戻る ・ AIMONのホームページへ戻る

司法書士試験・本試験問題
(昭和53年〜平成12年・刑法)


【S53-23】 賄賂罪に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 異性との情交及び有利な地位の供与は,賄賂となり得る。
2 収賄罪における職務は,当該公務員が現実に担当している事務であることを要しない。
3 贈賄罪(198条)は,賄賂が収受されなかった場合にも成立し得る。
4 事前収賄罪(197条2項),第三者供賄罪(197条の2),及び事後収賄罪(197条の3第3項)の成立には,犯人が請託を受けたことが必要である。
5 斡旋収賄罪(197条の4)は,他の公務員に職務上,正当な行為をなすように斡旋しても,成立し得る。


【S53-24】 刑法第6条は,犯罪後の法律により刑の変更があったときは,その軽いものを適用することを定めている。この点に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 継続犯の実行行為中に刑が重く変更された場合,新法が適用される。
2 結果犯についての犯罪後とは,結果発生の後をいう。
3 本条の適用上,罰金は拘留より軽い。
4 本条は,刑法犯以外には適用されない。
5 犯罪後に親告罪が非親告罪に変更された場合,本条により告訴がなければ処罰することができない。


【S53-25】 隣家に住んでいる甲の叔父が,甲に対して次の犯罪を犯した。この場合,叔父の処罰に甲の告訴を必要としないものはどれか。
1 過失傷害罪(209条)
2 不動産侵奪罪(235条の2)
3 横領罪(252条)
4 境界損壊罪(262条の2)
5 信書隠匿罪(263条)


【S53-26】 公正証書原本等不実記載罪(刑法157条)に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 公法上の権利義務に関する公正証書は,本罪の客体とならない。
2 申請人が登記官と共謀して登記簿に不実の記載をさせた場合,その申請人については本罪は成立しない。
3 不動産の真実の所有者が登記簿上の所有名義人の委任状及び登記済証を偽造して自己名義への所有権移転の登記の申請をし,その旨の登記をさせた場合は,本罪は成立しない。
4 戸籍簿に不実の記載をさせるために虚偽の請求原因に基づいて離婚訴訟を提起した場合,本罪の未遂罪が成立する。
5 甲に土地を売り渡した者が,更に乙にその土地を売り渡し,その土地につき乙に対し,所有権移転の登記をした場合,本罪が成立する。


【S53-27】 次のうち,私文書偽造罪(刑法159条)の客体となり得ないものはどれか。
1 譲受人の表示を欠いた債権譲渡証書
2 落款のある書画
3 外国の公務所名義の文書
4 公務員名義の退職届
5 死亡者名義の文書


【S53-28】 刑法総則に関する次の場合,正しいものはどれか。
1 必要的減軽事由のある場合には,更に酌量減軽をなすことはできない。
2 14歳未満のため責任能力を欠く者の攻撃に対しては,正当防衛は成立しない。
3 警察に犯罪事実及び犯人の氏名が判明したが,犯人の所在が判明しない場合において,犯人が自首したときは,これを理由に刑を減軽することができる。
4 精神の障害により事物の是非善悪を弁識する能力がない状態で犯罪を犯した場合,その刑は必ず減軽される。
5 甲,乙及び丙の3罪を順次犯し,既に乙罪についてのみ罰金刑に処せられている場合,甲罪と乙罪は併合罪になる。


【S54-23】 不能犯に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
1 通行人の懐中をねらったスリは,たまたまその通行人の懐中が無一物であった場合には,結果発生の危険が絶対に生じないから不能犯である。
2 殺害の目的をもって青酸カリを他人に飲ませた場合であっても,それが致死量に達していないときには,結果発生の危険が絶対にないから不能犯である。
3 自ら実弾を装填しておいた銃器の引き金を殺人の目的をもって引いた場合であっても,その直前に他人により弾丸が抜きとられてしまっていたときには,結果発生の危険が絶対ないから不能犯である。
4 硫黄粉末で毒殺を図り,これを他人に飲ませた場合には,結果発生の危険が絶対にないから不能犯である。


【S54-24】 併合罪に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
1 併合罪中,その1罪につき死刑に処すべきときでも,没収は主刑でないからこれを併科することができる。
2 併合罪中,その1罪につき無期禁錮に処すべきときは,罰金を併科することができない。
3 併合罪中,2個の有期懲役に処すべき罪があるときは,各罪につき定めた刑の長期を合算したものによって長期とすることができる場合もある。
4 併合罪中,最も重い罪に没収がないときは,他の罪に没収があるときでも,併合罪の処断は最も重い罪によるから,没収は科せられない。
5 併合罪中,既に裁判を経た罪が1個でもあるときは,他の裁判を経ない罪については,一事不再理により更に処断することができない。


【S54-25】 次の記述のうち,誤っているものはどれか。
1 私文書偽造罪(159条1項)の客体たる文書は,文書として完全なものであることを要するから,白紙委任状を偽造した場合には,同罪は成立しない。
2 虚偽私文書作成罪(160条)は,医師が公務所に提出すべき診断書・検案書・死亡証書に虚偽の記載をした場合のみ成立する。
3 私文書偽造の目的で単に白紙の上に他人の印章を押捺した場合には,私印不正使用罪(167条2項)の未遂罪は成立しない。
4 登記官をそそのかし,その内容が虚偽であることをうち明けて建物の登記簿に不実の記載をさせた場合には,記載をさせた者について虚偽公文書作成罪(156条)の教唆犯が成立する。
5 公務所においてその用に供する目的で保管されている私文書をどこかに隠匿した場合には,公用文書毀棄罪(258条)が成立する。


【S54-26】 次の記述のうち,正しいものはどれか。
1 店員がその店にある商品を経営者に無断で自分のものにするのは横領罪(252条1項)である。
2 甲に譲渡した不動産を,もとの所有者がその移転登記前に乙に売り渡すのは,背任罪(247条)である。
3 他人を欺いてその注意を他にそらせ,その隙にその人の財物を自分のものにするのは,詐欺罪(246条1項)である。
4 全く意思能力を欠く精神障害者に欺罔手段を施して,その人の財物を自分のものにするのは,窃盗罪(235条)である。
5 旅館の脱衣場に客が置き忘れた財物を自分のものにするのは,占有離脱物横領罪(254条)である。


【S54-27】 次の記述のうち,誤っているものはどれか。
1 物の占有者たる甲が不法にその物を乙に売り渡したときには,甲については横領罪(252条1項)が,事情を知って買った乙には贓物故買罪(256条2項)が成立する。
2 窃盗罪(235条)の実行を決意した者の依頼に応じて同人が将来窃取すべきものの売却を周旋したときは,窃盗幇助罪のほか,贓物牙保罪(256条2項)が成立する。
3 県知事の許可を条件として農地を売り渡した場合において売主が自己の債務の担保のため第三者に抵当権を設定したときは,その許可前ならば背任罪(247条)が,許可後ならば横領罪が成立する。
4 計画的にまずある商店で洋品類を窃取し,これをその店の経営者方に持参し,正当に買い入れた品物と偽って返品の形で金員を詐取したときには,窃盗罪のほかに詐欺罪(246条1項)が成立する。
5 お客を装い商品の衣類を試着したまま,便所に行くと偽って逃走した後,その衣類を損壊した場合には窃盗罪のみが成立する。


【S54-28】 暴行に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
1 騒擾罪(106条)における暴行は,人に向けられると物に向けられるとを問わず,すべての有形力の行使をいう。
2 公務執行妨害罪(95条1項)における暴行は,直接に公務員の身体に加えられなくともよく,公務員に向けられた有形力の行使であればよい。
3 強姦罪(177条)における暴行は,被害者の反抗を著しく困難にする程度のものでは足りず,その反抗を抑圧するに足りる程度であることを要する。
4 暴行罪(208条)における暴行は,人の身体に加えられる不法な有形力の行使である。


【S55-24】 次に掲げる行為のうち,公正証書原本不実記載罪が成立するものはどれか。
1 家屋の売主が,いまだ登記名義が自己にあるのを奇貨として,自己の債務の担保のため抵当権を設定し,その旨の登記を受けた。
2 裁判所に対して虚偽の申立てをし,裁判官をして何ら債務を負担していない第三者を相手方とする支払命令を出させた。
3 他人所有の未登記不動産について,自己名義の保存登記を受けようと企て,知人の登記官に情を明らかにしてその旨の登記を受けた。
4 市立の結婚相談所に提出する身上経歴書に虚偽の事項を記載し,同所の相談員をして依頼人名簿に虚偽の記入をさせた。
5 土地の買主が,別の目的で売主から保管を依頼されていた印鑑を勝手に利用して,その土地の所有権移転の登記を受けた。


【S55-25】 甲は海岸で乙を殺害しようとして乙の首をしめたところ,乙は失神して身動きしなくなった。甲は乙が死亡したものと思い,犯行を隠すために乙を船に乗せて沖合で海中に投げ込んだところ,乙は溺死した。甲の罪責は次のいずれに当たるか。
1 殺人未遂
2 殺人既遂
3 殺人既遂と過失致死
4 殺人未遂と死体遺棄
5 殺人既遂と死体遺棄


【S55-26】 次に掲げる行為のうち,偽造通貨行使罪が成立するものはどれか。
1 偽造通貨を用いてペンダントを作り,贈与した。
2 情を知って偽造を手伝った者に,謝礼として偽造通貨の一部を手渡した。
3 支払能力を示すために偽造通貨を示した。
4 偽造通貨を賭博の負債の履行として支払った。
5 偽造通貨を情を知っている者に売却した。


【S55-27】 罪刑法定主義に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 刑法の規定について異なった解釈が数個ある場合に,被告人に最も有利なものを採用するとすることは,罪刑法定主義の要請である。
2 犯罪後の法律の改正により刑が軽く変更された場合に,新法を適用するとすることは,罪刑法定主義の要請である。
3 森林窃盗罪の成否について入会権の有無の判断を要する場合に,その判断の根拠を慣習法に求めてはならないとすることは,罪刑法定主義の要請である。
4 著しく不明確な構成要件を定めてはならないとすることは,罪刑法定主義の要請ではない。
5 前に無罪となった行為について更に処罰することはできないとすることは罪刑法定主義の要請ではない。


【S55-28】 公務執行妨害罪に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 改札中の国鉄職員の職務を妨害するため同職員に暴行を加えても,公務執行妨害罪は成立しない。
2 職務を終え,レストランで制服を着用したまま食事中の警察官に暴行を加えても,公務執行妨害罪は成立しない。
3 街頭で犯人を追跡中の私服警察官を私立探偵と誤解し,その者に暴行を加えても,公務執行妨害罪は成立しない。
4 覚せい剤取締法違反の現行犯人を逮捕した現場で,警察官が証拠物として適法に差し押さえ,整理中の覚せい剤注射液入アンプルを警察官の面前で踏みつけて損壊すれば,公務執行妨害罪が成立する。
5 警察署に,東京駅構内に爆弾をしかけたとのにせ電話をかけて,多数の警察官を出動させても,公務執行妨害罪は成立しない。


【S56-24】 括弧内の犯罪について,その実行の着手が認められないものはどれか。
1 甲は,通行人乙のポケットから財布をすりとろうとして,そのポケットの外側に手を触れたが,財布が入っていない様子であったので,あきらめた。(窃盗)
2 甲は,強盗の目的で乙の家に侵入したところ家人がいなかったので,居間の金庫をこじ開けて金をとろうとしたが,失敗してそのまま帰った。(強盗)
3 甲は,現に人の住居に使用する家屋を焼燬する目的でこれに接続する犬小屋に放火したが,通行人に消し止められてその犬小屋を焼くだけにとどまった。(現住建造物等放火)
4 甲は,乙から金銭をだましとるつもりで,乙に対し返済する意思もないのに「明日返すから金を貸してくれ」と嘘を言ったところ,乙は,これを嘘だと見破ったが,甲に同情して金を渡した。(詐欺)
5 催眠術師の甲は,乙に催眠術をかけ,意識に一時的な障害をもたらして金をとろうと思い,部屋で乙に対して催眠術をかけ始めたが,他人が部屋に入ってきたのでその目的を遂げなかった。(昏酔強盗)


【S56-25】 A欄に掲げる者が日本国外においてB欄に掲げる罪を犯した場合に,A欄に掲げる者に我が国の刑法が適用されないのは次のうちどれか。
    A 欄            B 欄
1 日本人       外国人に対する傷害
2 外国人       行使の目的をもってする日本の通貨を偽造

3 日本人       日本国の公務員に対する,その職務に関しての
            賄賂の供与
4 日本人       外国人からの金銭の騙取
5 日本国の公務員   行使の目的をもってするその職務に関しての虚
            偽の文書の作成


【S56-26】 文書偽造の罪に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 甲がかねてから恨みを持っていた公務員乙にいやがらせをするため,その勤務先に提出する目的で乙の退職届を偽造した場合には,私文書偽造罪が成立する。
2 他人に交付された自動車運転免許証を拾った甲が,警察官から求められたときは提示する目的で,その写真を自分の写真に貼り替えた場合には,公文書偽造罪が成立する。
3 開業医の甲が公務員乙から頼まれて,乙がその勤務先に提出するものであることを知りながら,真実に反する病名を記載した診断書を作成した場合には,虚偽私文書作成罪が成立する。
4 甲が出版する目的で有名人乙に無断で同人名義のヨーロッパ旅行記を書いた場合には,私文書偽造罪が成立する。
5 甲が市役所の住民票係の公務員乙に対して虚偽の申立てをし,情を知らない乙をして,住民票に真実に反する記載をさせた場合には,公正証書原本不実記載罪が成立する。


【S56-27】 刑の執行猶予の記述中,誤っているものはどれか。
1 拘留20日の刑に処する場合は,その執行を猶予することができない。
2 罰金50万円の刑の執行が終わった日から5年以内に懲役3年の刑に処する場合には,その執行を猶予することができる。
3 懲役2年の刑の執行猶予の期間中に再び犯罪を犯し,禁錮1年6月の刑に処する場合には,更にその執行を猶予することができない。
4 懲役2年の刑の執行猶予の期間中に再び犯罪を犯し,禁錮6月の実刑に処する場合には,その執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。
5 懲役1年の刑の執行猶予の期間中に,その言渡し前に他の犯罪で懲役3年の刑に処せられ,その執行を猶予されたことが発覚した場合には,その懲役1年の刑の執行猶予の言渡しを取り消さなければならない。


【S56-28】 次の記述中,括弧内の犯罪が成立しないものはどれか。
1 甲は,所持金を十分所持して宿泊したが,旅館を出る直前になって宿泊代金を踏み倒そうと思い,玄関にだれもいないことに乗じて逃走し,宿泊代金の支払を免れ,財産上不法の利益を得た。(詐欺罪)
2 甲は,乙からテープレコーダーを借りて占有していたが,乙に対し「テープレコーダーが壊れてしまった。」と嘘を言ってだまし,これを他に売却した。(横領罪)
3 甲は,乙に賃貸し乙が占有中の自己所有のトラックを,乙に無断で他に売却しようと思い,ひそかにこれを乙の車庫から運転して自宅まで運んだ。(窃盗罪)
4 甲は,宝石店で指輪を盗んだ直後,店員に発見され身体をつかまれたので,その指輪を早く捨てて証拠を隠そうと思い,その店員を突き倒し,反抗を抑圧して逃走した。(準強盗罪)
5 甲は,乙よりビデオカメラを盗品とは知らずに預かったが,それが盗品であることを知った後も,その保管を継続した。(贓物寄蔵罪)


【S57-24】 労役場留置に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 科料を完納することができない者については,裁判確定後10日内は,本人の承諾があっても,労役場に留置することができない。
2 罰金を完納することができない者については,裁判確定後30日内は,本人の承諾がなければ,労役場に留置することができない。
3 罰金と科料を併科した場合における労役場の留置期間は,3年を超えることができない。
4 法人が罰金を完納することができない場合においても,その法人の代表者を労役場に留置することはできない。
5 少年については,科料を完納することができない場合においても,労役場に留置することはできない。


【S57-25】 犯人の所有に属する次の物件中,没収することができないものはどれか。
1 賄賂として提供したが受領を拒絶された金
2 殺人犯人をかくまったことの謝礼として受け取った金
3 詐欺犯人が騙取した金で買ったカメラ
4 賭博によって取得した金を貸して得た利子
5 殺人に使用した刀のさや


【S57-26】 次の記述中,判例によれば牽連犯の関係が成立すると認められるものはどれか。
1 放火をし,その対象物について保険金詐欺をした。
2 殺人をし,その死体を遺棄した。
3 窃盗教唆をし,その盗品について贓物故買をした。
4 業務上横領をし,その犯跡を隠蔽するため文書偽造をした。
5 不法監禁をし,その被害者を恐喝した。


【S57-27】 次の記述中,贓物収受罪の客体である贓物に該当するものはどれか。
1 賭博によって得た金
2 賄賂として収受した金
3 テレビの詐欺について公訴時効が完成した後における当該テレビ
4 偽証の謝礼として受け取った金
5 横領されたカメラについて善意取得が成立した後における当該カメラ


【S57-28】 次に掲げる場合のうち,括弧内の犯罪が成立しないものはどれか。
1 警察官が乗車している警備中のパトロールカーに投石したが,命中しなかった場合。(公務執行妨害罪)
2 捜査中の詐欺容疑者をかくまったが,後にその者が起訴猶予となった場合。(犯人蔵匿罪)
3 窃盗の目的で他人の家に入ろうとしたところ,家人が来客であると誤信して招き入れたので,その中に入った場合。(住居侵入罪)
4 窃盗犯人が,犯行現場から逃走しようとしたところ,これを見た通行人が追跡してきたので,逮捕を免れるために,その者に対して暴行を加え,反抗を抑圧した場合。(準強盗罪)
5 少年院に収容されている少年数名が,共謀した上,少年院の窓を壊して逃走した場合。(加重逃走罪)


【S58-24】 累犯に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 累犯加重の要件が備わっている場合には,裁判官は必ず累犯加重をしなければならない。
2 累犯加重をする場合には,前刑より重い刑を言い渡さなければならない。
3 累犯の刑を加重するのは,専ら常習犯に対する刑を加重するためである。
4 累犯加重は有期の懲役又は禁錮に処すべき場合に行われる。
5 累犯加重は懲役刑の執行中に更に罪を犯し有期懲役に処する場合にも行われる。


【S58-25】 次の記述中,観念的競合とならないものはどれか。
1 自動車を運転中に不注意によりバスに衝突し,バスの乗客数名を負傷させた。
2 散歩中の二人連れをねらって散弾銃を1回発射し,その二人を負傷させた。
3 通行中の二人連れを呼び止めて,ピストルで脅迫しながらその場で各人から順次金員を交付させた。
4 男女二人が密会している物置小屋の扉に鍵をかけ,これを監禁した。
5 一度に数人の者に対し,わいせつ写真を販売した。


【S58-26】 次に掲げる行為のうち,住居侵入罪が成立しないものはどれか。
1 警官に追跡されて,窃盗犯人が他人の住居の屋根に上った。
2 賃借人が家の賃貸借契約の終了後も立ち退かないので,家具を運び出す目的でその家に入った。
3 親友のアパートを訪ねたところ不在であったが,表戸に鍵が掛かっていなかったので,親友の帰りを待つつもりで部屋に入った。
4 無銭飲食の目的で飲食店に入った。
5 家出中の息子が父親の物を盗むつもりで,無断で父親の住居に入った。


【S58-27】 次に掲げる行為のうち,括弧内の犯罪が成立するものはどれか。
1 他の家族全員が,旅行している間に,自宅に放火して焼燬した。(非現住建造物放火罪)
2 一人暮らしの友人と共謀の上,その友人の居住する家に放火して焼燬した。(非現住建造物放火罪)
3 他人の住宅に延焼させるつもりで,それに隣接する物置小屋に放火したところ,豪雨のため,物置小屋だけを焼燬した。(非現住建造物放火罪)
4 飛行場に着陸中の乗客の乗っている飛行機に放火して焼燬した。(現住建造物放火罪)
5 自己所有の物置小屋を燃やすつもりで放火したところ,思いがけない強風のため近所の住宅を焼燬した。(現住建造物放火罪)


【S58-28】 公務執行妨害に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 公務員に暴行又は脅迫を加えても,それによって,公務員の職務執行が現実に妨害されないときには,公務執行妨害罪は成立しない。
2 公務執行の妨害の手段としての暴行が公務員の身体に直接加えられないときには,公務執行妨害罪は成立しない。
3 職務執行中の公務員に暴行を加えた者が,その公務員の職務執行の対象となっていない第三者であったときには,公務執行妨害罪は成立しない。
4 公務員の職務執行を偽計を用いて妨害したときには,公務執行妨害罪は成立しない。
5 公務員の職務執行を補助する者に対して暴行を加えたときには,公務執行妨害罪は成立しない。


【S59-24】 被害者の承諾と犯罪の成否に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
1 強制執行により商品の差押えを受けた債務者が,差押えのための封印が施された商品を倉庫から搬出して売却した場合でも,債権者が承諾していたときは,封印破棄罪は成立しない。
2 弁護士が,受任事件の調査過程で知った第三者の秘密を同人の承諾の下に漏らした場合でも,事件の依頼人が承諾していなかったときは,秘密漏示罪が成立する。
3 保護者でない者が,12歳の児童を保護者の不知の間に1泊旅行に連れて行った場合でも,児童本人が本心から承諾していたときは,未成年者誘拐罪は成立しない。
4 犯罪の被害者でない者が虚偽の被害事実を内容として告訴をした場合には,被告訴人がその事実により告訴されることを承諾していたとしても,誣告罪が成立する。
5 医師が献血者の承諾の下に同人の血管に針を刺して採血した場合でも,同人が献血の対価として得る金で強盗の手段に用いる凶器を購入するつもりであることを医師が知っていたときは,傷害罪が成立する。


【S59-25】 不作為犯に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 勤務先で宿直中,同僚が事務室内の金庫から現金を盗み出しているところを発見したが,後で口止め料をもらう意図の下に気付かぬふりをして何らの措置もとらないまま見逃した場合には,窃盗罪の正犯が成立する。
2 深夜に公園を通行中,泥酔して公園のベンチで寝込んでいる浮浪者を見かけ,放置しておけば厳寒のため凍死すると思いつつ,それでもかまわないと考えて何らの措置もとらないまま立ち去ったところ,同人が翌朝凍死していた場合でも,保護責任者遺棄致死罪は成立しない。
3 民家近くの空地でたき火をし,後始末をしておかないと火勢が強まって同家に燃え移るおそれがあると思いつつ,それでもかまわないと考えて何らの措置もとらないまま立ち去ったところ,同家に火が燃え移って全焼した場合には,現住建造物放火罪が成立する。
4 建築資材置場として土地を賃借中,賃貸借契約が解除され,賃貸人から立退きを強く要求されたのに,これを拒否して建築資材をそのまま放置した場合でも,不動産侵奪罪は成立しない。
5 鉄材を積載したトラックを運転して鉄道踏切を通過中,荷くずれにより鉄材が線路上に落下したことに気付いたのに,鉄道会社から損害賠償を請求されることをおそれるあまり,そのまま走行していった場合には,往来危険罪が成立する。


【S59-26】 次に掲げる行為のうち,括弧内に記載した犯罪が成立するものはどれか。
1 地方公共団体が設置した結婚相談所に経歴・資産・収入・賞罰の各欄に虚偽の記入をした申込書を提出し,同所の係員をして依頼人名簿にそのまま虚偽の記載をさせた。(公正証書原本不実記載罪)
2 民事訴訟の原告として法廷に出頭し,宣誓をしたにもかかわらず,自己の記憶と全く異なる内容の陳述をした。(偽証罪)
3 株式会社の代表取締役が,情婦を居住させるためのマンション購入資金を銀行から借用するに当たり,その株式会社作成名義の借用証を作成した。(私文書偽造罪)
4 通貨を偽造して真正なもののように装って,これを代金として交付し,売買名下に商品の交付を受けた。(詐欺罪)
5 代理人が,本人に示すため,法務局作成に係る供託金受領書の金額欄に虚偽の金額を記入した紙片を当てて電子複写機によりコピーを作成した。(公文書偽造罪)


【S59-27】 横領罪に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 甲が,乙から借用中の事務機器を乙に無断で丙に売却する契約を締結した場合には,いまだ丙に対する引渡しがされていないとしても,横領罪が成立する。
2 甲が,乙所有の未登記建物につき,無断で甲名義に所有権保存の登記をした上,丙に売却して所有権移転の登記をした場合でも,横領罪は成立しない。
3 甲が,個人的な債務の弁済のため,自己が代表取締役をしている会社名義で債権者乙宛の約束手形を振り出し,乙に交付した場合には,横領罪が成立する。
4 甲が,割引の仲介をする意思がないのに,仲介をする旨の嘘を言って乙から手形の交付を受け,これを自己の債務の担保に差し入れた場合でも,横領罪は成立しない。
5 甲が,乙の依頼により公務員丙に賄賂として渡すために預かり保管中の現金を丙に渡すことなく自ら費消した場合には,横領罪が成立する。


【S59-28】 詐欺罪に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 甲が,乙作成名義の不動産売渡証書その他登記の申請に必要な書類を偽造し,これらを行使して登記官を欺き,乙所有の不動産につき乙から甲に対する所有権移転の登記をさせた場合には,詐欺罪が成立する。
2 甲が,100万円で売却してほしい旨依頼され乙から株券を預かり,真実は丙に対して100万円で売却したにもかかわらず,丙と相談の上,80万円でしか売れなかった旨虚偽の報告をして乙を誤信させ,乙に80万円を渡し,残金20万円を甲と丙で分配した場合でも,詐欺罪は成立しない。
3 甲が,自己の氏名以外の文字を全く知らない乙に対して,甲の乙に対する債務を免除する旨記載された書面を手渡し,これが市役所に対する陳情書であると偽り,乙を誤信させて署名・押印させた上,乙からその書面の交付を受けた場合には,詐欺罪が成立する。
4 甲が,窃取した乙名義の銀行預金通帳及び届出印を利用して銀行から預金払戻し名下に現金の交付を受けた場合でも,不可罰的事後行為であるから詐欺罪は成立しない。
5 甲が,友人乙の居住するマンションに赴き,管理人丙に対して,「乙から頼まれてきた」旨嘘を言って誤信させ,乙の居室の鍵を開けさせて室内からテレビを搬出した場合には,詐欺罪が成立する。


【S60-24】 次に掲げる行為中,被害者の告訴を待って処罰すべきものとされているものはどれか。
1 故なく他人の私宅に侵入する行為
2 医師が業務上取り扱ったことにつき知り得た人の秘密を故なく漏らす行為
3 人をして刑事処分を受けさせる目的で捜査機関に虚偽の申告をする行為
4 虚偽の風説を流布して人の信用を毀損する行為
5 同居の親族からその財物を窃取する行為


【S60-25】 正当防衛に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 自己に対する急迫・不正の侵害に対しては,正当防衛は認められるが,他人に対する急迫・不正の侵害に対しては,認められない。
2 客観的に正当防衛の要件が備わっていても,防衛の意思で行為をした場合でなければ,正当防衛とはならない。
3 正当防衛となるためには,その防衛行為が侵害を排除するための唯一の方法であることを要する。
4 急迫・不正の侵害がないにもかかわらず,そのような侵害があるものと誤想して防衛行為を行った場合,正当防衛は成立しないが,刑を減軽又は免除することができる。
5 正当防衛は,社会的名誉に対する侵害に対しては,認められない。


【S60-26】 共犯に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 従犯は正犯に従属するので,従犯の行為が既に終了していても,正犯の実行行為が終了するまでは,公訴時効は進行しない。
2 数人が順次に連絡し合うことによって,共通した犯罪意思を形成する形態の共謀については,共謀共同正犯理論は,適用されない。
3 幇助犯が成立するためには,幇助された正犯において,幇助されていることの認識を有することが必要である。
4 業務上の占有者でない甲が業務上の占有者である乙と共謀して,共同占有に係る他人の物を横領すれば,甲については単純横領罪が成立するとするのが判例である。
5 常習賭博の賭博行為を幇助した場合,幇助者に賭博の常習性がなくても,常習賭博の幇助罪が成立するとするのが判例である。


【S60-27】 公務執行をめぐる犯罪に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 強制執行妨害罪は,罰金刑の執行に関しても適用がある。
2 強制執行妨害罪が成立するためには,当該強制執行が現実に着手されたことを要する。
3 公務員職権濫用罪は,日本国外における行為についても成立する。
4 特別公務員職権濫用罪が成立するときは,逮捕・監禁罪は成立しない。
5 公務員が在職中に職務上不正な行為をし,退職後,その謝礼として金品を受け取っても,在職中その旨の請託を受けた事実がなければ,加重収賄罪はもちろん,単純収賄罪も成立しない。


【S60-28】 有価証券偽造罪等に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 郵便貯金通帳又は無記名定期預金証書を偽造したときは,有価証券偽造罪が成立する。
2 架空人名義の有価証券を作成しても,有価証券偽造罪は成立しない。
3 偽造有価証券行使罪が成立するためには,偽造された有価証券を流通に置くことを必要とし,単にそれを呈示するだけでは,同罪は成立しない。
4 代理権を有しない者が代理名義を用いて文書を作成した場合でも,文書偽造罪は成立する。
5 虚偽の申請をして運輸大臣の管理する自動車登録ファイルの磁気テープに不実の事項を登録させても,公正証書原本不実記載罪は成立しないとするのが判例である。


【S61-24】 刑法の場所的適用範囲に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 日本国の領土上空を飛行中の外国旅客機内の外国人による犯罪には,日本国の刑罰権は及ばない。
2 日本国の領土内であっても,外国大使館の敷地内において行われた犯罪行為には,日本国の刑罰権は及ばない。
3 犯罪行為が日本国内で行われてその結果が日本国外で発生した場合及び犯罪行為が日本国外で行われてその結果が日本国内で発生した場合は,いずれも日本国の刑法が適用される。
4 公務員の国外犯の規定の適用がある場合,これに加功した日本人は,たとえその加功行為が日本国外で行われたとしても,当該犯罪の共犯としての責任を負う。
5 外国において正式に確定判決を受けた行為については,それが有罪であれ,無罪であれ,日本国で再び刑事責任を問われることはない。


【S61-25】 故意の成立に関する次の記述中,判例の趣旨によれば,正しいものはどれか。
1 甲は乙を殺すつもりで,乙をめがけて発砲したところ,弾丸がそれて丙に当たった場合には,乙に対する殺人未遂罪と丙に対する過失致死罪が成立する。
2 甲及び乙が窃盗を共謀し,乙が屋外で見張りをしていた場合において,甲が進んで屋内で強盗を行ったときは,乙も強盗の共犯として責任を免れない。
3 甲及び乙が,丙に対して,虚偽公文書の作成を教唆することを共謀したが,乙が甲に無断で丁を教唆して,同一目的の公文書を偽造させた場合には,甲は公文書偽造教唆の責任を負うべきである。
4 甲及び乙が丙に対して暴力を加えることを共謀し,乙が実行行為を担当したところ,乙の当該暴行により,丙に傷害致死の結果を生じさせたときは,甲は暴行罪の限度で責任を負う。
5 甲及び乙が丙を殺すことを共謀しても,乙が丙と誤認して丁を殺してしまった場合には,甲については丁に対する殺人未遂罪が成立するにとどまる。


【S61-26】 公文書に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 その内容が私法関係のものであっても,公務所又は公務員が職務上作成する文書であれば,公文書偽造罪における公文書といえる。
2 権限のない公務員が,権限のある公務員の名を使って虚偽の文書を作成したときは,公文書偽造罪が成立する。
3 私文書でも公務所で使用する目的で保管するものを破り棄てれば,公用文書毀棄罪が成立する。
4 公文書偽造罪における署名には,代筆又は印刷等による記名は含まれないとするのが判例である。
5 たとえ公文書の内容が真実でも,公務所又は公務員の作成名義を冒用すれば,公文書偽造罪が成立する。


【S61-27】 盗犯に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 後刻,元に戻しておく意思で友人の自転車を短時間無断で借用しても窃盗罪は成立しないが,コピーをとってその内容を他にもらす目的で持ち出しの禁止された秘密資料を持ち出した場合には,そのあと直ちに元の場所へ返還する意思があっても,窃盗罪が成立する。
2 自己所有の不動産については,それが他人の占有に属し,又は公務所の命により他人の看守しているものであっても,住居侵入罪又は不退去罪が成立するのは別として,不動産侵奪罪は成立しない。
3 事後強盗罪における暴行・脅迫の相手方は,窃盗の被害者であることを要しない。
4 強盗が財物奪取の目的を何ら達せず未遂に終わった場合でも,その暴行により相手に傷害の結果を発生させたときには,強盗致傷罪の既遂の責任を負う。
5 強姦を遂げた直後,当該被害者の畏怖に乗じて強盗の犯意を生じ,財物を奪取したときは,強盗強姦罪が成立するのではなく,強姦と強盗の2罪が成立する。


【S61-28】 次の記述中,誤っているものはどれか。
1 未遂罪は,未遂を罰する旨の明文の規定がある場合にのみ成立する。
2 法定刑が罰金刑のみの罪についても,その教唆・幇助は処罰される。
3 犯罪行為を組成した物件は,どのような軽微な罪についても,没収が可能である。
4 殺人予備罪の成立には,殺人の実行行為に着手したことを要しない。
5 罰金刑の前科であっても,法定刑に選択刑として懲役の定めがある罪の前科である場合は,累犯加重の対象となる。


【S62-24】 共犯に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 13歳の児童に指示して他人の財物を盗み出させたときは,当該児童に対し暴行,脅迫等その意思を抑圧する手段を用いたと否とを問わず,間接正犯による窃盗罪が成立する。
2 犯意のない他人を教唆して殺人の決意をさせるに至ったときは,同人がその実行に着手していなくても,殺人教唆罪が成立する。
3 未遂及び過失はそれぞれ特別の明文規定がある場合にのみ処罰の対象とされるが,教唆及び幇助は,あらゆる犯罪について処罰の対象となる。
4 公務員でない者が公務員と共謀して賄賂を収受しても,収賄罪の共同正犯にはなり得ない。
5 詐欺罪を犯した者が自ら行方をくらませても犯人隠避罪は成立しないが,他人を教唆して自己をかくまわせたときは,犯人隠避罪の教唆犯が成立する。


【S62-25】 緊急避難に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 業務上特別の義務がある者については,緊急避難の法理は適用されない。
2 緊急避難は自己の法益に対する現在の危難があることが要件であって,正当防衛と異なり,他人の法益に対する現在の危難がある場合には認められない。
3 正当防衛も緊急避難も,その行為から生じた損害が防衛しようとした権利又は避けようとした危害の程度を超えないことがその成立要件となる点では同じである。
4 正当防衛が成立するときはその行為はそもそも罪とならないが,緊急避難が成立してもその行為は刑が減軽又は免除されるにとどまる。
5 緊急避難は生命,身体又は自由に対する現在の危難があることが要件であって,財産権に対する現在の危難がある場合には認められない。


【S62-26】 自首に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 罪を犯しても進んで捜査機関に自首した者については,刑が免除されることはないが,必ず刑が減軽される。
2 捜査機関が事件の発生を知った後でも,犯人を何ら特定し得ないでいる段階で進んで自己の犯行である旨を申告すれば,自首に当たる。
3 親告罪については,捜査機関に申告しなくても,告訴権を有する者に自己の犯罪事実を申し出れば,自首したと同じ法的効果が発生する。
4 自首は,必ずしも罪を犯した者本人がする必要はなく,他人を介して捜査機関に自己の犯罪事実を申告してもよい。
5 自首は,未遂罪及び予備罪についても適用がある。


【S62-27】 公務の執行を妨害する罪に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 我が国と国交を有する国の外交官が我が国内でその職務を遂行中,それと知りつつ当該外交官に暴行又は脅迫を加えても,公務執行妨害罪は成立しない。
2 公務執行妨害罪における公務員の職務は,必ずしも適法なものでなくともよい。
3 強制執行を免れることを目的として財産の所有関係を不明にしても,その財産の所在が明らかであれば,強制執行妨害罪は成立しない。
4 地方公共団体が行う指名競争入札に関し,自己の経営する会社に落札させるため,他の指名業者に談合を持ちかけ,これに応じなかった者に対し,上記談合に応ずるよう脅迫して要求したというだけでは,競売入札妨害罪は成立しない。
5 特定の者を落札者とするため,他の者は一定の価格以下に入札しないことを協力する行為に加わったとしても,自ら入札の希望を有しない者については,談合罪は成立しない。


【S62-28】 放火罪に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 一棟の建物の各専有部分は,それぞれ1個の建造物であると評価されるから,現住建造物放火罪の成否は,その専有部分ごとに判断されなければならない。
2 自己の所有に係る建造物に対する放火行為は,その建造物が差押えを受け,物権を負担し又はその建造物を賃貸し若しくは保険に付している場合を除き,現に人の住居に使用し,又は人の現在しているものであるときに限り,処罰される。
3 建造物,汽車,電車,艦船又は鉱坑以外の物であって,自己の所有に係るものに対する放火行為は,建造物,汽車,電車,艦船又は鉱坑への延焼の結果を生じたときに限り処罰される。
4 建造物,汽車,電車,艦船又は鉱坑以外の物に対する放火罪が成立するためには,公共の危険の発生及びその認識が必要である。
5 放火行為により火勢が放火の媒介物を離れて目的物が独立して燃焼する程度に達すれば,目的物の主要部分が毀損されたり,その効用が喪失するに至らなくても,放火罪は,既遂となる。


【S63-24】 罪刑法定主義に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 故意も過失もない行為を処罰することは,罪刑法定主義に反する。
2 長期も短期も定めずに言い渡される不定期刑も,法律の定めがあれば,罪刑法定主義に反しない。
3 既に無罪とされた行為について重ねて刑事上の責任を問わないのは,罪刑法定主義の要請である。
4 刑罰法規を類推解釈することはもちろん,その明文の意味を縮小して解釈することも,罪刑法定主義に反する。
5 法律の改正により罰則を廃止するに際して,廃止前の行為については廃止後も処罰する旨を定めることは,罪刑法定主義に反しない。


【S63-25】 刑の減免に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 過剰防衛については,防衛者の責任が軽度である場合が多いため,情状により,刑を減軽又は免除することができるものとされている。
2 心神耗弱者は,是非善悪を弁別する能力はあっても,その弁別に従って行動する能力がないため,その行為については刑を減軽するものとされている。
3 罪を犯した者が自首した場合,犯罪事実が既に発覚していても犯人がだれであるか発覚する前であれば,刑を減軽することができるものとされている。
4 中止未遂については,実害の発生をできるだけ防止しようとの政策的理由から,必ず刑を減軽又は免除するものとされている。
5 幇助犯の刑は,正犯の刑に照らして減軽するものとされているが,これは,正犯に適用されるべき法定刑を減軽した処断刑の範囲内で処罰されるという趣旨である。


【S63-26】 甲が,次に掲げる登記の申請をして,不動産の登記簿にその旨の記載をさせた場合,公正証書原本不実記載罪が成立しないものはどれか。
1 甲は,A土地の所有権の登記名義人乙の権利に関する登記済証その他の登記関係書類を盗み出し,これを利用してその土地の所有権を自己に移転する旨の登記を申請した。
2 甲は,自己所有の建物に対する強制執行を免れるため,乙と通謀して,その建物を乙に売り渡したように仮装し,その旨の登記を申請した。
3 甲は,自己所有の土地を乙に売り渡したが,登記が未了であることを奇貨として,自己の丙に対する債務を担保するためにその土地に抵当権を設定し,その旨の登記を申請した。
4 甲は,乙所有の建物が未登記であることを奇貨として,その建物につき自己を所有者とする表示登記及び所有権保存登記を申請した。
5 甲は,乙からその所有の土地について抵当権設定登記申請手続をすることを委任されたところ,勝手にその土地を情を知った丙に売り渡し,その旨の登記を申請した。


【S63-27】 次に掲げる場合のうち,詐欺罪が成立するものはどれか。
1 料金を踏み倒すつもりでタクシーに乗り,目的地に着いたところで運転手の隙をみて逃げ出した場合
2 他人から借りたカメラを自分のものにするため,持ち主に対してそのカメラが盗まれたと嘘をついて,これを返さなかった場合
3 買物をした際店員から受け取った釣銭が多いことに帰宅後気が付いたが,そのまま返さずに自己の用途に消費した場合
4 磁石を用いて,パチンコの外れ玉を当たり穴に誘導し,これにより勝ち玉を落下させてパチンコ玉を取得した場合
5 入場券を買わずに,多数の観客に紛れて映画館に入場し,映画を鑑賞した場合


【S63-28】 A欄に掲げる行為がB欄に掲げる罪を構成しないものは,次のうちどれか。
          A 欄                  B 欄
1 市役所の課税台帳を閲覧中,その中の1枚を抜き取り,  公用文書毀棄罪
  閲覧室内のくずかごに丸めて投げ棄てた。
2 友人方を訪れた際,同人に差し入れた自己名義の借用証  私用文書毀棄罪
  書を欲しいままに破り棄てた。
3 他人の飼育している小鳥をわざと逃がした。       器物損壊罪
4 他人の家の竹垣を切り倒した。             建造物損壊罪
5 自己の所有地とこれに隣接する他人の所有地との境界に, 境界毀損罪
  自らの費用で埋設しておいた境界標を引き抜いて,境界
  を不明にした。


【H01-24】 次の記述中,刑法上の没収の対象にならないものはどれか。
1 殺人事件に使用されたけん銃の弾倉及びサック
2 強制執行を免れるために通謀して仮装譲渡した自家用車
3 正当な権原なく他人の土地を占拠して建築した物置小屋
4 賭博で得た金銭を自己の銀行口座に預金して得た預金利子
5 違法な堕胎手術に対する報酬として得た金銭


【H01-25】 過失に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 過失行為は,法律に過失行為を処罰する規定がある場合のほかは,処罰されない。
2 認識ある過失と未必の故意とは,行為者が行為による結果の実現を認容していたか否かによって区別されるとする説がある。
3 重過失とは,行為者に通常人より重い注意義務が課され,このような重い注意義務に違反することをいう。
4 信頼の原則とは,過失の有無の判断上,交通秩序に従って交通に関与する者は,特別な事情がない限り,他の交通関与者も交通法規その他の交通秩序を守って行動することを信頼してよいとする考え方である。
5 酒に酔った状態で自動車を運転中,運転を誤って人に傷害を負わせた場合,道路交通法違反(酒酔い運転の罪)と業務上過失傷害の罪とは,併合罪の関係にある。


【H01-26】 未遂に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 放火の目的で他人の住居に侵入した場合,放火の未遂になる。
2 電気配線を直結する方法によってエンジンを始動させ,他人の自動車を窃取しようとしたが,たまたまその自動車の電池が切れていたためにエンジンを始動させることができなかった場合,窃盗の未遂にならない。
3 すりの目的で電車の乗客のポケットに手指を入れたが,財物がなかった場合,窃盗の未遂にならない。
4 殺人の目的で炊飯釜の中に青酸カリを入れた結果,炊いた米飯が黄色を呈し,臭気を放って人が食べるおそれが少ない場合,殺人未遂にならない。
5 強盗の目的で,甲方に侵入し,女性一人だけだと思って脅迫を加えたところ,隣室にその夫がいる事実を知って,その後の犯行を断念した場合,強盗の中止未遂にならない。


【H01-27】 犯罪の成否に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 法律上所持の禁止されている麻薬を窃取した行為は,窃盗罪を構成する。
2 所管庁の許可を得ないで違法に設置された電話線を引き抜いた行為は,器物損壊罪を構成する。
3 甲に売却して代金を全額受領している自己名義の土地につき,乙に対し抵当権を設定しその旨の登記を経由した行為,及び,更に丙に対し所有権移転登記をした行為は,それぞれ別個の横領罪を構成する。
4 窃取してきた他人の自転車を窃盗犯人が損壊した行為は,器物損壊罪を構成しない。
5 真実婚姻をする意思のない男女が婚姻届を提出して,市町村長をして戸籍の原本にその旨を記載させた行為は,公正証書原本不実記載罪を構成する。


【H01-28】 次の各行為中,末尾の括弧内の犯罪が構成されないものはどれか。
1 抵当権が設定された家屋の所有者が,同家屋の壁や窓ガラスの全面に多数の新聞紙を強固に糊づけした行為。(建造物損壊罪)
2 自宅に友人5名を招待し,わいせつビデオを上映した行為。(公然わいせつ罪)
3 11歳の少女の事実上の承諾を得て,同女を姦淫した行為。(強姦罪)
4 郵便貯金通帳を窃取した犯人からその事情を知らずに貯金の払戻しを頼まれた者が,払戻しを受けた金銭を保管中,返済のめどもないのに無断でこれを費消した行為。(横領罪)
5 会社が多額の費用を出して研究開発をしたコンピュータシステムに関する機密資料を,研究開発に従事した技術者が,複写して他社に売却するために会社に無断で社外に持ち出し,複写をした後,元の場所に戻した行為。(業務上横領罪)


【H02-24】 次の行為中,窃盗罪を構成するものはいくつあるか。
ア 友人から留守番を一時頼まれた者が,その友人宅の金品を勝手に持ち出す行為
イ 電車の車掌が,走行中の車内を点検中,下車した乗客が置き忘れたカメラを見つけ,息子に与える目的のために自宅に持ち帰る行為
ウ 口止め料を出さなければ,秘密を暴露すると脅迫した者が,その相手が畏怖して黙認しているのに乗じて傍らに置かれてあった札束を持ち去る行為
エ 衣料品店で客を装って洋服を試着したまま,トイレに行くと偽って逃げる行為
オ 校長に恨みを抱いていた教師が,紛失の責任を校長に負わせるために,学校の金庫から重要書類を持ち出し校舎の天井裏に隠す行為
1 1個   2 2個   3 3個   4 4個   5 5個


【H02-25】 共犯に関する次の記述中,正しいものはどれか。
1 傷害の意思で共謀した共犯者の一人が,殺意をもって被害者を殺害した場合には,殺意のなかった共犯者にも殺人罪の共同正犯が成立する。
2 人を殺害することを教唆したところ,被教唆者が殺人の実行行為に出たものの,その目的を遂げなかったときには,教唆者には殺人未遂の教唆犯が成立する。
3 博徒の親分が賭博場を開帳した際に,これを知った子分が顧客を誘って賭博を行わせた場合でも,親分がそのことを知らないときは,子分について賭博開帳図利罪の幇助犯が成立することはない。
4 女性が,男性と共謀し,他の女性を強姦する際に,暴行・脅迫を加えた場合であっても,女性に強姦罪の共同正犯が成立することはなく,その幇助犯が成立する。
5 医師が,看護婦に指示して患者に毒薬を投与して,患者を殺害した場合には,看護婦が毒薬であることを知らなくても,医師については,殺人罪の教唆犯が成立する。


【H02-26】 私文書偽造罪に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 刑法は,私文書を偽造しても,行使される見込みがなければ,いまだ公共的信用を害する危険は少なく,処罰に値する違法性もないことから行使の目的がないときは,処罰しないものとしている。
2 刑法は,作成権限を有しない者が他人の名義を冒用して私文書を作成することを偽造とし,真正に作成された他人名義の私文書の非本質的部分に変更を加え新たな証明力を作り出すことを変造として,両者を区別している。
3 刑法は,権利義務及び事実証明に関する私文書の重要性にかんがみ,その偽造を重く処罰し,その他の私文書の偽造を軽く処罰することにしている。
4 刑法は,署名・印章のない私文書は,それのある私文書に比べ公の信用度が低いことから,前者の偽造については,後者の偽造よりも法定刑を軽くしている。
5 刑法は,私文書偽造罪については,日本国外でこれを犯した日本国民に適用するものとし,いわゆる属人主義の考えをとっている。


【H02-27】 次の場合中,末尾の括弧内の不作為による犯罪が成立しないものはどれか。
1 河畔で分娩した母親が,嬰児を直ちに付近の砂中に埋めて窒息死させた後,死体をその場所に放置してそこから逃走した場合。(死体遺棄罪)
2 事務所の火気責任者が,自己の過失により火を出したが,容易に消火することができたにもかかわらず,自己の失敗の発覚をおそれるあまり,延焼の危険を知りながらこれを放置し立ち去ったので,当該事務所を全焼した場合。(放火罪)
3 土地に抵当権を設定し,登記をしているにもかかわらず,そのことを買主に告げないで,その土地を売った場合。(詐欺罪)
4 母親が,死んでも構わないと思って,生後9日目の幼児にあえて授乳せず,餓死させた場合。(殺人罪)
5 近所の子供がけんかをしているところを見つけ,このままでは一方が殴られて傷害を負わせるだろうと思ったが,かかわりあいになるのを嫌い,それを制止せず立ち去ったために,子供が傷害を負った場合。(傷害罪)


【H02-28】 次の記述中,誤っているものはどれか。
1 日本国民が国外犯の適用のある犯罪を犯し,行為地の裁判所で確定裁判を受ければ,国内で重ねて処罰することはできない。
2 飲酒酩酊中に,記憶がなくなったというだけでは,責任能力がないとはいえない。
3 観念的競合とは,1個の行為にして数個の罪名に触れる場合をいうのであるが,例えば職務執行中の警察官に対し,暴行を加えて傷害を負わせたときは,公務執行妨害罪と傷害罪の観念的競合となる。
4 正当防衛とは,不正な利益侵害に対しこれを排除する行為をいい,緊急避難とは,利益に対する危難からこれを保護するために,他の正当な利益を侵害する行為をいう。
5 懲役刑の執行を猶予されて保護観察に付された者が,その保護観察期間中に犯した詐欺罪については,再び執行猶予にすることはできない。


【H03-24】 次の事例中,贓物罪が成立する場合はいくつあるか。
ア 父親から盗んできた物であることを知りながら,これを質受けした場合
イ 他人から宝石を預かっている者と共謀し,当該宝石を処分することとし,自己においてこれを買い取った場合
ウ 密輸品であるとの情を知りながら,これを買い取った場合
エ 友人から窃盗の意思を打ち明けられ,盗品を買い取る約束をした場合
オ 被害者に返還する目的で,盗品と知りながらこれを買い取った場合
1 1個   2 2個   3 3個   4 4個   5 5個


【H03-25】 犯罪の成否に関する次の記述中,判例の趣旨に照らし正しいものはいくつあるか。
ア 犯人が他人を教唆して,自己の刑事被告事件に関する証拠を隠滅させた場合,証拠隠滅罪の教唆犯が成立する。
イ 外国に輸出する目的で,わいせつ物を所持しても,わいせつ物販売目的所持罪は成立しない。
ウ 申告内容が虚偽であることを知りながら,誣告をしても,申告内容が客観的真実に合致していれば,誣告罪は成立しない。
エ 公務執行妨害罪における暴行は,直接公務員に向けられることを要しない。
オ 証人が自己の記憶に反する証言をした場合,証言内容から客観的真実に合致していても,偽証罪は成立する。
1 1個   2 2個   3 3個   4 4個   5 5個


【H03-26】 各種偽造罪における行使に関する次の記述中,誤っているものはどれか。
1 偽造通貨を自動販売機に投入する行為は,偽造通貨行使罪における行使に当たる。
2 偽造通貨を偽造であると知っている者に交付する行為は,偽造通貨行使罪における行使に当たらない。
3 偽造有価証券の保管を依頼して,情を知らない者にこれを交付する行為は,偽造有価証券行使罪における行使に当たる。
4 偽造私文書について,確定日付を受けるために公証人に提示した行為は,偽造私文書行使罪の行使に当たる。
5 約束手形の所持人がその手形が偽造されたものであることを知っていても,裏書人に対する権利行使のため手形を呈示した行為は,偽造有価証券行使罪における行使に当たらない。


【H03-27】 窃盗未遂罪が成立する場合に関する次の記述について判例の趣旨に照らし,その正誤を正しく指摘しているものは,後記1から5までのうちどれか。
ア 盗みの目的で,他人の家の玄関の鍵を壊して屋内に侵入した場合
イ 他人の家から自転車を盗み出して路上に出たが,家人に発見され,自転車を放置して逃げた場合
ウ 他人のズボンのポケットに現金があることを確認した後,この現金をすり取ろうとして,そのポケットの外側に手を触れた場合
エ 宝石店から宝石を窃盗する目的でショーウィンドーの中に手を入れて指輪をつかんで取り出そうとしたが,店員が来る気配を察してショーウィンドーの中に指輪を落として手を引っ込めた場合
オ 盗みの目的で他人の家に侵入した上,手提金庫を発見し,これに近づいた場合
1 ア 正  イ 誤  ウ 誤  エ 正  オ 誤
2 ア 誤  イ 誤  ウ 正  エ 正  オ 誤
3 ア 誤  イ 誤  ウ 正  エ 正  オ 正
4 ア 誤  イ 正  ウ 正  エ 誤  オ 正
5 ア 正  イ 正  ウ 誤  エ 誤  オ 正


【H03-28】 罪数に関する次の記述中,判例の趣旨に照らし誤っているものはいくつあるか。
ア 公務員が職務の執行をするに当たり,その公務員を殴打して職務の執行を妨げると同時に,公務員に傷害を与えた場合,傷害罪と公務執行妨害罪の牽連犯となる。
イ 贓物と知りながらこれを賄賂として受け取った場合,贓物収受罪と収賄罪の併合罪となる。
ウ 日本刀を窃取した後所持している場合,窃盗罪と銃砲刀剣類所持等取締法違反の罪の観念的競合となる。
エ 保険金取得の目的で放火の後,保険金を騙取した場合,放火罪と詐欺罪の牽連犯となる。
オ 手形用紙を横領し,手形を偽造した場合,横領罪と有価証券偽造罪の牽連犯となる。
1 1個   2 2個   3 3個   4 4個   5 5個


【H04-24】 犯罪の成否に関する次の記述中,判例の趣旨に照らし,正しいものはどれか。
1 わいせつ文書を有償で貸与した場合には,わいせつ文書等頒布罪が成立する余地はない。
2 不特定多数の者からの通話に応じて,録音したわいせつな音声を提供した場合には,わいせつ物陳列罪が成立する余地はない。
3 頒布した文書が外国語で書かれている場合には,わいせつ文書等頒布罪が成立する余地はない。
4 勝敗を全面的に支配することのできる者が存在するいわゆる詐欺賭博においては,その者について詐欺罪のみが成立し,その者及び事情を知らない他の者について賭博罪の成立する余地はない。
5 賭博に当たる行為に関し,財物の得喪を約束する行為があっても,現実に財物を提供しなければ,賭博罪が成立する余地はない。


【H04-25】 刑法の場所的適用範囲に関する次の記述中,誤っているものの組合せは,1から5までのうちどれか。
ア 外国人が日本国外にある日本の航空機内で犯罪を犯した場合,日本の刑法が適用される。
イ 共犯者については,実行正犯の行為地が共犯者の犯罪地となる。
ウ 日本国外から毒薬を郵送し,国内でこれを服用した者が国外で死亡した場合,日本の刑法が適用される。
エ 日本国外で有価証券偽造又は通貨偽造についての犯罪を犯した場合,日本の刑法は犯人が日本人であるときのみ適用があるが,日本国外において日本人に対する殺人又は略取誘拐の罪を犯した場合には,犯人が何人であっても日本国刑法が適用される。
オ 日本国の公務員が外国で賄賂を収受した場合には,日本国内で教唆した者は賄賂罪の共犯者として処罰されることはない。
1 アウ   2 イエ   3 イオ   4 ウエ   5 エオ


【H04-26】 正当防衛及び緊急避難に関する次の記述のうち,誤っているものの組合せは,後記の1から5までのうちどれか。
ア 正当防衛は不正な侵害に対する反撃であるから,侵害者以外の者に対する正当防衛はあり得ない。
イ 正当防衛は急迫な侵害に対する反撃であるから,不作為による侵害に対する正当防衛の成立する余地はない。
ウ 緊急避難は,侵害者以外の第三者の法益を侵害するものだから,補充の原則及び均衡の原則が要求される。
エ 過剰防衛は正当防衛の要件を満たさないため,違法性は阻却されないが,情状により刑を減軽又は免除することができる。
オ 誤想防衛は正当防衛の要件を満たさないため,違法性は阻却されないが,必ず刑が減軽される。
1 アウ   2 イエ   3 イオ   4 ウエ   5 エオ


【H04-27】 詐欺罪と横領罪に関する次の記述中,判例の趣旨に照らし,正しいものの組合せは,1から5までのうちどれか。
ア 財物の強盗罪が成立する場合には,詐欺罪は成立しない。
イ 自己名義の所有権の登記がある他人所有の不動産について,所有者に無断で抵当権を設定した場合は,横領罪が成立するが,その後に当該不動産を第三者に売却しても,この行為については横領罪は成立しない。
ウ 既にAに売却し,代金全額の受領がされている不動産につき,売主がその事情を秘して,更にBに売り渡し,その旨の登記を経由した場合においては,Bが契約の時点で,既にAに売却されていることを知っていれば,売主とともにBにつき横領罪が成立する。
エ 他人を欺いて,自己以外の第三者に財物を交付させた場合には,詐欺罪が成立する余地はない。
1 アイ   2 アウ   3 イウ   4 イエ   5 ウエ


【H04-28】 共犯に関する次の記述中,判例の趣旨に照らし,誤っているものはどれか。
1 女子も強姦罪の共同正犯になり得る。
2 AがBを教唆し,Aの父を殺害させた場合,Bに尊属殺人罪が成立する。
3 公務員でない者も,収賄罪の共同正犯になり得る。
4 賭博の非常習者が賭博常習者の賭博行為を幇助した場合,賭博罪の従犯になる。
5 共犯者の一人が自首した場合でも,それにより他の共犯者について刑を減軽することはできない。


【H05-23】 被害者の承諾と犯罪の成否に関する次の記述中,判例の趣旨に照らし,正しいものの組合せは後記1から5までのうちどれか。
ア 横領罪は,個人の財産を保護法益とするものであるから,被害者の承諾があれば,常に犯罪は成立しない。
イ 誣告罪は,個人の法的安定性を主要な保護法益とするものであるから,被害者の承諾があれば,常に犯罪は成立しない。
ウ 傷害罪は,個人の身体の自由を保護法益とするものであるから,被害者の承諾があれば,常に犯罪は成立しない。
エ 放火罪は,個人の財産を主要な保護法益とするものであるから,被害者の承諾があれば,常に犯罪は成立しない。
オ 住居侵入罪は,個人の住居の平穏を保護法益とするものであるから,被害者の承諾があれば,常に犯罪は成立しない。
1 アウ   2 アオ   3 イウ   4 ウオ   5 エオ


【H05-24】 次の記述中,判例の趣旨に照らし,Bに末尾かっこ内の罪について,Aとの共同正犯が成立するものはどれか。
1 Aは,金品を強取する意思で,Cを縄で縛り上げたが,人の足音が近づいてくるのが聞こえたので,Cをその場に放置して何も取らずに逃走した。そこへたまたま通りかかったBは,Cが縄で縛られているのを見て,その懐中から金品を奪い取った。(強盗罪)
2 Aは,返済の意思も能力もないのに,Cに対して,嘘を言って借金を申し込んだが,CはAの嘘を真実と錯誤して,Aに金員を貸す約束をした。CがAに欺罔されていることを知らないBは,Aからこの借入金の受取方を依頼され,Aの妻だと詐称して,Cから金員を受領した。(詐欺罪)
3 Aは,ささいなことからCと口論になり,路上でCと殴り合いのけんかを始めた。近くでこれを見物していたBは,自己の顔面をCが誤って殴りつけたため,これに腹を立て,Cの腹部を足蹴りにして,同人に傷害を負わせた。(傷害罪)
4 Aは,Cの名誉を毀損する事実を文章にしてY新聞社に投稿した。Y新聞社の編集人Bは,Aの投稿文がCの名誉を毀損することになることを認識しながら,日刊Y新聞紙上に掲載した。(名誉毀損罪)
5 Bは,友人Aと同行中,Aがたまたま通りかかった公園のベンチで眠っているCの上着のポケットから財布を抜き取ろうとしているのを認めながら,Aの行為を制止せず終始傍観していた。(窃盗罪)


【H05-25】 次の記述中,末尾かっこ内の両方の罪が成立するものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア その公務の執行を妨害する意図で,公務執行中の公務員を監禁した。(監禁・公務執行妨害)
イ 母親が,殺意をもって自己の子供を殺し,死体をそのまま犯行現場に放置して立ち去った。(殺人・死体遺棄)
ウ 他人の住宅を焼損する目的で,これに隣接する人のいない納屋に放火し,住宅に延焼させようとしたところ,納屋を焼損しただけで住宅に延焼するに至らなかった。(現住建造物放火未遂・非現住建造物放火既遂)
エ 同一家屋内の一室で,まず金品を窃取し,引き続いてその隣室にいた家人に暴行脅迫を加えてその反抗を抑圧し,金品を強取した。(窃盗・強盗)
オ 預かった財物を横領するため,その財物を自己に預けた人に嘘をついて返還を免れ,これを領得した。(横領・詐欺)
1 アイ   2 アオ   3 イウ   4 ウエ   5 エオ


【H05-26】 Aの罪責についての次の記述中,判例の趣旨に照らし,正しいものはどれか。
1 電車内で乗客Bから財布をすり取ったAは,直ちにその電車を降りようとしたが,Bに呼び止められその場で逮捕されそうになったため,これを免れようとして,その顔面を殴りつけて傷害を負わせた。この場合,Aは窃盗犯人であるから,強盗致傷罪は成立しない。
2 現金を運搬する銀行員Bを路上で待ち伏せ,これを殺害して現金を強取する目的で,AはBに対してけん銃を発射したところ,弾丸がBの身体を貫通して,更にその傍らを歩いていた通行人Cに命中し,B・C両名を死亡させた。この場合,AはCを殺害する意思がなかったのであるから,Cに対する強盗殺人罪は成立しない。
3 Aは,覆面をして,友人Bを路上で待ち伏せ,殴る蹴るの暴行を加えてBの財布を強取したが,Bが自己の犯行であることを察知したのではないかと心配になり,犯行の翌日,Bを自宅に誘い出して,これを殺害した。この場合,犯行の発覚を防ぐための新たな決意に基づくものであるから,強盗殺人罪は成立しない。
4 Aは,B宅に侵入し,Bをナイフで脅迫して,金品を強取しようとしたが,Bに騒がれたため何も取らずに逃げようとしたところ,Bに足をつかまれたため,殺意をもって,所携のナイフでBの胸部を突き刺してこれを殺害した。この場合,Aの金品強取行為は未遂に終わっているので,強盗殺人罪は成立しない。
5 Aは,Bの財布を強取する目的で,Bに短刀を突きつけ脅迫したが,Bが抵抗したためもみ合いになり,たまたまBがAの持つ短刀を両手で握ったため,Bは傷害を負った。この場合,Bの受傷はAの暴行によるものではないから,強盗致傷罪は成立しない。


【H06-23】 次の記述にある行為のうち,判例の趣旨に照らし,末尾括弧内の犯罪が成立するものはいくつあるか。
ア 犯人の親族が,その犯人に係る刑事事件の証憑を湮滅した。(証拠湮滅罪)
イ 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者であることを知りながら,その犯罪が警察等の捜査機関に発覚しない段階で,捜査機関の発見・逮捕を免れさせるため,その者をかくまった。(犯人蔵匿罪)
ウ 罰金以上の刑に当たる罪の真犯人が既に逮捕・勾留されている段階で,その者の身代わりとなる目的で警察に出頭して自分が真犯人である旨申し述べた。(犯人隠避罪)
エ 他人の刑事事件の目撃者を,捜査段階で隠匿した。(証拠隠滅罪)
オ 罰金以上の刑に当たる罪の犯人として指名手配されている者を蔵匿したが,その者は真犯人でなかった。(犯人蔵匿罪)
1 1個   2 2個   3 3個   4 4個   5 5個


【H06-24】 執行猶予の判決について述べた次の記述中,法律上許されないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 前科のない者に対し,懲役2年及び罰金50万円に処し,その双方につき執行を猶予する旨言い渡すこと
イ 仮出獄を許されてそのまま刑期を満了し,その後罪を犯した者に対し,刑期満了の日から4年目に,その新たな罪につき,保護観察に付する執行猶予付き懲役刑を言い渡すこと
ウ 禁錮刑の執行猶予期間中に新たな罪を犯した者に対し,執行猶予期間が経過しない時点で,その新たな罪につき,保護観察に付さない執行猶予付き懲役刑を言い渡すこと
エ 併合罪関係に立つAB2個の犯罪を順次犯した後,B罪のみが発覚して執行猶予付き懲役刑の言渡しを受けた者に対し,その裁判確定後発覚したA罪につき,B罪の執行猶予期間が経過しない時点で,保護観察に付さない執行猶予付き懲役刑を言い渡すこと
オ 懲役刑の執行猶予期間中に新たな罪を犯した者に対し,執行猶予期間経過後に,その新たな罪につき,保護観察に付する執行猶予付き懲役刑を言い渡すこと
1 アオ   2 イウ   3 イエ   4 ウエ   5 エオ


【H06-25】 次の記述中,判例の趣旨に照らし,Aが末尾括弧内の罪の刑で処断されるものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア ABは,甲方に盗みに入ることを共謀した。Aには窃盗の意図しかなかったが,Bは最初から強盗行為に及ぶつもりであり,そのことはAには秘していた。犯行に際し,Bが屋内に侵入して甲にナイフをつきつけ金員を強取したが,Aは,甲方の玄関先で見張りをしていて,Bの行為を認識していなかった。その後,手に入れた金員を二人で分配した。(強盗)
イ ABは,共謀して,Bのみが業務上占有する金員を両名で着服消費した。(業務上横領)
ウ Aは,甲を殺害する意思を持っていたBから,その真意を打ち明けられて甲殺害のための毒薬の入手方を依頼され,これに応じて毒薬をBに手交したが,Bは,その後,甲の殺害を思いとどまり,その毒薬を廃棄した。(殺人予備)
エ ABCDは,いずれも甲に対して恨みを持っていたが,BCD3名は,甲に対する殺意までは抱いていなかった。甲の殺害を願っていたAは,Bに対して甲を殺害するようにそそのかしたが,これを受けたBは自ら実行せず,Cに対して,甲の殺害をそそのかした。しかし,Cも,Bと同様,自ら実行せずに,Dに対して甲の殺害をそそのかした結果,Dがその決意をして甲を殺害した。(殺人教唆)
オ ABは,甲に対して暴行を加えることを事前に共謀し,両名で甲の部屋に赴き,かねて謀議のとおり,甲が逃走できないようにAが部屋の出入口をふさぎ,Bが甲の顔面を殴打したところ,甲は脳内出血を起こして死亡した。(傷害致死)
1 アイウ  2 アウエ  3 イウオ  4 イエオ  5 ウエオ


【H06-26】 次の記述中のAの行為に関し,公務執行妨害罪が成立するか否かについて末尾括弧内の指摘が,判例の趣旨に照らし,誤っているものはいくつあるか。
ア 警察官が,現行犯人から適法に押収した証拠物を逮捕現場で整理している最中,犯人の友人Aが,その証拠品を踏みつけて損壊した。(不成立)
イ 警察官が,客観的に見て現行犯人と認めるに十分な理由がある挙動不審者を現行犯人として逮捕している最中,被逮捕者の友人Aが,当該警察官の顔面を殴打したところ,被逮捕者は,その後の裁判において,現行犯として逮捕された罪につき,犯人でなかったとして無罪判決を受け確定した。(成立)
ウ Aは,職務執行中の警察官に向かって投石したが,石は警察官の顔面の直近をかすめたのみで命中しなかった。(不成立)
エ 執行官が,その職務の執行として差押物を家屋から運び出すにつき,補助者として公務員でない者を指揮して運搬に当たらせていた際,差押物の所有者Aは,その補助者の顔面を殴打した。(不成立)
オ Aは,職務執行中の警察官の耳元で空き缶を数回激しくたたいて大きな音を出した。(成立)
1 1個   2 2個   3 3個   4 4個   5 5個


【H07-23】 次の記述のうち,「教唆犯が成立するためには,正犯の行為が構成要件に該当し,かつ,違法・有責であることを要する。」との説の帰結としての説明として正しいものはどれか。
1 心神耗弱者が殺人を犯したが,正当防衛に当たる場合,その殺人をそそのかした者につき,殺人教唆罪の成立を認めることになる。
2 医師が病気の子供の開腹手術を行った場合,これを依頼した親について,傷害教唆罪の成立を認めることになる。
3 是非弁別能力が十分に認められる13歳の子供が盗みをした場合,これをそそのかした者につき,窃盗教唆罪の成立を認めないことになる。
4 心神耗弱者が盗みをした場合,これをそそのかした者につき,窃盗教唆罪の成立を認めないことになる。
5 刑事責任能力のある者が実父の金員を盗んだ場合,これをそそのかした者について,窃盗教唆罪の成立を認めないことになる。


【H07-24】 窃盗罪に関する次の記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 他人に窃盗を教唆し,その結果窃盗を実行した者から窃取した財物を買い受けた場合には,窃盗教唆罪だけが成立し,財物を買い受ける行為は贓物故買罪(盗品等有償譲受け罪)を構成しない。
イ 他人から金員を窃取した上,その金員を公務員に対し賄賂として供与した場合には,窃盗罪のほかに贈賄罪が成立する。
ウ 郵便貯金通帳を窃取した上,これを利用して通帳の名義人になりすまし,郵便局員を欺いて貯金払戻し名下に金員を受け取った場合には,窃盗罪のほかに詐欺罪が成立する。
エ 他人から財物を窃取した上,これを自己の所有物であると偽り,担保に供して第三者から金員を借り受けた場合には,窃盗罪だけが成立し,金員を借り受けた行為は詐欺罪を構成しない。
オ 他人に窃盗を教唆し,その結果窃盗を実行した者を欺いて,その窃取した財物を交付させた場合には,窃盗教唆罪のほかに詐欺罪が成立する。
1 アイ   2 アエ   3 イオ   4 ウエ   5 ウオ


【H07-25】 次の事例のうち,判例の趣旨に照らし,Aにつき横領罪が成立する余地のないものはどれか。
1 Aは,自己所有の建物につき,Bに対して根抵当権を設定したが,その旨の登記をしないうちに,その建物につき,Cに対して根抵当権を設定し,その旨の登記をした。
2 Aは,Bからその所有建物を買い受けて所有権移転登記をした後,売買契約を解除されたが,建物の登記名義をBに戻す前に,Cから金員を借り入れるに際し,その建物につき,Cに対して抵当権を設定した上,その旨の登記をした。
3 Aは,B所有の未登記建物を,Bの同意の下に使用支配していたところ,その建物につき,自己名義で所有権保存登記をした。
4 Aは,Bから依頼されて,B所有の土地につき登記簿上の所有名義人になってその土地を預かり保管中,Bから所有権移転登記手続請求の訴えを提起された際に,自己の所有権を主張して抗争した。
5 Aは,Bから,その所有土地につき,抵当権を設定してCから融資を受ける手続をしてほしいと依頼され,登記済証,白紙委任状等を交付されたが,それらの書類を利用して,その土地につき,自己の所有名義に移転登記をした。


【H07-26】 次の事例のうち,「事実の錯誤に関しては,行為者の認識していた犯罪事実と,発生した犯罪事実とが構成要件的評価として一致する限度で,発生した犯罪事実についても故意の成立を認めるべきである。」との考え方を前提にした場合に,かっこ内の罪が成立するものはどれか。
1 Aを殺害する意思であったが,BをAと見誤り,殺意をもって,Bに向けてけん銃を発砲し,Bを死に至らしめた。(Bに対する過失致死罪)
2 Aを殺害する意思であったが,A宅に飾ってあったA所有の人形をAと見誤り,殺意をもって,人形に向けてけん銃を発砲し,人形を損壊した。(人形についての器物損壊罪)
3 Aを殺害する意思であったが,A宅に飾ってあったA所有の人形をAと見誤り,殺意をもって,人形に向けてけん銃を発砲し,人形を損壊した。(人形についての器物損壊罪)
4 Aを殺害する意思で,Aに向けてけん銃を発砲したが,手元が狂ってAには当たらず,近くにあったA所有の人形に命中させ,人形を損壊した。(人形についての器物損壊罪)
5 A所有の人形を損壊する意思で,人形に向けてけん銃を発砲したが,手元が狂って人形には当たらず,近くにいたAに命中させ,Aを死に至らしめた。(Aに対する殺人罪)


【H08-23】 次のアからエまでの事例について,因果関係に関する後記の二つの説の立場に立って,Aにつき末尾の括弧内に記載した犯罪の成否を判断した場合に,いずれの立場に立っても犯罪の成立が認められるものと認められないものを選んだ組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
(条件説) その行為がなければ,その結果は発生しなかったという関係(条件関係)があれば因果関係が認められるとする見解
(客観的相当因果関係説) 条件説にいう条件関係がある場合のうち,その行為からその結果が発生するのが経験則に照らして相当であると認められるときに因果関係が認められるとし,その相当性は行為時に存在したすべての事情及び予見可能な行為後の事情を基礎に判断するとの見解
ア AがBを殺害しようとしてBをナイフで切りつけ,その結果入院したBが,入院先の病院の他の入院患者Cの放火による病院の火災により死亡した場合。(殺人既遂罪)
イ Aが列車で旅行中,Bとけんかになり,殺意をもってBの腹部を突き刺して重傷を負わせたところ,列車が転覆してその衝撃によりBが圧死した場合。(殺人既遂罪)
ウ AとBがけんかになり,路上に突き飛ばしたところ,心臓疾患があったBが急性心不全で死亡した場合。(傷害致死罪)
エ Cに対して殺意を抱いていたABの両名が,それぞれ意思の連絡もなく無関係に,同時にCに対してけん銃を発射して命中させ,その結果Cは死亡したが,ABいずれの発射した弾丸によりCが死亡したか不明である場合。(殺人既遂罪)
  いずれの説によっても    いずれの説によっても
  犯罪が成立する場合     犯罪が成立しない場合
1     ア             イ
2     アウ            イエ
3     アウ            エ
4     ウ             エ
5     ウ             イエ


【H08-24】 次の左欄に掲げたAの行為についての刑法における正当防衛又は緊急避難の成否に関する記述として右欄の記載が正しいものはどれか。
1 Aが道路を歩いていたと  正当防衛も緊急避難も成立しない。
  ころ,Bがその飼い犬を
  Aにけしかけたので,A
  はこれを避けるためその
  犬を蹴飛ばしてけがをさ
  せた。
2 Aが道路を歩いていたと  正当防衛も緊急避難も成立しない。
  ころ,飼主の不注意で鎖
  から離れた犬が襲ってき
  たので,これを避けるた
  めその犬を蹴飛ばしてけ
  がをさせた。
3 Aはバッグを盗まれたの  正当防衛が成立する。
  で,その犯人を捜してい
  たところ,数日後,駅前
  でBが自分のバッグを持
  っているのを発見したの
  でBに返すように要求し
  た。しかし,Bがこれに
  応じなかったのでAは実
  力でバッグを取り返した。
4 Bが背後からAを刃物で  正当防衛が成立する。
  狙っているのを見つけた
  CがAを助けるためにB
  に組みついたのを見たA
  は,CがBに暴行を加え
  ているものと勘違いして,
  Cを突き飛ばして転倒さ
  せた。
5 AとBが口論中,BはA  正当防衛が成立する。
  がポケットに手を入れた
  のを見て,隠し持ってい
  るナイフを取り出すもの
  と勘違いし,持っていた
  ナイフでAに突きかかっ
  た。そこでAはBの足を
  払い転倒させた。


【H08-25】 次の事例のうち,判例の趣旨に照らし,窃盗罪が成立するものを選んだ組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
ア 郵便集配人が,配達中の信書を開けて在中の小切手を取り出し,取得した場合,窃盗罪が成立する。
イ パチンコ玉を磁石で誘導して穴に入れて当たり玉を出して取得した場合,窃盗罪が成立する。
ウ 衣料品店で顧客を装い,上衣を試着したまま便所に行くと偽って逃走した場合,窃盗罪が成立する。
エ 電車で帰宅中,他の通勤客が網棚の上に鞄を置いたまま途中の駅で降りたのを確認した上で,終着駅でそれを取得した場合,窃盗罪が成立する。
オ 宿泊先の旅館の客室で前日の宿泊客が置き忘れた財布を発見し,これを取得した場合,窃盗罪が成立する。
1 アウオ  2 アエオ  3 イウエ  4 アイウオ 5 イウエオ


【H08-26】 偽造罪に関する次の記述のうち,判例の趣旨に照らし,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 市長の記名押印がある売買契約書の原本の売買代金欄の「7,000,000」の記載の左横に鉛筆で「1」と書き加え,代金が1,700万円であるかのように改ざんし,これを複写機械にコピーよりして,あたかも真正な売買契約書の原本を原形どおりに正確にコピーしたかのように売買契約書の写しを作成した場合には,公文書変造罪(刑法155条2項)ではなく,公文書偽造罪(刑法155条1項)が成立する。
イ 破産宣告を受けたことがあるにもかかわらず,破産宣告を受けたことがない旨記載した虚偽の内容の証明申請書を市役所の係員に提出し,内容が虚偽であることを知らないその係員に,申請書の記載が事実に相違ないことをその申請書に付記する方法により証明する市長名義の証明書を作成させた場合には,虚偽公文書作成罪(刑法156条)の間接正犯が成立する。
ウ 市議会の議長が,議会の会議録の調製に当たって,議事の運営に対する異義が出された事実の記載を殊更に記載しなかった場合には,記載されている事項の中には事実と異なる部分がないときであっても,虚偽公文書作成罪(刑法156条)が成立する。
エ 被疑者として取調べを受けた者が,司法警察官に提出する供述書を他人名義で作成した場合には,あらかじめその他人の承諾を得ていたときであっても,私文書偽造罪(刑法159条1項)が成立する。
オ 銀行の代表取締役から支店の業務に関して銀行名義の小切手を振り出す権限を授与されている銀行の支店長が,その権限を濫用して,自己の負債の支払に当てる目的で銀行名義の小切手を振り出した場合には,有価証券偽造罪(刑法162条1項)が成立する。
1 アイエ  2 アイオ  3 アウエ  4 イウオ  5 ウエオ


【H09-23】 罪刑法定主義に関する次の記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 罪刑法定主義は,一般に,「法律なければ犯罪なし,法律なければ刑罰なし」という言葉で表現され,国家による恣意的な刑罰権の行使から国民の権利を護ることをその目的としている。
イ 罪刑法定主義は,法律主義と事後法の禁止という考え方から成り立っているとみることができる。
ウ 法律主義からは,慣習刑法の排斥が導き出され,構成要件の内容の解釈や違法性の判断に当たって慣習法を考慮することは許されない。
エ 事後法の禁止からは刑罰法規の不遡及が導き出され,行為が行われた後に制定した法律で当該行為を処罰することはできない。
オ 法律主義及び事後法の禁止から類推解釈の禁止が導き出され,被告人にとって利益,不利益を問わず,法律が規定していない事項について類似の法文を適用することは許されない。
1 アイウ  2 アイエ  3 アウオ  4 イエオ  5 ウエオ


【H09-24】 暴力団甲組の組員であるBは,甲組の掟に背いたため,いわゆる指詰めをして,組長の許しを得ようと考えたが,自分で指詰めできず,仲間の組員であるAに頼んで,ナイフで右手の小指を第一関節から切断してもらった。Aの罪責に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
1 被害者の承諾があった場合には,被害者が自分の利益を放棄しているのだから,これに国家が関与する必要がないという考え方に立てば,Aには傷害罪は成立しないという結論を導き出すことができる。
2 被害者の承諾が犯罪の成否に消長を来すのは,被害者の承諾がないことが犯罪の成立要件となっている場合のほか,侵害される被害者の利益が,所有権のように,法律上処分が可能とされているものである場合に限られるという考え方に立てば,Aには傷害罪が成立しないという結論を導き出すことができる。
3 被害者の承諾があった場合には,生じた結果がその承諾の範囲を超えていたり,その手段が承諾の範囲を超えていたときに限り,その承諾が犯罪の成否の消長を来さないという考え方に立てば,Aには傷害罪は成立しないという結論を導き出すことができる。
4 被害者の承諾があったとしても,それが社会的相当性を欠き法的に許容できないものであるときは,その承諾は犯罪の成否に消長を来さないという考え方に立てば,Aには傷害罪は成立するという結論を導き出すことができる。
5 刑法は,殺人罪については被害者の承諾がある場合に刑を減軽して処罰する202条の規定を置いているが,傷害罪については同条に相当する規定を置いていない。この規定の下では,Aには傷害罪が成立するという結論も,成立しないという結論も導き出すことができる。


【H09-25】 次のアからオまでの事例のうち,判例の趣旨に照らし,Aにつき末尾の括弧内に記載した犯罪が成立するものを選んだ組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア AはBと共同で借りていたCの自動車を一人で勝手に持ち出し,質に入れた。(窃盗罪)
イ AはBと共有の自転車を一人で保管していたが,これを質に入れた。(横領罪)
ウ Aは図書館に行って本を館内閲覧のために借り出して読んだ後,これを古本屋に売却しようと考え,図書館から持ち出した。(横領罪)
エ AはBから現金の入った鞄の保管を頼まれ,預かっていたが,鍵を開けて中の現金を取り出して,遊興費に費消した。(横領罪)
オ Aはデパートの電気製品売場の店員であるが,所持金に窮し,売場の主任が食事に行っている隙に,商品の電気カミソリを自分の鞄に入れて持ち出し,これを質に入れた。(窃盗罪)
1 アイオ  2 アウエ  3 アウオ  4 イウエ  5 イエオ


【H09-26】 放火に関する次の事例のうち,Aについて末尾の括弧内に記載した罪が成立するものはどれか。
1 Aは,B宅に侵入し,B及び同居の家族全員を殺害した上,B宅に火をつけて燃やした。(非現住建造物等放火罪の既遂)
2 Aは,B宅を燃やしてしまおうと考え,B宅の隣に建っていたC所有の物置に火をつけたが,物置が燃えたところで近所の住人らが消し止めたため,B宅には燃え移らなかった。(非現住建造物等放火罪既遂及び現住建造物等放火罪の未遂)
3 Aは,Bが外国製の高級乗用車を購入したのをねたみ,Bがその乗用車を自宅の前庭に駐車していたところ,これにガソリンをかけて火をつけ燃やしてしまったが,B宅への延焼は免れた。(器物損壊罪)
4 Aは,火災保険金を騙取しようと考え,自己の一人住まいの自宅に火災保険をかけた上,火をつけて全焼させた。(現住建造物等放火罪の既遂)
5 Aは,B及びその家族全員が旅行に出た後,B宅に火をつけて燃やした。(非現住建造物等放火罪の既遂)


【H10-23】 Aに深い恨みをもつBが,ある日の夜中,人里離れた山中で,頭にろうそくを立て手に五寸釘をもち,大木に向かって「Aよ,死ね!」と叫びながら,Aのわら人形を打ちつけていたところ,偶然通りかかったAがそれを見て尋常ではないBの様子に驚き,その場に卒倒した。卒倒しているAに気付いたBは,それを奇貨として,持っていた金槌でAの頭部を数回強打して,Aを死に至らしめた。
 この事例におけるBの殺人行為の実行の着手時期についての次の記述のうち,判例の趣旨に照らし最も適切なものはどれか。
1 BはAを呪い殺すつもりで山の中に入り,一連の事実の連鎖の結果,現実にAの死という結果を発生させているのであるから,山の中に踏み入った時点で実行の着手があったと認めるべきである。
2 Bには当初から殺意が認められるが,実行の着手があったといえるためには殺意を外形的に表象する何らかの具体的な行為が開始される必要があるから,わら人形に五寸釘を打ち込み呪文を唱え始めた時点で実行の着手があったと認めるべきである。
3 Aが殺害される危険性は,Bが卒倒しているAに気付き,その確認のために歩を進め始めた時点から既に発生したといえるから,BがAに向かって一歩踏み出した時点で実行の着手があったと認めるべきである。
4 Aの生命に対する現実的危険性のある行為とは,金槌による打撃行為をいうと解すべきであるから,BがAの頭部を強打すべく金槌を振り下ろした時点で現実的危険性のある行為が始まったとして実行の着手があったと認めるべきである。
5 殺人罪に関する実行の着手時期は,これを厳格に,行為者が人の生命に対する危険を実際に発生させた時点と解すべきであるから,Bの振り下ろした金槌がAの頭部の一部に接触した時点で実行の着手があったと認めるべきである。


【H10-24】 共同正犯に関する次の記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。
1 自ら実行行為をしていない者については,共同正犯は成立しない。
2 公務員の身分を有しない者については,収賄罪の共同正犯は成立しない。
3 女性については,強姦罪の共同正犯は成立しない。
4 共犯者間に共同実行の意思がない場合については,共同正犯は成立しない。
5 過失犯については,共同正犯は成立しない。


【H10-25】 いわゆるキセル乗車について,次の二つの見解があるとした場合,下記の事例に関する後記1から5までの記述のうち,誤っているものはどれか。
第1説 乗車駅改札係員を欺罔して輸送の利益を得たと考えて詐欺罪の成立を認め得るとする見解
第2説 下車駅改札係員を欺罔して運賃支払債務を免れたと考えて詐欺罪の成立を認め得るとする見解
 「Aは,甲駅から乙,丙駅を経て丁駅まで乗車するに当たり,甲−乙駅間の乗車券を購入し,それを甲駅改札係員に提示して入場・乗車し,丁駅で下車した際,丁駅改札係員に,あらかじめ用意しておいた丙−丁駅間の定期券を提示して改札口を出た。」
1 第1説では,Aがキセル乗車の意思を隠している以上,甲−乙駅間の乗車券を甲駅改札係員に提示する行為は欺罔行為に当たると考える。
2 第2説では,丁駅改札係員が欺罔され,その結果,不足運賃の支払を免れさせる処分行為を行ったものと考える。
3 Aが,キセル乗車の意思で甲−乙駅間の乗車券を甲駅係員に提示して入場し,乗車したものの,途中で気が変わり,結局乙駅で下車した場合には,第1説でも第2説でも,詐欺罪は成立しない。
4 Aが,下車する際には運賃を精算するつもりで乗車したが,乗車後,キセル乗車の意思が生じた場合,第1説では詐欺罪は成立しないが,第2説では詐欺罪が成立する。
5 Aが,キセル乗車の意思で乗車し,丁駅で改札口以外の場所から外へ逃げた場合,第1説では詐欺罪が成立するが,第2説では詐欺罪は成立しない。


【H10-26】 刑法は,一定の犯罪について,行為の客体など一定の物が行為者の所有に係るものであっても,それが差押えを受けたものである場合などには,他人の所有に係るものである場合と同様に扱われる旨を定めているが,そのような定めのない犯罪は,次のうちどれか。
1 非現住建造物等放火罪
2 強盗罪
3 横領罪
4 器物損壊罪
5 境界損壊罪


【H11-23】 予備罪の共同正犯に関する次の記述中の( ア )から( カ )までに当てはまる用語の組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
 刑法第43条本文は「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は,その刑を減軽することができる。」と規定し,同法第60条は「二人以上共同して犯罪を実行した者は,すべて正犯とする。」と規定しています。これらの条文に規定された「実行」という概念を同一に理解する立場においては,「実行」は,( ア )の前段階である( イ )に関して「実行」が問題となる余地はなく,したがって,殺人予備罪に関し共同正犯が( ウ )ことになります。これに対し,未遂犯成立のための実行行為概念は( エ )を確定するための概念であり,共犯成立の前提となる実行行為概念は( オ )を確定するための概念であるとして,両者の「実行」概念の( カ )を認めた上で,予備罪についても,構成要件の修正形式としての実行行為を観念することができるとする立場があります。
  (ア)(イ)    (ウ)     (エ)  (オ)   (カ)
1 未遂 予備 成立する余地はない 処罰範囲 処罰時期 絶対性
2 既遂 未遂 成立する場合がある 処罰時期 処罰範囲 相対性
3 未遂 予備 成立する場合がある 処罰範囲 処罰時期 相対性
4 既遂 未遂 成立する余地はない 処罰時期 処罰範囲 絶対性
5 未遂 予備 成立する余地はない 処罰時期 処罰範囲 相対性


【H11-24】 Aは,開店中の大規模スーパー・マーケットの6階の通路ベンチに札入れを置き忘れた。その約30分後,同ベンチに札入れが放置されているのに気付いたBは,持ち主が戻ってこないうちに,これを自己の物にしようと考え,ベンチに近づいたところ,ベンチから数メートル離れた場所を買物客Cが通りかかり,札入れを注視していたことから,Cに対し,「札入れを警備室に届けてやる。」と嘘を言って,その旨信用させ,札入れをベンチから取り上げ,これを自己のポケットに入れてその場から立ち去った。他方,Aは,そのスーパー・マーケットの地下売場で買物をしようとした際に,札入れをベンチに置き忘れたことを思い出し,直ちに引き返したが,既にBが札入れを持ち去った後であった。
この事例におけるBの罪責に関する次の記述のうち,判例の趣旨に照らし最も適切なものはどれか。
1 Bが,札入れが放置されていることに気付き,ベンチに近づいた時点では,ベンチから数メートル離れた場所でCが札入れを注視していたのであるから,札入れはCの占有に移っており,Bがそれを知りながら札入れをベンチから取り上げ,これをポケットに入れた時点で,Bには窃盗罪が成立する。
2 Cは,Bが「札入れを警備室に届けてやる。」と言ったことを信用したからこそ,Bが札入れを取り上げることを黙認したのであるから,Bには詐欺罪が成立する。
3 Aは,開店中のスーパー・マーケットにおいて,約30分間,札入れを置き忘れたベンチから離れ,地下売場等において買物をしようとしていたのであるから,Aの札入れに対する占有を認めることは困難であり,Bには占有離脱物横領罪が成立する。
4 Aの占有が否定されたとしても,この事例においては,札入れの占有は,Aが札入れをベンチに置き忘れた時点で,スーパー・マーケットの管理者に帰属していたと考えられるから,Bには窃盗罪が成立する。
5 Aが札入れをベンチに置き忘れたことを思い出した時点で,Aが札入れに対する事実上の支配を回復したと評価することができるから,その後にBがベンチから札入れを取り上げ,これをポケットに入れたのであれば,Bには窃盗罪が成立する。


【H11-25】 業務上過失致死傷罪における「業務」と業務妨害罪における「業務」に関する次の記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。
1 業務上過失致死傷罪における「業務」とは,実際に反復継続して行われているものでなければならない。
2 業務妨害罪における「業務」とは,報酬又は収入を伴うものでなければならない。
3 業務上過失致死傷罪における「業務」には,他人の生命・身体に生ずる危険を防止することを目的とする職務は含まれない。
4 業務妨害罪における「業務」には,娯楽のために行われる自動車の運転も含まれる。
5 業務上過失致死傷罪の「業務」には,親が家庭内で行う育児は含まれない。


【H11-26】 偽造罪に関する次の記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものはどれか。
1 文書偽造罪が成立するためには,抽象的に文書の信用を害する危険があれば足り,特定の人に対し具体的に損害を与え,又は与える危険があることを要しない。
2 公文書偽造罪の客体となる文書は,原本に限られず,原本と同一の内容を保有し,証明文書として原本と同様の社会的機能と信用性を有するものである限り,原本の写しであっても差し支えない。
3 私文書偽造罪が成立するためには,一般人をして実在者が真正に作成した文書と誤信させるおそれが十分にあれば足り,その名義人が架空であると実在であるとを問わない。
4 公正証書原本不実記載罪の客体は,私法上の権利義務に関するある事実を証明するものでなければならない。
5 公正証書原本不実記載罪の客体は,申立ての内容につき公務員に実質的審査権があるものであるか否かを問わない。


【H12-23】 過失犯の共同正犯の成否に関する次の1から5までの記述のうち,明らかに誤っているものはどれか。
1 共犯の本質は,犯罪を実行し,又はこれに加功するという犯罪的意思の共同に存するから,犯罪的結果発生についての無意識を本質とする過失犯については,共同正犯の成立を認める余地はない。
2 共犯とは,自己の犯罪遂行の方法的類型にすぎないから,行為・因果関係の共同が存する限り,過失による共同正犯を認めることができる。
3 共犯の本質は犯罪を共同にすることであると解しても,過失犯についても客観的注意義務に反した危険な行為という実行行為が存する以上は,これを共同にする意思と事実が認められる場合には,過失犯の共同正犯を肯定することができる。
4 結果発生の危険が予想される状態の下で,事故防止の具体的対策を講ずるについての相互利用・補充という関係に立ちつつ,結果回避のための共通の注意義務を負う者に共同作業上の落ち度が認められる場合に,初めて過失犯の共同正犯を肯定することができる。
5 過失犯の構造に関し,結果を認識し,又は予見しなかった心理状態に過失の実体があると解すると,過失犯の共同正犯は肯定しやすいが,過失犯の客観的な行為態様そのものに着目する見解に立つと,過失犯の共同正犯は否定しやすい。


【H12-24】 監禁罪に関する次の記述中の( ア )から( キ )までに当てはまる用語の組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
 監禁罪は,人の身体活動の自由を保護法益とするものであるが,この身体的自由の意義については,( ア )と解する考え方と( イ )と解する考え方がある。
 この点,睡眠中の者や泥酔者を客体とする場合については,( ア )と解する考え方によれば,監禁罪の成立につき( ウ )という結論が導かれ,( イ )と解する考え方によれば,( エ )という結論が導かれる。
 また,強姦の意図を秘して家まで送ると欺き女性を車に乗せて走行する場合については,( ア )と解する考え方によれば,監禁罪の成立につき( オ )という結論が導かれ,( イ )と解する考え方によれば,( カ )という結論が導かれるが,判例は,この場合の監禁罪の成立につき( キ )との結論を採っている。
   (ア)    (イ)   (ウ) (エ) (オ) (カ) (キ)
1 可能的自由  現実的自由  積極  消極  消極  積極  積極
2 可能的自由  現実的自由  消極  消極  積極  消極  消極
3 現実的自由  可能的自由  消極  積極  積極  消極  積極
4 現実的自由  可能的自由  消極  積極  消極  積極  積極
5 現実的自由  可能的自由  積極  積極  消極  積極  消極


【H12-25】 汚職の罪に関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 賄賂とは,公務員の職務に関する不正の報酬であるので,金銭の授受,飲食物の提供等の財物の提供に限られ,異性間の情交といった無形の利益は含まない。
イ 公務員ではない仲裁人が,その職務に関し賄賂を収受した場合にも,単純収賄罪が成立する。
ウ 収賄罪の犯人が収受した賄賂は,「犯罪行為を組成した物」に該当するが,情状により没収しないことができる。
エ 公務員が一般的職務権限を異にする他の職務に転じた後に,前の職に在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたことに関し賄賂を収受した場合には,事後収賄罪が成立する。
オ 賄賂罪の「職務に関し」とは,賄賂と対価関係にある行為が当該公務員の職務として行い得る抽象的な範囲内にあれば足りる。
1 アウ   2 アエ   3 イウ   4 イオ   5 エオ


【H12-26】 次の1から5までの事例のうち,判例の趣旨に照らし窃盗罪が既遂とならないものはどれか。
1 スーパーマーケットの店内において,商品を同店備付けの買物かごに入れ,レジを通過することなく,その脇からレジの外側に持ち出したところで,店員に発見された場合
2 家人が不在中の居宅に侵入して,物色した品物のうちから衣服数点を選び出し,これを持参した袋に詰めて荷造をして勝手口まで運んだところで,帰宅した家人に発見された場合
3 公衆浴場で他人が遺留した指輪を発見し,これを領得する意思で,一時,浴室内の他人が容易に発見することができないすき間に隠匿したところで,不審に思った他の客に発見された場合
4 他人の家の玄関先に置いてあった自転車を領得する意思で,これを同所から5〜6メートル引いて表通りまで搬出したところで,警察官に発見されて逮捕された場合
5 ブロック塀で囲まれ,警備員により警備された敷地内にある倉庫に侵入し,中のタイヤ2本を倉庫外に搬出したところで,敷地内において当該警備員に発見された場合




戻る ・ AIMONのホームページへ戻る