当権設定の登記によって公示されている。
4 賃料債権を担保化し,流動化することが可能となるように解すべきである。
5 賃料債権の譲受人は,抵当権者が当初から有していた抵当目的物の交換価値に対する利益を侵害する者であり,保護に値しない。


【H12-15】 短期賃借権に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 抵当権が設定されている建物を期間の定めなく所有者から借り受けた賃借人は,抵当権が実行された場合,買受人に賃借権を対抗することはできない。
イ 抵当権が設定されている建物を期間を5年と定めて所有者から借り受けた賃借人は,抵当権が実行された場合,賃借時から3年の限度であれば,買受人に賃借権を対抗することができる。
ウ 抵当権が設定されている建物を期間を3年と定めて所有者から借り受けた賃借人は,当該賃貸借の法定更新後に抵当権が実行された場合,法定更新時から3年の限度であれば,買受人に賃借権を対抗することができる。
エ 建物に第一順位の抵当権が設定された後,第二順位の抵当権が設定されるまでの間に,当該建物を期間を3年と定めて所有者から借り受けた賃借人は,第二順位の抵当権者の申立てにより抵当権が実行された場合,賃借時から3年の限度であれば,買受人に賃借権を対抗することができる。
オ 抵当権が設定されている建物を期間を3年と定めて所有者から借り受けた賃借人は,抵当権の実行としての差押えがされた後に期間が満了した場合,所有者との間で期間を3年と定めて合意更新をしたとしても,買受人に賃借権を対抗することはできない。
1 アイ   2 アウ   3 イエ   4 ウオ   5 エオ


【H12-16】 法定地上権に関する次の1から5までの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。
1 Aは,土地とその地上建物を所有しており,双方に抵当権を設定した。その後,土地,建物について抵当権が実行され,土地はBが,建物はCが買受人となった。この場合,Cのために法定地上権は成立しない。
2 Aは,土地とその地上建物を所有しており,建物に抵当権を設定した後,建物をBに譲渡して借地権を設定した。その後,建物について抵当権が実行され,Cが買受人となった。この場合,Cのために法定地上権は成立しない。
3 Aは,土地とその地上建物を所有しているが,建物について自己への所有権移転の登記を経由する前に,土地に抵当権を設定した。その後,土地について抵当権が実行され,Cが買受人となった。この場合,Aのために法定地上権は成立しない。
4 Aは,更地である土地を所有しているが,土地に抵当権を設定した後,その地上に建物を建築した。その後,土地について抵当権が実行され,Bが買受人となった。この場合,Aが建物を建築することについて抵当権者から承諾を受けていたとしても,Aのために法定地上権は成立しない。
5 Aは,土地を所有し,その地上建物をBとともに共有しているが,土地に抵当権を設定した。その後,土地について抵当権が実行され,Cが買受人となった。この場合,A及びBのために法定地上権は成立しない。


【H12-17】 Aは,Bに対する債務を担保するために,甲倉庫内の特定の種類の動産一切について譲渡担保権を設定した後,Cから当該特定の種類の動産を買い入れ,甲倉庫内に保管していた。
 次の対話は,この事例に関する教授と学生の対話である。教授の質問に対する次のアからクまでの学生の解答を組み合わせた後記1から5までのうち,論旨が一貫しているものはどれか。
教授:譲渡担保の法的構成について,どのように考えますか。
学生:ア 所有権的構成が妥当と考えます。
   イ 担保権的構成が妥当と考えます。
教授:民法第333条にいう「引渡」に占有改定が含まれますか。
学生:ウ 占有改定は,「引渡」には含まれません。
   エ 占有改定も,「引渡」に含まれます。
教授:Bの譲渡担保権とCの先取特権は,どちらが優先しますか。
学生:オ Cの先取特権は消滅するので,Bの譲渡担保権と競合することはなく,Bが優先することになります。
   カ Cの先取特権は存続し,Bの譲渡担保権と競合することになりますが,譲渡担保権の順位は,動産質権の順位と同順位であると考えられますので,Bが優先することになります。
教授:君の見解に対しては,どのような批判がありますか。
学生:キ 占有型担保と非占有型担保とを同視するのは適切でないと批判されています。
   ク Bに対する債務が弁済された場合や目的物の価額に余剰が生じた場合に適切な解決を図ることができないと批判されています。
1 アエオキ  2 アエカキ  3 イウオク  4 イウカキ  5 イエカク
(参考)
民法第333条 先取特権ハ債務者カ其動産ヲ第三取得者ニ引渡シタル後ハ其動産ニ付キ之ヲ行フコトヲ得ス


【H12-18】 被相続人の所有する特定の建物を相続人に「相続させる」趣旨の遺言の解釈について,遺贈と解する説(第1説),相続分の指定と解する説(第2説)及び遺産分割方法の指定と解する説(第3説)がある。
 次のアからオまでの記述のうち,それぞれの説に当てはまるものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
ア 遺言に基づく当該建物の所有権移転登記の申請は,当該特定の相続人が単独ですることができる。
イ 遺言者の名あて人が相続人以外の者である場合も含め,一貫した説明をすることができる。
ウ 当該建物の価額が法定相続分を下回るときは,法定相続分に達するまで他の相続財産を取得することができる。
エ 遺留分減殺請求の対象となり得る。
オ 当該建物のために設定されている敷地の賃借権を承継するためには,賃貸人の承諾が必要である。
1 第1説:アウ    第2説:アイウ  第3説:イエオ
2 第1説:アウエ   第2説:イオ   第3説:ウエ
3 第1説:イエオ   第2説:アウエ  第3説:アイオ
4 第1説:イウエオ  第2説:アエ   第3説:アウエ
5 第1説:イエオ   第2説:アウオ  第3説:アウ


【H12-19】 相続の放棄に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 相続人が数人いる場合の相続放棄の申述は,相続人のいずれかが自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければならない。
イ Aの相続につきその相続人であるBが承認又は放棄をしないで死亡したときは,Bの相続人であるCは,Aの相続につき放棄をした後であっても,Bの相続につき放棄をすることができる。
ウ 錯誤により家庭裁判所に相続の放棄の申述をした相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月を経過したときは,その無効を主張することはできない。
エ 相続の放棄をすることができる期間は,利害関係人又は検察官の請求に基づき家庭裁判所が伸長することができるほか,被相続人が遺言で伸長することもできる。
オ 相続人の債権者は,その相続人がした相続の放棄の申述を詐害行為として取り消すことはできない。
1 アウ   2 アオ   3 イエ   4 イオ   5 ウエ


【H12-20】 Aが婚姻関係にないBによって懐胎し,子Cを出産した場合に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア BがAと婚姻をした後にCを認知した場合,Cは,AとBの婚姻の時から嫡出子たる身分を取得する。
イ Bが未成年者である場合,BがCを認知するには,Bの親権者の同意を得なければならない。
ウ BがCを認知した場合,Bは,Aと婚姻をしなくとも,Cに対する扶養義務を負う。
エ BがCを認知した場合,Cに対する親権はAとBが共同して行使する。
オ BがCを自分と婚姻関係にあるDとの間の嫡出子として出生の届出をした場合,その届出は,認知の届出としての効力を有する。
1 アイ   2 アエ   3 イオ   4 ウエ   5 ウオ


【H12-21】 遺留分減殺請求権に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 包括遺贈に対する遺留分減殺請求は,遺言執行者があるときでも,包括受遺者に対してしなければならない。
イ 遺留分減殺請求は,受遺者又は受贈者に対する意思表示によってすれば足り,必ずしも裁判上の請求によることを要しない。
ウ 包括遺贈に対する遺留分減殺請求がされた場合,遺言者の財産は,遺留分減殺請求をした者と包括受遺者との共有になるので,遺産分割の手続によらなければ,その共有関係を解消することができない。
エ 遺留分減殺請求を受けた受遺者は,遺贈の目的物の相続開始時における価額を弁償することにより,目的物の返還を免れることができる。
オ 遺留分を有する推定相続人も,相続の開始前は,将来における遺留分減殺請求権の行使による所有権移転請求権を保全するため,贈与財産に対し,仮登記をすることはできない。
1 アイ   2 アエ   3 イオ   4 ウエ   5 ウオ


【H12-22】 親権又は未成年者の後見に関する次のアからオまでの記述のうち,明らかに誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 養父と実母とが婚姻関係にある場合,親権は,養父と実母が共同して行使する。
イ 協議離婚の際に定めた親権者は,その後に父母の協議により変更することができる。
ウ 父が親権喪失の宣告を受けた後,母が管理権喪失の宣告を受けた場合,後見が開始する。
エ 養父母双方と未成年者が離縁をした場合,後見が開始する。
オ 未婚の未成年者が子を出生した場合,その子について後見が開始する。
1 アイ   2 アエ   3 イオ   4 ウエ   5 ウオ




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