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司法書士試験・本試験問題
(平成10年・民法)


【H10-01】 法人の理事の行為に関する次の記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。
1 理事が自己の利益を図るため代理権の範囲に属する法律行為を行った場合において,相手方が理事の意図を知らなかったときは,そのことに過失があったかどうかにかかわらず,法人は,その行為の無効を主張することができない。
2 理事が代理権を行使するには理事会の決議を要する旨の定款の定めがあるにもかかわらず,理事が理事会の決議なしに取引をした場合に,相手方は,その定款の定めを知っていたときは,理事会の決議があるものと信じていたかどうかにかかわらず,表見代理の主張をすることができない。
3 理事がした職務権限外の行為が外形からみてその職務行為に属するものと認められる場合であっても,その行為が理事の職務行為に属さないことを知らなかったことについて相手方に重大な過失があるときは,法人は,その行為について損害賠償責任を負わない。
4 理事がその職務を行うにつき他人に損害を加えたため法人の不法行為が成立する場合,その行為をした理事は個人としては不法行為の責任を負わないが,故意又は重大な過失があったときは,法人から求償権の行使を受けることがある。
5 理事が代理人により動産購入の取引をしたところ,その取引の当時その動産が売主の所有に属さなかった場合において,理事が善意・無過失であるときは,代理人が善意・有過失であっても,法人は,その動産の所有権を善意取得できる。


【H10-02】 無権代理と表見代理との関係について,「無権代理人の責任の要件と表見代理の要件がともに存在する場合においても,表見代理の主張をすると否とは相手方の自由であると解すべきであるから,相手方は,表見代理の主張をしないで,直ちに無権代理人に対し民法117条の責任を問うことができ,この場合には,無権代理人は,表見代理が成立することを抗弁として主張することはできない。」という見解がある。次のアからオまでの記述のうち,この見解の根拠となり得ないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 表見代理は,善意の相手方を保護するための制度である。
イ 表見代理が成立する場合には,相手方は,有権代理が成立した場合と同様の効果を収めることができる。
ウ 表見代理の立証は,一般に困難である場合が少なくない。
エ 無権代理人は,自ら代理権なく代理行為をしたものである。
オ 無権代理人の責任は,表見代理によっては保護を受けることのできない相手方を救済するためのものである。
1 アウ   2 アエ   3 イウ   4 イオ   5 エオ


【H10-03】 Aは,Bに対し,自己所有の甲土地を売却し,代金と引換えに甲土地を引き渡したが,その後,Cに対しても甲土地を売却し,代金と引換えに甲土地の所有権移転登記を経由した。この場合におけるBの甲土地の取得時効の成否に関する次の記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。
1 Bは,A所有の甲土地を買い受けた時点で甲土地の所有権を取得しており,その引渡しを受けた時点で「他人の物の占有」を開始したとはいえないので,この時点から時効期間を起算することはできない。
2 Bは,甲土地の引渡しを受けた時点で善意・無過失であったとしても,AC間の売買及び登記の経由があったことを知ったときは,その時点で悪意となるので,10年間の占有による取得時効は成立しない。
3 Bは,甲土地の引渡しを受けた時点で所有の意思を有していたとしても,AC間の売買及び登記の経由があったことを知ったときは,その時点で所有の意思を失うので取得時効は成立しない。
4 Bは,甲土地の引渡しを受けた後に,他人により占有を奪われたとしても,占有回収の訴えを提起して占有を回復した場合には,継続して占有したものと扱われるので,占有を奪われていた期間も,時効期間に算入される。
5 Bが引渡しを受けた後に甲土地を第三者に賃貸した場合には,Bは,直接占有を失うので,取得時効は成立しない。


【H10-04】 AがBの詐欺により,Bとの間で,A所有の甲土地を売り渡す契約を締結したという事例に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア Aが詐欺の事実に気付いた後に,BがAに対し,相当の期間を定めて売買契約を追認するかどうかを確答するよう催告した場合,Aがその期間内に確答しなければ,Aは,売買契約の意思表示を取り消したものとみなされる。
イ Aは,詐欺の事実に気付いた後に,売買代金の支払請求をした場合であっても,その際に異議をとどめていれば,なお売買契約の意思表示を取り消すことができる。
ウ 売買契約の締結後,20年が経過した後にAが初めて詐欺の事実に気付いた場合,Aは,売買契約を取り消すことができない。
エ Aは,詐欺の事実に気付いて売買契約の意思表示を取り消した場合において,Bへの所有権移転登記を経由していたときは,Bが第三者に転売した後であっても,Bに対し,その登記の抹消を請求することができる。
オ Aは,詐欺の事実に気付いて売買契約の意思表示を取り消した場合において,Bへの所有権移転登記を経由していたときは,Bに対し,受領済の代金及びこれに対する受領時以後の法定利率による利息を返還しなければならない。
1 アエ   2 アオ   3 イウ   4 イエ   5 ウオ


【H10-05】 Aが債権者,Bが債務者,Cが第三者である場合における金銭債務の弁済に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
1 CがBの意思に反してAに弁済した場合であっても,Cが物上保証人であるときは,その弁済は効力を有する。
2 AとBが第三者の弁済を禁ずる旨の合意をしているにもかかわらず,CがAに弁済した場合であっても,CがAB間の合意を知らず,かつ,知らないことに過失がないときは,その弁済は効力を有する。
3 Cが窃取したAの債権証書を示し,Aの代理人であると詐称したため,BがCに対して弁済した場合,CがAの代理人であるとBが信じ,かつ,信じたことにつき過失がないときは,その弁済は効力を有する。
4 CがAに対する債権を保全するため債権者代位権を行使し,Aに代位してBに対し債務の履行を請求した場合に,BがCに対して弁済したときは,その弁済は効力を有する。
5 CがAに対する債権を保全するために債権者代位権を行使し,Aに代位してBに対し債務の履行を請求した場合に,BがAに対して弁済したときは,その弁済は効力を有する。


【H10-06】 次のアからオまでのA欄に掲げる行為につき,B欄に掲げる者の承諾が必要なものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
        A欄         B欄
ア 賃貸人が賃貸物を第三者に譲渡す  賃借人
  ること
イ 第三者が債権者との間で債務引受  債務者
  けをすること
ウ 弁済をするにつき正当の利益を有  債権者
  しない第三者が弁済による代位を
  すること
エ 第三者が債権者との間で連帯保証  債務者
  をすること
オ 債務者が代物弁済をすること    債権者
1 アイ   2 アオ   3 イエ   4 ウエ   5 ウオ


【H10-07】 連帯債務者A・Bの法律関係と,連帯保証でない保証における主たる債務者C,保証人Dの法律関係との異同に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア Aの債務が無効でも,Bの債務は成立するが,Cの債務が無効の場合には,Dの債務は成立しない。
イ Aの債務の消滅時効が完成した場合にBが時効を援用すると,Bは,Aの負担部分についてのみ債務を免れるが,Cの債務の消滅時効が完成した場合にDが時効を援用すれば,Dは自らの債務を全部免れる。
ウ Aが債務の承認をしても,Bの債務の消滅時効は中断しないが,Cが債務を承認すると,消滅時効の中断は,Dの債務についても効力が生ずる。
エ Aの債務をBが弁済しても,法律上当然に債権者に代位することはないが,Cの債務をDが弁済すれば,法律上当然に代位が生ずる。
オ Aが債権者に対し相殺適状にある反対債権を有しているときは,Bは,Aの負担部分につき相殺をすることができるが,Cが債権者に対し相殺適状にある反対債権を有していても,Dは相殺をすることはできない。
1 アイ   2 アオ   3 イウ   4 ウエ   5 エオ


【H10-08】 賃貸人の承諾がある転貸借契約について,「賃貸借契約が転貸人たる賃借人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合,転貸借契約は,原則として,賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に,転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了する。」という見解がある。次のアからオまでの記述のうち,この見解に適合しないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 転貸人は,転借人に対し,目的物を使用収益させる債務を負う。
イ 転借人は,目的物を現実に使用収益している以上,その間の賃料を転貸人に支払う債務を負う。
ウ 賃貸人の承諾がある転貸借契約は,賃貸借契約の存在を当然の前提としているから,賃貸借契約が終了したときは,その前提を欠いて終了する。
エ 転貸人の転借人に対する債務が履行不能であるかどうかは,社会通念及び取引通念に照らして判断される。
オ 賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合,転借人は,賃貸人の請求に応じて目的物を返還しなければならない。
1 アエ   2 アオ   3 イウ   4 イエ   5 ウオ


【H10-09】 共有に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア AとBが共有する土地を,Aが勝手に自己の単独の所有に属するものとしてCに売却した場合,AC間の売買契約は,Aの持分の範囲内においてのみ有効である。
イ AとBが共有する建物について,Aが,自己の持分を放棄する意思表示をした後,当該持分をCに譲渡した場合,Bは,当該放棄による自己の持分の増加を登記なくしてCに対抗することができる。
ウ AとBの共有物をCが過失によって壊してしまった場合,Aは,Cに対して,自己の持分についての損害賠償を請求することはできるが,当該共有物の全損害の賠償を請求することはできない。
エ A・B及びCが共同相続した不動産につき,AがB及びCに無断で単独名義の所有権移転を経由した上で,これを第三者Dに譲渡して,その旨の所有権移転登記を経由した場合,BがDに対して請求することができるのは,Bの持分についてのみの登記手続である。
オ AとBが共有する建物をCが不法に占拠している場合,Aは,その持分の割合がいくらであるかにかかわらず,単独で,Cに対して当該建物の明渡しを請求することができる。
1 アイエ  2 アイオ  3 アウオ  4 イウエ  5 ウエオ


【H10-10】 Aが「電線路及びこれを支持するための鉄塔を施設し,保持すること」を目的として,Bからその所有する甲土地について地上権の設定登記を受けていたという事例に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。なお,甲土地は,1筆の土地である。
ア 当該地上権が甲土地の全部を対象として設定されたものである場合において,第三者DがAに無断で甲土地の一部に建物を建築したときであっても,当該建物が電線路及び鉄塔にとって支障とならないものであれば,Aは,Dに対して,当該建物の収去を求めることはできない。
イ 当該地上権が甲土地の全部を対象として設定されたものである場合には,Aは,「電線路(支持物を除く。)を施設,保持し,その架設・保守のために土地に立ち入ること」を目的として,Bから別途,地役権の設定を受けることはできない。
ウ 当該地上権が甲土地の全部を対象として設定されたものである場合には,Aは,第三者Eのために「電線路(支持物を除く。)を施設,保持し,その架設・保守のために土地に立ち入ること」を目的とする地役権を設定することができる。
エ 当該地上権が甲土地の一部のみを対象として設定されたものである場合には,そのことを知らないCが,Aから当該地上権を譲り受け,その旨の移転登記を経由したときであっても,Cは,甲土地のその余の部分に鉄塔を建設する権利を取得しない。
オ 当該地上権が甲土地の一部のみを対象として設定されたものである場合には,Bは,甲土地のその余の部分について,通行地役権を設定することができる。
1 アウ   2 アエ   3 イウ   4 イオ   5 エオ


【H10-11】 留置権に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 必要費償還請求権のために建物を留置している留置権者が,その建物のために更に必要費を支出した場合であっても,後者の必要費償還請求権のために留置権を主張することはできない。
イ 土地が二重譲渡され,第2の買主へ所有権移転登記がされた場合,第1の買主は,第2の買主からの土地明渡請求に対して,自己への所有権移転が履行不能となったことを理由として得た損害賠償債権をもって当該土地につき留置権を主張することができる。
ウ 建物の買主が売買代金を支払わないまま当該建物を第三者に譲渡した場合,売主は,当該転得者からの建物引渡請求に対して,未払代金請求権をもって当該建物につき留置権を主張することができる。
エ 留置権者は,債権の弁済を受けないまま留置物の一部を債務者に引き渡した場合であっても,債権全額の弁済を受けるまでは,留置物の残部につき留置権を主張することができる。
オ 造作買取請求権を行使した建物の賃借人は,造作代金の提供がなされない場合でも,当該建物につき留置権を主張することはできない。
1 アイ   2 アオ   3 イエ   4 ウエ   5 ウオ


【H10-12】 先取特権に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 債務者が目的物である動産を第三者に譲渡して引き渡した後は,先取特権を行使することはできない。
イ 不動産保存の先取特権は,保存行為完了の後直ちに登記をすれば,それ以前に登記された抵当権にも優先する。
ウ 先取特権の登記がされている不動産の第三取得者は,てき除の手続をとることができない。
エ 不動産賃貸の先取特権は,賃借人が第三者から預かって賃借不動産内に保管している動産には及ばない。
オ 動産保存の先取特権相互間では,保存が動産について行われたか,動産に関する権利について行われたかにかかわらず,後の保存者が優先する。
1 アイ   2 アエ   3 イオ   4 ウエ   5 ウオ


【H10-13】 「遺産分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は,その旨の登記を経由しなければ,分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し,自己の権利の取得を対抗することができないが,相続人の相続放棄により不動産を取得した他の相続人は,登記を経由しなくても,放棄した者からその後当該不動産につき権利を取得した第三者に対し,自己の権利の取得を対抗することができる。」という見解がある。次のアからオまでの記述のうち,この見解の根拠として適切でないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 遺産分割は,相続開始後数年経ってから行われる場合も少なくない。
イ 遺産分割については,原則として遡及効が認められている。
ウ 遺産分割は,放棄・承認によって一応確定した相続関係を基礎とし,その後に相続財産に対する権利状態を変更するものである。
エ 相続放棄は,家庭裁判所に対する申述によって行われる。
オ 相続放棄により相続財産を取得した者と,相続放棄後に相続財産に対して権利を有するに至った第三者との関係について,民法には規定がない。
1 アウ   2 アエ   3 イエ   4 イオ   5 ウオ


【H10-14】 Aがその所有する甲土地をBに売却し,更にBが当該土地をCとDに二重に売却したという事例に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア BがCに甲土地を売却した後,AがBの詐欺を理由に売買の意思表示を取り消し,次いでBがDに甲土地を売却した場合,Cは,Bの詐欺の事実について善意・無過失であれば,所有権移転登記を経由していなくても,A及びDに対し自己の所有権を対抗することができる。
イ Bが甲土地をCとDに二重に売却した後,AがBの詐欺を理由に売買の意思表示を取り消した場合であっても,Cは,所有権移転登記を経由しており,かつ,Bの詐欺の事実について善意・無過失であれば,A及びDに対し,自己の所有権を対抗することができる。
ウ Bが甲土地をCとDに二重に売却した後,AがBの強迫を理由に売買の意思表示を取り消した場合には,Cが所有権移転登記を経由し,かつ,Bの強迫について善意,無過失であっても,Aは,C及びDに対し,自己の所有権を対抗することができる。
エ BがCに甲土地を売却した後,AがBの債務不履行を理由に売買契約を解除し,次いでBがDに甲土地を売却した場合,Bが登記簿上の所有名義を有していれば,Aは,C及びDに対し,自己の所有権を対抗することができる。
オ Bが甲土地をCとDに二重に売却した後,Aが未成年を理由に売買の意思表示を取り消した場合には,Cは,その後に所有権移転登記を経由すれば,A及びDに対し,自己の所有権を対抗することができる。
1 アイ   2 アエ   3 イウ   4 ウオ   5 エオ


【H10-15】 登記請求権を,その発生原因により,@物権的登記請求権,A債権的登記請求権,B物権変動の事実そのものに基づいて発生する登記請求権の3種類に分類する見解がある。この見解に立った場合,次のアからオまでの記述に係る登記請求権のうち,Bの登記請求権としてしか説明できないものの組合せはどれか。
ア Aがその所有する土地をBに売却し,Bが更にCに転売し,AからB,BからCへの各所有権移転登記が経由されたが,その後,AB間の売買契約が,強迫を原因として取り消された場合,BはCに対し,BC間の所有権移転登記の抹消を請求することができる。
イ Aがその所有する土地をBに売却し,Bが更にCに転売した場合において,ABCの三者間において,登記名義をAからCに直接移転することを合意したときは,CはAに対し,その旨の所有権移転登記を請求することができる。
ウ A所有の土地について,ABの通謀により,Bへの虚偽の所有権移転登記が経由されていたところ,CがAからこの土地を買い受けた場合,CはBに対し,自己への直接の所有権移転登記を請求することができる。
エ Aが所有していた土地をBが時効により取得し,所有権移転登記を経由しないままCに売却した場合,BはAに対し,所有権移転登記を請求することができる。
オ Aは,その所有する土地をBに売却した場合,Bに対し,所有権移転登記を請求することができる。
1 アイ   2 アエ   3 イオ   4 ウエ   5 ウオ


【H10-16】 「土地及びその上の建物を所有する者が,当該土地及び建物に共同抵当権を設定した後,当該建物が取り壊され,当該土地上に新たに建物が建築された場合には,新建物の所有者が土地の所有者と同一であり,かつ,新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り,新建物のために法定地上権は成立しないと解すべきである。」という見解がある。次のアからオまでの記述のうち,この見解の根拠として適切でないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 土地とその上の建物は別個独立の不動産であり,土地利用権は建物抵当権が支配している担保価値に含まれる。
イ 法定地上権の制度は,競売の結果,土地とその上の建物の所有者が異なることとなった場合に,建物の建築に投じられた資本等を失うことによる国民経済上の損失の発生を防止するという公益的見地から設けられたものである。
ウ 甲抵当権と乙抵当権が共同抵当の関係にある場合に,甲抵当権が消滅すると,甲抵当権が把握していた担保価値が,乙抵当権の側に移転するということは論理的にあり得ない。
エ 土地及びその上の建物に共同抵当権を設定した当事者としては,当該土地及び建物の担保価値全体を抵当権者が把握するようにしようとする意思であると考えられる。
オ 建物の滅失及び新建物の建築によって抵当権者に予期せぬ損害を与えるのは相当でない。
1 アイウ  2 アイエ  3 アウオ  4 イエオ  5 ウエオ


【H10-17】 根抵当権の元本の確定について,「根抵当権の一部譲渡を受けた者が抵当不動産について競売の申立てをした場合には,当該競売の申立ては,原根抵当権についても民法398条ノ20第1項2号の確定事由に該当するが,転根抵当権者が抵当不動産について競売の申立てをした場合には,当該競売の申立ては,原根抵当権についての同号の確定事由には該当せず,同項4号の確定事由に該当する。」という見解がある。次のアからオまでの記述のうち,この見解の根拠とならないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 民法398条ノ20第1項2号は,根抵当権者自らが根抵当権を実行することによって取引を終了した場合には,流動性を失わせるのが当然であるとの趣旨の規定である。
イ 民法398条ノ20第1項4号は,根抵当権者と第三者との利害調整を図る趣旨の規定である。
ウ 転根抵当権は,原根抵当権の存在を前提とするものである。
エ 抵当不動産の換価権は,根抵当権の本来的な権利であるから,共有者の一人が換価権を行使しようとする場合に,他の共有者がこれを阻止することができるとするのは相当でない。
オ 根抵当権の共有者は,他の共有者の同意を得ないと,共有持分の譲渡をすることができないとされていることからすると,根抵当権の共有の場合には,一般の共有の場合とは異なり,持分処分の自由はないというべきである。
1 アイ   2 アオ   3 イエ   4 ウエ   5 ウオ
(参考)
第398条ノ20 左ノ場合ニ於テハ根抵当権ノ担保スベキ元本ハ確定ス
 一 (省略)
 二 根抵当権者ガ抵当不動産ニ付キ競売(中略)ヲ申立テタルトキ但競売手続ノ開始(中略)アリタルトキニ限ル
 三 (省略)
 四 根抵当権者ガ抵当不動産ニ対スル競売手続ノ開始(中略)アリタルコトヲ知リタル時ヨリ二週間ヲ経過シタルトキ
 五 (省略)
A (省略)


【H10-18】 次の対話は,ともに未成年であるA男とB女の婚姻の解消による法律関係に関する教授と学生の対話である。教授の質問に対する次のアからクまでの学生の回答を組み合わせた後記1から5までのうち,適切なものはどれか。
教授:A・Bが協議離婚した場合,A・Bに対する成年擬制の効果はどうなりますか。
学生:ア 協議離婚によっても,いったん生じた成年擬制の効果は消滅せず,A・Bは,法律上,成年者として取り扱われます。
   イ 協議離婚により成年擬制の効果は消滅するので,A・Bは法律上,未成年者として取り扱われます。
教授:それは,なぜですか。
学生:ウ 成年擬制は,婚姻生活の自主性・独立性を守るために認められた効果だからです。
   エ 一度獲得した行為能力を失わせることは,取引行為の安全や婚姻中に生まれた子の親権をめぐって,混乱を生じさせるからです。
教授:Aの両親X・Yが生存しているとして,A・Bの協議離婚後にAが婚姻外の子Cを認知する場合,X・Yの同意が必要ですか。
学生:オ 必要ではありません。
   カ 必要です。
教授:では,Bが,A・Bの協議離婚後300日以内に子Dを出生した場合,Dに対する親権は誰が行使しますか。
学生:キ DはA・B夫婦の嫡出子と推定されますから,A・Bが共同で親権を行使することになります。
   ク Bが単独で親権を行使することになりますが,A・Bの協議で,Aを親権者と定めることもできます。
1 アウカキ 2 アエオク 3 アエカク 4 イウカキ 5 イエオク


【H10-19】 普通養子の離縁に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 普通養子が死亡した後は,養親は,離縁することができない。
イ 普通養子が養親夫婦の一方と離縁したときは,離縁によって縁組前の氏に復しない。
ウ 普通養子が未成年者であるときは,家庭裁判所の許可を得て,養親夫婦の一方と離縁することができる。
エ 普通養子が禁治産者であるときは,協議により離縁するには,その後見人の同意が必要である。
オ 普通養子は,離縁の前後にかかわらず,養親の兄弟と婚姻することができる。
1 アイ   2 アエ   3 イオ   4 ウエ   5 ウオ


【H10-20】 遺留分に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 遺留分の放棄は,相続の開始前には,することができない。
イ 共同相続人の一人が遺留分を放棄したときは,他の共同相続人の遺留分がその割合に応じて増加する。
ウ 代襲相続の場合において,代襲者が一人であるときは,代襲者は,被代襲者と同じ遺留分を有する。
エ 遺留分減殺請求権は,相続の開始を知った時から1年間行使しないときは,時効によって消滅する。
オ 遺留分減殺請求権は,遺贈,贈与の順に行使しなければならない。
1 アイ   2 アウ   3 イエ   4 ウオ   5 エオ


【H10-21】 相続欠格と相続人の廃除とを比較した次のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 相続欠格の効果は,一定の事由があれば,法律上当然に生ずるが,相続人の廃除の効果は,家庭裁判所の審判によって生ずる。
イ 相続欠格の対象は,すべての推定相続人であるが,相続人の廃除の対象は,遺留分を有する推定相続人のみである。
ウ 相続欠格の場合には,被相続人は家庭裁判所にその取消しを請求することができないが,相続人の廃除の場合には,被相続人は家庭裁判所にその取消しを請求することができる。
エ 被相続人の子が相続欠格者の場合には,相続欠格者の子は代襲相続人にならないが,被相続人の子が被廃除者の場合には,被廃除者の子は代襲相続人になる。
オ 相続欠格の場合には,相続能力自体が否定されるが,相続人の廃除の場合には,廃除者を相続する資格のみ否定される。
1 アウ   2 アオ   3 イウ   4 イエ   5 エオ


【H10-22】 いわゆる特別受益者の具体的相続分の算定に関する次のアからオまでの記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 生前贈与は,相続開始前の1年間にしたものに限り,特別受益となる。
イ 特別受益となる贈与の価額が受贈者の法定又は指定相続分の価額を超えるときであっても,受贈者は,超えた価額を返還する必要はない。
ウ 受贈者の行為によって,受贈財産の価格が減少しているときは,その現存価格が特別受益となる。
エ 特別受益の有無又は価額について共同相続人間の協議が調わないときは,相続人は,家庭裁判所に特別受益を定めるよう請求することができる。
オ 被相続人は,遺言によって,特別受益の持戻しを免除することができる。
1 アイ   2 アエ   3 イオ   4 ウエ   5 ウオ




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