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司法試験・択一問題
(平成7年・憲法)


[H07-01] 次の教授甲と学生乙の会話中の〔 〕内に適切な語句を挿入すると,選挙の原則に関する正しい会話となる。後記1から5までは,〔 〕のAからEに挿入する語句と,アからオに挿入する語句とを組み合わせたものであるが,挿入すべき語句として正しいもの同士の組合せはどれか。
甲「ドイツ基本法は,ドイツ連邦議会の議員の選挙に関して,近代選挙法の原則を宣言しているが,知っているかね。」
乙「はい。思い浮かんだ順に挙げますと〔A〕・〔B〕・〔C〕・〔D〕・〔E〕の五つの原則があったと思います。」
甲「これらの原則は,立憲主義を採用している国においては,ほぼ共通の原則となっているといえるが,それでは,この原則を我が国に即してみてみよう。まず,〔A〕の原則について知っていることを述べてみたまえ。」
乙「この原則は,憲法上は明文の規定はないが,憲法が代表民主制を採用していることから,自明の原理と考えられているのではないでしょうか。」
甲「一般には,そのように理解されているようだね。ただ,この原則に関連して憲法の規定があるのではないかね。」
乙「選挙運動の自由は憲法第21条第1項を根拠に導き出すことができますし,また憲法第15条第4項及び第19条から,強制投票の禁止あるいは棄権の自由か導き出されると思います。」
甲「それでは,〔B〕の原則についてはどうかね。」
乙「これは〔ア〕と対置されるもので我が国では,第二次大戦後になってようやく女性に選挙権が認められ,完全に実現されたようです。」
甲「次に,〔C〕の原則について述べてごらん。」
乙「これは,歴史的には〔イ〕と対置されるものでしたが,最近では,選挙区により選挙人の投票の価値が大きく異なる場合に,この原則に違反しないかどうかが,しばしば問題となります。」
甲「そうだね。では,〔D〕の原則についてはどうかね。」
乙「これは,明治22年に制定された我が国最初の衆議院議員選挙法で採用された〔ウ〕と対置されたものだったと思います。」
甲「それじゃあ,最後に,〔E〕の原則について,どの程度知っているかね。」
乙「地方公共団体の長や議会では,憲法上明文でこの原則が貫徹されていますが,国会議員の選挙では,憲法に明文の規定はなかったと思います。そこで,衆議院議員の選挙ではともかく,参議員議員の選挙では〔エ〕も認める余地があるという見解も有力に主張されているようです。しかし,既に選挙され公職にある者によって選挙される〔オ〕は,国民との関係が〔エ〕より更に希薄になるので,憲法第43条第1項の要件を満たさないと思います。」
1.Aに,自由選挙 アに,等級選挙制
2.Bに,普通選挙 イに,制限選挙制
3.Cに,普通選挙 ウに,等級選挙制
4.Dに,秘密選挙 エに,複選制
5.Eに,直接選挙 オに,複選制


[H07-02] 次の人権宣言に関する文章中の〔  〕内に後記AからFまでの語句の中から適当なものを選んで挿入して文章を完成させるとした場合,その挿入する順序として正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
 「1776年から1789年にかけて制定された,アメリカ諸州の憲法における人権宣言と,1789年のフランス人権宣言は,その基本思想を同じくするが,アメリカ人権宣言はイギリスにおける伝統的な諸自由を〔  〕に基礎付け確認したものであるのに対し,フランス人権宣言は,すべての文明国のために新しい〔  〕な性格をもつ人権を抽象的に描いたものであること,アメリカの人権宣言と異なりフランス人権宣言では〔  〕によって〔  〕の意味が相対化され,人権は主として〔  〕の恣意を抑制する原理だと考えられたことなど重要な違いもある。」
A 綱領的  B 自然法的  C 「人権は立法権をも拘束する人間に固有の権利である」という自然法の思想  D 「法律は一般意思の表明である」という立法権優位の思想  E 立法権  F 行政権
1.B−A−C−D−F
2.A−B−C−D−E
3.B−A−D−C−E
4.A−B−D−C−F
5.B−A−D−C−F


[H07-03] 次のAからEまでの記述のうち,誤っているものはいくつあるか。
A 重要文化財に指定された寺院の鑑賞に訪れた者に対し,一定割合の税金を課することは,課税目的を問わず信教の自由に対する制約として違憲となる。
B 憲法第89条にいう「宗教上の組織若しくは団体」に対する公金支出の適否について,「当該行為の目的が宗教的意義を持ち,かつ,その効果が宗教に対する援助,助長,促進又は圧迫等になるような場合には許されない」と解した場合と,「当該行為の目的が世俗的なものであり,かつ,その効果が宗教に対する援助,助長,促進又は圧迫等に当たるものではない場合には,許される」と解した場合とを比べると,後者の基準より前者の基準の方が公金支出の許される範囲を厳格に考えることになる。
C 政教分離原則を制度的保障と考える説にあっても,政教分離の内容は憲法上一義的に定められていて,法律その他の下位規範を拘束すると解する立場では,これに反する国の行為により損害を受けたと主張する者が,政教分離原則違反のみを理由として,国に対し損害賠償を求める民事訴訟を提起することができることになる。
D 憲法第20条第1項によって保障される信教の自由は,憲法第19条の思想・良心の自由の保障が宗教の一面に表れたものであるから,いかなる制約にも服さない。
E 明治憲法下での信教の自由に関しては,神社神道が特別扱いされ,事実上国教扱いされていたほか,信教の自由の保障は「法律の留保」の下にあることが同憲法上明記されていた。
1.1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個


[H07-04] 次の文章中の(  )内に「立法権」「行政権」又は「司法権」のいずれかの語句を入れて補った上,下線を引いた語句のうち,誤った語句を正しい語句に置き換えたものを3組組み合わせたものはどれか。(誤っているものはその3組だけに限られるわけではない。)
 「(  )と(  )との関係についてみると,(  )は(  )によって定立された法律によって組織・権限を定められ,また法律を執行する作用を行うものであるから,(  )はもともと(  )に従属する性質をもち,(  )が優越するのが自然の成り行きである。したがって,権力の独立を望むならば(  )があまり優越しないように配慮されなければならない。二院制による(  )の抑制としては解散権などかあるが,しかし,議会主義の発達に伴って(  )による(  )の抑制が次第に強化され,両者の均衡を破るほどになる傾向が強い。(  )の条約締結承認権・規則制定権などは有力な手段であり,さらに,議院内閣制の採用によって国務大臣の指名,内閣不信認決議案などによる政府の存在に対する議会の影響が認められる場合には,(  )による(  )の抑制は一層強められる。
 (  )と(  )及び(  )との関係においては趣を異にする。(  )の固有の領域は具体的事件に対する法の適用である。(  )の行う作用は法の維持又は擁護を本質とし,もともと,法的作用であって権力的作用ではない。したがって,裁判官は職業的に無色・中立であり政治闘争の圏外に立つことが要請される。しかし,(  )も国家権力の一つであり,これと他の権力との抑制・均衡の問題が生じる。たとえば,我が国の現行制度のように裁判官が政府の任命にかかわり,任命は裁判所が締結した意見書による場合は,(  )と(  )による相互の抑制が交錯している。(  )の固有の作用については,特に独立が保障されているので,他の権力による抑制はあり得ない。逆に(  )の作用が刑事事件の裁判にも及び(  )の発する命令・処分をも対象とする場合は(  )による(  )の抑制が問題となる。さらに,(  )の法律審査権が認められる場合は,(  )による(  )の抑制が大きな問題となる。」

┌─┬───────────┬───────────┬───────────┐
│ │  誤  →  正  │  誤  →  正  │  誤  →  正  │
├─┼───────────┼───────────┼───────────┤
│1│執行→適用      │解散権→予算先議権  │法律審査権→自律権  │
├─┼───────────┼───────────┼───────────┤
│2│権力の独立→権力の均衡│議院内閣制→内閣制度 │刑事事件→民事事件  │
├─┼───────────┼───────────┼───────────┤
│3│規則制定権→国政調査権│権力的作用→政治的作用│意見書→名簿     │
├─┼───────────┼───────────┼───────────┤
│4│国務大臣→内閣総理大臣│法の適用→法の執行  │独立→三審制     │
├─┼───────────┼───────────┼───────────┤
│5│権力の独立→権力の分立│二院制→議院内閣制  │職業的→政治的    │
└─┴───────────┴───────────┴───────────┘


[H07-05] 次のAからEまでの記述のうち,誤っているものはいくつあるか。
A 法律案を衆議院が可決した後参議院がこれを否決した場合には,必ず両院協議会を開催しなければならない。
B 予算や法律がその議案について参議院の議決がないまま,衆議院の議決のみによって成立することはあり得るが,衆議院の議決がないのに参議院の議決のみによって成立することはない。
C 予算については衆議院の先議が要求されているが,条約については参議院において先議することも可能である。
D 国会の議決事項とされているものについて衆参両議院が異なる議決をした場合には,要件は異なるものの,最終的には常に衆議院の議決が優先されることになる。
E 法律案が衆参両議院において可決されたとしても法律として成立しない場合もある。
1.1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個


[H07-06] 次のAからEまでの文章の〔  〕内に「直接」と「間接」のいずれかの語句を入れて補った上,これらの文章を正しい順に並べると,まとまった論述になる。並べ換えた後の文章の最初から2番目と6番目と9番目の〔  〕に入る語句を順に正しく並べたものは,後記1から5までのうちどれか。
A さらにドイツの〔  〕効力説は,私的な人権侵害の違法性を憲法によって判断しながら,違憲の法律行為はドイツ民法第139条によって無効になると説いているので,それをも〔  〕効力説というとすれば,それは私法規定の解釈に人権価値を積極的に導入する〔  〕効力説と内容的に異ならないということができるであろう。
B 〔  〕効力説に立って私法の一般条項・概括条項の意味を人権価値を導入・充填して解釈する場合,導入の度合いにかなり大きな振幅が認められる。つまり人権価値をより積極的に導入することもあり得ることになる。
C このように,両説の相違はたしかに相対的なものであるが〔  〕効力説の場合,私法関係における人権規定の効力の相対化を認めたとしても,その相対化の程度を判定する際に行われる利益衡量の基準は公権力による制約が許される限度を判定する場合の基準に近いものとされる可能性があるので,一般に〔  〕効力説の場合よりも厳しい基準となるであろう。
D もちろん,〔  〕効力説の場合も私法関係では人権規定の効力が相対化されることを認める説にあっては,ほぼ同様の問題が生じる。しかし,〔  〕効力説は,私的自治の原則に大きな比重を置く理論であるから,人権価値を私法規定の解釈に導入する度合いいかんによっては人権のいわば絶対的効力を認める〔  〕効力説とほぼ同様の内容のものになることもある反面,伝統的な無効力説に帰するものになる可能性も存する。
E また民法第90条を媒介とする憲法の〔  〕適用といっても,私的な法律行為が公の秩序に反すると解されるのは,私人間の人権侵害が憲法の人権保障規定に抵触するからであるとすれば,民法第90条の規定は,人権侵害に該当する行為を無効ならしめるための媒介項として法律技術的に援用されるにとどまるとも老えられる。同じ判例が,直接効力説の立場だと解されたり間接効力説を採ったと解されたりするのも,両説の差異が法条適用の技術上相対的なものにすぎないことの表れだといえる。
1.直接――直接――直接
2.直接――直接――間接
3.間接――間接――間接
4.間接――間接――直接
5.間接――直接――直接


[H07-07] 次のAからEまでの文章を,その〔  〕内に後記1から5までの語句の中から挿入した上,「たしかに『@』。しかし『A』。もっとも『B』。したがって『C』。ただ『D』。」と並べ換えると,日本国憲法の上諭と前文の矛盾を解消するための法的論理に関するまとまった論述になる。『B』に入る文章中の〔  〕に挿入すべき語句は,後記1から5までのうちどれか。
A 明治憲法第73条による改正という手続をとることによって明治憲法と日本国憲法の間に〔  〕をもたせることは,実際上,便宜で適当であった
B この革命によっても明治憲法が廃止されたわけではない。ただその建前が変わった結果として,憲法の条文はそのままでも,その意味は新しい建前に抵触する限り重要な変革を被ったと解さねばならない。例えば,明治憲法第73条については,議員も改正の発案権を有するようになったこと,議会の修正権に制限がなくなったこと,天皇の裁可と貴族院の議決は実質的な拘束力を失ったこと,〔  〕を変えることは許されないという制限は消滅したことなどを認めることができる
C 〔  〕による限り,明治憲法第73条の改正規定によって,明治憲法の基本原理である天皇主権主義をもって正面から否定する国民主権主義を定めることは法的に不能である
D 日本国憲法は,実質的には明治憲法の改正としてではなく,新たに成立した国民主権主義に基づいて国民が制定した〔  〕である
E ポツダム宣言では,国民主権主義を採ることを要求しているので,ポツダム宣言を受諾した段階で,明治憲法の天皇主権は否定されるとともに国民主権が成立し,日本の政治体制の根本原理となったと解さなければならない。つまり,ポツダム宣言の受諾によって法的に一種の〔  〕があったとみることができる
1.国体
2.民定憲法
3.改正限界説
4.形式的継続性
5.革命


[H07-08] 地方自治に関する次の1〜5までの記述のうち,正しいものはどれか。
1.憲法上,地方公共団体に関しては議会の議員のみならず,その長も住民によって直接選挙される大統領制型が採用されており,地方自治法上もその長に対しては,議会の行為に対する拒否権,法令に違反しない限りにおいてその権限に属する事務に関して規則を制定する権限,更には,議会による長の不信任議決に対抗する措置としての議会解散権が認められているが,いずれも,そのような思想の表れである。
2.憲法の地方自治制度は,アメリカのホーム・ルール制に近似した制度であるところ,ホーム・ルール制の下では通常,地方自治体には一定の範囲内で行動することができる実体的権能とその権能の行使の在り方を自ら決定する組織的手続的権能とが保障されているが,我が国において,いずれの権能も地方自治体自らの権能として憲法上保障されている。
3.普通地方公共団体とされている都道府県及び市町村と異なり,特別地方公共団体は,政策的見地から設けられた特殊な地方公共団体であって,憲法上地方公共団体には該当しないことから,その長は,いずれも普通地方公共団体の長とは異なった方法で選出することとされている。
4.条例とは,単に法律の委任立法としてではなく,憲法によって直接包括的に地方公共団体に保障された自主立法権に基づいて自主的に定立される法であるとする説の中でも,自主立法権は憲法第92条で保障されたものであって,憲法第94条はそれを確認し,自主立法権と法律との関係を明らかにしたものと考える説や,憲法第94条が地方公共団体に創設的に自主立法権を授権したと考える説があるが,憲法の地方自治保障の性質を制度的保障とする考えは,いずれの説とも結びつき得る。
5.憲法上の地方公共団体といい得るためには,事実上住民が経済的・文化的に密接な共同生活を営み,共同体意識を持っているという社会的基盤が存在することが不可欠であるとの前提に立てば,歴史的な沿革に照らして,基礎的な地方公共団体である都道府県についてはこれを容易に肯定できるが,市町村については,疑義があることになる。


[H07-09] 法人の人権に関する次のAからEまでの記述のうち,正しいものを2個組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
A 法人の人権享有主体性を肯定する見解の中には,「法人が社会において自然人と同じく活動する実体であり,特に現代社会における重要な構成要素であること」を主たる理由とするものがある。
B 法人たる報道機関は,それが民間の新聞社や放送会社であっても,また,日本放送協会(NHK)のような放送法に基づいて設立された特殊法人であっても,報道の自由を享受する。
C 法人の人権享有主体性を肯定する見解であっても,法人格のない団体には人権享有主体性を認めない。
D 法人の人権享有主体性を否定する見解は,人権が自由権思想に由来し,人間の尊厳という観念に基づいていることを重視し,法人は元来,個人が人権を享受する上で必要な法的技術として法律上創設されたものにすぎないという考え方を論拠としている。
E 法人の人権享有主体性を肯定する見解によっても,法人は,思想・良心の自由や信教の自由などの精神的自由権は享受し得ない。
1.AC   2.AE   3.BD   4.BE   5.CD


[H07-10] 学問の自由に関する次のAからEまでの記述のうち誤っているものを2個組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
A 学問の自由の内容については,@学問研究の自由,A学問研究結果の発表の自由,B大学における教授の自由,C大学の自治が通常挙げられ,@については憲法第19条の思想及び良心の自由の保障に,Aについては憲法第21条の表現の自由の保障に含まれるが,その上に,学問の自由を保障するのは,学問研究というものは,常に従来の考え方を批判して,新しいものを生み出そうとする努力であるから,それに対しては,特に高い程度の自由が要求されるからである。
B 大学における研究教育従事者が学問の自由を有するといっても,国公立大学の教員は,公務員の身分を有し,また,国又は地方公共団体と雇傭関係に立つものであるから,自己の研究活動について,その任命権者ないしその上司の指揮監督を受けなければならない。学校教育法第58条第3項が「学長は,公務を掌り,所属職員を総督する。」と規定しているのは,この趣旨である。
C 学問の自由から導き出される教授の自由を,大学における教授の自由に限定し,初等中等教育機関の教師の教育の自由は,憲法第23条の学問の自由によっては保障されていないと解する説の根拠としては,@学問の自由が,沿革上,大学における教授の自由のみを含めていたこと,A大学における学生が批判能力を備えているのに対して,初等中等教育機関の児童生徒は批判能力が十分でないこと,B子供の教育が教師と子供間の人格的接触を通じて,その個性に応じて行われなければならないということ等が挙げられる。
D 大学の自治が憲法第23条によって保障されていると解する説は,学問の自由と大学の自治が密接不可分の関係にあることを前提にして,さらに,大学が国民の教育を受ける権利を保障しなければならない「場」としてまず位置付けられ,そのような大学において,それぞれ学問研究と教育の自由ないし自主性が保障されていなければならないことを理由としている。
E 大学の自治の基本的な内容の一つである大学教員の人事については,法令で教員の資格を定めることはともかく,大学が実質的に決定すべきものである。
1.AC   2.AD   3.BC   4.BE   5.DE


[H07-11] 次のAからEまでの文章の〔  〕内に,Aの〔  〕には,後記Aの語群から,Bの〔  〕内には後記Bの語群からというように,それぞれ後記の対応する語群の中から適当な語句を選択して挿入した上,適当な順に並べ換えると,生存権の法的性格について一定の見解に立つ甲と,それとは別の見解に立つ乙との議論になる。AからEのうち最初から4番目にくる文章の〔  〕に挿入すべき語句の番号は,後記1から5のうちどれか。
A 問題は,権利を実現する手段として,何が用意されているか,ということです。私の立場では,国が具体的立法措置を怠っている場合,それによって生存権が侵害されていると主張する者は,国に対し,〔  〕を提起できるということになりますが,このようなことはあなたの立場では認められないでしょう。
B そうすると,直接国民が国に対し請求できないという点では,私と同じ結論なわけですね。そして,私の立場からしても,国が行った具体的立法措置において,定められた生存権規定に照らしても,あまりにも低額な場合,言い換えれば,国会の〔  〕を逸脱した,合理性を欠く立法の場合には,その立法は違憲ということになり,生存権の権利性は認められるわけですから,考え方にあまり違いはないのではないでしょうか。
C あなたが生存権は〔  〕だというのは,生存権を具体化した立法がない場合でも,生活保護給付や社会保障給付を認めるものなのですか。
D あなたの見解が,生存権の〔  〕を強化しようと試みていることに共感を覚えますが,あなたの見解をどのように根拠付けていくのかということについては難しい点もあるような気がしますね。
E いいえ。具体的な立法がなくても,国民が国に対し憲法に基づく〔  〕を有するということまで言っているわけではありません。国民は,国に対して,生存権を実質化するための具体的立法措置を要求する憲法上の権利があるということを言っているんです。
A @ 国家賠償請求権   A 立法不作為の違憲確認訴訟
  B 生存権に基づく給付請求権確認訴訟
  C 行政措置を行う義務の確認請求   D 国家補償請求訴訟
B @ 立法権   A 国政調査権   B 裁量権
  C 審議権   D 請求権
C @ 消極的権利   A 積極的権利   B 具体的権利
  C 抽象的権利   D 能動的権利
D @ 社会性   A 裁判規範性   B 生存権の自由権的性格
  C 具体性   D 不可侵性
E @ 給付請求権   A 確認請求権   B 立法措置請求権
  C 国家補償請求権   D 国家賠償請求権
1.@    2.A    3.B    4.C    5.D


[H07-12] 次のAからEまでの中には,それぞれのアに掲げられた見解を前提とした場合に,対応するイに掲げられた二つの憲法上の権利,自由又は保障のいずれか一方のみがアに掲げられた憲法上の権利,自由又は保障(「 」内のもの)と同じ性質であるものがある。それをAからEまでの記号で2個組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
A ア 憲法第17条で保障される「国家賠償請求権」は,国務請求権(受益権)であり,法律の制定を待って具体的な権利主張が可能となるという意味で抽象的権利である。
  イ 刑事補償請求権,裁判を受ける権利
B ア 憲法第21条第1項で保障される「知る権利」は,自由権としての側面を有するとともに,社会権としての側面をも有する権利である。
  イ 勤労の権利,教育を受ける権利
C ア 憲法第22条第1項で保障される「職業選択の自由」は,これに対する社会・経済政策の一環としての積極目的による規制立法の合憲性を判断する場合,明らかに規制が不合理であると認められる場合に初めてそのような規制立法が違憲となるという基準で判断されるべきものである。
  イ 居住・移転の自由,海外渡航の自由
D ア 憲法第28条の「争議権の保障」は,憲法の規定が原則として民法第90条などの一般条項を介して私人間に適用されるとの立場からも,直接私人間にも適用されると解すべきものである。
  イ 選挙における投票の秘密の保障,通信の秘密の保障
E ア 憲法第29条第1項の「財産権の保障」は,第一次的には基本的人権である個々の財産権を保障するが,これと併せて私有財産制度をも保障するという制度的保障の趣旨をも含むものである。
  イ 学問の自由の保障,貴族制度の廃止
1.AB   2.AD   3.BE   4.CD   5.CE


[H07-13] 次の文章は,精神的自由に関する憲法のある条文を解説したものであるが,文章中の〔  〕内に4種類の適切な語句を入れて文章を完成させるとした場合,挿入する語句のうちの使用回数が最も多いものと次に多いものの使用回数の和はいくつか。
 「〔  〕は人間精神の自由の包括的な呼称であるが,歴史的にはこのような人間精神の自由は,あるいは〔  〕という形で,あるいは〔  〕という形で,又は〔  〕という形で,自覚され,主張されてきた。憲法はこれらの具体的な人間精神の自由をも保障しているが,それと並んでその原則ともいうべき〔  〕をまずうたっているのである。言い換えれば本条は,人間精神の自由に関する包括的,一般的な規定であって,その具体的発現である〔  〕,〔  〕,〔  〕に対して原理的・根底的な地位に立つものである。そして,その間に密接な関連があるので,いい相互に区別できないことがある。例えば,同じく〔  〕といっても,それが体系的な知識に関する場合には〔  〕の問題となり,多少とも宗教的な色彩を帯びる場合には〔  〕の問題となるがごときである。これを要するに,憲法は本条並びに〔  〕,〔  〕,〔  〕の諸規定によって,あらゆる角度から人間の精神活動の自由を保障しようとしているのであるが,なかんずく本条はその中で原則的な意味を持つものであり,現代においては,かつて〔  〕が人間の精神の自由の歴史において占めていた地位を占めるものといえよう。」
1.5回   2.6回   3.7回   4.8回   5.9回


[H07-14] 次の1から5までの記述のうち,独立行政委員会の合憲性を支える理由とならないものはどれか。
1.行政委員会の構成員の任命について国会に同意権を与え,ときには訴追権を認めることは国会の民主的コントロールを全うせしめるものであり,行政委員会の存立の基盤には民主政治の原理が損なわれることなく維持されている。
2.行政の内容や性質によっては,同一の機関が行政機能だけでなく,準立法的,準司法的機能も併せもつことによって適切な事務の処理が可能となる場合があり,それは私権の保護を促進することにもなる。
3.行政委員会の設置も,内閣への過度の権力集中を排除し,職権行使に政治的中立性を確保することをねらいとしていることを考慮すれば,行政の恣意を抑制する原理として発展してきた権力分立原則と共通の目的を持つ。
4.憲法上,内閣は唯一の行政機関とは規定されていないが,内閣総理大臣を通じて,行政各部を指揮監督することが予定されている。
5.行政委員会の構成員の任命権を内閣が持ち,予算権も内閣に留保されているほか,内閣に対する報告義務が法定されている点で,内閣がその行政に責任を負う建前が採られている。


[H07-15] 我が国において小陪審(陪審員が審判において事実を判断するもの)の制度を設けることが合憲かどうかについて,これを違憲であるとする説(甲説),裁判官が陪審の答申に拘束されるようなものでない限り合憲であるとする説(乙説),及び陪審の答申に拘束力を認めても違憲ではないとする説(丙説)とがある。次のAからFまでの記述の中から各説の論拠となるものを組み合わせた場合,正しい組合せとなっているものは,後記1から5までのうちどれか。
A 現行憲法は司法権を「裁判所」に属するものとしその裁判所を構成する「裁判官」の選任方法やその独立などについて定めている。
B 明治憲法第24条は「日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルゝコトナシ」と規定しているのに対し,現行憲法第32条は,「何人も裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定している。
C 現行憲法は,アメリカ法の影響を受けて制定されたものであるほか,裁判官以外の者が裁判に関与することを禁止する明文の規定を持たない。
D 司法権の本質は,法解釈にある。
E 裁判所法第3条第3項は「この法律の規定は刑事について別に法律で陪審制度を設けることを妨げない。」と規定している。
F 法律により,行政委員会の認定した事実はこれを立証する実質的な証拠があるときには当該行政委員会の審決等の取消しの訴えにおいて裁判所を拘束する旨定められている場合においても,実質的な証拠の有無は裁判所が判断するものとされている。
1.甲説−A 乙説−E 丙説−F
2.甲説−A 乙説−C 丙説−D
3.甲説−A 乙説−C 丙説−E
4.甲説−C 乙説−F 丙説−B
5.甲説−F 乙説−D 丙説−A


[H07-16] 次のAからEまでの記述のうち,誤っているものを2個組み合わせたものは,後記1〜5までのうちのどれか。
A 天皇が国庫から内廷費を受けることについては,「皇室の財産授受に関する国会の議決」(憲法第8条)を要する。
B 皇后が皇太子妃に高価な指輪を贈与することについては,皇室の財産授受に関する国会の議決」を要しない。
C 「皇室の財産授受に関する国会の議決」には,衆議院の優越が認められない。
D 皇族が,その所有する私的な財産からの収入を,その生活費の一部に充てることについては,「皇室の費用に関する国会の議決」(憲法88条)を要する。
E 「皇室の費用に関する国会の議決」には,衆議院の優越が認められる。
1.AD   2.BE   3.CB   4.DC   5.EA


[H07-17] 憲法第9条について,その裁判規範性を肯定した上で,第1項は,「国権の発動たる戦争」,「武力による威嚇」及び「武力の行使」のいずれについても「国際紛争を解決する手段としては」永久に放棄したものであるとする解釈を前提とした場合に,第1項の解釈に関する甲群ア,イと,第2項前段の「前項の目的を達するため」という文言の解釈に関する乙群a,bと,第2項後段の「国の交戦権は,これを認めない」という文言の解釈に関する丙群のT,Uの考え方がある。これらの考え方を組み合わせた丁群のAからEまでの記述のうち,明らかに誤っているものの組合せは後記1から5までのうちでどれか。
甲群 ア 憲法第9条第1項で,「国際紛争を解決する手段として」放棄することになった戦争とは,1928年に締結されたいわゆる不戦条約で放棄された「国家ノ政策ノ手段トシテノ戦争」と同じ意味,すなわち,従来の国際法上の伝統的な用例に従って解釈されるべきである。
   イ およそ戦争とは国際紛争を解決する手段として行われるものであって,歴史的にも侵略戦争が自衛の名目で行われてきたことは否定できない。憲法第9条はこのような事実を踏まえて「国際紛争を解決する手段として」と述べているのであるから,同条第1項を従来の国際法上の伝統的な用例に従って解釈しなければならないものではない。
乙群 a 「前項の目的を達するため」とは,同条第1項にいう「国際紛争を解決する手段」としての戦争,武力による威嚇及び武力の行使を放棄するという目的を達するためと解し,これを戦力不保持の条件と考えるべきである。
   b 「前項の目的」とは,同条第1項を定めるに至った「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」するという目的を指しこの目的を達するために,同条第2項で戦力の保持を無条件に否定したものと解すべきである。
丙群 T 「国の交戦権」とは,国家として戦争を行う権利を意味し,これが憲法により否認されていると解すべきである。
   U 「国の交戦権」とは,国際法上,国家が交戦者として有する船舶の臨検・だ捕,貨物の没収等の権利を意味し,これが憲法により否認されていると解すべきである。
丁群 A アとaの見解を採ると,Tを採った場合のみ,自衛のための戦争と,自衛のための戦争の際の交戦者として有する国際法上の権利が憲法により否認されないという結論になる。
   B アとaとUを採る見解によると,国家が自衛のための戦争を行う権利は憲法により否認されないとの結論が導かれるが,そうだとすれば,憲法第66条第2項の「文民」の意味につき,「過去に職業軍人の経歴を有しない者」と解釈しない限り,文民規定の存在意義がなくなる。
   C アとaとUを採る見解によると,自衛のための戦争とそのような行動の際の交戦者として国際法上有する権利が憲法により否認されないという結論を導くためには,憲法第9条第2項前段の「前項の目的を達するため」との文言が,同項前段の戦力の不保持にかかり,同項後段の交戦権の否認にはかからないと解する必要がある。
   D アとbとUを採る見解によると,警察力による自衛措置はともかく,自衛戦争を行うことも国連憲章の定める制裁戦争に参加することも,憲法により否認されるという結論になる。
   E イとbとTを採る見解によると,同条第2項後段の交戦権否認規定は,同条第1項の趣旨を別な言葉で表現したにすぎず,同条項と重複しているとの批判を受ける余地が生じることになるが,この点については同条第1項が自衛のための戦争も含めて事実上戦争することの禁止を意味するのに対し,同条第2項後段は法上の権利としてもこれを認めないことを意味することにより,その存在意義を肯定することができる。
1.AD   2.AE   3.BC   4.BE   5.CD


[H07-18] 次のAからEの記述のうち,誤っているものを2個組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
A 現行の最高裁判所とは別に新たに憲法裁判所を設けた上,法律で,憲法裁判所以外の裁判所は,係属した事件に関して適用すべき法律の憲法適合性に疑義が生じた場合には,必ず事件を憲法裁判所に移送しなければならず,かつ,当該法律の憲法適合性についての憲法裁判所の判断に拘束される旨定めることは,憲法裁判所の裁判官の任命資格及び身分保障がその余の裁判所の裁判官と同一のものである限り,憲法に違反しない。
B 現行の家庭裁判所は憲法第76条第2項前段にいう特別裁判所には該当しない。
C 憲法上,行政機関は,前審としてならともかく,終審として裁判を行うことはできないところ,この点は立法機関についても同様に解すべきであって,現に,憲法が認める例外である国会に設けられた裁判官弾劾裁判所のほかには,終審として裁判を行うような制度はない。
D 同じ任命資格と身分保障を有する裁判官を,家事・少年事件のみを専門に取り扱う者とそれ以外の者に分け,家事・少年事件のみを専門に取り扱う裁判官のみで家庭裁判所を構成することは,憲法に違反しない。
E 我が国の司法権は,事件性・争訟性をその本質的要素とするから,当事者間の具体的な法律関係ないし権利義務の存否に関する争いであって法律の適用により終局的に解決できるもの以外につき,裁判所が裁判権を行使することは認められていない。
1.AB   2.AD   3.BC   4.CE   5.DE


[H07-19] 次のAからEまでの記述のうち,明らかに誤っているものを2個組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。
A 未成年者も当然に人権の享有主体となるが,人権の性質によっては,未成年者について成人とは異なった取扱いを容認せざるを得ない場合がある。憲法上は,未成年者の人権をはく奪し,又は制限した規定はないが,法律上は,例えば,婚姻できる最低年齢につき,男子は満18歳,女子は満16歳と定められていて,未成年者の婚姻の自由に関する制約が存するほか,未成年者に意思能力がある場合でも,財産権の処分等の法律行為をなすには法定代理人の同意を要するという制約もある。
B 憲法第14条第1項後段に列挙された事項は,前段の平等原則の内容を例示的に掲げたものであり,要するに不合理な差別を禁止する相対的平等の保障が同条項の趣旨であると一般に理解されている。しかしながら,近代の平等観が,貴族をはじめとする中世身分制社会を克服する過程で唱えられたものであることや,アメリカにおいて平等保護条項(アメリカ合衆国憲法修正第14条)が南北戦争後の黒人解放のために制定されたという歴史的な経緯からも明らかなように,出生によって決定され,自己の意思をもってしては離れることのできない固定した地位である「門地」や「人種」による差別は,不合理な差別として絶対的に禁止される。したがって,外国人の権利・自由について日本人と異なった一定の制約を課すことは,「人種」による差別として許されない。
C 現代の平等観は,現実に存在する社会的・経済的その他種々の不平等の是正,すなわち実質的平等の保障をも要求するものとなってきた。そして1960年代からは,過去に差別されてきた少数の集団に対し,それを償うための優遇措置を行うべきであるとの思想の下に,アメリカを始めとして様々な施策が実行されてきた。しかし形式的平等は,その性格上自由の理念と両立し得るのに対して,実質的平等は,究極的には自由の理念とは両立せず自由と平等との調和が問題となることから,違憲立法審査権の行使に当たっては,前者が厳格審査になじむのに対して,後者は,立法目的と立法目的達成手段の両面から,厳格な合理性の基準により審査されるべきものである。
D 憲法第14条第1項は「信条」による差別を禁止しており,また,憲法第19条が思想・良心の自由を保障していることからも,人の「信条」が内心の領域にとどまるものである限り,これを理由とする差別は許されない。この理は,私企業において,使用者が労働者に対し「信条」を理由として差別的取扱いをすることを禁止した労働基準法第3条の規定にも表れているが,「信条」ではなく,それに基づく行為が解雇の理由となる場合には,これを直ちに「信条」による差別ということはできない。
E 「法律は,保護を与える場合にも処罰を加える場合にも,すべての者に対して同一でなければならない。」とするフランス人権宣言は,いわゆる機会の平等ではなく結果の平等を宣言するものであった。この考え方によると,例えば,黒人と白人を別々の学校に入れることも,別々ではあるが平等という意味で許容される取扱いということになる。
1.AB   2.AC   3.BD   4.CE   5.DE


[H07-20] 次のA〜Eまでの裁判官の身分保障に関する文のうち,誤っているものの個数を選びなさい。
A 裁判官の懲戒処分は,下級裁判所がこれを行うことはできず,最高裁判所によって行われる。
B 最高裁判所裁判官は国民審査によって罷免される場合があるが,公の弾劾により,その意に反して罷免されることはない。
C 最高裁判所裁判官は罷免の事由がなくとも国民審査によって罷免されるのであるから,下級裁判所の裁判官も特に罷免事由がなくても公の弾劾により,罷免することができる。
D 罷免の訴追を受けた裁判官に対しては,裁判官弾劾裁判所において,審理を受けている期間中,報酬の支払を停止できる。
E 憲法78条は「裁判官の懲戒処分は行政機関がこれを行うことはできない」と規定しているのであるから,国会は裁判官の懲戒処分をすることができる。
1.1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個




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