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送り仮名の付け方
(昭和48年内閣告示第2号。改正昭和56年10月1日内閣告示第3号。原文は,本文を除いて縦書き)
前書き
一 この「送り仮名の付け方」は,法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など,一の社会生活において,「常用漢字表」の音訓によって現代の国語を書き表す場合の送り仮名の付け方のよりどころを示すものである。
二 この「送り仮名の付け方」は,科学・技術・芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。
三 この「送り仮名の付け方」は,漢字を記号的に用いたり,表に記入したりする場合や,固有名詞を書き表す場合を対象としていない。
「本文」の見方及び使い方
一 この「送り仮名の付け方」の本文の構成は,次のとおりである。
単独の語
1 活用のある語
通則1 (活用語尾を送る語に関するもの)
通則2 (派生・対応の関係を考慮して,活用語尾の前の部分から送る語に関するもの)
2 活用のない語
通則3 (名詞であって,送り仮名を付けない語に関するもの)
通則4 (活用のある語から転じた名詞であって,もとの語の送り仮名の付け方によって送る語に関するもの)
通則5 (副詞・連体詞・接続詞に関するもの)
複合の語
通則6 (単独の語の送り仮名の付け方による語に関するもの)
通則7 (慣用に従って送り仮名を付けない語に関するもの)
付表の語
1 (送り仮名を付ける語に関するもの)
2 (送り仮名を付けない語に関するもの)
二 通則とは,単独の語及び複合の語の別,活用のある語及び活用のない語の別等に応じて考えた送り仮名の付け方に関する基本的な法則をいい,必要に応じ,例外的な事項又は許容的な事項を加えてある。
したがって,各通則には,本則のほか,必要に応じて例外及び許容を設けた。ただし,通則7は,通則6の例外に当たるものであるが,該当する語が多数に上るので,別の通則として立てたものである。
三 この「送り仮名の付け方」で用いた用語の意義は,次のとおりである。
単独の語…… 漢字の音又は訓を単独に用いて,漢字一字で書き表す語をいう。
複合の語…… 漢字の訓と訓,音と訓などを複合させ,漢字二字以上を用いて書き表す語をいう。
付表の語…… 「常用漢字表」の付表に掲げてある語のうち,送り仮名の付け方が問題となる語をいう。
活用のある語…… 動詞・形容詞・形容動詞をいう。
活用のない語…… 名詞・副詞・連体詞・接続詞をいう。
本 則…… 送り仮名の付け方の基本的な法則と考えられるものをいう。
例 外…… 本則には合わないが,慣用として行われていると認められるものであって,本則によらず,これによるものをいう。
許 容…… 本則による形とともに,慣用として行われていると認められるものであって,本則以外に,これによってよいものをいう。
四 単独の語及び複合の語を通じて,字音を含む語は,その字音の部分には送り仮名を要しないのであるから,必要のない限り触れていない。
五 各通則において,送り仮名の付け方が許容によることのできる語については,本則または許容のいずれに従ってもよいが,個々の語に適用するに当たって,許容に従ってよいかどうか判断し難い場合には,本則によるものとする。
本 文
単独の語
1 活用のある語
通則1
本則 活用のある語(通則2を適用する語を除く。)は,活用語尾を送る。
〔例〕 憤る 承る 書く 実る 催す
生きる 陥れる 考える 助ける
荒い 潔い 賢い 濃い
主だ
例外(1) 語幹が「し」で終わる形容詞は,「し」から送る。
〔例〕 著しい 惜しい 悔しい 恋しい 珍しい
(2) 活用語尾の前に「か」,「やか」,「らか」を含む形容動詞は,その音節から送る。
〔例〕 暖かだ 細かだ 静かだ
穏やかだ 健やかだ 和やかだ
明らかだ 平らかだ 滑らかだ 柔らかだ
(3) 次の語は,次に示すように送る。
明らむ 味わう 哀れむ 慈しむ 教わる 脅かす(おどかす) 脅かす(おびやかす) 食らう 異なる 逆らう 捕まる 群がる 和らぐ 揺する
明るい 危ない 危うい 大きい 少ない 小さい 冷たい 平たい
新ただ 同じだ 盛んだ 平らだ 懇ろだ 惨めだ
哀れだ 幸いだ 幸せだ 巧みだ
許容 次の語は,( )の中に示すように,活用語尾の前の音節から送ることができる。
表す(表わす) 著す(著わす) 現れる(現われる) 行う(行なう) 断る(断わる) 賜る(賜わる)
(注意) 語幹と活用語尾との区別がつかない動詞は,例えば,「着る」,「寝る」,「来る」などのように送る。
通則2
本則 活用語尾以外の部分に他の語を含む語は,含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。(含まれている語を〔 〕の中に示す。)
〔例〕
(1) 動詞の活用形又はそれに準ずるものを含むもの。
動かす〔動く〕 照らす〔照る〕
語らう〔語る〕 計らう〔計る〕 向かう〔向く〕
浮かぶ〔浮く〕
生まれる〔生む〕 押さえる〔押す〕 捕らえる〔捕る〕
勇ましい〔勇む〕 輝かしい〔輝く〕 喜ばしい〔喜ぶ〕
晴れやかだ〔晴れる〕
及ぼす〔及ぶ〕 積もる〔積む〕 聞こえる〔聞く〕
頼もしい〔頼む〕
起こる〔起きる〕 落とす〔落ちる〕
暮らす〔暮れる〕 冷やす〔冷える〕
当たる〔当てる〕 終わる〔終える〕 変わる〔変える〕 集まる〔集める〕 定まる〔定める〕 連なる〔連ねる〕 交わる〔交える〕
混ざる・混じる〔混ぜる〕
恐ろしい〔恐れる〕
(2) 形容詞・形容動詞の語幹を含むもの。
重んずる〔重い〕 若やぐ〔若い〕
怪しむ〔怪しい〕 悲しむ〔悲しい〕 苦しがる〔苦しい〕
確かめる〔確かだ〕
重たい〔重い〕 憎らしい〔憎い〕 古めかしい〔古い〕
細かい〔細かだ〕 柔らかい〔柔らかだ〕
清らかだ〔清い〕 高らかだ〔高い〕 寂しげだ〔寂しい〕
(3) 名詞を含むもの。
汗ばむ〔汗〕 先んずる〔先〕 春めく〔春〕
男らしい〔男〕 後ろめたい〔後ろ〕
許容 読み間違えるおそれのない場合は,活用語尾以外の部分について,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。
〔例〕 浮かぶ(浮ぶ) 生まれる(生れる) 押さえる(押える) 捕らえる(捕える)
晴れやかだ(晴やかだ)
積もる(積る) 聞こえる(聞える)
起こる(起る) 落とす(落す) 暮らす(暮す) 当たる(当る) 終わる(終る) 変わる(変る)
(注意) 次の語は,それぞれ〔 〕の中に示す語を含むものとは考えず,通則1によものとする。
明るい〔明ける〕 荒い〔荒れる〕 悔しい〔悔いる〕 恋しい〔恋う〕
2 活用のない語
通則3
本則 名詞(通則4を適用する語を除く。)は,送り仮名を付けない。
〔例〕 月 鳥 花 山
男 女
彼 何
例外(1) 次の語は,最後の音節を送る。
辺り 哀れ 勢い 幾ら 後ろ 傍ら 幸い 幸せ 互い 便り 半ば 情け 斜め 独り 誉れ 自ら 災い
(2) 数をかぞえる「つ」を含む名詞は,その「つ」を送る。
〔例〕 一つ 二つ 三つ 幾つ
通則4
本則 活用のある語から転じた名詞及び活用のある語に「さ」,「み」,「げ」などの接尾語が付いて名詞になったものは,もとの語の送り仮名の付け方によって送る。
〔例〕
(1) 活用のある語から転じたもの。
動き 仰せ 恐れ 薫り 曇り 調べ 届け 願い 晴れ
当たり 代わり 向かい
狩り 答え 問い 祭り 群れ
憩い 愁い 憂い 香り 極み 初め
近く 遠く
(2) 「さ」,「み」,「げ」などの接尾語が付いたもの
暑さ 大きさ 正しさ 確かさ
明るみ 重み 憎しみ
惜しげ
例外 次の語は送り仮名を付けない。
謡 虞 趣 氷 印 頂 帯 畳
卸 煙 恋 志 次 隣 富 恥 話 光 舞
折 係 掛(かかり) 組 肥 並(なみ) 巻 割
(注意) ここに掲げた「組」は,「花の組」,「赤の組」などのように使った場合の「くみ」であり,例えば,「活字の組みがゆるむ。」などとして使う場合の「くみ」を意味するものではない。「光」,「折」,「係」なども,同様に動詞の意識が残っているような使い方の場合は,この例外に該当しない。したがって,本則を適用して送り仮名を付ける。
許容 読み間違えるおそれのない場合は,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。
〔例〕 曇り(曇) 届け(届) 願い(願) 晴れ(晴)
当たり(当り) 代わり(代り) 向かい(向い)
狩り(狩) 答え(答) 問い(問) 祭り(祭) 群れ(群)
憩い(憩)
通則5
本則 副詞・連体詞・接続詞は,最後の音節を送る。
〔例〕 必ず 更に 少し 既に 再び 全く 最も
来る 去る
及び 且つ 但し
例外(1) 次の語は,次に示すように送る。
明くる 大いに 直ちに 並びに 若しくは
(2) 次の語は,送り仮名を付けない。
又
(3) 次のように,他の語を含む語は,含まれている語の送り仮名の付け方によって送る。(含まれている語を〔 〕の中に示す。)
〔例〕 併せて〔併せる〕 至って〔至る〕 恐らく〔恐れる〕 従って〔従う〕 絶えず〔絶える〕 例えば〔例える〕 努めて〔努める〕
辛うじて〔辛い〕 少なくとも〔少ない〕
互いに〔互い〕
必ずしも〔必ず〕
複合の語
通則6
本則 複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は,その複合の語を書き表す漢字の,それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。
〔例〕
(1) 活用のある語
書き抜く 流れ込む 申し込む 打ち合わせる 向かい合わせる 長引く 若返る 裏切る 旅立つ
聞き苦しい 薄暗い 草深い 心細い 待ち遠しい 軽々しい 若々しい 女々しい
気軽だ 望み薄だ
(2) 活用のない語
石橋 竹馬 山津波 後ろ姿 斜め左 花便り 独り言 卸商 水煙 目印
田植え 封切り 物知り 落書き 雨上がり 墓参り 日当たり 夜明かし 先駆け 巣立ち 手渡し
入り江 飛び火 教え子 合わせ鏡 生き物 落ち葉 預かり金
寒空 深情け
愚か者
行き帰り 伸び縮み 乗り降り 抜け駆け 作り笑い 暮らし向き 売り上げ 取り扱い 乗り換え 引き換え 歩み寄り 申し込み 移り変わり
長生き 早起き 苦し紛れ 大写し
粘り強さ 有り難み 待ち遠しさ
乳飲み子 無理強い 立ち居振る舞い 呼び出し電話
次々 常々
近々 深々
休み休み 行く行く
許容 読み間違えるおそれのない場合は,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。
〔例〕 書き抜く(書抜く) 申し込む(申込む) 打ち合わせる(打ち合せる・打合せる) 向かい合わせる(向い合せる) 聞き苦しい(聞苦しい) 待ち遠しい(待遠しい)
田植え(田植) 封切り(封切) 落書き(落書) 雨上がり(雨上り) 日当たり(日当り) 夜明かし(夜明し)
入り江(入江) 飛び火(飛火) 合わせ鏡(合せ鏡) 預かり金(預り金)
抜け駆け(抜駆け) 暮らし向き(暮し向き) 売り上げ(売上げ・売上) 取り扱い(取扱い・取扱) 乗り換え(乗換え・乗換) 引き換え(引換え・引換) 申し込み(申込み・申込) 移り変わり(移り変り)
有り難み(有難み) 待ち遠しさ(待遠しさ)
立ち居振る舞い(立ち居振舞い・立ち居振舞・立居振舞) 呼び出し電話(呼出し電話・呼出電話)
(注意) 「こけら落とし(こけら落し)」,「さび止め」,「洗いざらし」,「打ちひも」のように,前又は後ろの部分を仮名で書く場合は,他の部分については,単独の語の送り仮名の付け方による。
通則7
複合の語のうち,次のような名詞は,慣用に従って,送り仮名を付けない。
〔例〕
(1) 特定の領域の語で,慣用が固定していると認められるもの。
ア 地位・身分・役職等の名。
関取 頭取 取締役 事務取扱
イ 工芸品の名に用いられた「織」,「染」,「塗」等。
《博多》織 《型絵》染 《春慶》塗 《鎌倉》彫 《備前》焼
ウ その他。
書留 気付 切手 消印 小包 振替 切符 踏切
請負 売値 買値 仲買 歩合 両替 割引 組合 手当
倉敷料 作付面積
売上《高》 貸付《金》 借入《金》 繰越《金》 小売《商》 積立《金》 取扱《所》 取扱《注意》 取次《店》 取引《所》 乗換《駅》 乗組《員》 引受《人》 引受《時刻》 引換《券》 《代金》引換 振出《人》 待合《室》 見積《書》 申込《書》
(2) 一般に,慣用が固定していると認められるもの。
奥書 木立 子守 献立 座敷 試合 字引 場合 羽織 葉巻 番組 番付 日付 水引 物置 物語 役割 屋敷 夕立 割合
合図 合間 植木 置物 織物 貸家 敷石 敷地 敷物 立場 建物 並木 巻紙
受付 受取
浮世絵 絵巻物 仕立屋
(注意)
(1) 「《博多》織」,「売上《高》」などのようにして掲げたものは,《 》の中を他の漢字で置き換えた場合にも,この通則を適用する。
(2) 通則7を適用する語は,例として挙げたものだけで尽くしてはいない。したがって,慣用が固定していると認められる限り,類推して同類の語にも及ぼすものである。通則7を適用してよいかどうか判断し難い場合には,通則6を適用する。
付表の語
「常用漢字表」の「付表」に掲げてある語のうち,送り仮名の付け方が問題となる次の語は,次のようにする。
1 次の語は,次に示すように送る。
浮つく お巡りさん 差し支える 五月晴れ 立ち退く 手伝う 最寄り
なお,
次の語は,( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。
差し支える(差支える) 五月晴れ(五月晴) 立ち退く(立退く)
2 次の語は,送り仮名を付けない。
息吹 桟敷 時雨 築山 名残 雪崩 吹雪 迷子 行方