[H03-21] 「家屋の賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは,同時履行の関係に立たない」との見解がある。次の記述のうち,上記見解の理由付けとして適切でないものの組合せは,後記1から5までのどれか。
ア 敷金は,賃貸借契約に関連して,家屋明渡しまでに賃貸人が賃借人に対して取得する一切の債権を担保することを目的とするものであるから,家屋明渡債務と敷金返還債務との間に同時履行の関係を認めることはこの敷金の性質に適合しない。
イ 敷金契約は,賃貸借に付随するものではあるが,賃貸借契約そのものではないから,賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは1個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にない。
ウ 賃借人に,敷金の性質に適合しない同時履行の抗弁権を認めなくても,留置権が認められるから,その保護に欠けることはない。
エ 家屋明渡債務と敷金返還債務との間に同時履行の関係を認めると,賃借人は,敷金の返還を受けるために事実上明渡しを強いられることになるが,それは賃借人保護の要請に反する。
オ 敷金から控除されるべき額は,明渡しがなされた後の室屋の調査によって初めて確定できるのだから,明渡しを先履行するのが実態に適合する。
1.アオ 2.イエ 3.イウ 4.ウエ 5.エオ
[H03-22] Aを売主,Bを買主とする100uの土地の売買において,登記関係の書類には目的土地の面積の表示があったが,土地の引渡しを実際に受け実測したところ10u不足していた。売買当時その土地の地価は,1u当たり1万円であったが,現在は1u当たり10万円である。この場合に,BがAに対して面積不足を理由に金銭の支払を請求し得るかという問題に関し,(甲)100万円の請求権を有する(乙)10万円の請求権を有する(丙)請求権を有しないという結論があり得る。次の記述のうち(乙)と結び付き得るものの組合せは,後記1から5までのどれか。
ア Aは,表示どおりの面積を有する土地をBに取得させる債務を負っていたのだから,Bに対して債務不履行による損害賠償の責任を負う。
イ Aは,表示どおりの面積を有する土地をBに取得させる債務を負ってはいないが,売買契約の対価性を維持するための担保責任を免れることはできない。
ウ Aは,表示どおりの面積を有する土地をBに取得させる債務を負うものではないが,一種の保証約束をしたものとみなされ,約束違反を理由とする責任を負う。
エ 登記簿記載の面積は必ずしも実測面積とは一致するものではないから,売買契約において,目的たる土地の面積を登記簿記載の面積をもって表示したとしても,これをもって数量を指示して売買したものということはできない。
オ 売買の対象である特定の土地の面積が表示され,その表示上の面積を基礎として代金額が決定された場合でも,その土地が表示どおりの面積を有するものではない以上,表示どおりの面積を有する土地を買主に取得させる債務は成立しない。
カ 特定の土地から,表示された面積を有する区画を分筆して売買することが合意されたときには,表示どおりの面積の土地を給付する債務が発生する。
1.アエ 2.アカ 3.イエ 4.イオ 5.ウエ
[H03-23] 甲所有のA不動産を乙が占有し,取得時効が完成した場合,乙の所有権と登記の関係について述べた次の文章のうち,判例の立場と異なるものは何個あるか。
ア 乙の取得時効完成後,未登記の間に甲が死亡し,甲の長男丙がA不動産について相続登記したときは,乙は丙に対し時効による所有権取得を対抗できない。
イ 乙の取得時効完成後,未登記の間に甲の債権者丙が甲からA不動産に抵当権の設定を受けて登記したときは,乙は時効取得を理由に甲から所有権移転登記を受けることができない。
ウ 乙の取得時効完成前に,丙がA不動産を買い受けて登記したときは,その後乙の取得時効が完成しても,乙は丙に対し時効による所有権取得を対抗できない。
エ 乙の取得時効完成後,丙が甲からA不動産の贈与を受けたか未登記のときは,乙は未登記であっても丙に対し時効により所有権を取得したことを対抗できる。
オ 乙の取得時効完成後,未登記の間に丙が甲からA不動産を買い受けて登記したときは,乙が更に占有を続け,再度の取得時効期間が経過したとしても,乙は登記なしには,丙に対し時効による所有権取得を対抗できない。
1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個
[H03-24] 売買について,法律に次のような規定があったとした場合,これらの規定の解釈として最も適切でないものは後記1から5までのうちどれか。
第A条 売主は,買主に対して代金の支払及び引渡しの受領を請求することができる。
第B条 買主の引渡受領義務には,売主による引渡しを可能にするため買主に合理的に期待されるすべての行為を含むものとする。
第C条 契約上,買主が目的物の形,寸法その他の形状を指定する場合において,売主の請求により合理的期間内にその指定をしなかったときは,売主は自らその形状を決定することができるものとする。
第D条 契約違反において,損害賠償を請求しようとする当事者は,その損害を軽減するために合理的な措置をしなければならない。その措置をしなかった場合には,損害賠償請求額から,軽減されるべき額を減額されるものとする。
1.売主は,受領遅滞による損害賠償請求権を有するとともに,目的物を受領させる権利を有すると考えられる。
2.買主が,目的物の形状の指定を売主が請求したにもかかわらず,合理的期間内に指定しなかったときは,売主には引渡受領請求権が生ずるものと考えられる。
3.買主が,目的物の形状の指定を拒み,売主自ら決定した場合,その間物価の騰貴により目的物の見積額を大きく超えたときは,買主はその見積代金額を支払えば良いものと考えられる。
4.買主が,目的物の購入中止を言明し,売主の請求にもかかわらず,目的物の形状の指定をしなかったときは,売主は目的物を購入しなくても,損害賠償を請求することができるものと考えられる。
5.買主が,目的物の受領を拒み,売主の請求にもかかわらす,形状の指定をしなかったときは,売主は,損害賠償を請求しようとする場合,損害を軽減するための合理的な措置をしなくても,損害賠償額を減額されることはないと考えられる。
[H03-25] 図のようにA地が袋地である場合に,A地の所有者甲の囲繞地通行権に関する次の記述のうち,適切なものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 乙が一筆の土地をA地B地に分筆した上,A地を甲に譲渡した場合,B地に乙が居住し,丙所有のC地が空き地であるときには,甲は,B地について通行権を主張できないが,C地について通行権を主張することができる。
イ A地を譲り受けた甲は,A地について所有権移転登記を得ていないときは,B地C地のいずれについても通行権を主張できない。
ウ AB両地の所有者乙が,A地を甲に譲渡した場合,その後甲がC地を譲り受けたときは,甲はB地について通行権を主張できない。
エ 乙が一筆の土地をA地B地に分筆した上,A地を甲に譲渡した場合,その後乙が丙にB地を譲渡したときは,甲はB地C地のいずれについても通行権を主張できない。
オ 甲が一筆の土地をA地B地に分筆した上,B地を乙に譲渡した場合,甲は,自ら袋地を作り出したのであるが,B地について通行権を主張することができる。
1.アウ 2.アエ 3.イエ 4.イオ 5.ウオ
[H03-26] 次の( )内に,下記アからシまでの用語から適当なものを入れて完全な文章とした場合,1回も使用しないものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
「医療過誤により損害を受けた場合に,その賠償を請求する方法として( )責任を追及する方法と( )責任を追及する方法とが考えられる。後者については( )というよりは,債務の本旨に従った履行をなさない場合であるから( )であるというべきである。この場合の治療行為者と患者との関係であるが,患者が治療行為者に対して,治療行為という事務を委託するものであるから( )とみることができ,また,治療行為という仕事の完成を委託するものであるから( )とみることもできる。
ところで患者が意識不明の状態で病院に運び込まれた場合に,治療行為者と患者との間にどのような法律関係が生ずるかが問題となる。治療行為者と患者を運び込んだ者との間に( )が成立すると考えることもできるが,患者が受益の意思を表示せぬまま死亡した場合に問題が残る。( )とみることも可能であるがこれにより( )責任を追及することはできないので,( )責任を追及するしかないことになる。この場合には,請求者に大幅な立証責任が課されるため請求者にとって不利である。」
ア 債務不履行 イ 履行遅滞 ウ 履行不能 エ 不完全履行
オ 無権代理 カ 不法行為 キ 雇用 ク 委任
ケ 準委任 コ 請負 サ 事務管理 シ 第三者のためにする契約
1.アオキサ 2.アエキク 3.イエケシ
4.イオキク 5.ウオケコ
[H03-27] 次の記述のうち誤っているものは何個あるか。
ア 自働債権が時効によって消滅している場合には相殺することができないが,相手方は時効利益を放棄して相殺することができる。
イ 自働債権は,原則として,相殺者が被相殺者に対して有する債権であることを要するが,保証債務者は,主債務者が被相殺者に対して有する債権をもって相殺することができる。
ウ 相殺の意思表示に条件を付けることはできないが,期限を付けることはできる。
エ 不法行為による損害賠俺債権については,一方的意思表示による相殺は,これを自働債権としても受働債権としてもできないが,契約による相殺はできる。
オ 債権が差し押さえられた場合,第三債務者は,差押え後に取得した債権を自働債権とする相殺を差押債権者に対抗できないが,差押債務者は,第三債務者が差押え後に取得した債権を受働債権として相殺することができる。
1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個
[H03-28] 次のアからサまでの学生の発言の中から,適切なものを選んで対話を完成させた場合に,最も適切な組合せは,後記1から5までのうちどれか。
教授:抵当権付債権譲渡について,その債権が当初から不成立であったもの又は既に消滅していたものであったのに,債務者が異議を留めない承諾をした場合,債務者が抵当権の消滅ないし不存在を主張できるときがありますか。
学生:ア ありません。
イ 債権が当初から不成立のときには抵当権の不存在を主張できます。
教授:それはどうしてですか。
学生:ウ もともと抵当権は存在していなかったのですから,譲受人がこれを取得する余地はないと考えるからです。
エ 民法第468条第1項は,債権譲渡に対する異議をとどめない承諾に公信力を認めた規定ですが,その精神を債権に付従する抵当権にも及ぼすべきであると考えるからです。
教授:いったん消滅したはずの抵当権消滅を主張できない場合,登記をどう考えますか。
学生:オ 新たに登記をする必要があります。
カ 新たに登記をする必要はありません。
教授:それでは,債権が既に消滅していたのに債権者が,異議をとどめない承諾をした場合,物上保証人は抵当権消滅の主張ができますか。
学生:キ できません。
ク できます。
教授:それはどうしてですか。
学生:ケ 抵当権消滅による物上保証人の利益を,債務者の一方的な承諾によって奪うことは相当でないと考えるからです。
コ これを肯定すると,抵当権が相対的に存在することになるからです。
サ 物上保証人に関しては,抵当権復活の問題は抵当権登記の公信力の問題として考えるべきですが,一般的に登記には公信力は認められないからです。
1.アエオキコ 2.アエカクコ 3.イウオクケ
4.イウカクケ 5.イエオキサ
[H03-29] 次のアからカまでの問答のうち学生が誤った答えをしているものは何個あるか。
ア教授:主たる債務がなければ保証債務が成立しないことは知っているね。
学生:はい,ですからまだ現実には発生していない将来の債務のための保証をすることはできません。
イ教授:保証債務は内容や態様において主たる債務より軽いことは差し支えないが,保証人が同意している場合,重くなってもよいかな。
学生:同意があれば構いません。保証人の保護に欠けるところがないからです。
ウ教授:親戚が銀行から金を借りることになり,私はその銀行をよく知っていたので保証人になったのだが,その債権が全然知らない他の金融機関に譲渡された場合,私の保証債務はどうなるかね。
学生:保証債務も新しい金融機関に移ります。
エ教授:主たる債務者について生じた事由の効力は原則として保証人に及ぶのだが,主たる債務者が破産した場合にはどうなるかね。
学生:保証人は,求償権の確保ができなくなるので,免責されます。
オ教授:保証人が主たる債務者にだまされて債権者と保証契釣を結んだ場合,保証人は保証債務の履行を拒絶できないのかね。
学生:保証契約は保証人と債権者との間の契約によって成立し,保証人と主たる債務者との内部事情は関係しませんから,債権者が詐欺の事実を知っているか否かにかかわらず,保証人は履行を拒めません。
カ教授:特定物売買の売主のために保証人になった者は,契約解除に伴う損害賠償義務について責任を負うだろうか。原状回復義務についてはどうかな。
学生:損害賠償義務についてはもちろん,特に反対の意思表示のない限り,原状回復義務にも及ぶと考えます。
1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個
[H03-30] 「特定物売買において目的物に契約当初から瑕疵があるのに,買主がそれを知らずに瑕疵のない物と信じて契約を締結した場合について,買主は錯誤と瑕疵担保責任のいずれを主張できるか」という問題に関する次の記述のうち,同じ主張に属するものの組合せとして,最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。
A 瑕疵担保責任は1年で消滅するのに,錯誤の主張がいつまでもできるのは,取引の安全を害する。
B 錯誤と瑕疵担保責任とは,このような場合,いずれも買主保護の機能を有するものである。
C 錯誤は有償契約・無償契約を問わずに適用されるが,瑕疵担保責任は有償契約に関する特別である。
D 買主が目的物について一定の品質を有することが重要であるとして表示している場合には,契約責任を追及する前提を欠いている。
E 錯誤の主張は,瑕疵担保責任との均衡上1年の期間制限に服することになる。
F 瑕疵担保責任は,契約の特性に応じた定めを持つのに対して,錯誤は無効という効果を発生させるだけのものである。
1.ABE 2.ACF 3.ADE 4.BCE 5.BCF
[H03-31] 「A所有の甲不動産がAからBへ,BからCへと売買された後,AがBの売買代金不払を理由としてAB間の契約を解除した場合,AC間の関係はどうなるか。」という問題に関する次のaからdまでの見解について下記のアからオまでの記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
a 解除により,解除者と買主との間の物権変動は遡及的に消滅するから第三者たる転買主は初めから権利を取得しないこととなるはずである。民法第545条第1項ただし書は,こうした第三者を保護するための規定であるから,第三者は対抗要件なくして解除者に対して自己の所有権を主張することができる。
b 解除の効果についてはa説と同じだが,第三者が民法第545条第1項ただし書の保護を受けるためには,契約解除の時に登記を備えることが必要である。
c 解除によっても売買契約は失効しないが,未履行の債務については履行拒絶権を,既履行の債務については原状回復請求権を生じ,この債権債務関係の効果として買主から解除者への物権変動が生ずる。この物権変動と買主・第三者間の物権変動との間に対抗問題が生ずる。
d 解除の効果についてはa説と同じだが,物権変動に独自性及び無因性を認め,買主・第三者間の物権変動は解除による影響を受けず,この物権変動と買主から解除者への物権変動との間に対抗問題が生ずる。
ア 甲不動産が未登記の場合は,いずれの説によっても,CはAに対してその所有権を主張できない。
イ 契約解除の当時甲不動産の登記名義がAである場合でも,a説によれば,CはAに対してその所有権を主張できる。
ウ 契約解除の当時甲不動産の登記名義がBである場合,b説によれば,Cはその後Bから登記を受けても,Aに対してその所有権を主張できない。
エ 契約解除の当時甲不動産の登記名義がBである場合,c説によれば,CがBから先に登記を受ければ,CはAに対してその所有権を主張できる。
オ d説によれば,Cは契約解除の当時甲不動産の登記名義を有している場合に限り,Aに対してその所有権を主張できる。
1.アイ 2.アオ 3.ウエ 4.イウオ 5.イエオ
[H03-32] 民法第395条の短期賃借権の保護に関し,「民法第602条の定める期間を超える賃貸借の賃借人も,同条の定める期間内は抵当権者に対抗することができる」という見解がある。次の記述のうち,この見解に対する批判となり得るものの組合せは後記1から5までのうちどれか。
A 民法の起草者は短期賃貸借は,管理行為であるがゆえに,抵当権者はこれを是認すべきであるとしていた。
B 抵当権者は,抵当権を設定する際に短期賃貸借が成立する場合があり得ることを考慮して,抵当不動産の担保価値を評価することができる。
C 抵当権者に損害を及ぼす短期賃貸借については,抵当権者に解除請求が認められている。
D 民法第395条は,保護を受ける短期賃貸借の内容について,「第602条ニ定メタル期間ヲ超エサル」と規定している。
E 抵当権の設定後になされる賃貸借は,その多くが真正な利用目的を有せず,賃貸条件の内容も合理的でない濫用的な賃貸借である。
1.ABD 2.ACE 3.ADE 4.BCD 5.BDE
[H03-33] 次の(ア)から(オ)までに下記AからFまでの文章のうちから適切なものを入れると法定地上権に関する記述なる。その順序として最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。
「(ア),というのが判例である。(イ)からである。この根拠を押し進めると(ウ),という見解がでてくる。また(エ),という点を重視すると,(オ),という見解も成り立ち得ることになる。しかしこれに対しては法定地上権の成否・内容は外形的・客観的基準によるべきであるとの立場を前提とした前述の判例に反するとの批判もあろう。」
A 抵当権設定当時は更地であっても抵当権設定者が建物の築造をあらかじめ承諾していた場合には,抵当権設定後に築造された建物について,法定地上権の成立が認められる
B 土地抵当権者が旧建物から新建物へのたてかえを予定して土地の担保価値を算定したという事情がある場合には,新建物を基準とする内容の法定地上権を認めることができる
C 土地抵当権の設定時に存在した建物が取り壊された場合でも,その後再築されたときには新建物について旧建物を基準とする内容の法定地上権が成立する
D 土地抵当権者が法定地上権の制限を受ける土地として担保評価している以上,法定地上権の成立を認めても抵当権者に損害が生ずるおそれはない
E 土地抵当権者が,旧建物の存在を基準とする内容の法定地上権の成立を考慮して,土地の担保評価をしている
F 法定地上権の成否・内容を検討するに当たっては,買受人や後順位抵当権者等が不利益を受けないかどうかも考慮する必要がある
1.ADBEC 2.BDAFC 3.CEBDA
4.CFAEB 5.FECDB
[H03-34] 虚偽表示の無効を対抗できない善意の「第三者」とは,「虚偽表示に基づいて新たにその当事者から独立した利益を有する法律関係に入ったために,虚偽表示の無効を主張する者と矛盾する法律上の利害関係を有するに至った者である」と理解されている。次の事例のうち,ここでいう「第三者」に当たるものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 不動産が仮装譲渡された場合に,仮装譲受人からその目的物について抵当権の設定を受けた者
イ 不動産が仮装譲渡された場合に,その目的物を差し押さえた仮装譲受人の一般債権者
ウ 1番抵当権が仮装放棄された場合に,その目的物について順位の上昇を主張する2番抵当権者
エ 仮装債権が譲渡され,仮装債務者にその旨の通知がなされた場合に,弁済を請求する仮装債権の譲受人
オ 債権が仮装譲渡された場合に,債権取立てのためにその債権を譲り受けた者
1.アイウ 2.アイエ 3.アエオ 4.イウエ 5.イウオ
[H03-35] 「時効は実体法上の権利の得喪を生ずるものであるが,この権利の得喪は時効の完成によりその効果が発生するのではなく,その援用によってはじめてその効果が発生し確定的となる。」との見解があるが,この見解と一致しないものの組合せは後記1から5までのうちどれか。
ア 時効が完成した後に債務を弁済したら時効の援用をしないとの表示をしたとされ,その債権が復活しそれに対し弁済したこととなる。
イ 時効の援用は当事者の自由な意思による。
ウ 援用権者が二人いるとき,そのうちの一人が援用しても,もう一人にその効力は及ばない。
エ 時効は,権利の発生及び権利の消滅であると民法に規定されているから,文言どおりに解釈すべきである。
オ 時効の援用は,時効の完成の法的証拠を裁判所に提出することにより効力を生ずる。
1.アウオ 2.アエオ 3.イウエ 4.イエ 5.ウオ
[H03-36] 連帯債務者のうちの一人が死亡し,複数の相続人が相続したとき(遺産分割前),他の連帯債務者と各相続人との債務負担部分については二つの見解がある。同じ見解の組合せは後記1から5までのうちどれか。
A 共同相続財産の法的性質は共有である。
B 連帯債務が可分給付であることは,債権者が給付の一部を債務者に,その他の部分を他の債務者に請求することを認めている民法第432条からも明らかである。
C 連帯債務者の間に不等額の連帯関係が生じることは法律関係を複雑化する。
D 債権者は本来被相続人に属する財産を引き当てとしていたのであるから,相続開始後もこの引当財産から弁済を受けることが認められれば必要にして十分である。
E 相続を契機として連帯債務の担保的機能が弱められることは好ましくない。
F 債権者は,性質による不可分債務を広く認めることにより,又は相続財産の分離の制度により保護される。
G 相続は地位の承継であるから,債務の連帯性もそのまま承継されるべきである。
H 相続人は相続を放棄し又は限定承認することも自由であるし,単純承認をした場合でも自己の出捐については求償権を有する。
1.ABDF 2.ACDH 3.ADEH
4.BCGH 5.BEFG
[H03-37] 受領遅滞に関する次のAからHまでの記述を後記1から5のように組み合わせた場合,矛盾した記述を含まないものはどれか。
A 受領遅滞による責任は誠実な債務者を救済し,債権者債務者間の公平な調整のために法が特に課したものである。
B 受領遅滞が解消した場合,債務者はその段階で改めて履行しなければならない。
C 債権債務関係は当事者の信頼の上に立つ一種の共同体を構成するものであり,債務内容の実現も両当事者の協力がなければ達成できない。
D 受領遅滞の効果としては,基本的には,債務者の責任の軽減にとどめるべきである。
E 債務者は受領義務違反によって生じた損害につき,債務不履行として,損害賠償を求めることができる。
F 債務者は,受領の可能なときは相当期間を定めて催告し,受領の不能なときは,直ちに契約を解除することができる。
G 受領遅滞の後に履行不能となるときは,それが不可抗力に基づく場合でも,債権者の責めに帰すべき事由による履行不能と解すべきである。
H 受領遅滞の要件としての受領拒絶又は受領不能は,債権者の責めに帰すべき事由に基づくことを要しない。
1.ABDH 2.ACDF 3.AFGH
4.BEGH 5.CDEF
[H03-38] Aが自己所有の特定動産をBに売り渡したが,いまだその代金が支払われていない場合に生ずる法律問題を論じた次の記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 売買契約締結の時に目的物の所有権がAからBに移転したという前提を採ると,Bから目的物を転得したCがAに目的物の引渡しを請求した場合,Aは,代金を受領していないことを理由として目的物の引渡しを拒絶することはできない。
イ 代金の完済まで所有権は移転しないという前提を採ると,目的物に関してBが有する債権を譲り受けたCがAに目的物の引渡しを請求した場合,Aは,代金を受領していないことを理由として目的物の引渡しを拒絶することはできない。
ウ 先取特権は他物権であるから,代金の完済まで所有権は移転しないという前提を採ると,目的物がBに引き渡されていたとしても,AのBに対する代金債権を担保するための動産売買先取特権が成立する余地はない。
エ 売買契約締結時に所有権が移転するという前提を採ると,AがBに対して占有改定をなした後にDに対して同一物を譲渡して現実の引渡しをなした場合,Dは,AB間の事情につき善意無過失でなければ,目的物の所有権を取得できない。
オ BはAに対して弁済期の到来している反対債権を有していたが,相殺の意思表示をしないうちに,AがBに対する代金債権をDに譲渡して,その旨をBに通知した場合,Bは,もはや,相殺を主張することができない。
1.アイウ 2.アイオ 3.アウエ 4.イエオ 5.ウエオ
[H03-39] 甲所有の土地を乙が丙に売り渡す契約を締結した場合についての次の記述のうち,契約の効果が甲に帰属する場合は何個あるか。
ア 乙が甲になりすまし,丙が乙を甲と過失なく誤信した場合。
イ 甲から土地売却の代理権を与えられた乙が甲の代理人であることを告げなかったが,乙が代理人であることを丙が知ることができた場合。
ウ 甲から土地売却の代理権を与えられた乙が甲になりすまし,丙が乙を甲と誤信した場合。
エ 甲から土地売却の代理権を与えられた乙が自己の利益を図るつもりであるのに甲の代理人であると告げ,丙が乙の意図を過失なく知らなかった場合。
オ 甲から土地に抵当権を設定する代理権を与えられた乙が甲になりすまし丙が乙を甲と過失なく誤信した場合。
1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個
[H03-40] BがAから建物を賃借しその引渡しを受けた。Bがこの建物から立ち退かなければならない場合を以下のような論理式にまとめた。ただし,( )は小括弧,{ }は中括弧〔 〕は大括弧である。□の中には,「∩(かつ)」若しくは「∪(又は)」が入る。「∩」は何個使われるか。
〔a□{b□(c□d)}〕□〔e□{f□(c□g)}〕
a AはCからその建物を賃借していた。
b CはAがBにその建物を賃貸することを承諾していなかった。
c CA間の契約は期間の満了により終了した。
d Cは,Bに対し,AC間の賃貸借の終了を6月前に通知した。
e Aはその建物を建てるために,土地をCから賃借していた。
f CA間の契約は,Aの債務不履行により解除された。
g Aは建物買取請求権を行使しなかった。
1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個