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司法試験・択一問題
(平成4年・憲法)


[H04-01] 国民代表制について,「議員は,いかなる選挙方法で選ばれた者であろうと,すべて等しく全国民の代表であり,特定の選挙区の選挙人,党派,階級,団体等の代表ではなく,全国民のために活動すべき道義的義務を負っている。」との見解がある。次のAからEまでの記述のうち,上記見解と最もよく符合する内容のものを2個選ぶとした場合,その組合せは,後記1から5までのうちどれか。
A 国会が国民代表であるためには,選挙において表明される国民意思を国会はできる限り忠実に反映し,国内の地域的・社会的及び経済的利益の公正な,かつ均衡のとれた代表が確保されていなければならない。
B 選挙された者は,あたかも絵画が景色を描くように,選挙人を代表する。代表とは国民の政治的見解と国民が選んだ代議士の政治的見解との類似以外の何ものでもない。
C 国民は代表機関を通して行動し,代表機関の行為が国民の意志を反映するものとみなされ,また,代表者は,被代表者のために行動する者とみなされるが,代表者の行為が,法的に被代表者に帰属し,被代表者の行為とみなされるものではない。
D 広く国民の政治意識の高まりにより,民意に基づく政治,つまり,実際に存在する国民意思に基づく政治が求められるが,ここでは,国民意思は,具体的に存在する一人ひとりの国民を主権者とする原理として理解される。
E 議員は,選挙区の選挙民の具体的・個別的な指令に拘束されず,良心にしたがって自由に表決する権利を有する。
1.AB   2.AC   3.AE   4.BD   5.CE


[H04-02] 次の1から5までのうち,右欄記載の事項が,左欄記載の事項と憲法上の関係において明らかに異なるものが一つある。それはどれか。

┌─┬─────────────┬───────────────────┐
│ │             │                   │
│1│法律の公布        │内閣総理大臣の任命          │
│ │             │                   │
├─┼─────────────┼───────────────────┤
│ │議院規則制定権      │                   │
│2│             │憲法改正の発議            │
│ │議員懲罰権        │                   │
├─┼─────────────┼───────────────────┤
│ │             │訴訟に関する手続・弁護士等に関する事項│
│3│下級裁判所裁判官の指名  │                   │
│ │             │についての規則の制定         │
├─┼─────────────┼───────────────────┤
│ │国務大臣の任免      │                   │
│4│             │法律・政令の連署           │
│ │国務大臣の訴追に対する同意│                   │
├─┼─────────────┼───────────────────┤
│ │法律の執行        │                   │
│5│             │条約の締結              │
│ │外交関係の処理      │                   │
└─┴─────────────┴───────────────────┘


[H04-03] 次の文章は,「法を法準則の体系として考え,それを基礎として解釈ができない場合,法は開かれた構造にあり,裁判官の裁量を容認し得る。」とする考え方に対し,これを批判する立場からの論述の一部であるが,文中の(a),(b),(c)には「法原理」「法準則」「法政策」のいずれかの語句が入る。(a),(b),(c)に入る語句の組合せとして最も適当なものは,後記1から5までのうちどれか。
 「難解な事案においても,(a)以外に一定の正義や公正を表す(b)が存在する。このような(b)は,(c)と明確に区別されるべきである。(b)の論証は,ある政治的決定が個人や集団の権利を尊重し保障することを示すことにより,当の決定を正当化しようとする。これに対し,(c)の論証は,政治的決定を,これが社会共同体のある種の集団的目標を促進し保護することを主張立証することにより,正当化する。そして,裁判というものは,(c)によってではなく,(b)によってなされるべきである。換言すれば,裁判官は『平等な配慮と尊重を受ける権利』によって判決を下すことが要請されている。したがって,判決には一義的な『正しい答え』が存在し,裁判ではそれが争われているにすぎず,裁判官には自由裁量は認められない。裁判所の司法審査権の射程は,(a)を含む(b)の範囲に限局され,(c)に及ばない。」
1.(a)は法原理,(b)は法政策,(c)は法準則
2.(a)は法原理,(b)は法準則,(c)は法政策
3.(a)は法政策,(b)は法準則,(c)は法原理
4.(a)は法準則,(b)は法原理,(c)は法政策
5.(a)は法準則,(b)は法政策,(c)は法原理


[H04-04] 次の1から5までの記述は,それぞれイが表現の自由の規制に関する見解であり,ロがその見解に対する批判であるとした場合,ロがイに対する批判となっていないものが一つある。それはどれか。
1.イ 表現の自由といっても,無制約な恣意のままに許されるものではなく,常に公共の福祉によって調整されなければならない。
  ロ 抽象的な公共の福祉は,それ自体として制限の理由となるものではないのみならず,制限の理由が存在し,制限が必要であるということから,直ちに個々の具体的制限が合憲であるとはいえない。
2.イ 表現行為の規制については,表現行為を禁止する目的,この目的と禁止される行為との関連性,その行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡を検討することが必要である。
  ロ 判断者の主観的価値判断によって決定される結果になるとともに,表現の自由を私的利益とし,これと公益とを対峠せしめて安易に論決する傾向が生じるなど,表現の自由の特別の重要性を認めていない。
3.イ 表現行為の規制は,規制する法律の文言において,通常の能力を有する者が,自己の判断によって行為の適法・違法の区別のできる文言であれば足りる。
  ロ 表現行為を規制する法律の文言は,規制する取締当局の広範な裁量を許し濫用されないために,いかなる場合にも文言上一義的に明確でなければならない。
4.イ 表現行為を規制できるのは,それが,政府が防止する権限を持つような実質的害悪をもたらす,明白にして差し迫った危険の存する場合に限られる。
  ロ 害悪の重大性,害悪との関連における表現の価値等が考慮される結果,利益衛量論と変わらないばかりか,具体的規制段階,例えば集団行進の事前規制や意見・思想の開示要求の当否を判断する場合でも,基準として妥当しない。
5.イ 表現の自由は,人権体系の中でも優越的地位を占めるから,その規制立法に関しては,合憲性の推定は排除され,したがって,合理性の基準では不十分であり,より厳格な基準によることが必要である。
  ロ 表現の自由の規制が,その目的において合憲とされるためには,それが他人の生命・健康への侵害の防止,他人の人間としての尊厳を傷つける行為等の防止,他人の人権と衝突する場合の相互調整という目的のものであることが示されなければならない。


[H04-05] 次の1から5までのうち,司法に対する国民による監視,抑制と関係ないものはどれか。
1.分限裁判により職務を執ることができないと裁判された場合の免官
2.内閣による下級裁判所裁判官の任命
3.弾劾裁判所による罷免
4.最高裁判所裁判官の国民審査
5.裁判の公開


[H04-06] 営業の自由に対する制限について,一定の害悪の発生を防止するという消極的・警察的目的を達成するためのもの(A)と,社会政策及び経済政策上の積極的目的を達成するためのもの(B)とに区別する場合がある。これを前提とした場合,後記1から5までの記述のうち正しいものはどれか。
1.Aの制限は,その程度・手段に関して,立法府が裁量権を逸脱し,当該規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って違憲となる。犯罪の被害者の保護を図り,犯罪の予防ないし検挙が容易となるという目的のための古物営業の許可制は,Aに該当する。
2.Aの制限は,その程度・手段が,害悪の発生を防止するための必要最小限度にとどまらなくてはならない。経営基盤の弱い一般の小売商が,過度の競争によって経営が危ぶまれる状態に陥る場合に限り,小売市場の開設を許可制とするのは,Aに該当する。
3.Bの制限は,その程度・手段に関して,立法府が裁量権を逸脱し,当該規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って違憲となる。道路運送事業の適正な運営と公正な競争を確保するとともに,旅客自動車運送の秩序を維持するための一般旅客自動車事業の免許制は,Bに該当する。
4.Bの制限は,その程度・手段に関して,立法府が裁量権を逸脱し,当該規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って違憲となる。主として不良医薬品の供給を防ぐという目的のために,薬局開設の距離制限を定めることは,Bに該当する。
5.Bの制限は,その程度・手段が,目的達成のための必要最小限度にとどまらなくてはならない。既存の公衆浴場の経営の安定を確保し,自家風呂を持たない国民にとって必要不可欠な厚生施設である公衆浴場自体を確保するという目的による,公衆浴場営業の適正配置のための許可制は,Bに該当する。


[H04-07] 次のAからEまでの記述は,人権保障規定の私人間における効力についての直接効力説と間接効力説のいずれかに関するものである。後記1から5までのうち,その組合せのいずれもが直接効力説になっている記述であるものはどれか。
A この説は,人権はその中核において,憲法による実定化にもかかわらず,依然として超実定的な権利(天賦人権)であるという新しい自然法思想と結び付いている。
B この説は,人権規定と形式上矛盾するような法律関係を設定する自由もまた憲法で保障された自由であることを認める。
C この説は,自由権の観念を変質せしめる結果を招来し,また私法の独自性を脅かし,私法の社会化,国家化を招く危険がある。
D この説は,人権価値を導入して一般条項の意味充填解釈を行う場合,人権価値を積極的に導入することも,より消極的に導入することも許されるとする理論である。
E この説は,本来自由を保障した人権規定が義務規定に転化する危険がある。
1.AB   2.BC   3.CD   4,DE   5.EA


[H04-08] 憲法判断の方法に関するA群の記述と,その具体例に関するB群の記述とを正しく結び付けた場合,B群の記述の中にA群のどれとも結び付かないものが1個ある。それは後記1から5までのうちどれか。
A群 ア 憲法判断に入らなくても事案の解決に適切な手段が見いだされる場合に,憲法判断を回避して判断する方法
   イ 事案に適用される法令の規定それ自体を違憲とする方法
   ウ 法令の規定が当該事件に適用される限りにおいて違憲という判断をする方法
   エ 法令の運用の在り方を憲法上問題とし,違憲と判断されるような運用がなされている場合に,その一環として採られた措置を違憲無効とする方法
B群 1.合憲性が争われている法律に違反するとされた行為が当該法律の定める構成要件に該当しないとの結論に達した以上,その法律の合憲性については判断しない。
   2.集団行進についての公安委員会の許可処分に関する運用が著しく取締りの便宜に傾斜し憲法の保障する集団行動としての表現の自由を事前に抑制するものとして最小限度の域を超えており,かかる運用の一環として行われた本件条件付許可処分は憲法第21条に違反する。
   3.刑法第200条の規定は,尊属殺人の罪の法定刑を死刑又は無期懲役刑のみに限っている点において,その立法目的達成のため必要な限度をはるかに超え,普通殺人の罪に関する刑法第199条の法定刑に比し,著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められるもので憲法第14条に違反して無効である。
   4.「何人も青少年に対し,淫行又はわいせつ行為をしてはならない。」として,これに違反する行為に対し罰則を定めている条例において,「淫行」とは,広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解されるから,罪刑法定主義を定める憲法第31条に違反するものではない。
   5.国家公務員法第110条第1項第19号は,同法第102条第1項に規定する政治的行為の制限に違反した者という文言を使っており制限解釈を加える余地は全く存しないのみならず,同法第102条第1項を受けている人事院規則14一7は,すべての一般職に属する職員にこの規定の適用があることを明示している以上,本件被告人の行為に国家公務員法第110条第1項第19号が適用される限度において,同号は憲法第21条及び第31条に違反する。
(参照条文)
国家公務員法第110条第1項 左の各号の一に該当する者は,三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
  第19号 第102条第1項に規定する政治的行為の制限に違反した者
国家公務員法第102条第1項 職員は,政党又は政治的目的のために,寄附金その他の利益を求め,若しくは受領し,又は何らの方法を以てするを問わず,これらの行為に関与し,あるいは選挙権の行使を除く外,人事院規則で定める政治的行為をしてはならない。


[H04-09] 次の論述は,憲法第25条の生存権保障規定の法的性質に関するものである。後記1から5までの記述のうち,この論述の趣旨と明らかに相容れないものはどれか。
 「憲法第25条は,すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり,直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。具体的権利としては,憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって,はじめて与えられているというべきである。
 厚生大臣の定める保護基準は,生活保護法所定の事項を遵守したものであることを要し,結局のところ,憲法の定める健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りるものでなければならない。
 しかし健康で文化的な最低限度の生活なるものは,抽象的な相対的概念であり,その具体的内容は,文化の発達,国民経済の進展に伴って向上するのはもとより,多数の不確定的要素を総合考量してはじめて決定できるものである。
 したがって,何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は,一応,厚生大臣の合目的的な裁量に委されており,その判断は,当不当の問題として政府の政治責任が問われることはあっても,直ちに違憲・違法の問題を生ずることはない。ただ,現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し,法律によって与えられた裁量権の限界を超えた場合または裁量権を濫用した場合には,違憲・違法な行為となることは免れない。」
1.憲法第25条の規定は,同条の趣旨に反した行政処分が行われた場合に,裁判所が,右行政処分を違憲であると判断する根拠とはなり得ないとする見解
2.憲法第25条の規定は,国の政策的目標ないし政治的道徳的義務を定めたものであって,この規定により個々の国民に対して具体的な請求権が賦与されたものではないとする見解
3.憲法第25条の規定は,国民に対して抽象的な権利を保障したものであって,立法府に同条の趣旨に沿った法を制定すべきことを宣言したものであるとする見解
4.憲法第25条の規定は,健康で文化的な最低限度の生活の具体的な内容について,行政府を一義的に拘束するほど明確な規定であるとはいえないとする見解
5.憲法第25条の規定は,同条の趣旨に反した立法がなされた場合に,裁判所が,具体的な法的紛争解決に必要がある限り,右法律を違憲であると判断する根拠となり得るとする見解


[H04-10] 次の1から5までのような内容の法律改正をした場合,憲法に抵触しないものはどれか。
1.現行の皇室典範第4条は「天皇が崩じたときは,皇嗣が,直ちに即位する。」と定めて,生前譲位を排しているが,これを天皇が一定の年齢に達したときは退位すると改めること。
2.恩赦としての特赦は,有罪の言渡しを受けた特定の者に対して有罪の言渡しの効力を失わせるものであるが,この特赦の決定を,当該判決をした裁判所においてすることができると改めること。
3.行政府の長たる内閣総理大臣に国会の制定した法律案について異議権を認め,内閣総理大臣が,衆参両議院の可決した法律案の送付を受けた日から10日以内に理由を示してこれを再議に付す旨の意思表示をしたときは,両議院が出席議員の3分の2以上の多数による再議決をしない限り,法律は成立しないと改めること。
4.国会における二院制の実質をあげるため,参議院を地域代表の議院と位置付け,参議院議員は各部道府県議会が多数決により選出すると改めること。
5.公職選挙法第11条は,国会議員,地方議会の議員及び首長の選挙に関し,選挙権及び被選挙権を有しない者として,「禁治産者」,「禁錮以上の刑に処せられその執行を終わるまでの者」等を掲げているが,さらに「生活困窮者であって生活保護法に基づく生活扶助を受けている者」を付加すること。


[H04-11] 次の論述中の〔 〕内に入る適切な語句を,下記のaからfまでの中から選んで文章を完成させた場合,〔A〕及び〔B〕に入る語句の最も適切な組合せは,後記1から5までのうちどれか。
 「我が国のような制定法主義を採る大陸法系譜国においては,判例は制度上の〔 〕としては認められないが,裁判実務上,〔 〕として判例に従うという慣行が定着している。そこで問題となるのは,〔 〕としての拘束力を持つのは,判例のうちのどの部分かということになる。この点については,我が国でも,英米法系諸国の慣例に従って,〔 〕と〔 〕を区別し,拘束力を持つのは,具体的事件の裁定に必要かつ充分な範囲での法律問題についての判断を示す一般的基準である〔 〕の部分に限るとする見解がある。これに対し,判決で述べられた一般的な法律論にはすべて拘束力を認める見解もある。例えば,ある行政処分の取消しを求める訴訟において,その処分の根拠となった法律が違憲無効でない限り処分に瑕疵が認められない事案ならば,違憲の判断を示して処分を取り消した判決には,いずれの考え方でも違憲の判断に〔 〕としての拘束力を認めることができよう。しかし,その法律が違憲か否かにかかわらず,処分自体に瑕疵があって取消しを免れない事案において,そのような瑕疵を認定して処分を取り消す旨判示するとともに,付加的に当該法律が違憲である旨指摘した判決がなされた場合には,前者の見解では違憲の判断部分は〔A〕となるのに対し,後者の見解では,違憲の判断部分に〔B〕としての拘束力を認める余地があることになる。」
a 理由中の判断  b オビタ・ディクタム(傍論)  c 既判力  d 法源  e レイシオ・デシデンダイ  f 先例
1.〔A〕−a 〔B〕−b   2.〔A〕−b 〔B〕−e
3.〔A〕−b 〔B〕−f   4.〔A〕−e 〔B〕−d
5.〔A〕−e 〔B〕−f


[H04-12] 条例に罰則を設けることのできる根拠として下記のA,B,Cの各説があり,地方自治法第14条第5項と憲法との関係についてT,U,Vの見解があり,A,B,Cの各説に対する批判として@,A,Bの見解がある。その関係の組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
A 条例制定権を定める憲法第94条が直接罰則制定権を保障しており,憲法第31条の例外をなすものであるから,条例に罰則を設けるについては法律の特別の委任を要しない。
B 条例は,住民の代表機関たる地方公共団体の議会により民主的手続を経て制定された法であるから,実質的に法律に準じて考えてよい。
C 条例が民主的に制定された自主法であり,政令とは性質を異にするという点を考慮に入れ,個別性・具体性などの委任の要件は,政令に比べて緩やかでよい。
T 地方自治法第14条第5項は,同法第2条第2項の事務に限られ,かつ,罰則も範囲が限定されているから,個別的委任であって憲法第31条に違反しない。
U 条例は,その手続上の民主的性格からみて,憲法第31条でいう「法律」と同じように考えてよいし,命令への包括的委任を禁止した憲法第73条第6号の「政令」には含まれない。したがって,地方自治法第14条第5項による条例への罰則の委任が一般的・包括的であっても,憲法第31条及び第73条第6号違反の問題は生じない。
V 地方自治法第14条第5項は罰則の範囲を定めたものにすぎず,新たに罰則を設けることを委任する規定ではないから,委任の内容が一般的であるか否かは問題とならない。
@ 法律の委任は,個々の法律により包括的でない委任をする場合に限られるべきであるから,この見解を採ることはできない。
A 刑罰は本来国の専管事項であり,かつ,人身の自由を制約するものであるから,この見解を採ることはできない。
B 地方自治法第14条第5項は,条例で罰則を定め得ることの根拠を定めたものではないから,この見解を採ることはできない。
1.A−T−B B−V−B C−V−A
2.A−U−@ B−T−A C−U−B
3.A−U−A B−T−@ C−V−@
4.A−V−A B−U−B C−T−@
5.A−V−B B−U−@ C−T−A
(参照条文)
地方自治法第14条第5項 普通地方公共団体は,法令に特別の定があるものを除く外その条例中に,条例に違反した者に対し,二年以下の懲役若しくは禁錮,百万円以下の罰金,拘留,科料又は没収の刑を科する旨の規定を設けることができる。
地方自治法第2条第2項 普通地方公共団体は,その公共事務及び法律又はこれに基く政令により普通地方公共団体に属するものの外,その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないものを処理する。


[H04-13] 憲法第65条は「行政権は,内閣に属する。」と定めているが,この規定と独立行政委員会との関係については,(A)独立行政委員会を設けることは同条に違反する,(B)独立行政委員会は何らかの形で内閣の下にあるから,独立行政委員会を設けることは同条に違反しない,(C)同条は,内閣がすべての行政について指揮監督権を持つことまでは要求しているものではないから,独立行政委員会を設けることは同条に違反しない,との見解がある。これらの見解についての次の1から5までの記述のうち,誤っているものはどれか。
1.Aの見解は,憲法上,行政機関はすべて内閣のコントロールの下にあることが要求されていることを前提にしている。
2.Bの見解は,独立行政委員会の行う非政治的作用は同条にいう行政権には含まれないことを論拠としている。
3.Bの見解については,委員任命権や予算権が内閣にあるという点では,裁判所も独立行政委員会と異ならないのではないかという疑問を生ずる余地がある。
4.Cの見解は,憲法第65条が「すべて行政権は」という文言とまではなっていないことを一つの根拠としている。
5.Cの見解を徹底すると,国会に対する内閣の責任を不明確にするおそれがある。


[H04-14] 次の1から5までの記述のうち,違憲の可能性が最も強いものはどれか。
1.公益法人たる宗教法人の所得については,他の公益法人と異なり収益事業から生じた所得も含めてすべて非課税とすること。
2.公立小学校の教室において,クリスマス・ツリーの飾り物をするについて公費を支出すること。
3.文部大臣が,ある特定の宗教法人の所有する建造物を重要文化財に指定し,その管理・維持・修繕のため政府が補助金を交付すること。
4.都道府県が,都道府県内の宗教法人の経営する幼稚園に対し経常的経費を援助すること。
5.受刑者の申出に基づいて,国が特定宗教の教誨師を委嘱・紹介すること。


[H04-15] 次の論述中の( )内に入る適切な語句を,下記のaからdまでの中から選んで文章を完成させた場合,最も多く使用される語句と次に多く使用される語句の使用回数の合計は何回か。
 「法の支配の原理は,中世の法優位の思想から生まれ,英米法の根幹として発展してきた基本原理である。一方,法治主義の原理は,権力分立の思想と結びついて,自由主義的な国家原理として,大陸諸国において発展してきたものである。後者は,国政の活動は法律に従ってなされることを要するとする原理である。すなわち,この原理は( )によって( )や( )の活動を規制することにより( )の権利を保護しようとするものである。この原理の基底には( )に対する信頼と( )( )に対する不信とがある。これに対して,前者は( )によって( )の活動を規制しようとするものであり,法律の制定によっても( )の権利を侵害することは許されない。この原理の基底には( )に対する信頼と( )に対する不信とがある。」
a 立法部   b 行政部   c 司法部   d 一般国民
1.5回   2.6回   3.7回   4.8回   5.9回


[H04-16] 次の文章中の@からDまでに,後記AからEまでの文章を1回ずつ選択して挿入するとまとまった記述になる。その組合せとして正しいものは後記1から5までのうちどれか。
 「憲法の採用している『法律による行政の原理』や『国会中心主義』は,国会の定める法律により行政活動を拘束し,裁判所により行政活動に対する適法性の審理を可能ならしめることにより,国民の権利・自由を保障しようとするものである。したがって,〔@〕。しかし,複雑多様な社会の事象すべてを事前に予測して採るべき措置を詳細に法律で規定し尽くすことは不可能であり,また政策的観点からみても膨大な事務の処理を行政庁の専門技術的判断ないし政治的判断にゆだねる必要性もある。したがって,〔A〕。
 ところで,行政裁量ということを観点を変えてみるなら,立法府が行政に対しその活動について包括的に委任しその委任した範囲内で判断や選択の自由を付与したものとみることができるので,当該法規において行政裁量の幅がどの程度自由を付与しているかの問題に帰着する。したがって,〔B〕。
 以上の視点は,委任立法の限界を考えてゆく場合によく似ている。すなわち,憲法の採用している『法律による行政の原理』や『国会中心主義』は国会の定める法律によって行政活動を拘束することにより,国民の権利・自由を保障しようとするものであるから,行政府による立法は無限定ではあり得ない。したがって,〔C〕。このような観点に照らすならば,委任命令に基づいて行使された行政処分の憲法適合性を吟味する場合,ただ単に当該命令が法律の委任の範囲内にあるか否かを検討するだけでなく,法律の委任の程度が国民の権利・自由を制約する危険性があるか否かの観点も検討する必要がある。したがって,〔D〕。」
A 当該法規が一見すると,行政に何ら制約を課していないように読むことができるときに,当該法規をできる限り憲法の趣旨に沿うよう行政に制約を課しているものと解釈する必要がある場合も生ずる
B 裁量法規の解釈をするに当たっては,国民の権利・自由を保障しようとする目的を考慮すべきである
C 行政行為の要件・効果について不確定概念をもって規定する裁量法規の存在も避けられない
D 立法権を実質的に侵害するような一般的・包括的委任は許されない
E 法律は行政府の活動を具体的に拘束していることが望ましいといえる
1.@にはAが入り,BにはCが入り,DにはBが入る。
2.@にはBが入り,BにはAが入り,DにはEが入る。
3.@にはEが入り,BにはCが入り,DにはAが入る。
4.@にはBが入り,BにはEが入り,DにはDが入る。
5.@にはEが入り,BにはBが入り,DにはAが入る。


[H04-17] 予算の性質に関し,予算の法的性格を否定して行政行為とし,議会に対する意思表示にすぎないと解する説(予算行政説),予算を法律とは異なる国法の一形式と解する説(予算法形式説),予算を法律それ自体と解する説(予算法律説)の三つの説があるが,次の1から5までの記述のうち,誤っているものはどれか。
1.予算法形式説は,国家機関に対する予算の拘束力に関し,歳入予算と歳出予算とを区別し後者についてのみ拘束力を認める考え方に最もよく符合する。
2.予算法形式説では,予算に関し,衆議院に先に提出させること及び衆議院の再議決の制度がないこと(憲法第60条)など,一般の法律とは区別された手続が定められていることにつき,「法律案は,この憲法に特別の定のある場合を除いては,両議院で可決したとき法律となる。」と規定した憲法第59条第1項にある「特別の定」に当たると解しないと説明がつかない。
3.予算法形式説では,一般に法律に伴う経費が予算に計上されていない場合には内閣が補正予算を提出する義務があるものとして,予算と法律の不一致の場合を解決しようとする。
4.予算法律説によると,予算が法律そのものであると解する帰結として国会がこれを自由に修正できるということになるが,法律と異なり予算案の提出権は内閣に専属することから,その修正には限界があるとする考え方もある。
5.予算行政説では,予算の拘束力について予算そのものに根拠を求めることはできず,租税等財政関係の諸法律にこれを求めることになる。


[H04-18] 次の1から5までのうち,イの記述とロの記述の関係が最も薄いものはどれか。
1.イ 国家の名による政府の専断的な権力行使から国民の権利を守ることを意味する「近代立憲主義」
  ロ 権力の分立,国民参政
2.イ 行政が行政権独自の判断で行われてはならず,国民の代表たる国会が定めた法律に従ってのみ行われねばならないことを意味する「法律による行政の原理」
  ロ 議院内閣制,議院の自律権
3.イ 治者と被治者との間に同一性を持たせ,国民の政治的自治又は自律を認めることを意味する「民主主義」
  ロ 基本的人権の尊重,国民代表(代議制)
4.イ 国家統治の在り方についての最終的な決定権が国民にあることを意味する「国民主権」
  ロ 憲法改正の国民投票,公務員の選定罷免権
5.イ 恣意的な統治者の意思ではなく,あらかじめ定められた一般的ルールによる支配を意味する「法の支配」
  ロ 裁判所による違憲審査制,法規の一般的性格


[H04-19] ある私立高校では,その校則でパーマをかけることが禁止されていたがそれに違反した生徒が再度の違反により退学処分を受けたことに対して,その処分の効力を争い,その前提として,次の1から5までの憲法上の権利,又は自由に関する主張をしたとした場合,当該事件の解決に最も関係の薄いものはどれか。
1.幸福追求権の中に,髪型の自由も含まれる。
2.未成年者も,人権の享有主体たり得る。
3.退学処分は,教育を受ける権利を侵害する。
4.教育権は,国の側にではなく,国民の側にある。
5.憲法の人権保障は,直接又は間接に私人間に及ぶ。


[H04-20]次のAからEまでの記述のうち,明らかに誤っているものはいくつあるか。
A 明治憲法では,行政権の主体は天皇であり,内閣は天皇の行政権を輔弼することを任務とし,また,内閣総理大臣は,単に国務大臣の中で「同輩中の首席」たる地位を有するにすぎず,内閣を構成する各国務大臣と法的に平等な地位にあるとされた点で日本国憲法とは,大きく異なるが,内閣制度自体は明治憲法上,明文で定められていた。
B 日本国憲法上,議案の提出権の中に法律案が含まれるか争いがあるが,明治憲法下では政府の法律案提出権について憲法に明文の規定があった。日本国憲法でも内閣法にはその規定がある。
C 日本国憲法では,内閣総理大臣は,内閣の統一性を維持するため,国務大臣を罷免することができるが,適正手続の保障のため国務大臣を罷免するときは,閣議の議決を経なければならない旨法律で規定することは許される。
D 日本国憲法では,内閣の一体性を前提とし国会に対して連帯して責任を負うこととされているから,閣議の議決は全員一致が慣行となっているが,多数決によって閣議の議決を行っても,必ずしも憲法の規定に違反するものではない。
E 日本国憲法の下では,参議院議員の中から内閣総理大臣を指名することも可能であるが,その場合,参議院が内閣総理大臣たる参議院議員を除名することができるとすると,参議院の議決のみによって,国会の議決に基づいて指名された内閣総理大臣が国会議員の地位を失い,内閣の総辞職を余儀なくされるという事態を生じることが認められることになるから,参議院が内閣総理大臣たる参議院議員を除名することは許されない。
1.1個   2.2個   3.3個   4.4個   5.5個




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