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司法試験・択一問題
(平成6年・民法)


[H06-21] 次の文章中の( )の中に,3種類の適切な語を入れて文章を完成させた場合,(A)に当てはまる語句が使用される個数は,(A)自体を含めて何個か。
 「債権者取消権は,債務者の一般財産を保全するため,(A)において,債務者と( )との間の詐害行為を取り消した上,債務者の一般財産から逸出されたものを( )のために( )又は転得者から取り戻すことができるものとした制度であるから,( )債務者から( )に対する弁済行為を詐害行為として取り消し,取消しに係る弁済額の支払を求めた場合,( )は,その弁済額のうち自己の債権額に対応する按分額の支払を拒むことはできない。なぜなら,これを許すと,いちはやく自己の債権につき弁済を受けた( )を保護して( )の利益を無視することになり,制度の趣旨に反するからである。( )は,( )に対して,取消しに係る弁済額を自己に引き渡すべきことを請求することができることになり,これにより実際上は,( )が優先弁済を受けるのと同様の結果になってしまうが,( )が自己に引渡しの請求を許すのは,債務者から逸出された財産の取戻しを実効あらしめるためにやむを得ないことであって,取戻し後の金銭の分配手続について立法上考慮の余地があるにしても,そのことから直ちに,( )が自己の債権に対する按分額の支払を拒むことを認めることはできないと解すべきである。」
1.4個   2.5個   3.6個   4.7個   5.8個



[H06-22] 不動産登記は,物権変動の過程及び物権の現状を公示するという二つのことを目的としているが,次のアからカまでの見解は,これらの目的のどちらかをより重視したものである。これらの見解中,同じ立場に立つ見解の組合せとして適切なものはどれか。
ア 不動産がAからB,BからCに売却された場合,Bは既に所有権をCに対して譲渡しているが,Aに対して,直接所有権移転登記を請求できる。
イ 不動産がAからB,BからCに売却された場合,AからCに直接所有権移転登記する旨の特約があっても,CのAに対するその請求を認めるべきではない。
ウ 不動産がAからB,BからCに売却され,Bの同意を得ないで,AからCに直接所有権移転登記された場合,第三者は,Bの同寮がないことを理由として,その登記の無効を主張することはできない。
エ AのBに対する債権を担保するためにBの所有する不動産に設定された抵当権の登記が,被担保債権が弁済された後も抹消されずに残存していた場合,AとBの同意によりその登記を別の債権を担保するための抵当権の登記として流用しても,Aは,その流用後に利害関係が生じたCに対して,その抵当権を対抗することができる。
オ 不動産が仮装売買された場合の買主Aのための所有権移転登記は,Aが,その後実際に当該不動産の所有権を取得したとしても,有効になるものではない。
カ Aが申地をBに,乙地をCに売却したところ誤って,甲地がCに,乙地がBに売却されたように登記されてしまった。この場合,Cから乙地を買ったDは,BからDへの所有権移転登記を請求することができる。
1.アイオ  2.アエカ  3.イウエ  4.ウオカ  5.エオカ



[H06-23] Bは,Aからその所有地を建物所有の目的で賃借し,この土地上に建物を建てて所有権保存登記をした。その後,AはCに対して当該土地を譲渡した。この場合に関する下記のアからオまでの記述のうち,譲受人と貸借人との関係に関する「  」の中の見解から導き出されないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
 「借地関係を構成する個々の権利義務が,それぞれの債権・債務ごとばらばらに移転ないし引き受けられたと考えるべきでなく,これらの賃貸人の賃借人に対する権利義務は,土地所有権にいわば付随するものとして,土地所有権と一体として新土地所有者に移転する,と解すべきである。」
ア Cは,所有権移転登記さえすれば,賃貸人の地位を承継した旨の通知をしなくても,Bに対しそれ以降の賃料の請求をすることができる。
イ Cが土地を譲り受ける前の未払賃料も,賃貸借契約から生じた債権であるから,特に債権譲渡の合意がなくてもAからCに移転することから,Bがこれを支払わないときは,Cは当該賃貸借契約を解除することができる。
ウ Bの借地権の対抗要件は建物の登記であるから,賃借権譲渡の自由の特約を登記する方法はないが,AB間にその特約があれば,BはCに対してもこれを主張することができる。
エ AがCに所有権移転登記した後に,大雨が原因で土地の崖崩れが発生した。この場合において,Cが,AB間での賃貸借契約に基づくAの修繕義務を引き受けることを承認していないときは,Bは,資力のあるAに対して,その修繕を請求することができる。
オ Cが所有権移転登記をしていなくても,BがCを賃貸人と認めた場合Aは土地譲渡前の賃料不払を理由にしたとしても,当該賃貸借契約を解除することはできない。
1.アイ   2.アウ   3.イエ   4.ウオ   5.エオ



[H06-24] 次のアからカまでの事例のうち,それぞれAのCに対する主張が認められない場合の組合せとして適切なものはどれか。
ア A銀行が,Bと通謀してB名義の定期預金がされたように仮装したところ,事情を知らないBの債権者Cがこれを差し押さえたので,AがCに対してその債権が不存在である旨主張した。
イ BがAから建物を買い受けて,これをCに賃貸したところ,Aが,AB間の売買契約を詐欺を理由として取り消し,事情を知らないCに対して,その建物の明渡しを主張した。
ウ 先順位抵当権者Aが,Bに欺罔され抵当権の放棄の意思表示をした。その後,Aが詐欺を理由に放棄を取り消し,事情を知らない後順位抵当権者Cに対して,その取消しを主張した。
エ Cが,BのAに対する債権を譲り受け,その旨の通知をしたところ,Aがその債権の発生原因が公序良俗に反するとして,Cに対しその債権が無効であると主張した。
オ BのAに対する売買代金債権をBの債権者Cが差し押さえた場合において,AがBとの間の売買契約を無能力を理由として取り消した上,Cに対してその取消しを主張した。
カ AがC所有の土地を賃借し建物を建てた上,Bに当該建物を仮装譲渡し登記したところ,Cが賃借権の無断譲渡を理由としてAC間の賃貸借契約を解除した。この場合において,AがCに対して建物の譲渡が無効であると主張した。
1.アイ   2.アカ   3.イウ   4.ウオ   5.エカ



[H06-25] 請負人の担保責任に関する次の記述のうち,誤りの組合せは1から5までのうちどれか。
ア 注文者が目的物を第三者に譲渡した後は,注文者は目的物の瑕疵の修繕の請求や瑕疵の修繕に代わる損害賠償を請求することができない。
イ 目的物の瑕疵の修繕を請求するか,瑕疵の修繕に代わる損害賠償を請求するかは,注文者において選択できるが,瑕疵の修繕を請求することなしに,修繕に代わる損害賠償を請求することもできる。
ウ 目的物に契約をした目的を達することができないような,重大な瑕疵があるときは,注文者は,原則として契約を解除することができるが,瑕疵の修繕又は損害賠償を請求することはできない。
エ 注文者の与えた指図により目的物に瑕疵が生じた場合でも,請負人がその指図が不適当なものであることを知って,これを注文者に告げなかったときは,注文者は請負人に対して損害賠償を請求することができる。
オ 目的物が建物その他土地の工作物である場合は,完成した目的物に重大な瑕疵があって,契約をした目的を達することができないときに限り,注文者は,契約を解除することができる。
1.アイ   2.アオ   3.イウ   4.ウエ   5.エオ



[H06-26] 次のアからカまでの事例のうち,(  )中の前段に記載した者が後段の権利を相続することができないものの組合せとして,最も適切なものはどれか。
ア 二人の男子をもうけたAは,その所有する甲建物に長男夫婦と同居し,長男死亡後は,その妻Bの世話になって生活していたが死亡した。(長男の妻B:甲建物の所有権)
イ Aは,Bに対して貸し付けた金員の返還を受けないまま死亡したが,Aの長男はBの娘を妻としていたので,遠慮して相続放棄の手続をした。(長男の子C:Bに対する貸金債権)
ウ 甲地を所有していたAは,日ごろの虐待に激高した子Bによって殺害され,Bは殺人罪で実刑に処せられた。(Bの子C:甲地の所有権)
エ 甲地を所有するAはBを養子としたが,同人らの親族は,Aの実父CとBの実父Dのみであったところ,AとBは,交通事故に遭遇し,Aが現場で,次いでBが病院で死亡した。(Aの父C:甲地の所有権)
オ 未成年の子Cを抱えて生活に困窮していた寡婦Aは,唯一の親族である兄Bに扶養を求める申立てを家庭裁判所にした結果,扶養料として1か月3万円を支払うとの調停が成立したが,その扶養料の支払がされないまま,1年後に,Aが死亡した。(Aの子C:Bに対する未払の1年間分の扶養料債権)
カ 甲地を所有するAは,航空機事故により,長男Bと共に死亡したが,両名の死亡の前後は不明であった。(Bの子C:甲地の所有権)
1.アイエ  2.アイオ  3.アウカ  4.イウエ  5.ウオカ



[H06-27] 教授が,次の事例について,三人の学生に質問した。三人の学生はそれぞれの立場に立って議論をした。同じ学生が述べた意見の組合せとして最も適切なものは,後記1から5のうちのどれか。
 「Bは,所有者Aから預かっていた動産をCに売却したが,そのまま使用していた。Bは,その後,更にこの動産をDに売却したが,なお使用を継続している。C及びDは,動産を買い受けた際,それがBの所有に属するものと無過失で信じていた。」
ア 即時取得制度は,前主の占有を信頼して取得したものを保護するための制度であるから,譲受人の占有の取得の態様によって差異を設けるべきではない。
イ 即時取得は,外部から認識できる明確な占有の移転があった場合に認められる。
ウ 即時取得は,外部から認識できる明確な占有の移転がなくても認められるが,現実の引渡しを受けるまでは,目的物の所有権を確定的に取得することはできない。
エ Aが動産の所有権を主張することができることになる。
オ Dが動産の所有権を主張することができることになる。
カ A,C及びDは,お互いに動産の所有権を確定的に取得したことを主張することができない。
キ Dへの売却の後,Cに動産が現実に引き渡された場合には,Aが動産の所有権を主張することができる。
ク Dへの売却の後,Cに動産が現実に引き渡された場合には,Cはその際悪意であっても,動産の所有権を主張することができる。
ケ Dへの売却の後,Cに動産が現実に引き渡された場合には,Cはその際善意・無過失であったときに限り,動産の所有権を主張することができる。
コ Dへの売却の後,BからAに動産が返還された場合には,DはAに対して動産の引渡しを請求することができる。
1.アエク  2.アオコ  3.イエコ  4.イカケ  5.ウカキ



[H06-28] 次のアからオまでの記述のうち,誤っているものは何個あるか。
ア AはBに対し,甲市にあるA所有の建物をBの甲市への転勤を条件として売却するとの契約を締結した。その後当該建物は,Bの転勤未定の間に第三者の放火により焼失し,Bは,その後甲市に転勤した。この場合において,原始的不能か後発的不能かを決定する基準時を債権発生の時に求める見解によれば,危険負担の問題は生じないことになる。
イ Aは,Bに対しAの所有する別荘を売却したが,当該別荘は,その直前に類焼により焼失していた。この場合,Bは売買契約を解除することができる。
ウ Aは,C所有の建物をBに売却して引き渡しBから売買代金の半額を受領したか,その後,その建物が第三者の放火により焼失した。この場合,危険負担における債権者主義は,債権者が目的物の法律的支配を収めた時から適用されるとの見解によれば,Bは,Aに対して不当利得として支払済みの売買代金の返還を請求することができる。
エ AがBに対して,乙倉庫に保管されているA所有の輸入米のうちの1トンを売却する旨の契約を締結し,Bが乙倉庫に引取りに行く日時を定めていたが,Bが約定の日時に引取りに行かなかったところ,その後,乙倉庫は,放火により,保管されていた輸入米全部と共に焼失した。この場合,Bの売買代金支払義務は消滅しない。
オ AがBに対して,A所有の建物を売却したが,自己の責めに帰すべき事由により約定の日に所有権移転登記手続と引渡しをしなかったところ,地震により建物が倒壊してしまった。この場合,Bの売買代金の支払義務は,当然に消滅する。
1.0個   2.1個   3.1個   4.3個   5.4個



[H06-29] AがB所有の甲不動産をCに売却したという事例において,(1)Aが代理権がないのにBの代理人と称して売買契約した場合と,(2)Aが他人物売買の売主として契約をした場合とに関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているのは何個あるか。
ア (1)の場合において,Aの無権代理を知らなかったCが売買契約を取り消した後は,BはAの代理行為を追認することができないことになる。
イ (1)の場合において,CがBに対して表見代理の成立を主張することができるときは,CがBに対しAの代理行為を追認すべき旨を催告すれば,Bの確答がなくてもAの代理行為は確定的に有効になる。
ウ (1)の場合において,Aが自己に代理権がないことを知っていたときは,CがAの無権代理を知らなかったことにつき過失があってもCは,Aに対して民法第177条の無権代理人の責任を追及することができる。
エ (2)の場合において,Cが甲不動産の所有権がAに属しないことを知らなかったときは,Bが事後的にAの売買行為に同意したあとであっても,Cは,売買契約を解除することができる。
オ (2)の場合において,Bが事後的にAの売買行為に同意したときは,Bが売主になるから,Cは,Bに対して売買契約に基づく義務の履行を請求することができる。
1.1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個



[H06-30] 次のAからCまでの記述は,共同抵当制度の基礎となる見解である。下記アからオまでの記述のうち,A,B,Cのいずれからも導かれないものの組合せは,後記1から5までのうちのどれか。
A 共同抵当の目的である複数の不動産は,その価額の割合に応じて被担保債権を担保するものである。
B 共同抵当の目的である不動産に後順位抵当権者が存在する場合には,その者の保護が必要である。
C 共同抵当権者は,被担保債権の全額についてその目的である複数の不動産のいずれからも配当を受けることができるが,複数の不動産が同時に競売されるか順次に競売されるかによって最終的な配当の結果は異ならない。
ア 共同抵当の目的である複数の不動産が同時に競売される場合には,共同抵当権者は,各不動産からその価額の割合に応じた額の配当を受ける。
イ 共同抵当の目的である複数の不動産が順次に競売される場合には,先に競売された不動産上の後順位抵当権者は,他の不動産上の共同抵当権について代位する。
ウ 共同抵当の目的である複数の不動産のうち,ある不動産だけが先に競売された場合には,他の不動産上の後順位抵当権の順位が上昇する。
エ 共同抵当の目的である複数の不動産が同時に競売された場合,ある不動産上の後順位抵当権者は,その不動産以外からも優先的な配当を受けることができる。
オ 共同抵当権者が一部の不動産について抵当権を放棄した場合には,他の不動産上の後順位抵当権者に対して,放棄がなかったならば代位することができた限度において優先弁済を主張することができない。
1.アイ   2.アオ   3.イウ   4.イオ   5.ウエ



[H06-31] 次の記述のうち,誤っているものは何個あるか。
ア BがAから賃借していたA所有の機械を修理業者Cに修繕させ,これによりその機械の価値が上がったが,その後Bが修繕代金未払のまま倒産したため,CがAに対して不当利得返還請求をした場合,Cの損失とAの利得との間には,中間にBが存在していても,直接の因果関係が認められる。
イ Aが,Bに対する債務がないのを知りながら,Bが強行しようとした強制執行を避けるため,やむを得ず,Bに対し債務の弁済として給付をした場合,Aは,Bに対して不当利得の返還請求をすることができない。
ウ Aが,Bに対して未登記の建物を不法の原因により贈与した場合,その引渡しがされただけでは,いまだ「給付」があったとはいえないから,Aは,Bに対して不当利得として建物の返還を請求することができる。
エ Aが,Bに対し公序良俗に反する契約に基づいて金銭を支払った場合,A自身に一定の違法要因があれば,これと比較してBの違法性が圧倒的に大きくても,Aは,Bに対して不当利得の返還請求をすることはできない。
オ 不法原因給付の受益者がその利益を任意に返還する旨の契約は,民法第708条に違反し,無効である。
1.1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個



[H06-32] 次の「  」の見解を前提とした場合,下記アからオまでの記述のうち,この見解と矛盾するものの組合せとして適切なものは,後記1から5までのうちのどれか。
 「親権者が子を代理してする法律行為が,民法第826条の利益相反行為に当たるか否かについては,行為を客観的外形的にのみ判断すべきであるが,利益相反行為に当たらない場合であっても,親権者が子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることだけを目的にして行うなどその権限を濫用して法律行為をした場合においては,民法第93条ただし書の規定を類推適用して,その行為の効果は子に及ばないと解するのが相当である。」
ア 親権者が,専ら自分の事業の債務弁済に充てる意図で子を代理して第三者から金銭を借り受け,その債務を担保するために,子の不動産に抵当権を設定した場合,第三者がその意図を知り得なかったときは,親権者の当該行為の効果は子に及ぶことになる。
イ 親権者が,専ら子の養育費に充てる意図で,親権者の名において,第三者から金員を借り受け,その債権を担保するために,子を代理して子の不動産に抵当権を設定した場合,第三者がその意図を知っていたかどうかにかかわらず親権者の行為の効果は子に及ばない。
ウ 親権者が子の親戚が経営する会社の危機を救うために,親戚の債権者たる第三者のために,子を代理して子の不動産に抵当権を設定した場合,第三者がその意図を知り得なかったときは,親権者の行為の効果は子に及ぶことになる。
エ 生活の諸方面にわたり親権者と子の面倒をみていた子の祖父が負った金銭債務について,親権者が自ら連帯保証するとともに,子を代理して子の不動産に祖父の債権者たる第三者のために抵当権を設定した場合,第三者がその事情を知り得なかったときは,親権者の行為の効果は子に及ぶことになる。
オ 子の不動産の売却代金をもって親権者自身の債務を弁済する意図で,親権者が子を代理して子の不動産を第三者に売却した場合,第三者がその意図を知っていたときでも,親権者の行為の効果は子に及ぶ。
1.アウ   2.アエ   3.イウ   4.イオ   5.エオ



[H06-33] 民法第210条から第213条までは,袋地所有者の囲繞地通行権についての規定であるが,そのうち第213条は,共有物の分割又は土地の一部譲渡によって袋地を生じた場合には,袋池の所有者は,無償で残余地(分割によって生じた他の土地又は譲渡された残余の土地)についてのみ囲繞地通行権を有する旨を規定している。これらの囲繞地通行権に関する次の見解のうち,同一の見解に属するものの組合せとして最も適切なものはどれか。
ア 第213条の囲繞地通行権は,袋地に付着した物権的権利であり,残余地自体に課せられた物権的負担である。
イ 第210条から第213条までに規定する囲繞地通行権は,ある土地が他の土地によって囲繞されて公路に通じないという土地の物理的な属性だけを考慮して定められたものではない。
ウ 第213条の囲繞地通行権は,袋地と囲繞地の各所有者がだれであるかという対人的な要素をも考慮して定められたものである。
エ 第214条の囲繞地通行権は,第三者が残余地の所有権を取得した場合にも消滅しない。
オ 第213条の囲繞地通行権は,残余地が共有物の分割又は土地の一部譲渡があった当時の所有者の所有に属する限りにおいて,袋地の所有者が残余地を無償で通行することができるものとする。
1.アイオ  2.アウエ  3.アウオ  4.イウエ  5.イウオ



[H06-34] 次に掲げる命題Aと命題Bの間に,「AならばBであり,BならばAである」という関係が成り立つものは何個あるか。
ア A 自然人甲が出生した。
  B 自然人甲は権利義務の主体である。
イ A 自然人甲の権利能力が消滅する。
  B 自然人甲の財産につき相続が発生する。
ウ A 社団乙には法人格が与えられている。
  B 社団乙の代表者による取引に基づいて取得した不動産は,乙に帰属し乙名義の登記をすることができる。
エ A 社団乙に法人格が与えられている。
  B 社団乙の債務については,構成員の個人財産は責任財産とならない。
オ A 未成年者甲の親権を行う者がいなくなった。
  B 未成年者甲のために後見人が指定又は選任される。
1.1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個



[H06-35] Aが借地上に所有している建物についてBのために抵当権を設定した場合に関する次の記述のうち,正しいものの組合せはどれか。
ア Cは,Aから建物を賃借し,その建物に造作を設置していた。その後賃貸借が終了したためその造作を運び出そうとした。この場合,その造作には建物の従物として抵当権の効力が及んでおり,これを搬出することは抵当権を侵害するものであるから,BはCに対して搬出の禁止を請求することができる。
イ AがDに対し,建物を住居として期間5年で賃貸した場合,Aとしては建物の通常の利用をしたものであり,Bの抵当権を侵害するものではないから,Bは,Aに対して,損害賠償を請求することはできない。
ウ Aが土地の所有者Eに対する賃料の支払を怠ったため,Eが借地契約を解除した場合,借地権が消滅したのはEの行為によるものであり,Aの行為によるものではないから,Bは,Aに対して,損害賠償を請求することはできない。
エ Aの不在期間中にFが建物を不法に占拠した場合,Fの不法占拠はBの抵当権を侵害するものであるから,Bは,Fに対して,自分に建物を明け渡すことを請求することができる。
オ Aが建物の一部を解体し,Aの依頼を受けたGが解体後の木材を搬出しようとした場合,その木材にも抵当権の効力が及んでいるから,Bは,Gに対して,搬出の禁止を請求することができる。
1.アウ   2.アエ   3.イウ   4.イオ   5.エオ



[H06-36] AはB所有の建物を賃貸する契約をCとの間で締結したが,Aには,賃貸する権原がなかった。この場合に関する次の記述のうち,誤っているものの組合せはどれか。
ア Aが建物を自己の物と信じてCに賃貸した場合には,Bは,Aに対して,AがCから収受した賃料を不当利得として返還請求することができない。
イ CがAに対して賃料の支払を拒絶している場合には,Bは,Cに対して,未払の賃料相当額を不当利得として返還請求することができない。
ウ Bは,Cに対して建物の返還を請求することができ,Cは,賃借権をもってBに対抗することはできない。
エ Aに賃貸権原があることを契約の内容とした場合には,Cは,契約の無効を主張することができる。
オ AがBから建物の返還を請求され,Cに建物の使用収益をさせることができなくなった場合には,Cは,Aに建物を賃貸する権原がないことを知っていたときでも,担保責任を追及して損害賠償を請求することができる。
1.アウ   2.アオ   3.イエ   4.イオ   5.ウエ



[H06-37] 売主A・買主B間の売買契約において,Aが所定の期日にBの住所地に目的物を持参し,その引渡しと同時に代金を支払うべきものとされた。この場合の法律関係の説明として最も適切なものはどれか。
1.AB共に弁済の提供をしないまま履行日を徒過した場合,AもBも履行遅滞を理由とする損害賠償の責任を免れない。
2.AB共に弁済の提供をしないまま履行日を徒過した場合,Bが解除権を取得するためには,まず債権全額の支払の準備をした上で,相当の期間を定めてAに期日を催告し,催告期間が満了するまで弁済の提供を継続しなければならない。
3.Aが,履行日にBの住所地に目的物を持参したのに,Bが代金支払の準備をしていなかったので,目的物を持ち帰った場合,Bは,その後に債権全額支払の準備を調えて,その受領を催告すれば,爾後,履行遅滞の責任を免れる。
4.履行日にAがBの住所地に目的物を持参しなかった場合,Bが,履行日に代金支払の準備をしていても,催告をしていなければ,Aに対して,履行遅滞による損害賠償を請求することができない。
5.履行日にAがBの住所地に目的物を持参しなかった場合,Bは,履行日に代金支払の準備をしていても催告をしていなければ,履行遅滞の責任を免れない。



[H06-38] 不法行為事件において相当因果関係の有無が争いになっている場合につき,これを,(a)不法行為責任が成立するかどうかが問題になっている場合,(b)賠償されるべき損害の範囲が問題になっている場合,(c)賠償されるべき損害の金額への換算が問題になっている場合の三つに分けて解決しようとする考え方がある。次のアからオまでのような相当因果関係についての判断がされたとして,これらを(a)ないし(c)に分けた場合,(b)と(c)にそれぞれ当てはまるものの組合せのうち,最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。
ア 自動車事故により死亡した者の子Aが,留学先から葬儀のため飛行機にて帰国した場合,Aが飛行機代の支払を余儀なくされたことは,自動車運転者Bの不法行為と相当因果関係がある。
イ Aの船がBの過失で沈没した後,船の代金が著しく上昇しその後再び下落した場合,この中間最高価格による船の代価の喪失は,Bの不法行為と相当因果関係がない。
ウ Aが医師Bの治療を受けてから二日後に,突然重い症状の脳障害を示した場合,その発症の態様からみて,その脳障害は,医師Bの治療と相当因果関係がない。
エ 平均賃金より低い所得しか得ていなかったAがBの不法行為により死亡した場合,平均賃金に基づくAの逸失利益は,Bの不法行為と相当因果関係がない。
オ 自動車事故により受傷したAが,後遺症に悩んで1年後に自殺した場合,Aの自殺も,自動車運転者Bの不法行為と相当因果関係がある。
1.(b)アイ(c)エオ  2.(b)ウオ(c)アイ  3.(b)アオ(c)イエ
4.(b)イオ(c)アウ  5.(b)ウエ(c)イオ



[H06-39] 次の対話は,甲の死亡により開始した相続の相続人が妻Aと子B・Cである場合における「相続と登記」に関する教授と学生との問答である。教授の質問に対するアからシまでの学生の解答の中から,それぞれ適当なものを選んで一貫した立場からの解答を完成させる場合,最も適切な組合せはどれか。
教授: Bが相続を放棄した後に,Bの債権者Dが,相続財産に属する本件土地を,Bが共同相続をしたとの前提でBの法定相続分を差し押さえた場合,A及びCは,Dに対して,自己の持分の登記がなくても対抗することができますか。
学生:ア Bを相続人から除外した前提での法定相続分について対抗することができます。
   イ 本来の共同相続分についてのみ対抗することができます。
教授:それはどうしてですか。
学生:ウ 相続の放棄による相続分の変動は,第三者との関係では,相続によって取得した権利を他の相続人に移転したのと変わらないからです。
   エ Bは,初めから相続人とならなかったものとみなされるからです。
教授: その場合,CがDに対して主張することができる本件土地の持分の割合はどうなりますか。
学生:オ 4分の1です。
   カ 2分の1です。
教授: 設例を変えて,A,B及びCは,遺産分割の協議をして,本件土地をA,Cにそれぞれ2分の1の持分割合で取得させることにしました。Bの債権者EがBの法定相続分を差し押さえた場合,A及びCは,Eに対して,自己の持分を登記なくして対抗することができますか。
学生:キ 本来の法定相続分についてのみ対抗することができます。
   ク それぞれ持分2分の1について対抗することができます。
教授: それはどうしてですか。
学生:ケ 遺産分割には遡及効があり,A及びCは,甲から直接権利を承継したことになるからです。
   コ 遺産分割は,第三者との関係では,相続によって取得した権利につき分割時に新たな変動を生ずるのと異ならないからです。
教授: 君の立場では,相続の放棄の場合と遺産分割の場合との結論の異同をどう説明しますか。
学生:サ 相続の放棄は,相続開始後短期間にのみ可能であることなどから,第三者が利害関係を持つようになる可能性が小さいのに対して,遺産分割は,分割前の共同相続の外観を信頼して第三者が利害関係を持つようになる可能性がより大きくなりますから,絶対的に遡及効を生ずる相続放棄とは別に扱う必要があります。
   シ 相続放棄と遺産分割とでは,遡及効の強弱に差はあるものの,相続放棄後に生じた第三者との関係と遺産分割後に生じたそれとを区別する意味に乏しいと思われます。
1.アウカクケシ  2.アエカキコサ  3.アエカクコシ
4.イウオクケサ  5.イウオキコサ



[H06-40] AがBに対して負担している借入金債務について,CはAから委託を受けて連帯保証人となり,DはAから委託を受けて自己所有の土地に抵当権を設定した。この場合に関する次の記述のうち,正しいものの組合せはどれか。
ア CがBに対して弁済をした場合,Cは,弁済による代位の結果,Bが有していた債権と抵当権を取得するので,Aに対して求償権を行使することはできない。
イ CがBに対して弁済をし,弁済の結果取得したDに対する抵当権を実行する場合において,その被担保債権として扱うべきものは,Bが有していた債権であって,求償権ではない。
ウ CがAとの間で,求償権について法定利息と異なる約定利率による遅滞損害金を支払う旨の特約をした場合,この特約は無効である。
エ CがBに対して弁済した後AがCに対して内入弁済があったときは,Aに対する求償権とCが弁済による代位の結果取得したBが有していた債権のそれぞれに対して内入弁済があったものとして,それぞれにつき弁済の充当に関する民法の規定に従って充当される。
オ エの場合,AとCとの間で,これと異なる合意をすれば,Dに対して対抗することができる。
1.アイ 2.アオ 3.イエ 4.ウエ 5.ウオ






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