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司法試験・択一問題
(平成4年・民法)


[H04-21] 時効の援用権者に関する次の文章中の( )に,下記のアからシまでの中から適当な語句を選んで入れた場合,正しい組合せは後記1から5までのうちどれか。
 「時効を援用することができる当事者とは,時効による利益を直接受ける者に限られるとの一般論がある。この一般論は,(a)が時効を援用することができることを否定するに当たって裁判所により用いられた。(a)は,時効により間接的に利益を受けるにすぎないというのである。同時に裁判所は,(a)に時効の援用を認めると(b)という不都合があることを指摘した。しかし,(b)というのであれば,(c)に時効の援用を認める場合についても同様であるが,(c)が時効の援用権者であることは,問題ないとされてきた。そうすると,やはり利益の直接性の判断が問題でその決め手となるのは,(d)という点であろうか。ところが,その後,裁判所は(a)が時効を援用することを認めるに至った。そうすると,利益の直接性については,(a)には(d)という事情はないから,むしろ,(c)との共通点である(e)ことを重視しているとみるべきであろうか。そうなると,利益を直接受ける者と限定している意味がどこまであるのか疑問も出てくる。」
ア 連帯債務者  イ 保証人  ウ 抵当不動産の第三取得者  エ 抵当不動産の後順位抵当権者  オ 債務者の一般債権者  カ 自ら債務を負う  キ 他人のために債務を負う  ク 債務者の意思が無視される  ケ 担保権が消え被担保債権だけが残る  コ 弁済をすれば,債務者に対する求償権を取得し,法定代位が認められる  サ 債務者が無資力であれば,代位権を行使することができる  シ 債務者が時効の利益を放棄するのを阻止することができない
  abcde    abcde    abcde
1.ウクアカシ  2.ウケイカコ  3.エクアカコ
4.エケアキシ  5.オクイキサ



[H04-22] Aは,品種改良を重ねて特に優れた品質の花をつくり出した。この花は球根によって自己増殖するので,Aは,球根を適切に管理することで,その栽培による利益を独占的に享受できるはずだと考えた。この考えは,下記のアからオまでの解釈に基づくものであるが,これらのうち誤っているものの組合せは後記1から5までのうちどれか。
ア BがAから球根を盗み出して増殖させている場合に,Bの下で増殖した球根をA所有の球根の果実とみることができれば,Aは,所有権に基づいて,Bに対し,すべての球根の返還を請求できるはずである。
イ AがBに球根の増殖と切り花の販売をさせ,切り花の販売本数に応じて対価を徴収するため,Bに対して球根を賃貸した場合,第三者CがBの下で増殖した球根を盗み出して,増殖させていても,増殖した球根をA所有の球根の果実とみることができれば,Aは,所有権に基づいて,Cに対し,すべての球根の返還を請求できるはずである。
ウ AがBに球根を譲渡する場合,Bは球根の増殖と切り花の頒布はできるが,球根は第三者に譲渡することができない旨の特約を付しておけば,BがCに球根を譲渡しようとしても,Aは,右の特約に基づいて,Bに対し,球根をCに譲渡しないように求める権利を有するはずである。
エ Aから球根を譲り受けたBが,転売禁止の特約に違反して,悪意のCに球根を譲渡した場合,Bには譲渡権限がないから,善意取得の要件を満たしていないCは球根の所有権を取得できず,Aは,Bに対する特約上の権利を保全するために,BがCに対して有する物権的返還請求権を代位行使して,Cに対し,Cの占有する球根をAに引き渡すよう請求できるはずである。
オ 上記エの場合に,Cは法律上の原因なくして利益を得,それによりAは損失を受けているから,Aは,不当利得として,Cに対し,Cの占有する球根をAに引き渡すよう請求できるはずである。
1.アウ  2.アイオ  3.イウエ  4.ウオ  5.エオ



[H04-23] 次の文章中の( )内に適切な語句を入れると,権利能力のない社団に関する論述となる。最も多く使用された語句の使用回数と,次に多く使用された語句の使用回数との組合せとして正しいものは後記1から5までのうちどれか。
 「権利能力のない社団の法的地位については,できるだけ( )の規定を類推適用すべきであるが,両者を全く同一視することもできない。主務官庁の監督に服さないことや,法人の登記を経ていないことを無視すべきではないからである。
 権利能力のない社団の権利や義務については,( )に総有的に帰属するものと考えざるを得ない。その財産権の公示方法としては,預金債権などについては,( )である者の氏名に( )である旨の肩書を付けて,個人財産と区別することがしばしば行われているが,( )についても,実態にふさわしく肩書付の( )を認めるべきである。しかし,判例や実務はこれを認めないから( )が( )全員のための受託者として個人名で( )する方法が採られるのが一般的である。
 権利能力のない社団の債務については,( )は,原則としてその固有財産による責任を負わないというのが判例であるが,利益が( )に分配されるとか脱退に際して( )の払戻しが認められている営利団体の場合には,できるだけ( )の無限責任を認めるのが,そのような社団と債権関係に立つ( )の保護のために必要である。そして,( )が有限責任しか負わない場合には,社団債務について( )に担保責任を負わせるべきであろう。」
1.6回,5回  2.6回,4回  3.5回,4回
4.5回,3回  5.4回,3回



[H04-24] 「工事現場で労働者甲が乗っていた足場が倒れたため,甲が転落して受像した場合において,足場の所有者であり,かつ,雇用者である乙に対して,指害賠償請求をする場合における法的構成はどうなるか。」という問題に関する下記のAからFまでの記述の中から,同一の法的構成に関連のあるものを組み合わせた場合に,最も適切なものは1から5までのうちどれか。
A 事故発生から4年を経過した時点でも,損害賠償請求できる。
B 甲の損害賠償請求権を受働債権とする相殺は禁止されている。
C 損害賠償債務が遅滞に陥るのは,甲が履行の請求をした時である。
D 損害賠償債務が遅滞に陥るのは,損害が発生した時である。
E 過失相殺する場合でも,乙の賠償責任の全部を免除することができない。
F 甲が死亡したとき,その近親者は慰謝料請求権を保持しない。
1.ABF  2.BCF  3.ACF  4.ADE  5.BCE



[H04-25] 権利変動の過程と異なる登記が許されるかという問題について,「真正な所有権者は,全くの無権利者に対しては権利変動の過程と異なっても直接移転登記を求めることができるが,不動産が順次譲渡された場合には,全当事者が合意している場合を除き,権利変動の過程と異なる中間省略の移転登記請求は認められず,そのような登記は無効である。ただし,これは,中間者の正当な利益保護のためであるから中間者は,自己に正当な利益がない場合には,無効な中間省略登記の抹消を求めることができない。」との考え方に立った場合に,次の主張のうち認められないものの組合せは後記1から5までのうちどれか。
ア 通謀虚偽表示により甲から乙への不動産の所有権移転登記がなされたが,その後丙が甲から右不動産を買い受け代金を支払った場合に,乙に対して直接丙への所有権移転登記をするよう主張した。
イ 甲乙丙と不動産が順次譲渡され,更に丙から丁と戊に二重譲渡がなされた。登記は甲から丙,丙から丁へと移転登記がされている。乙は丙から代金を受領しておらず,中間省略登記に同意していなかった。戊は,甲から丙への中間省略登記は無効であり,抹消されるべきであると主張した。
ウ 甲乙丙と不動産が順次譲渡され,甲丙間に直接甲から丙へ移転登記をする旨の合意が成立したが,丙から代金を受領していない乙がこれに反対した。そこで甲は,丙からの移転登記請求は認められないと主張した。
エ 甲乙丙と不動産が順次譲渡され,中間者乙は甲から丙への直接の移転登記に同意しているので,丙は,これに同意していない甲に対し,直接丙への所有権移転登記をするよう主張した。
オ 甲乙丙と不動産が順次譲渡され,それぞれ代金が支払われた。登記は甲から直接丙に移転登記がされているが,乙はこれに同意したことはない。乙は丙に対し,移転登記を抹消するよう主張した。
1.アイオ  2.アウオ  3.イエオ  4.イウオ  5.ウエオ



[H04-26] 債務者が,代理権がないにもかかわらず債権者の代理人と称して代理権を行使する者を,真の代理人と誤信して,これに対し弁済をした場合に,債務者に対する保護について,A,Bの考え方がある。下記のアからカまでの記述を,それぞれA,Bの考え方に適合するよう分類した場合,正しいものは後記1から5までのうちどれか。
A 当該詐称代理人は民法第478条の「準占有者」に含まれるとする考え方
B 表見代理の規定によるものとする考え方
ア 民法第478条の債権の準占有者に対する弁済の規定は,債権がだれに帰属するのかという点についての外観に対する信頼を保護する規定である。
イ 代理権を有しない者が代理人と称した場合について,法律行為と弁済の受領とで結果が異なることは均衡を失する。
ウ 債務者を保護する見地からみると,例えば,証書と印章の窃取者が,本人と称するか代理人と称するかによって区別する理由はない。
エ 弁済者は,弁済すべき義務があるのであるから,ある程度急いだ弁済をすることもやむを得ない。
オ 新たな権利義務関係を生じさせる行為よりも既に発生している債権が消滅することの方が本人(債権者)にとって影響は少ない。
カ 大量取引の増加により証書と印章の確認による支払によって債務者が免責される必要があるとしても,それは取引約款等により処理されるべき問題として考えるべきである。
1.A ウエオ B アイカ  2.A イウカ B アエオ
3.A アエカ B イウオ  4.A アウオ B イエカ
5.A イエオ B アウカ



[H04-27] 次の文章中の( )内で,(A)に当てはまる語句が使われる回数は(A)自体を含めて何回か。
 「抵当権は,( )が占有を移さないで債権の担保に供した不動産につき,( )に優先して自己の債権の弁済を受ける担保権であって,抵当不動産を占有する権原を包含するものではなく,抵当不動産の占有は( )にゆだねられているのである。そして,( )が自ら占有し又は( )に賃貸するなどして抵当不動産を占有している場合のみならず,( )が何ら権原なくして抵当不動産を占有している場合においても,( )は,抵当不動産の占有関係について干渉し得る余地はないのであって,( )が抵当不動産を権原により占有し又は不法に占有しているというだけでは,抵当権が侵害されるわけではない。
 いわゆる短期賃貸借が(A)に損害を及ぼすものとして民法395条ただし書の規定により解除された場合も,右と同様に解すべきものであって,( )は,短期賃貸借ないしこれを基礎とする転貸借に基づき抵当不動産を占有する( )に対し,当該不動産の明渡しを求め得るものではないと解するのが相当である。
 したがって,( )は,短期賃貸借が解除された後,( )が抵当不動産の占有を継続していてい抵当権に基づく妨害排除請求として,その占有の排除を求め得るものでないことはもちろん,( )の占有それ自体が抵当不動産の担保価値を減少させるものでない以上,( )が,これによって担保価値が減少するものとしてその被担保債権を保全するため,( )の所有権に基づく返還請求権を代位行使して,その明渡しを求めることも,その前提を欠くのであって,これを是認することができない。」
1.4回  2.5回  3.6回  4.7回  5.8回



[H04-28] 後記1から5までの講学上の概念を,次のAからEまでの事例と結び付いた場合,どれとも結び付かないものはどれか。
A 必要があれば目的物を買い戻すことができる旨の特約をしている場合,必要が生じたため,売主がこの目的物を買い戻したいと考えている。
B 売買の申込書を普通郵便により発送したばかりの者が,目的物の評価を誤っていたため,電話により既に発送した申込みを解消したいと考えている。
C 売買契約をした後,目的物の仕入れが困難になったため,売主が買主の了解を得て売買契約を解消したいと考えている。
D 賃貸借契約をした後,賃借人が賃料の支払を怠ったため,賃貸人が催告をして賃貸借契約を解消したいと考えている。
E 売買契約をし手付金を支払った後,より高価に買い受ける者が現れたため,売主が買主に手付金の倍額を支払い売買契約を解消したいと考えている。
1.合意解除  2.法定解除  3.撤回  4.約定解除  5.取消し



[H04-29] 建物が転貸された場合における賃貸人A,賃借人(転貸人)B及び転借人Cの三者間の法律関係についての次の記述のうち,正しいものの組合せは後記1から5までのうちどれか。
ア BC間の転貸につきAの承諾がされた後,Cが建物の所有権をAから取得したことにより,賃貸人の地位と転借人の地位とが同一人に帰属した場合であっても,AB間の賃貸借関係及びBC間の転貸借関係を消滅させる合意がない限り,Bの賃借権及びCの転借権は消滅しない。
イ BC間の転貸につきAの承諾がされず,かつ転貸につきAに対する背信行為とならない特段の事由がない場合には,Bは転貸借契約が無効であるとしてCに対して建物の明渡しを請求することができる。
ウ BC間の転貸につきAの承諾がされず,かつ転貸につきAに対する背信行為とならない特段の事由がない場合には,AはBとの賃貸借契約を解除しなくても,Cに対して建物の明渡しを請求することができる。
エ BC間の転貸につきAの承諾がされた後,AがBの賃料不払を理由として賃貸借契約を解除した場合には,AはCに対して建物の明渡しを請求することができる。
オ BC間の転貸につきAの承諾がされた後,BがAに対し賃料を払わなかったため,AがCに対し賃料の支払を請求した場合には,CはBに対し賃料をその弁済期に支払ったことをAに対抗することができない。
1.アイウ  2.イウオ  3.アウエ  4.イエオ  5.アエオ



[H04-30] 甲は乙に対して金銭債権を有し,これを被担保債権として乙所有の家屋に抵当権の設定を受けた。他に抵当権者はおらず,家屋についての保険契約は締結されていない。確定的に抵当権が消滅する場合として正しいものの組合せは後記1から5までのうちどれか。
ア 甲がこの家屋の所有権を取得した場合
イ 第三者丙がこの家屋の所有権を時効により取得した場合
ウ 乙が残存元本のほか,最後の2年分の利息及び遅延損害金を支払った場合
エ 家屋が火災により全部消滅した場合
オ 保証人丁が,この金銭債権の残存債権を全額弁済した場合
1.アイエ  2.アイウエ  3.アイエオ  4.イウエ  5.ウエオ



[H04-31] 次のアからケまでは労務の利用を内容とする3種類の典型契約における特徴的なキーワードである。その3種類の契約によって分類した場合に組合せとして正しいものは後記1から5までのうちどれか。
ア 仕事の完成  イ 下請の原則的自由  ウ 指揮命令義務  エ 瑕疵修補請求権  オ 他人の事務の処理  カ 労務の利用者の死亡による契約の終了  キ 善管注意義務  ク 無償契約の原則性  ケ 製作物の原始的帰属
  契約T   契約U   契約V
1.アク    イエオキ  ウカケ
2.アイオ   ウエキケ  カク
3.オキク   アイエケ  ウカ
4.オカキク  アイエケ  ウ
5.イオカケ  アク    ウエキ



[H04-32] 次のアからクまでは相続における具体的な制度と後記の相続に関するAからEまでの考え方との対応関係を示したものである。これらの対応関係のうち,適切でないものの組合せとして正しいものは後記1から5までのうちどれか。
ア 相続人の無限責任−−−E  イ 代襲相続−−−A
ウ 寄与分−−−D       エ 遺留分−−−B
オ 配偶者相続権−−−D    カ 特別縁故者−−−B
キ 均分相続−−−E      ク 遺留分−−−C
A 血が親から子孫へと流れていくように,財産も受け継がれていく。
B 被相続人による死後の財産帰属の決定がない場合に,被相続人の意思を推定して財産を与える。
C 被相続人の財産に依拠して生活してきた相続人の生活を保障する必要がある。
D 相続人が被相続人の財産形成に貢献した場合には,相続人は,被相続人の財産中に潜在的持分がある。
E 債務が主体の消滅によって無に帰してしまうのでは,法的安定性に欠ける。
1.アエ   2.イオ   3.ウカ   4.エキ   5.オク



[H04-33] 「注文者ハ請負人カ其仕事ニ付キ第三者ニ加へタル損害ヲ賠償スル責ニ任セス但注文又ハ指図ニ付キ注文者ニ過失アリタルトキハ此限ニ在ラス」と規定する民法第716条の趣旨について,次のA・Bの二つの見解がある。下記のアからケまでの説明のうち,A・Bいずれか一方の見解についての記述を組み合わせたものは後記1から5までのうちどれか。
A 第716条の規定は,不法行為に関する一般原則を規定した第709条と同じことを注意的に規定したものである。
B 第716条の規定は,第715条の例外として注文者の保護のために立証責任を転換したものである。
ア この見解は,請負契約における注文者が,第715条にいう使用者に含まれることを前提としている。
イ この見解からは,請負契約における注文者が,第715条にいう使用者に含まれるか否か明確でない。
ウ この見解は,請負契約における注文者が,第715条にいう使用者に含まれないことを前提としている。
エ この規定は,注文者を保護する必要があることにかんがみ,その原則的な免責を規定するとともに,その注文又は指図に過失のある場合にのみ責任を負う旨を規定したものである。
オ この規定により賠償すべきものとされる損害は,注文者の注文又は指図と因果関係のある損害に限られる。
カ この規定により賠償すべきものとされる損害は,注文者の注文又は指図と因果関係のある損害に限られない。
キ この見解によれば,請負人の行為に故意又は過失のあることが必要である。
ク この見解によれば,請負人の行為に違法性も故意又は過失も必要でない。
ケ この見解によれば,請負人の行為に遵法性がある必要があるが,故意又は過失のあることは必要でない。
1.アエク  2.アカキ  3.イカキ  4.イオケ  5.ウカク



[H04-34] 土地の売主が詐欺を理由として売買契約を取り消した後に,買主が土地を第三者に売り渡した場合の売主と第三者との関係について,次のA説,B説の考え方がある。下記のアからオまでの記述のうち,いずれの説にも矛盾しないものの組合せは後記1から5までのうちどれか。
A説 取消後の第三者との関係は,先に登記をした者が優先する。
B説 取消後の第三者との関係は,民法第94条第2項の類推により規律される。
ア 売主と取消後の第三者との関係は,取消原因が詐欺でも強迫でも同じである。
イ 取消後の第三者は,悪意であれば保護されない。
ウ 法律行為は,取り消されると遡及的に無効になるから,対抗関係は生じない。
エ 登記には公信力がないから取消しの前後を問わず,取得時に第三者を保護する旨の規定がない限り第三者は保護されない。
オ 保護されない者は,登記を自己名義に回復できたにもかかわらず,それをしなかった者である。
1.アエ   2.アオ   3.イウ   4.イエ   5.ウオ



[H04-35] 強制履行の方法に関する次の見解を前提とした場合に,下記のアからカまでのうち,文章中の〔a〕の方法によるものはいくつあるか。
 「強制履行の方法としては〔a〕,〔b〕,及び〔c〕の三つがある。〔a〕によることができる場合,〔b〕によることはできない。〔b〕の方が心理的強制が強いからである。また,不作為債務については〔c〕によることはできない。」
ア 謝罪広告をする債務があるのに,広告をしない。
イ 通行を妨げてはならない債務があるのに,通路に障害物を置いて妨害している。
ウ 小説を執筆する債務があるのに,執筆しない。
エ 建物を撤去する債務があるのに,撤去しない。
オ 特定の建物に立ち入ってはならない債務があるのに,繰り返し立ち入っている。
カ 持定動産を引き渡す債務があるのに,引き渡さない。
1.1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個



[H04-36] 次の記述は「消滅時効」「除斥期間」「権利失効の原則」のいずれかに関する説明である。同じものについての説明の組合せとして正しいものは後記1から5までのうちどれか。
A 権利者が時の経過によって権利の行使ができなくなるという点では他のものと共通性があるが,一定の期間が定められているわけではない点に特色がある。
B 当事者が援用しなくとも裁判所が一定の期間の経過という事実により権利消滅の効果を認定しなければならない点に特色がある。
C 民法典はこの用語を用いてないので,個々の規定ごとに判断するほかはないが,一般に形成権に期間の制限が付いている場合は,これに当たるとみるのがふさわしいと解されている。
D 一定の期間の経過に権利消滅の効果を認める点では同様なものがあるが,中断が認められる点に特色がある。
E 即時取得の例外としての盗品又は遺失物の回復請求権や瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権の期間制限等がこれに当たる。
F 民法典は明文でこれを規定していないが,信義誠実の原則の一つの具体的な現れとしてこれを認めることができるといわれている。
1.ABF  2.ACE  3.AEF  4.BCD  5.BCE



[H04-37] 離婚による慰藉料と財産分与の関係について,「既に財産分与がなされた場合においても,それが損害賠償の要素を含めた趣旨とは解されないとき又はその額及び方法において分与請求者の精神的苦痛を慰藉するに足りないと認められるときは,分与請求者は,相手方の不法行為を理由として,別個に離婚による慰藉料を請求することを妨げられない。」との見解がある。次の記述のうち,この見解の理解として適切でないものの組合せはどれか。
ア 財産分与請求権と離婚による慰藉料請求権とは併存し得るが,離婚による慰藉料を請求するには,その前提として財産分与の請求をしなければならない。
イ 財産分与がなされた後に離婚による慰藉料を請求した場合には,その請求が認められないこともある。
ウ 財産分与の額及び方法を定めるについては,請求を受けた相手方の離婚についての有責性を考慮することはできない。
エ 財産分与がなされた後に離婚による慰藉料の請求がなされた場合には,裁判所は,財産分与の内容を慰藉料の観点から再審査しなければならない。
オ 家庭裁判所に財産分与の請求がなされると同時に,地方裁判所に慰藉料の請求がなされた場合には,相互に斟酌することができなくなるという批判があり得る。
1.アウ   2.アエ   3.イオ   4.イエ   5.ウオ



[H04-38] 次の文章中の( )には下記の〔 〕内の語句が入る。(A)と(B)に入る語句の使用回数((A)(B)に入る回数も含む)の組合せとして正しいものは後記1から5までのうちどれか。
 「銀行が不当利得した金銭を利用して得た運用利益について,銀行が(A)の場合,右運用利益の返還義務が問題となる。( )における( )の(B)者が利得の原物返還をすべき場合については,占有物の返還に関する民法189条第1項を類推適用すべきであるとの説があるが,本件( )の返還は価格返還の場合にあたり,原物返還の場合には該当しないのみならず,前記運用利益をもって果実と同視することもできないから,右運用利益の返還義務の有無に関して,右法条の適用を論ずる余地はないものといわなければならない。すなわち,たとえ,銀行が( )の( )者である間に得た運用利益であっても,同条の適用によってただちに銀行にその収取権を認めるべきものではなく,この場合右運用利益を返還すべきか否かは,もっぱら民法703条の適用によって決すべきものである。
 そこで,進んで本件におけるような運用利益が,民法703条により返還されることを要するかどうかについて考える。およそ,不当利得された財産について,( )者の行為が加わることによって得られた収益につき,その返還義務の有無ないしその範囲については争いのあるところであるが,この点については,社会観念上( )者の行為の介入がなくても不当利得された財産から( )者が当然取得したであろうと考えられる範囲においては,( )者の( )があるものと解すべきであり,したがって,そのような場合は( )に含まれるのであって,その返還を要するものと解するのが相当である。」
〔 不当利得 現存利益 因果関係 受益 損失 善意 悪意 〕
1.A−2回 B−2回 2.A−2回 B−3回 3.A−3回 B−2回
4.A−3回 B−3回 5.A−3回 B−4回



[H04-39] 次の会話中の( )に,下記のアからケまでの記述のうちから適切なものを選んで入れると,債権者が弁済を受領しない場合についての対話となる。使用されなかった記述の組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
教授:取立債務の場合には,弁済の提供はどのように行われますか。
学生:( )なので,口頭の提供で足ります。この場合( )が必要です。
教授:( )はどうですか。
学生:この場合にも口頭の提供で足りますが,( )が必要になります。
教授:口頭の提供も不要な場合は考えられませんか。
学生:( )には,口頭の提供も不要であるとされています。
教授:弁済の提供以外にどのような問題が生じますか。
学生:受領遅滞の問題が考えられます。( )には債務者は受領遅滞として契約を解除することができます。
教授:債務者は債務自体を消滅させることはできないでしょうか。
学生:供託をすることができます。債務者は,( )であっても,原則として口頭の提供をしてからでないと供託をすることはできないというのが判例の立場です。
ア 債権者が必要な行為をすれば,すぐに履行できる程度の準備
イ 債権者が翻意して受領しようとすれば債務者の方でこれに応じて給付を完了し得る程度の準備
ウ 債権者に帰責事由のある場合
エ 債権者に帰責事由のない場合
オ 債務の履行につき債権者の行為を要する場合
カ 債務の履行につき債権者の行為を要しない場合
キ 債権者の受領拒絶の意思が明白である場合
ク 債権者があらかじめ受領を拒絶している場合
ケ 債務者が弁済の準備もできないような不良な経済状態にある場合
1.ウカ   2.ウケ   3.エオ   4.エカケ  5.オキク



[H04-40] 次の記述のうち適切でないものの組合せは後記1から5までのうちどれか。
ア 書面によらない贈与は,取り消すことができるが,受贈者は贈与によって利益を受けるのみであるので,受贈者からの取消しはできない。
イ 書面に「売買契約書」とあっても,自己の財産を相手に無償で譲渡する意思が明白な場合や,その他の資料から,無償で譲渡することが判明した場合は,贈与が成立する。
ウ 書面による贈与は,贈与時までに書面が作成されなければならず,それ以後であった場合は,取り消され得る。
エ 書面によらない贈与における取消権は無能力者制度における取消権と異なり,期間の経過により,消滅しない。
オ 書面によらない贈与では,引渡しが終わると履行があったものとされる。動産の引渡しでは,現実の引渡しのほか,占有改定や,簡易の引渡しであっても,履行があったものとされる。
1.アウ   2.アエ   3.イウ   4.ウエ   5.エオ






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