[H01-01] 下記1から5までは,当該争訟が司法権の審査の対象となるか否かについて述べたAからEまでを説明したものであるが,明らかに誤っているものを一つ選べ。
A 衆議院の解散の効力については,その判断が法律上可能であっても,かかる国家行為は,裁判所の審査権の範囲外にある。
B 本件訴訟は,宗教団体内部における具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争であり,また,信仰の対象の宗教的価値又は宗教上の教義に関するものであるから,結局本件訴訟は,司法審査の対象にならない。
C 最高裁判所の裁判官の任命行為は,学識,見識などを勘案してなされる内閣の判断事項であり,本質的には司法審査になじまないものと考える。
D 当該法律が,両院において議決を経たものとされ,適法な手続によって公布されている以上,裁判所は同法について,制定の議事手続に関する瑕疵の有無を審査して,その有効無効を判断すべきではない。
E 議員定数の不均衡を争う訴訟における被告の選挙管理委員会側の見解によれば,当該訴えは司法審査の範囲外にあるものである。
1.AからEまでは,すべて司法部以外の者の判断の尊重という観点から説明できる。
2.A,Eの組及びB,Dの組は,それぞれある特定の法理により説明できる。
3.AからEまでのうち,内部行為論又は機関の自律性の法理で説明できないものが三つ以上ある。
4.C及びDは,そもそも法的判断の対象にはなり得ないという観点から説明できる。
5.AからEまでのすべてを三権分立の観点から説明することは,不可能である。
[H01-02] 次の各見解の中で,「自己の信仰に関する心の静穏を保持する利益は,すべての国民に保障された基本的人権に属する。」との見解と矛盾するものはいくつあるか。
A ある者の自己の信仰に関する心の静穏を法的に保護しなければならないとするならば,かえって相手方の信教の自由を妨げる結果になるであろう。
B 現代社会において,他者から自己の欲しない刺激によって心を乱されない利益,いわば心の静穏の利益も法的利益となり得るものと認めてよい。この利益が宗教上の領域において認められるとき,これを憲法第13条によって基礎付けることができよう。
C 各宗教の信者には,自己の信仰に関する心の静穏を他人の宗教上の行為によって,害されたとしても,常にこれを受忍すべき寛容さが,憲法上求められているというべきである。
D 精神的な静穏というのは極めて主観的なものであるからそれを判断すべき明確かつ公正な基準を見いだすことはおよそ不可能であるといわなければならない。
E それが宗教にかかわるものである限り,いかに心の静穏を害されても,これに口を挟むことは許されず,これを坐視しなければならないというのは,社会通念に著しく反すると考えられる。
1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個
[H01-03] 次の文章中の[ ]には下記(イ)から(ヘ)までの語句が入る。その順番として最も適当なものは,後記1から5までのうちどれか。
「[ ]は民主主義社会の存立の基礎をなすものであるから,これを高めることの重要性は,いくら強調してもし過ぎるということはない。ただその場合に留意すべきことは,法と個人とのかかわり合いには,法が個人の自由を制限するという関係と,個人が法によって保護されるという関係の二つの側面があることである。ところが,実際に[ ]が唱道される場合にややもすると[ ]の側面に重点を置いた受け止め方がなされる傾向にあるように思われる。もちろん上記の二つの側面は盾の両面ともいうべき密接な関係にあり,国民が法を尊重し[ ]が保たれることによってはじめて[ ]も保たれるわけであるが,そのことは[ ]の重要性をいささかも減殺するものではない。」
(イ) 法の尊重 (ロ) 法を尊重する精神 (ハ) 個人の権利を擁護する法
(ニ) 個人が従うべき法 (ホ) 個人の自由 (ヘ) 社会の秩序
1.(イ)−(ロ)−(ハ)−(ヘ)−(ホ)−(ニ)
2.(ロ)−(イ)−(ヘ)−(ハ)−(ニ)−(ホ)
3.(ロ)−(イ)−(ニ)−(ヘ)−(ホ)−(ハ)
4.(イ)−(ロ)−(ヘ)−(ニ)−(ハ)−(ホ)
5.(ロ)−(イ)−(ホ)−(ヘ)−(ハ)−(ニ)
[H01-04] 次の1から5までの記述は,アメリカ合衆国の連邦法又は州法の合憲性について触れた連邦最高裁判所の判断であるが,議会の権限に対する司法判断の在り方について他の四つと異なる見解を表すものはどれか。
1.基本的権利に対する干渉は,州がやむにやまれぬ強度の利益の存在を立証することにより正当化されなければならない。
2.我々は,裁判所が立法の賢明性を評価する超立法府ではないことを明らかにした。議会は,新しい施策を実験する憲法上の権限を有するし,経営,労働の分野における業務の規制については,極めて広範な裁量の範囲内にある。
3.通常の商業取引に影響を与える規制立法は,既知の事実又は一般に想定された事実に照らし,それが立法者の知識と経験の範囲内の,ある合理的基礎に依拠しているという仮定を排除するような性質のものでない限り,違憲の宣告を下すべきではない。
4.法律は,多くの場合に不必要で無駄な要求を強いるかもしれない。しかし,新しい要求の得失を衡量するのは,裁判所ではなく議会である。法律が合憲的であるためには,あらゆる点においてその目的と論理的に整合していることを必要としない。
5.裁判所は,立法の賢明性,必要性又は適切性にはかかわりを持たない。州は,その分野における自由取引を放置することによる害悪の存在を立証する必要はない。
[H01-05] 次の文章中の[ ]の中には,a「職業選択の自由」,b「職業活動の自由」及びこれらの上位概念であるc「職業の自由」という三つの語句のいずれかが当てはまるが,最も適当な当てはめ方は,後記1から5までのうちどれか。
「憲法22条1項は,狭義における[ ]のみならず,[ ]をも包含しているが,[ ]は,憲法の保障する他の自由に比べて公権力による規制の要請が強く,憲法の右規定も,特に公共の福祉に反しない限りという留保を付している。
しかし,[ ]に対する規制措置は事情に応じて多種多様の形をとるため,その憲法22条1項適合性を一律に論ずることはできず,具体的な規制措置について,規制の目的,必要性,内容,これによって制限される[ ]の性質,内容及び制限の程度を検討し,これらを比較衛量したうえで慎重に決定しなければならない。そして,その合憲性の司法審査にあたっては,規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上,その具体的内容及び必要性と合理性については,立法府の判断が合理的裁量の範囲にとどまる限り,これを尊重すべきである。ところで,一般に許可制は,単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて,狭義における[ ]そのものに制約を課するもので,[ ]に対する強力な制限であるから,その合憲性を肯定し得るためには,原則として,重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し,また,それが社会政策ないい経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく,自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的,警察的措置である場合には,許可制に比べて[ ]に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては右の目的を達成できないと認められることを要する。」
1.abcacabc 2.abaacaab
3.abbccbca 4.abcccacc
5.baaaaaca
[H01-06] 次のAからGまでの七つの文章のうち,五つを選択し,「[ ]このような観点に照らせば,[ ]しかしながら,[ ]のみならず,[ ]したがって,[ ]」の順に並べると地方公共団体の条例制定権と刑罰権との関係についての論述となる。後記1から5までのうち正しい順序を示したものはどれか。
A 憲法第94条により,地方公共団体に条例制定権が付与されているといっても,条例に違反した者に対して制裁を科するための刑罰規定を設ける権能をもたない限り,条例の実効性を担保することはできない。
B 条例による規制が許される限度については,条例の趣旨,目的,内容,効果等を検討して,法律と実質的に矛盾抵触しているか否かにより判断すべきである。
C 刑罰を科するには,刑罰の内容が法律で定められていることが罪刑法定主義から要請されることや,そもそも刑罰権の制定権限は本来国家に帰属する事務であって,地方自治の範囲に属しない。
D ある事項について法律が存する場合に,法律が全国一律に同一の規制を施す趣旨ではなく,各地方公共団体において,その地方の実情に応じ,別の規制を施すことを容認する趣旨が推測できるときは,条例で罰則を設けても差し支えない。
E 地方公共団体が,法律による委任に基づくことなく,条例で罰則規定を設けることはできないといえる。
F 地方公共団体が法律の定める包括委任規定に基づき一定限度の刑罰を定めることは,憲法第31条所定の罪刑法定主義に違反するものではなく,この場合法律が刑罰権を委任する範囲については,行政権に委任する場合に比較して,委任の個別性・具体性がより緩やかであってもよい。
G 条例は,行政権の命令と異なり住民代表機関である地方議会の議決により制定されるもので,民主的かつ自主的な基盤を有している法であるから,実質上は,法律と同様に解すべきである。
1.GFBAD 2.BDGAF 3.CEGDB
4.CEAGF 5.BEAGF
[H01-07] 次の論述は,福沢諭吉著の「西洋事情」の一節である。文中の[ ]には下記AからEまでの文章が入る。その順序として正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
「政治に三様あり。日く立君,(モナルキ)[ ]。日く貴族合議,(アリストカラシ)[ ]。日く共和政治,(レポブリック)[ ]。又立君の政治に二様の區別あり。[ ]ものを立君獨裁(デスポット)と云ふ。魯西亜,支郡等の如き政治,是なり。[ ]者を立君定律(コンスチチューショナル・モナルキ)と云ふ。現今歐羅巴の諸國此制度を用ゆるもの多し。」
A 門地貴賎を論ぜず人望の属する者を立てて主長となし,國民一般と協議して政を為す
B 國に二王なしと雖ども,一定の國律ありて君の権威を抑制する
C 國内の貴族名家相集てを國政行ふ
D 唯國君一人の意に随いて事を行ふ
E 禮楽征伐一君より出づ
1 ECABD 2 DBAEC 3 BACED
4 DEBCA 5 ECADB
[H01-08] 日本国憲法に関する次の1から5までの記述のうち,誤っているものはどれか。
1.「公金その他の公の財産は,宗教上の組織若しくは団体の使用,便益若しくは維持のため,……これを支出し,又はその利用に供してはならない。」との規定(第89条)がなくとも,憲法上,公金その他の公の財産を宗教上の組織若しくは団体の使用,便益若しくは維持のために支出し,又はその利用に供することには,一定の制約がある。
2.「最高裁判所は,一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」との規定(第81条)がなくとも,憲法上,最高裁判所及び下級裁判所は,裁判をするに当たっては,憲法に拘束される。
3.「内閣は,毎会計年度の予算を作成し,国会に提出して,その審議を受け議決を経なければならない。」との規定(第86条)がなくとも,憲法上,内閣は,毎会計年度の予算を作成し,これを国会へ提出する権限を有する。
4.「裁判の対審及び判決は,公開法廷でこれを行ふ。」との規定(第82条第1項)がなくとも,憲法上,刑事責任についての裁判の対審及び判決は,公開の法廷で行わなければならない。
5.「地方公共団体の長,その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は,その地方公共団体の住民が,直接これを選挙する。」との規定(第93条第2項)がなくとも,憲法上,地方公共団体の長については,その地方公共団体の住民の直接選挙によってこれを選定しなければならない。
[H01-09] 議員の不逮捕特権と免責特権の制度の趣旨について,「行政権や司法権など他の国家権力との関係で,議院の自律的活動を保障することよりも,むしろ政治的動機に基づく違法,不当な妨害から個人の身体の自由とその言論活動を保障することに重点がある。」とする見解(A説)と,「行政権や司法権など他の国家機関との関係で,議員個人の身体の自由等を保障するというよりも,むしろ議院の自律的活動を保障することに重点がある。」とする見解(B説)がある。次の1から5までの記述は,これらの制度から生じる具体的問題とA・B両説の関係を論じたものであるが,誤っているものはどれか。
1.「議員の逮捕に正当な理由があると認められる場合には,議院は常に許諾を与えなければならない。」という見解は,A説を前提とした方が説明しやすい。
2.「議院が逮捕の許諾を与える際に,条件や期限を付けることができるのは当然である。」という見解は,A説を前提とした方が説明しやすい。
3.「免責特権は,国会議員だけではなく,公述人,証人,政府委員等もこれに準じて認められるべきである。」という見解は,B説を前提とした方が説明しやすい。
4.「議員が議院内で行った表現行為の中に,仮に重大明白な違法行為を構成するものがあったとしても,院外での責任を一切問わないことにする方がより大きな国益に合致すると考えるべきである。」という見解は,B説を前提とした方が説明しやすい。
5.「議員の免責特権の対象になる行為には,議院内における演説,討論,表決等の職務行為に限らず,これに付随する行為も含まれる。」という見解は,A説,B説いずれの説を前提にしても説明できる。
[H01-10] 大学の法学部の学生AとBが,ある憲法問題について次のような議論をしている。( )内に当てはまる最も適切な発言は,後記1から5までのうちどれか。
A:衆議院は総理大臣である衆議院議員を除名処分にすることができますか。
B:総理大臣が衆議院の秩序を乱し,その情状が重大であるときは,議院の自律権を行使して除名することができます。
A:その場合,内閣はどうなりますか。
B:議員の地位を失えば,総理大臣としての資格を失うので,憲法第70条の「内閣総理大臣が欠けたとき」に当たり,内閣は総辞職することになります。
A:そうすると衆議院は内閣総辞職をねらう場合,内閣不信任の決議案を可決する方法と,総理大臣たる衆議院議員を除名処分にする方法の二つがあるということになりますね。
B:結果的には,そうなりますね。
A:内閣不信任案の決議案を可決した場合,内閣は衆議院を解散するという対抗手段があるのに,除名処分されれば総辞職の途しかないことになり,衆議院の地位が強くなり過ぎるのではありませんか。
B:( )
A:なるほど,議院が組織体として円滑な運営を図るための権能は,憲法もこれを基本的なものとして認めているというわけですね。
1.除名処分がされそうなときは,憲法第7条により衆議院を解散するという方法を先に採ることができるので,衆議院の地位が強くなり過ぎるということはないと思います。
2.除名処分がされたということは,そのような総理大臣によって組閣された内閣を不信任にしたのと同視できるので,この場合は,憲法第69条により衆議院を解散することができると思います。
3.除名処分は議院の秩序を乱したことに対する懲罰であり,外からの勢力が介入すべきでない議院の自律権の行使であって,それが内閣総辞職につながったとしても,そのような事態は憲法も予想しているといってよく,仕方がありません。
4.総理大臣が参議院議員であれば,解散の余地もないのであり,この点からも,国会は国権の最高機関として,内閣に優越している関係にあるわけです。
5.総理大臣たる衆議院議員は,行政府の長であり,もはや説明の自律権の対象外となるべきですから,除名処分ができるとした先の見解は,撤回します。
−[H01-11]から[H01-12]まで−
次の論述を読んで後記の[H01-11]と[H01-12]の各問に答えよ。
「米国において,国民主権と違憲審査制との関係は,当初は次のように単純に理解されていた。〔A〕このように理解すれば,裁判官の機能は,立法者の機能と全く次元を異にすることになり,両者の間には衝突が生じようがない。だが,この考え方は,19世紀末から今世紀初頭にかけて,疑問視されるようになった。それは,裁判所が,労働者階級の福祉を増進しようとする各種の立法を財産権を侵害するとの理由で次々と違憲・無効にするに至ったからである。そこで,法は,言葉において存在するにすぎず,そこから単一にして明確な内容をもつ解答が流出する容器『それ自体として完全な文書』ではないという見解が次第に有力になってきた。もしそうだとすれば,法の解釈・運用の過程で裁判官の『公益に関する所見』や場合によっては偏見が介入してくるのは避けられないということになる。そして,遂には次のような主張さえも出てきた。〔B〕」
[H01-11] 上記の論述中,〔A〕に入る記述として最も適当なものは,次のうちどれか。
1.法は人為的に制定されるものではなく,人の意思の外に客観的に存在する正義であり,人はそれをただ発見し適用するにすぎないとされていた。裁判所は,この意味での法を憲法解釈の手法により発見し,法の支配を確立してゆくのである。
2.法は人が制定するものであり,人の意思の外に客観的に存在するものではない。しかし主権者の制定する法(=法律)は,自然法に反してはならず,しかも,自然法の内容を決定するのは,裁判所の権限なのである。
3.裁判所が法律や命令を違憲とするのは,高次の国民の意思の表現である憲法を正確に解釈・適用することにすぎない。裁判官の個人的欲求や政策観が介入する余地はない。支配するのはあくまでも憲法に表現された高次の国民の意思である。
4.裁判所は非民主的機関であり,国民に直接責任を負うものではない。したがって,裁判所が本来相競い合う利益・価値の比較考量を要求する市民的自由の保護に積極的に乗り出すことには慎重でなければならない,ということになる。
5.司法権の独立という場合,司法府の独立と個々の裁判官の職権行使の独立の二つが含まれている。そして,裁判がその存在意義を十分に認識し,国民の信頼を得るためには,裁判官が,政治的影響を受けずにその権限を行使する必要があり,司法権の独立が憲法上規定される意義は,正にこの点にあるのである。
[H01-12] 上記の論述中,〔B〕に入る記述として最も適当なものは,次のうちどれか。
1.「米国の裁判所は,常に大きな政治的問題を扱ってきており,政党は裁判所を支配しようとした。それ故に,裁判所は,多くの場合,党派的偏見を持ってきた。」
2.「国民の裁判官は,法律の文言を宣言する口の役割しか果たさない。したがって,判決は,法律の持つ一定の価値をそのまま社会に固定する役割を果たすことになり,司法は議会の執行機関として機能している。」
3.「本来国民の関心事である市民的自由の保護を第三者機関である裁判所に頼ることは,国民の政治的能力と道義的責任感の欠如をもたらすことになろう。」
4.「裁判官は,一切の政治的影響を避けるために,生活の範囲を自制し,六法と書斎に閉じ篭もることが期待されるようになる。」
5.「裁判官が国民の『良心』であるといわれるのは,ひとえにその人格的,道義的評価が一般の人々に比べて高いからであり司法に対する国民の信頼もここに根拠がある。」
[H01-13] 次の文章中の[ ]の中に下記のAからDまでの語句を入れる場合,その組合せとして最も適切なものは,後記1から5までのうちどれか。
「『言論の自由』の概念は,イギリスの歴史において,国会が[ ],を獲得しようとする闘争を通じて確立されてきたものであり,会期中に議員が議員としての資格においてなした発言を刑事罰から免責するという意味のものであった。すなわち,[ ]は[ ]ではなく,[ ]であったのであり,英米においては,少なくとも18世紀の最後の四半世紀にいたるまでは,[ ]をそのようなものとしてとらえるのが一般であった。」
A 言論の自由 B 市民的自由 C 自由な討論の特権 D 議員の特権
1.CABDA 2.DABCA 3.CADBA
4.DBACB 5.BDCAB
[H01-14] 下記AからEまでの文章のうち,「法律の留保」という言葉を次の論述と同じ意味で用いているものは何個あるか。
「明治憲法での権利の保障は,多くいわゆる『法律の留保』を伴った。すなわち,それらを行政権の行為(命令)で侵すことは禁じられたが,立法権の行為(法律)で侵すことは必ずしも禁じられていなかった。日本国憲法第3章は,原則として,かような『法律の留保』を認めず,行政権のみならず,立法権も制限しようとする。そこで保障されている権利は,法律によっても侵してはならないとされる。」
A 基本権的自由のほかにも,法治国の実現は,一つの原則の承認を要求する。それは,権利又は義務を基礎付け,あるいは,当事者の自由意思に基づかずにその者に負担を課する行政処分が有効であるためには,法律の規範に基づかねばならないということである。この原則を「法律の留保」と呼ぶ。
B 「法律の留保」とは,それによって,憲法の基本権の諸規定の多くが,憲法の力を有する規定から,単に法律の力を有する規定に弱められてしまう場合をいう。
C 憲法に基づく法律は,一定の特に重要な事項についてのみ,国家活動に必要な条件とされるのである。それ以外の事項については,行政権は,それ自体において自由である。それは,自らの力に基づいて行動するのであり,法律に基づいて行動するのではない。我々が「法律の留保」と呼ぶのは,かような行政権の独立活動が,特に重要な事項について否定される場合である。
D 「法律の留保」は,行政権の自由を法律の制約の下に置こうとする点では,立法権の利益に仕えるものであるが,一定の事項を法律に留保すると同時に,その他の事項については依然行政権の自由を承認−というよりはむしろ確保−しようとする点において,行政権の利益に仕えるものである。
E 今日,基本権の保障にあっては,行政権による基本権の制限はもはや問題にならない。問題は,立法権によれば基本権を制限できるか,それとも立法権によってもそれを制限できないかである。ここに,「法律の留保」という概念が存在理由を持つ余地がある。
1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個
[H01-15] アメリカ合衆国のある州立大学のロースクールの入学試験で定員の5倍の志願者がいた。入学者のほとんどが白人であり少数派集団に属する者の割合が極めて小さかったため,白人以外の志願者は自分が少数派集団に属する旨を明らかにすることとされた。ロースクールは下記@からBのいずれか一つの方法を選択した。その結果ア又はイの訴えが提起され,その訴えの根拠としてA・B・C又はDが挙げられた。後記1から5までの組合せのうち,正しいものはどれか。
@ テストの点数の高い順に入学させる。
A 少数派集団に属する者については,テストの点をみず,必ず一定数入学させる。
B 少数派集団に属する志願者については,実際の点数に一定の点数をプラスした上,人種にかかわらず点数の高い順に入学させる。
ア 入学できなかった白人志願者は,ロースクールが憲法違反をして少数派集団を優遇するという形の白人差別をしたため,自分が入学できなかったという理由による提訴。
イ 入学できなかった少数派集団に属する志願者は,ロースクールが憲法違反をして人種差別をしたため自分が入学できなかったという理由での提訴。
A 不利な条件に置かれた少数派集団は,公的・私的な差別が深く根をおるした結果生じた障害に,直面させられている。
B 志願者の選択については,ロースクールにおける高い学業成績の見込みだけを基準とすべきである。
C 少数派集団に属する者に対して,個人の特性に関係なく恣意的優遇をすることによって過去の不正義を償おうとするならば,永久に機会均等という理念から隔たってしまうことになる。
D 少数派志願者は,過去の幾世代にもわたって差別される子供のころの知性獲得競争で不利な立場に置かれてきたから,白人の志願者と平等の機会を持っていない。
1.A−ア−D
2.@−イ−B
3.A−イ−A
4.@−ア−C
5.B−ア−B
[H01-16] 我が国の予算における法的性格について,「予算は,国の財政行為の準則として国会の議決により定立される法規範であるが,国法の形式としては法律とは区別されるべきものである。」と答えた学生に対し,次の1から5までのとおり,教授が,予算は法律そのものであるとする予算法律説の立場から質問をし,学生がこれに答えている。学生の答えの中に,自己の立場を前提とすると誤っているものがあるが,それは,次の1から5までの答えのうちどれか。
1.教授:君の立場からも,予算が内閣に対して拘束力を有することを憲法上明らかにしなければならないが,この点をうまく説明できるかな。
学生:その点は,憲法第83条が国の財政を処理する権限は,議会の議決に基づいてこれを行使しなければならないと規定しているところから,説明ができると思います。
2.教授:予算を法律と区別すると,予算と法律との間に不一致が生じる場合の解決をどうするのかね。
学生:憲法上,国会における予算の議決について,衆議院に先議権や議決における絶対的優越が認められていること等から,そのような不一致が生じるのはやむを得ないことであり,その場合は,内閣等において別途解決策を考えるべきだと思います。
3.教授:予算に関して議会が修正権を有するかという問題についても,君の立場からは,うまく説明できないのではないかな。
学生:予算を法律とは異なる法規範と解すると議会に予算の修正権がないこととなりますが,それは,憲法上,予算の議会への提出権が内閣に専属することによるものであって,やむを得ないことだと思います。
4.教授:予算も国民に対し公布されるべきものと思うが,君の立場からでは,この点の説明も難しいのではないかな。
学生:予算も法律と同様に公布すべきものとするかどうかは,立法論の問題だと思います。憲法第7条第1号に「予算」を掲げていない以上,予算法律説の立場から予算を公布すべきものとすることは,解釈論の域を出ているのではないでしょうか。
5.教授:憲法上,国会における予算の議決について特別の規定があるが,これは,法律案の議決について定めた第59条第1項の「この憲法に特別の定めのある場合」に当たると解することができるから,結局,予算法律説の方が解釈上良いのではないかね。
学生:そうは思いません。憲法上,国会における予算の議決について,法律の場合と異なる特別の規定が置かれていることからしても,予算を法律と解することはできないと思います。この特別の規定は,第59条第1項にいう「特別の定」には当たらないというべきです。
[H01-17] 「法の支配」の原理の特色は,第二次大戦前のドイツにおける「法治主義」ないし「法治国家」の概念と著しく異なるとされている。次の[ ]内には,このような意味での「法治主義」,「法治国家」,「法の支配」の言葉のいずれかが入るが,「法の支配」が入るのはいくつあるか。
A 国家が国民の権利義務をどう定めるべきか,定めるべきでないかを決めるものは,[ ]と厳格に区別される自由主義(基本権)の思想だといわれている。
B[ ]の観念は,国家活動の目的ないし内容とは全く関係がない形式的な,ただそれらの実現の方式及び性格に関係するだけのものである。
C 憲法の形式的最高性は,実質的最高性によって基礎付けられているが,この実質的最高性という観念は,[ ]の原理の核心的な理念が具体化されている。
D [ ]の観念は,専ら国家の作用が行われる形式又は手続の観点から構成された名称である。したがってそれは,いかなる国家形態に対しても中立的な態度をとる観念である。
E [ ]という場合の法は,権威主義的な法を含む意味の法一般をいうのではなく,特定の倫理思想と結びついた法をいうのである。
1.1個 2.2個 3.3個 4.4個 5.5個
[H01-18] ある最高裁判所判決は,被告人以外の者の所有物につき,その者に対して告知聴聞の機会を与えずに,被告人からこれを没収した事案において「没収の言渡を受けた被告人は,たとえ第三者の所有物に関する場合であっても,被告人に対する付加刑である以上,没収の裁判の違憲を理由として上告をなし得ることは,当然である。のみならず,被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され,またはこれが使用,収益をなし得ない状態に置かれ,更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等,利害関係を有することが明らかであるから,上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである。」として被告人に違憲を主張する適格性を認めた。この判決に関する次の1から5までの記述のうち,正しいものはどれか。
1.この判決は,被告人に対する没収の言渡しにより没収物の所有者である第三者に所有権はく奪の効果が及ぶことを当然の前提としているとは限らない。
2.「当事者は自己の憲法上の権利を主張し得るにとどまり,第三者の憲法上の権利を援用することは許されない。」という法理があるが,第三者が没収物の返還を求める訴訟により救済される現実的可能性は極めて乏しいとの認識からこの法理を厳格に適用すべきではないという見解を採れば,この判決と同じ結論に達することもできる。
3.上訴権を行使するのは裁判所が上訴権者の権利,利益を侵害しているからその救済を求めるものであることはいうまでもないが,その裁判を違憲とする理由は,その裁判所が準拠すべきすべての憲法,法律,命令の規定の解釈,運用の適否に及ぶから被告人自身に直接関係のない点に関するものであってもよいという見解を採れば,この判決と反対の結論に到達することができる。
4.第三者が自らの憲法上の権利に対する侵害を甘受するかどうか未定の段階で先回りして憲法判断をする必要はないという見解は,この判決に対する批判になり得ない。
5.被告人には,告知・聴聞の権利が与えられており,その点に関しては,憲法上の権利の侵害はないという批判は,この判決の判断には当てはまらない。
[H01-19] 憲法第58条第2項の国会議員の除名処分は司法審査の対象とはならないとする見解がある。次の1から5までのうち,この見解の根拠となり得ないものはどれか。
1.除名処分は,議員の3分の2の多数によって行う政治的決定である。
2.多数党が少数党を抑圧する手段としての懲罰権の濫用は,選挙その他の民主制の政治的過程を通して救済されるべきである。
3.憲法は,三権分立の原則により成り立っている。
4.除名処分は懲罰行為であって,法律上の争訟に当たらない。
5.憲法は,議院の自律性を認めている。
[H01-20] 「裁判官は法を創造することはない」という命題(A)と,「裁判官は裁判を拒否し得ることはない」という命題(B)とがある。次の1から5までのうち,誤っているものはどれか。
1.Aは,三権分立原理の一面を表しているとみることができる。
2.Bは,人権の保障の原理としての表意とみることができる。
3.Aは,裁判官が憲法に拘束されることの表意とみることができる。
4.Bは,裁判を受ける権利理念の保障の表意とみることができる。
5.Aは,司法権独立を否定しているとみることができる。