第 1 問
法律上強制加入とされている団体が,多数決により,特定の政治団体に政治献金をする旨の決定をした。この場合に生ずる憲法上の問題点について,株式会社及び労働組合の場合と比較しつつ,論ぜよ。
第 2 問
下級裁判所の裁判権の行使に関し,「下級裁判所は,訴訟において,当該事件に適用される法令が憲法に違反すると認めるときは,その事件を最高裁判所に移送して,当該法令の憲法適合性について最高裁判所の判断を求めなければならない。」という趣旨の法律が制定された場合に生ずる憲法上の問題点について論ぜよ。
第 1 問
Aは,Bに対し,自己所有の甲建物を売却して引き渡し,Bは,Cに対し,甲建物を,使用目的は飲食店経営,賃料月額50万円,期間3年,給排水管の取替工事はCの負担で行うとの約定で賃貸して引き渡した。Cが300万円をかけて甲建物の給排水管の取替工事をした直後,Aは,Dに対し,甲建物を売却して所有権移転の登記をした。
この事案において,DがAからBへの甲建物の売却の事実を知らなかったものとして,DがCに対してどのような請求をすることができ,これに対し,Cがどのような反論をすることができるかについて論じた上で,BC間の法律関係についても論ぜよ。
第 2 問
1 不法行為責任と責任能力との関係について説明した上で,責任能力が必要とされている理由を過失概念の変容と関連付けながら論ぜよ。
2 未成年者の加害行為に対する親権者の不法行為責任を問う法的構成について論ぜよ。
第 1 問
親会社であるP株式会社は,親会社としての影響力を背景に,子会社であるQ株式会社から不当に低い価格で製品を買い入れ,Q社に損害を与えた。Q社の少数派株主Aには,商法上どのような保護が与えられるか。この取引が商法第265条第1項の取引となる場合はどうか。
第 2 問
Xは,得意先Zに対する売買代金支払のため,XがZにあてて振り出す予定で手形要件をすべて記載した手形金額200万円の約束手形1通を入れたバッグを携えて,自ら自己所有の車を運転して出張に出掛けた。Xは,Y経営のホテルにチェックインし,Yに対し,車をホテルの屋内駐車場に入れておくよう依頼して,車の鍵を預けた。その際,Xは,本件約束手形を入れたバッグを車の座席に置いたままにしてあったが,Yに対しては,バッグについて特に何も告げなかった。ところが,その後,ホテルの屋内駐車場に何者かが侵入し,駐車されていたXの車がバッグとともに窃取されてしまった。
Xは,Yに対し,車の損害のほかに,バッグに入っていた本件約束手形の手形金相当額200万円の損害賠償請求をした。この200万円に関する請求は認められるか。
第 1 問
甲は,酒癖が悪く,酔うと是非善悪の判断力を失い妻乙や二人の間の子供Aに暴行を加えることを繰り返しており,そのことを自覚していた。甲は,ある日,酒を飲み始めたところ,3歳になるAが台所で茶わんを過って割ってしまったことを見とがめ,Aの顔を平手でたたくなどのせっかんを始めた。甲は,しばらく酒を飲みながら同様のせっかんを続けていたところ,それまで泣くだけであったAが反抗的なことを言ったことに逆上し,バットを持ち出してAの足を殴打し重傷を負わせた。甲は,Aが更に反抗したため,死んでも構わないと思いつつAの頭部をバットで強打し死亡させた。乙は,その間の一部始終を見ていたが,日ごろAが乙にも反抗的態度をとることもあって,甲の暴行を止めようとはしなかった。甲については,逆上しバットを持ち出す時点以降は是非善悪の判断力が著しく減退していたとして,甲及び乙の罪責を論ぜよ。
第 2 問
製薬会社の商品開発部長甲は,新薬に関する機密情報をライバル会社に売却して利益を得ようと企て,深夜残業中,自己が管理するロッカー内から新薬に関する自社のフロッピーディスク1枚を取り出した上,同じ部屋にあるパソコンを操作して同ディスク内の機密データを甲所有のフロッピーディスクに複写し,その複写ディスクを社外に持ち出した。その後,甲は,ライバル会社の乙にこの複写ディスクを売却することとし,夜間山中で乙と会ったが,乙は,金を惜しむ余り,「ディスクの中身を車内で確認してから金を渡す。」と告げて,甲からディスクを受け取って自己の車に戻り,すきを見て逃走しようとした。乙は,車内から甲の様子を数分間うかがっていたが,不審に思った甲が近づいてきたことから,この際甲を殺してしまおうと思い立ち,車で同人を跳ね飛ばして谷底に転落させた。その結果,甲は重傷を負った。
甲及び乙の罪責を論ぜよ(特別法違反の点は除く。)。
第 1 問
弁論主義は,自由心証主義の適用範囲にどのような影響を及ぼすか。
第 2 問
甲は,乙に対し,自己の所有するA土地について偽造書類によって甲から乙に所有権移転登記がされているとして,甲から乙への所有権移転登記の抹消及びA土地の所有権確認を求めて訴えを提起した。
1 乙の債権者である丙は,甲乙間の訴訟に補助参加することができるか。
2 甲乙間の訴訟の係属前にA土地を乙から買い受けたと主張する丁が甲乙間の訴訟に参加した。この場合に,丁は,それまでの訴訟の中で乙が自白した事実を争うことができるか。
第 1 問
詐欺事件を捜査中の警察官は,「磁気記録テープ,光磁気ディスク,フロッピーディスク,パソコン一式その他本件に関係する一切の物」を差し押えるべき物とする捜索差押許可状を請求し,その発付を得た。警察官は,この令状に基づいて,捜索差押えの現場で,その内容を確認することなく,フロッピーディスク100枚を差し押さえた。
以上の手続に含まれる問題点について論ぜよ。
第 2 問
傷害事件の公判において,次の各場合に,犯行を目撃した旨のAの検察官面前調書を証拠とすることができるか。
1 Aは,公判期日に証人として出頭し,「はっきりとは覚えていない。」旨を繰り返すだけで,その外は何も述べなかった。
2 Aに対し,証人として召喚状を発したが,Aは外国に行っており,帰国は1年後の見込みであることが判明した。