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択一演習・行政法〔解説編〕


AIMON(C)2001/02/21

※府及び省とその外局の部分(問2)について法改正に対応しました。(2018/04/01)



【問1】 正 解 3  出題範囲 行政法全般
 本問は行政法の全体を鳥瞰するための出題である。(1)法治行政⇒(2)行政行為⇒(3)行政強制という行政作用の流れと,違法な行政行為から国民を救済するための(4)取消訴訟・(5)国家賠償のそれぞれの関係を理解してほしい。また,公定力・自力執行力・不可争力・不可変更力という行政行為の四つの効力についても触れておく。
1 正  行政は,国民の利益のために様々な活動を行う。しかし,福利の名の下に国民の権利を侵害する危険も有している。そこで,行政権の濫用から国民を守るため,行政は国民の代表者である国会の制定した法律に基づいて活動しなければならいこととされている。これを法律による行政の原理(法治主義)という。法律による行政の原理は,(1)行政主体が,法律で認められた権限に基づき,(2)法律で禁止された事項に反しない限度で行政活動を行い(法律の優位),さらに,(3)少なくとも国民の自由や財産を侵害する場合は,法律の授権がなければ行うことができない(法律の留保)ことを要請する。これによって行政権による権力の濫用から国民の権利・自由が守られるのである。
2 正  民事法においては,権利・義務は,契約など当事者の合意により変動するのが原則である。これを私的自治の原則という。ただ,行政活動においてもこの原則を徹底するときは公益を実現し得ない場合が生じる。そこで,行政法においては,行政が一方的に国民の権利・義務を変動することができるようにしている。このような行為を行政行為という。当事者の合意がなくても一方的に法律関係を変動することができるのは,法律による行政の原理に基づき法律の授権があるからである。
 行政行為がたとえ違法であったとしても,国民がそれを各自の判断で無視できるとすると,国民の共同生活の安定が害され,行政行為への信頼が失われることとなってしまう。そこで,瑕疵ある行政行為は,取消訴訟など一定の争訟手続で正式に取り消されない限り,適法性が推定され,有効と扱うこととされている。この行政行為の効力を公定力という。ただし,違法性が,余りにも重大でしかも明白な場合にまで有効とする必要はないので,行政行為の瑕疵が重大かつ明白な場合は無効とされる。
3 誤  債務者など義務を負った者が任意に履行しない場合,民事法では,権利者は自ら実力で権利を実現することは認められない(自力救済の禁止)。まず裁判で権利の存在を確定してもらい(民事訴訟),それに基づいて執行裁判所又はその執行官に強制執行をしてもらうことになるのである(民事執行)。これに対し,行政法では,公益を実現するための実効を期すため,行政は自ら直接,違法建築物を取り壊したり,税金を強制徴収するなどの強制執行を行うことができる(行政強制)。この,行政が自ら執行し得る行政行為の効力を自力執行力という。
4 正  違法な行政行為でも公定力があるから,一応は有効と扱われる。したがって,国民は違法な行政行為でも無視することはできない。しかし,このような違法な行政行為から国民を救済する必要がある。そこで,違法な行政行為を取り消して公定力から国民を解放するための制度として取消訴訟という争訟制度が認められている(行政事件訴訟法)。ただし,いつまででも取り消すことができるとすると,かえってその行政行為を信頼した者に不測の損害を生じさせることになるので,行政行為を取り消すには,一定の期間内に取消訴訟を提起しなければならないこととして,この期間を経過するともはや行政行為の効力を争えなくなることとしている。この,もはや争えなくなった行政行為の効力を不可争力という。
 なお,違法な行政行為から国民を救済する争訟制度は,裁判所が行う取消訴訟だけでなく,行政自身が行う審査請求や異議申立てという不服申立ての制度も設けられている(行政不服審査法)。この不服申立てによる判断(裁決・決定)も行政行為ではあるが,裁判と類似したものであるから,いったん下した判断を自由に変更できるとするならば紛争の解決にならない。そこで,行政は,いったん裁断を下したならばそれを任意に変更することはできないこととされている。これを行政行為の不可変更力といい,裁断行為などにのみ認められる効力である。
5 正  取消訴訟や不服申立ては,違法な行政行為の効力(国民の負っている義務)を無効とすることにより,法の拘束から解放して国民を救済するものである。これに対して,国家賠償は公権力の違法行為(法行為であると事実行為であるとを問わない。)により生じた損害を補てんするものであり,両者は目的が異なる。したがって,行政行為が取り消されなくても国家賠償の請求をすることができる。


行政組織法



★ 行政主体
 行政を行う権利・義務を有する者を行政主体という。行政主体には,国がある。また,都道府県・市町村などの地方公共団体が挙げられる。さらに,特殊法人と呼ばれるものもある。特殊法人には,営造物法人といい,民法でいえば財団法人に当たるもの(日本道路公団など)や,公共組合といい,民法でいえば社団法人に当たるもの(健康保険組合など)がある。
*□□ 国
*□□ 普通地方公共団体…(都道府県・市町村)
 □□ 特別地方公共団体…(特別区・地方公共団体の組合・財産区・地方開発事業団)
・□□ 特殊法人……………(営造物法人・公共組合)

┌────────────── 行政主体 ───────────────┐
│                                   │
│ 国                                 │
│                                   │
│                ┌都道府県              │
│       ┌普通地方公共団体┤                  │
│       │        └市町村               │
│ 地方公共団体┤                   ┌一部事務組合 │
│       │        ┌特別区(東京23区)│       │
│       │        │          ├広域連合   │
│       │        ├地方公共団体の組合─┤       │
│       └特別地方公共団体┤          ├全部事務組合 │
│                ├財産区       │       │
│                │          └役場事務組合 │
│                └地方開発事業団           │
│                                   │
│                                   │
│       ┌営造物法人(日本道路公団など)            │
│ 特殊法人──┤                           │
│       └公共組合 (健康保険組合など)            │
│                                   │
└───────────────────────────────────┘

★ 国の行政組織
 行政の活動範囲はとても広範なので,行政主体を一体的な機構に組織して,それぞれに担当分野を定め,その分野に関する権限を与えて行政を行わせている。このような行政主体の組織を行政組織という。例えば,行政主体のうち国についてみると,国の行政権は内閣に帰属し(憲法65条),内閣の下に内閣府及び総務省や法務省などの省が組織されている。また,内閣府や各省には,政治的中立性を保たせるためや,専門的な職務を行わせるために,公正取引委員会や国税庁などの,委員会や庁という外局が置かれている。行政主体は,このような組織を備えることにより効率的に行政を行っているのである。
*□□ 内閣………………内閣総理大臣と14人(特別に必要があるときは17人)以内の国務大臣から構成される合議機関
*□□ 府及び省…………内閣の統括の下に置かれる機関(内閣府・総務省・法務省,外務省など)
*□□ 府及び省の外局…(委員会・庁 →内閣府設置法64条及び国家行政組織法別表第1参照)
 □□ 附属機関…………府,省,委員会,庁に附置される機関(研究所や医療厚生施設など)
 □□ 地方支分部局……地方に置かれる国の出先機関(郵便局や税務署など)

★ 内閣府設置法48条・64条及び国家行政組織法別表第1(府及び省とその外局)

 ┌─────┬──────────────────────────┬───────────────────┐
 │ 府・省 │         委  員  会          │         庁         │
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │内閣府  │ 公正取引委員会 国家公安委員会 個人情報保護委員会│ 宮内庁 金融庁 消費者庁      │
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │総務省  │ 公害等調整委員会                 │ 消防庁               │
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │法務省  │ 公安審査委員会                  │ 公安調査庁             │
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │外務省  │                          │                   │
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │財務省  │                          │ 国税庁               │
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │文化科学省│                          │ スポーツ庁 文化庁         │
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │厚生労働省│ 中央労働委員会                  │                   │
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │農林水産省│                          │ 林野庁 水産庁           │
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │経済産業省│                          │ 資源エネルギー庁 特許庁 中小企業庁│
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │国土交通省│ 運輸安全委員会                  │ 観光庁 気象庁 海上保安庁     │
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │環境省  │ 原子力規制委員会                 │                   │
 ├─────┼──────────────────────────┼───────────────────┤
 │防衛省  │                          │ 防衛装備庁             │
 └─────┴──────────────────────────┴───────────────────┘
 ┌─────┬──────────────────────────────────────────────┐
 │復興庁  │(内閣府と同様に国家行政組織法から除外される組織として復興庁設置法により期間限定で設置)  │
 └─────┴──────────────────────────────────────────────┘


【問2】 正 解 4  出題範囲 府及び省とその外局
 府及び省とその外局は,内閣府設置法64条及び国家行政組織法別表第1に定められている。
ア 正  国家公安委員会は,内閣府の外局である。国家公安委員会以外で「公安」という文字が使われている外局は,すべて法務省の外局である。
イ 正  公安審査委員会は,法務省の外局である。他に公安調査庁も法務省の外局である。
ウ 誤  金融庁は,財務省の外局ではなく,内閣府の外局である。財務省の外局は,国税庁である。
エ 正  気象庁は,国土交通省の外局である。気象庁の他に,運輸安全委員会・観光庁・海上保安庁も国土交通省の外局である。
オ 正  消防庁は,総務省の外局である。消防庁の他に,公害等調整委員会も総務省の外局である。
以上から,正しいものはアイエオの四つであり,正解は4となる。

【問3】 正 解 3  出題範囲 行政機関(全般)
 国や公共団体などの行政主体は法人であるから,現実に行政を行うには「一定の地位」を占める者(公務員)が行わなければならない。この「一定の地位」のことを行政機関といい,行政機関の地位にある公務員が行政を行っている。行政機関の種類に関しては,定義とともに具体例を覚えておくとよい。
ア 行政庁  行政主体の法律上の意思を決定し,外部に表示する権限を有する機関であり,各省大臣,都道府県知事,市町村長などがその例である。行政庁は独任制だけでなく,合議制のものも設置される。
イ 補助機関  行政庁その他の行政機関の職務を補助する機関であり,次官,局長,課長,その他一般の職員などがその例である。
ウ 参与機関  行政庁の意思を拘束する議決を行う機関であり,電波監理審議会,検察官適格審査会などがその例である。
★ 諮問機関  行政庁からの諮問を受けて意見を具申する機関をいい,一般に審議会,協議会,調査会などの名称が付されている。諮問機関の議決は,参与機関とは異なって行政庁を拘束しない。
エ 監査機関  行政機関の事務や会計の処理を検査し,その適否を監査する機関であり,会計検査院,行政監察事務所,地方公共団体の監査委員などがその例である。
オ 執行機関  行政目的を実現するために必要とされる実力行使を行う機関であり,警察官,徴税職員,消防職員,自衛官などがその例である。

【問4】 正 解 2  出題範囲 行政機関(行政庁)
 行政機関の中で最も重要な機関が行政庁である。行政庁に関しては,(1)原則として独任制であるが,合議制の行政庁も置かれていること(肢1),(2)上下関係にある行政庁の間では,上級行政庁に下級行政庁に対する指揮監督権があること(肢2・3・4),(3)行政庁の間においては相互にその権限を尊重しなければならないこと(肢5)の3点が重要である。
1 正  行政庁は,通常は独任制であるが合議制の場合もある。合議制の行政庁としては,公正取引委員会などのいわゆる行政委員会がある。
2 誤  上級行政庁は,下級行政庁に対し指揮監督権を有するが,明文の規定がない限り,下級行政庁に代わって権限を行使すること(代執行権)までは認められない。それぞれの行政庁に与えられた権限を侵すことになるからである。
3 正  上級行政庁は,下級行政庁に対して指揮監督権として監視権を有する。監視権として,事務の執行の調査・報告要求権がある。
4 正  上級行政庁は,下級行政庁に対して指揮監督権として訓令権を有する。訓令権とは下級行政庁に対し職務命令を発する権限をいう(訓令のうち書面によるものを通達という。)。上級行政庁は,この職務命令により,違法又は不当な行為の取消しを要求することができるのである。なお訓令・通達は,行政規則に分類される内部的な職務命令であるから,行政機関を拘束するが,国民を拘束するものではない。この点については行政立法で扱う(問7参照)。
5 正  行政庁は,それぞれ法律により認められた権限を行使しているのであるから,他の行政庁が行った決定を尊重すべきであり,それが明白に権限を踰越していない限り,その決定と矛盾する行為をすることは許されない。

【問5】 正 解 5  出題範囲 行政機関(行政庁~権限の委任~)
 行政庁は,法令に定められた権限を自ら行うのが原則であるが,その案件は膨大なため,現実には他の機関に行わせている。そのための制度として「権限の委任」がある。なお,行政庁が権限を他の機関に行わせる制度としては,「権限の代理」や「代決」もあるが,これらについては,問6で扱う。
1 正  自己に与えられた権限の一部を他の機関に委任して行わせるものを権限の委任という。例えば,県知事(A)が,地方税の賦課徴収権の一部を,県税事務所長(B)に委任する場合などがこれに当たる。権限の全部を委任することはできない。
2 正  権限の委任は,民法の委任とは異なり,権限が受任庁に移動する。例えば,A行政庁がある権限をB行政庁に委任した場合,当該権限はA行政庁のものでなくなり,B行政庁のものとなる。肢1の例では,委任した賦課徴収権は,県知事(A)の権限でなくなり,県税事務所長(B)の権限となる。
3 正  権限の委任は,法令により行政庁に与えられた権限が他の行政機関に移動するため,これを行うには,法令上明文の根拠が必要である。
4 正  権限の委任は権限が移動するため,受任庁は,自らの権限として自己名義で権限を行使する。肢1の例では,県税事務所長は「△△県税事務所長B」と表示してその権限を行うことになる。
5 誤  権限の委任は権限が移動するため,委任庁は当該権限を失ない,委任した権限を行使できなくなる。しかし,委任庁は,受任庁の上級行政庁としての指揮監督権まで失うわけではないので,当該権限についても指揮監督権を行使することができる。

【問6】 正 解 4  出題範囲 行政機関(行政庁~権限の代理と代決~)
1 正  権限の代理には,法定代理と授権代理とがある。代理機関は,いずれの場合にも,代理関係と被代理行政庁を明示してその権限を行う。例えば,副知事が知事の権限を代理行使する場合,副知事は「△△県知事代理副知事B」と表示して権限を行う。権限の代理については,ほぼ民法の代理と同じように考えればよい。
2 正  法定代理は,本来の行政庁が長期入院や海外出張などで権限を行使することができない場合のための制度である。法定代理は,法律により代理関係が生じるので,当然,法律の根拠が必要である。
3 正  法定代理には,指定代理と狭義の法定代理とがある。指定代理の例として,知事が出張のため不在のときに,あらかじめ指定しておいた副知事が代理する場合などが挙げられる。また,狭義の法定代理の例として,人事院総裁が入院したときに,先任の人事官が代理する場合が挙げられる。両者の違いは,指定代理の場合の代理をする者(副知事)は,行政庁(知事)があらかじめ指定しておくのに対し,狭義の法定代理の場合の代理をする者(先任の人事官)は,法律(国家公務員法)が定めているという点である。
4 誤  授権代理は,法令の根拠を必要としない。代理機関が権限を代理行使しても対外的には本来の行政機関自身が権限を行使したのと同様の効果を生じ,権限が代理機関に移動するわけではないからである。
5 正  代決は,補助機関が本来の行政庁の名で行う。例えば,住民票の謄抄本を下付するのは市長の権限であるが,現実には市長(A)が自ら行っているのではなく,補助機関たる市役所の職員(B)が,「△△市長A」と表示して行っている。


行政作用法



【問7】 正 解 1  出題範囲 行政作用全般(行政の活動形式)
 本問では,行政はどのように活動するか(行政の活動形式)について,全般的に学ぶ。
1 誤  行政活動は,国民の権利・利益を侵害する危険性も有するので,法律に基づいて行われなければならない(法治行政)。しかし,法律は抽象的な定めしかしていないことが多いので,行政が委任を受けた事項や細目的な事項を定める必要が生じる。これが行政立法である。行政立法とは,行政機関が,行為や組織の基準となる一般的な定めを設けることをいう。ただ,訓令や通達は,行政立法のうちでも行政規則に分類される行政内部の職務命令であり,直接,国民を拘束するものではない。
★ 行政立法の分類
 行政立法は,「法規」たる性質を有するか否かにより,(1)法規命令と(2)行政規則とに分類することができる。「法規」とは,国民の権利・義務に関する事項であり,国民を拘束するものをいう。
 (1)法規命令は,「法規」たる性質を有するもので,さらに,①法律の委任による委任命令と,②法律を執行するための執行命令とに分類される。
 これに対し,(2)行政規則は,行政組織内部の事項を定めたもので,「法規」たる性質を有しないものである。したがって,直接,国民を拘束するものではない。行政規則は,訓令・通達などの形式によることが多い。
2 正  行政活動は,無計画に行われるのではなく,現代社会においてはほとんどが計画的に行われている。このための計画が行政計画である。なお,行政計画は,行政活動の青写真にすぎず,いまだ抽象的なものなので,これに不満があっても原則として取消訴訟の対象とはならない。
3 正  行政は,法律(行政立法も含む。)や行政計画に基づき,行政目的を実現するための具体的な活動を行うが,民法と同様に契約による場合もある。行政の行う契約を行政契約という。
4 正  行政が行う活動形式のうち,最も重要なものが行政行為である。行政行為は,一方的な判断で国民の権利義務その他の法的地位を具体的に決定する法行為である。行政行為については,次問以下で詳細に扱う。
5 正  行政契約や行政行為は,権利義務を発生させる法行為であるのに対し,行政指導は,指導,勧告,助言などにより国民に協力を求めるにすぎず,法律効果の発生しない事実行為である。行政指導については問23,24参照。
★ なお,行政の行う事実行為として即時強制がある。即時強制は,(1)目前急迫の障害を除く必要上義務を命ずる暇のない場合(伝染病患者の強制入院など)や,(2)その性質上義務を命ずることによってはその目的を達し難い場合(立入検査など)に行われるもので,直接に国民の身体又は財産に実力を加え,もって行政上必要な状態を実現する作用である。即時強制については問26参照。

【問8】 正 解 5  出題範囲 行政行為の効力
 行政行為の効力に関する出題である。行政行為の効力は行政法をマスターする上でのかぎとなる。
ア 正  行政行為の効力発生時期について一般的な定めはないので,意思表示の一般原則に従い,到達主義となる(民法97条参照)。ただし,特別の定めがある場合にはそれによる。
イ 正  公定力は,行政行為の効力の中で最も重要な効力である。民法では,違法な法律行為は無効であり,効力は生じない。しかし,行政行為が行われると,多数の国民がそれに利害を有するようになり,また,当該行政行為に基づいて行動することになる。そこで,行政行為がたとえ違法でも正当な権限を有する機関によって取り消されるまでは一応有効と取り扱うというのが公定力である。したがって,行政行為の違法を主張する者は,公定力を排除するために取消訴訟などの争訟手続によらなければならない。ただし,行政行為の瑕疵が重大かつ明白な場合には,もはや公定力を認める必要はなく,当然に無効である。
★ 公定力と似た効力として拘束力がある。拘束力とは,行政行為がその内容に応じて相手方及び行政庁を拘束する効力をいう。公定力が違法でも有効と扱うのと異なり,拘束力は適法・違法を問題としていない。
ウ 誤  問題文の定義は不可変更力のものである。不可争力とは,一定期間が経過すると,行政行為の相手方やその他の利害関係人からは,もはやその効力を争うことができない効力をいう。行政行為の効力は,その違法を主張する者が争訟手続を執らなければならないが(公定力),争訟手続によればいつまででも争えるとすると,これまた,当該行政行為に基づいて行動した多数の国民を不安定にすることとなってしまう。そこで認められた効力が不可争力である。取消訴訟や不服申立てに出訴期間の制限があるのは,不可争力の現れである。
エ 誤  問題文の定義は不可争力のものである。不可変更力とは,権限ある機関がいったん判断を下した以上は自らその判断を覆し得ない効力をいう。行政が紛争を解決する場合などに,その判断を何度も変えることができるとすると,紛争が解決できなくなることから,行政が行う不服申立ての裁決・決定や,行政審判の決定などにのみ認められる特殊な効力である。
オ 正  自力執行力とは,行政行為によって命ぜられた義務を相手方が履行しない場合に,行政庁が,裁判において判決を得ることなく,自らの判断で義務者に対し強制執行をすることができる効力をいう。民法では,義務者が任意に義務を履行しない場合,裁判所の助力を得て初めて権利が実現されるが,行政行為は,行政目的の円滑な実現のため,裁判所の助力を得ずに,自ら執行することが認められるのである。
以上から,ウエが誤っており,正解は5となる。

【問9】 正 解 3  出題範囲 行政行為の裁量
 行政行為は法律に基づいて行わなければならない。これは法律による行政の原理からの要請である。しかし,法律の規定は,あらゆる場合を予想して規定し尽くすことは技術上不可能である。また,具体的な判断は,立法府よりも行政に行わせた方がよい場合もある。そこで,行政に裁量が認められるのである。

    ┌覊束行為………………機械的執行…………………………司法審査の対象となる
行政裁量┤
    │    ┌覊束裁量…裁量判断必要・通常人の経験則…司法審査の対象となる
    └裁量行為┤
         └自由裁量…裁量判断必要・専門技術的判断…司法審査の対象とならない

1 正  法律の規定が明確な場合,行政行為はその機械的執行として行われければならない。これを「覊束行為」という。覊束行為は,法律の規定に反したか否かが明確であるから,全面的に司法審査の対象となる。
2 正  覊束行為に対し,「裁量行為」は,法律の規定が不明確なため,その執行に裁量的判断が必要なものである。例えば,「公益のため必要があるときは……することができる。」という規定は,どのような場合に公益のために必要といえるかが一義的ではない。行政の政策的判断を加味しなければ執行することができないのである。
3 誤  裁量行為は行政の政策的判断を伴うものであるが,そのすべてを裁判所の司法審査の対象外としてしまうと,ほとんどの行政行為が司法審査を免れてしまう。そこで裁量行為のうち通常人の経験則によって判断できるものは「覊束裁量」として司法審査に服させている。これに対し,裁量行為のうち原則として司法審査になじまないものを「自由裁量」という。
4 正  自由裁量に属する行政行為は,行政庁の裁量にゆだねられる事項であるが,行政庁の恣意的判断が許されるわけではないので,裁量権の行使が客観的に裁量を逸脱している場合には違法となる。
5 正  自由裁量に属する行政行為が客観的には裁量権の範囲内であっても,行政庁が不当な動機や目的で裁量判断をしたときは,裁量権の濫用であり違法となる。

★ 行政行為の分類
 行政行為は,いろいろな観点から分類される。
 (1) 行政に対する法の拘束がきついか緩いかにより,覊束行為と裁量行為とに分類される(問9)。
 (2) また,国民に利益を与えるか不利益を科すかにより,受益的行政行為と侵益的行政行為に分類される。
 (3) さらに,意思表示の点から,法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為に分類される(問10)。

【問10】 正 解 1  出題範囲 行政行為の種類

                ┌① 命令的行為(下命・禁止・許可・免除)
   (1) 法律行為的行政行為┤
                └② 形成的行為(特許・認可・代理)

   (2) 準法律行為的行政行為…………………(確認・公証・通知・受理)

 行政行為は,民法の法律行為に倣って,(1)法律行為的行政行為と(2)準法律行為的行政行為に分類される。(1)法律行為的行政行為は,さらに,①命令的行為と②形成的行為に分類される。(1)法律行為的行政行為は,行政庁の意思表示どおりの効果が発生するが,(2)準法律行為的行政行為は,行政庁の判断や認識の表示に対して法律が一定の効果を認めるものである。例えば,(1)法律行為的行政行為のうち,許可としての営業許可は,「Aに,○○の営業を許可する。」という行政庁の意思表示どおりに法律効果が発生し,処分を受けたAは○○営業を営むことができるのである。これに対して,(2)準法律行為的行政行為のうち,確認としての建築確認は,「Aの建築計画は建築関係法令に適合していることを確認する。」という行政庁の確認行為に対し,法律(建築基準法)が建築工事に着手することができるという効果を認めたものなのである。行政行為の種類については,問11~13の具体例とともに理解しておく必要がある。
ア 許可  本来,国民が有する権利を,一般的に禁止しておき,特定の場合に解除するのもである。
イ 特許  本来,国民が有していない新たな権利を付与する点で,許可と異なる。
ウ 認可  第三者の法律行為を補充するものであり,事実行為を認可するということはあり得ない。
エ 公証  特定の事実又は法律関係の存在を公に証明する行為である。
オ 確認  特定の事実又は法律関係の存否について,公の権威を持って判断し,これを確定する行為である。

【問11】 正 解 4  出題範囲 行政行為の種類(許可)
 許可は,本来,国民が有する権利を,一般的に禁止しておき,特定の場合に解除するのもである。講学上の行政行為の種類と法令の用語とは異なる場合があるので注意しよう。
1 許可である  医師の免許は,講学上の許可に当たる。本来,国民が有する営業の自由を一般的に禁止しておき,一定の技能を有する者に対して解除するものだからである。
2 許可である  風俗営業の許可は,講学上の許可に当たる。本来,国民が有する営業の自由を一般的に禁止しておき,一定の場合に解除するものだからである。
3 許可である  自動車の運転免許は講学上の許可に当たる。本来,国民が有する行動の自由を一般的に禁止しておき,一定の技能や知識を有する者に対して解除するものだからである。
4 許可でない  農地を譲渡するには,農業政策上,農地委員会の許可が必要とされている。これは,農地の売主と買主との契約の効力を補完するもので,講学上の認可に当たる。
5 許可である  公衆浴場の許可は,講学上の許可に当たる。本来,国民が有する営業の自由を一般的に禁止しておき,一定の施設等を有する者に対して解除するものだからである。

【問12】 正 解 4  出題範囲 行政行為の種類(特許)
 特許は,新たな権利を設定し,又は,法律上の力若しくは法律上の地位を付与する行為であり,本来,国民が有していない新たな権利を付与する点で,許可と異なる。
1 特許である  公有水面の埋立ての許可は,講学上の特許に当たる。公有水面の埋立ては,国民が自由に行い得る権利ではないからである。
2 特許である  公務員の任命は,講学上の特許に当たる。公務員の就任は国民が自由に行い得るものではないからである。
3 特許である  鉱業権設定の許可は,講学上の特許に当たる。鉱業権は国民が自由に設定し得る権利ではないからである。
4 特許でない  河川の占有は国民が自由に行い得る権利ではないので,河川占有権の設定は特許に当たるが,河川占有権を他に譲渡することを承認する,河川占有権の譲渡の承認は譲渡当事者間の法律行為を補完するもので,講学上の認可に当たる。
5 特許である  外国人の帰化の許可は,講学上の特許に当たる。だれしもが自由に帰化(日本国籍の取得)し得るものではないからである。

【問13】 正 解 1  出題範囲 行政行為の種類(認可・確認・公証)
1 誤  発明の特許は,発明があったという事実を公の権威を持って判断し,これを確定する行為で,講学上の確認に当たる。
2 正  土地改良区の設立の認可は,当事者の土地改良区という法人設立行為たる合同行為を補充して,その法律上の効果を完成させる行為であり,講学上の認可に当たる。
3 正  選挙人名簿への登録は,選挙人たる資格の存在を公に証明する行為であり,講学上の公証に当たる。
4 正  運転免許証の交付は,運転免許の存在を公に証明する行為であり,講学上の公証に当たる。これに対し,自動車の運転免許は講学上の許可に当たる。実際にはこの二つの行政行為が同時に行われている。
5 正  当選人の決定は,選挙の際の当選人を公の権威を持って判断し,これを確定する行為であり,講学上の確認に当たる。

【問14】 正 解 3  出題範囲 行政行為の付款
 行政行為の付款とは行政行為に付加してする従たる意思表示である。本問では五つの付款の種類を押さえてほしい。
ア 誤  問題文は期限の定義である。条件とは,行政行為の効果を発生不確実な将来の事実にかからせる意思表示をいう。条件は民法と同じである。現実の行政実務では相手方を不安定にするため条件はほとんど用いられない。
イ 誤  問題文は条件の定義である。期限とは,行政行為の効果を将来発生することの確実な事実にかからせる意思表示をいう。期限も民法と同じである。例えば,「○月○日まで,道路の占有を許可する。」,「免許は○月○日まで有効。」など。
ウ 正  負担とは,主たる意思表示に付随して,行政行為の相手方に対し,これに伴う特別の義務を命ずる意思表示をいう。条件・期限は当該事実の発生が行政行為の効力に影響するが,負担は行政行為の効力に影響しない。例えば,自動車の運転免許に「眼鏡使用」という負担が付されることがある。この場合,眼鏡を使用したか否かは,行政行為の本体たる自動車運転免許の効力に何の影響も与えない。行政庁が負担の不履行を理由に撤回(運転免許の取消処分)をすることがあるだけである。
エ 正  取消権の留保とは,主たる意思表示に付加して,特定の場合に行政行為を取り消し得べき権利を留保する意思表示をいう。撤回権の留保ともいう。例えば,「○○の場合は,免許を取り消す。」など。
オ 正  法律効果の一部除外とは,主たる意思表示に付加して,法令が一般にその行為に付した効果の一部の発生を除外する意思表示をいう。例えば,ある公務員に対し「出張を命ずる。ただし,法定の旅費は支給しない。」など。
以上から,正しいものはウエオの三つであり,正解は3となる。

【問15】 正 解 2  出題範囲 行政行為の付款
 どのような行政行為に付款を付すことができるか(行政行為の種類),また,いかなる場合に付款を付すことができるか(根拠)を区別して理解しておこう。
ア 正  準法律行為的行政行為は,行政庁の意思に基づいて効果が発生するのではなく,行政庁の判断に対し「法律」が一定の効果を付与するものなので,その性質上付款を付すことはできない。
イ 誤  法律行為的行政行為は,行政庁の意思に基づく効果が発生するものなので,性質上付款を付すことが可能である。
ウ 誤  裁量が認められない場合(覊束行為)であれば法令に明文の規定がなければ付款を付すことはできない。しかし,裁量が認められている場合(裁量行為)は,明文がなくても,その裁量の範囲において付款を付すことができる。
エ 正  法令に明文の規定があれば,行政行為に付款を付すことができるが,明文がなくても裁量の範囲においてであれば付款を付すことができる。
オ 正  付款を付すことができる場合でも,他事考慮により付款を付すことはできない。付款は,あくまで行政行為の目的を達するために付すものだからである。
以上から,アエオが正しく,正解は2となる。

【問16】 正 解 3  出題範囲 行政行為の付款
1 誤  負担は,行政行為の効力に影響しないものなので,負担の不履行があっても行政行為の効力は消滅しない。ただ,行政庁は,行政行為を撤回することにより,消滅させることはできる。
2 誤  取消権の留保を付した場合でも,行政行為を取り消すには,実質的な理由が必要である。行政庁が任意に取り消せるわけではない。「公益の必要があると認めるときは,いつでも取り消すことがある。」という付款は例文と解釈される。
3 正  法律効果の一部を除外する場合,常に明文の根拠が必要である。法律効果の一部除外は,法令で認められた効果を行政庁の意思で除外するからである。
4 誤  付款も行政行為であるから,公定力を有し,違法でも有効と扱われる。
5 誤  付款が行政行為の本体と可分のときは,付款のみの取消訴訟が認められるが,不可分のときは,行政行為全体の取消訴訟によらなければならない。

【問17】 正 解 5  出題範囲 行政行為の瑕疵
1 誤  違法又は不当な行政行為を瑕疵ある行政行為という。瑕疵ある行政行為であっても,行政行為には公定力があるから有効として取り扱われる。そこで,瑕疵ある行政行為から国民を救済するための制度が取消訴訟や不服申立てによる争訟取消しであり,これは瑕疵が重大かつ明白でなくても認められる。さらに,瑕疵が重大かつ明白なときは,無効な行政行為となる。このように瑕疵の重大明白性は,違法な行政行為が一応は有効と扱われるのかそれとも無効と扱われるのかの基準である(肢2参照)。
2 誤  瑕疵ある行政行為でも,原則として有効と扱われるが,違法の程度がひどいときは無効となる。そして,無効というためには,瑕疵が重大なだけでは足りず,明白でなければならないとするのが判例である。なお,瑕疵が重大明白な場合は,行政行為は無効であり,取消訴訟や不服申立てによらなくても無効主張ができる。以下の肢3~5は,無効かどうかが判例上争われた例である。
3 誤  無権限者の行った行政行為は無効である。しかし公務員の欠格事由に該当する者が公務員に任命され,その者が公務員として行った場合には,外観上は公務員が行った行政行為なので,(違法ではあるが)有効とされる。
4 誤  行政庁の意思決定に錯誤や詐欺・強迫による瑕疵があっても,行政法は外観主義を採るので,無効とならない。
5 正  強度の強迫状態や泥酔状態など,全く意思のない状態の場合には,単なる瑕疵とはいえず無効となる。

【問18】 正 解 2  出題範囲 行政行為の瑕疵
1 誤  無効な行政行為は,公定力が認められないので,初めから効力は生じない。正当な権限を有する行政庁又は裁判所の判断など不要である。
2 正  無効な行政行為は,公定力がなく,また不可争力も生じないから,その効力を争うに当たって,出訴期間の制限がない。
3 誤  別個の法律効果の発生を目的として相連続する行政行為が行われる場合に,先行する行政行為が違法でも,後行の行政行為には影響を及ぼさないのが原則である。行政上の法律関係はなるべく早期に確定すべきだからである(不可争力)。ただし,ごく例外的に違法性の承継が認められる場合もある。判例で違法性の承継が認められた例として,農地の買収計画と売却処分がある。
4 誤  当初,行政行為に違法なところがあっても,その後の事情の変化によって欠けていた適法要件が実質的に充足されれば,その瑕疵が治癒されて適法と扱うこともできる。わずかな手続上の瑕疵を理由に行政行為を取り消す実益がないからである。
5 誤  行政処分が処分行政庁の意図した行政処分としては法定要件を満たさない場合は,瑕疵ある行政行為であり,取り消すべきであろう。しかし,これを他種の行政処分とみれば,その法定要件が満たされており適法と考えられる場合には,これを取り消すことなく,その効力を維持するような取扱いも認められる。これを,違法行為の転換という。例えば,死者に対する処分をその相続人に対する処分として扱うなどである。なお,違法行為の転換には,その旨の裁判官の宣言等は不要である。

【問19】 正 解 2  出題範囲 行政行為の取消し及び撤回
 行政行為の取消しは,取消訴訟や不服申立てなどの争訟取消し以外にも,処分行政庁による職権取消しがある。
1 誤  行政行為は,法律による行政の原理から,法律に基づいて行われなければならない。ところが瑕疵ある行政行為は,違法又は不当であり,法律による行政の原理に反する状態となる。そこで処分行政庁は,適法性又は合目的性を回復するために瑕疵ある行政行為を取り消すことになる。これは法律による行政の原理の要請するところであるから,法律の特別の根拠は不要である。
2 正  処分行政庁は,不当な行政行為を職権で取り消すことができる。当該行政行為は,処分行政庁自らの権限に属するものだからである。これに対し,裁判所は不当な行政行為を取り消すことはできない。不当ではあるが適法な行政行為は,処分行政庁の裁量の範囲内であり,裁判所は行政行為の適法・違法を判断するにすぎないからである。
3 誤  処分行政庁は,不服申立てその他の行政審判などの争訟裁断手続を経て行われた行政行為の場合(裁決や審決など)には,それに瑕疵があっても取り消すことはできない。当該行政行為には不可変更力が生じるからである。
4 誤  行政行為に瑕疵があっても,受益的行政行為などの場合は取消権が制限される。相手方たる国民の信頼を裏切ることになるからである。取消権の行使が認められるのは,相手方の信頼を上回る特別の公益上の必要性がある場合に限られる(取消し制限の法理)。
5 誤  相手方の信頼の保護から,受益的行政処分については撤回が制限され,無制限に撤回することはできない(撤回不自由の原則)。

【問20】 正 解 3  出題範囲 行政行為の取消し及び撤回
 行政行為の職権取消しと似たものとして,行政行為の撤回がある。
1 正  行政行為の取消しは,その成立時に瑕疵がある場合に行われる。これに対し,行政行為の撤回は,瑕疵なく成立した行為に行われる。
2 正  通常,行政行為の撤回を行う場合は,前の行政行為を撤回する旨の新たな行政行為が行われるが,撤回の方式が特に定められていなければ,既にされた行政行為と抵触する行政行為が前の行政行為の撤回の方式と認められる場合もある。
3 誤  行政行為の取消し及び撤回は,法令の定めがない限り,処分行政庁に限られる(なお地方自治法151条参照)。職権取消しや撤回は,法律で処分行政庁に対して認められた権限の裏返しの行使だからである。
4 正  行政行為の取消しの効果は,遡及する。すなわち,初めからなかったものとなる。これに対し,撤回の効果は,将来に向かってのみ生じ,撤回された時からなかったものとなる。
5 正  行政行為の撤回は適法に成立した行政行為を消滅させるものであるから,行政財産の使用許可の撤回は,新たな不利益処分(財産権の収用)と考えることもできる。したがって,公益上の理由により撤回する場合には,それによって生じた損失を補償すべきであろう(憲法29条3項)。ところが,国有財産法には補償規定が置かれているにもかかわらず,地方自治法上には補償規定が置かれていない。そこで,地方公共団体が行政財産の使用許可の撤回をしたことにより損失が生じた場合,損失を受けた者は,国有財産法の補償規定を類推適用して補償を請求することができる,とするのが判例である。なお,直接,憲法29条3項により補償請求が認められるのは,他に補償請求を認めた類似の法律がなく,類推適用ができない場合である(問36肢2・3参照)。

【問21】 正 解 1  出題範囲 行政手続法
 行政手続法は,(1)申請に対する処分,(2)不利益処分,(3)行政指導,(4)届出,の四つの手続について規定する。その目的は,行政運営における公正の確保と透明性を図り,もって国民の権利利益の保護に資することにある(行政手続法1条)。本問では(1)申請に対する処分,及び(4)届出について扱う。
1 正  行政手続法3条2項は,地方公共団体の機関が行う処分のうち,「その根拠となる規定が条例又は規則に置かれている処分」については,行政手続法の処分に関する手続の規定の適用を除外している。地方自治を尊重する趣旨からである。ただし,行政手続法38条は,地方自治体が独自に条例等によって行政手続法の目的を達するよう努めることを要求している。
2 誤  行政庁は,申請に対する処分の審査基準を公にしておかなければならない。しかし,行政上特別の支障がある場合は除外される(行政手続法5条)。なお,不利益処分に対する処分基準については,公にするよう「努めなければならない。」と規定されており,行政庁の責務にとどまっている(行政手続法12条)。
3 誤  主務大臣から審査基準に係る通達があっても,都道府県知事はその名において審査基準を定めなければならない。審査基準を定めるのは処分行政庁の義務であり,上級行政庁からの審査基準に係る通達は,行政内部の職務命令にすぎないからである。
4 誤  形式上の要件に適合しない申請がされた場合,行政庁は,補正が可能であれば補正を命じるべきであるが,不可能であれば補正を求めずに許認可等を拒否することになる(行政手続法7条)。なお,行政不服審査法による審査請求等の場合も,補正が可能であれば補正を命じなければならない(行政不服審査法21条)。
5 誤  届出が法令に定められた届出の形式上の条件に適合している場合には,法令により当該届出の提出先とされている行政庁に当該届出が「到達したときに」,当該届出をすべき手続上の義務が履行されたことになる(行政手続法37条)。行政庁が当該届出を受理したときではない。なお,届出に関する規定は37条の1箇条しか置かれていない。

【問22】 正 解 2  出題範囲 行政手続法
1 正  行政手続法上,不利益処分とは,「行政庁が,法令に基づき,特定の者を名あて人として,直接に,これに義務を課し,又はその権利を制限する処分をいう。」(行政手続法2条4項本文)。しかし,申請により求められた許認可等を拒否する処分は,申請に対する処分として扱われるので,不利益処分から除外されている(行政手続法2条4項ただし書ロ)。
2 誤  行政庁は,不利益処分をしようとする場合には,原則として聴聞又は弁明の機会の付与の手続を執らなければならない(行政手続法13条1項)。しかし,緊急に不利益処分をする必要があるときなど,五つの適用除外が規定されている(行政手続法13条2項)。
3 正  聴聞を行う際の告知の手続である。なぜ不利益な処分を課されるかについて,あらかじめ通知しておかなければ,聴聞の手続を認めても無意味となるからである。告知は書面で行わなければならない(行政手続法15条)。弁明手続の場合の告知については行政手続法30条参照。
4 正  聴聞の手続である。聴聞は,原則として当事者又は参加人が,聴聞の期日に出頭して行う。出頭した当事者又は参加人は,意見の陳述,証拠書類等の提出ができ,また,主宰者の許可を得て行政庁の職員に質問をすることができる(行政手続法20条2項)。
5 正  弁明の機会の付与の手続である。弁明は,聴聞よりも簡易な手続であり,行政庁が口頭ですることを認める場合もあるが,原則として弁明書を提出して行う(行政手続法29条1項)。

【問23】 正 解 1  出題範囲 行政手続法
1 誤  行政指導は,一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導,勧告,助言その他の事実行為であり,処分(行政行為)に該当しないものである(行政手続法2条6号)。また,相手方に対し法的拘束力を有しない。
2 正  申請者が行政指導に従わない意思を表明しているにもかかわらず,行政指導を継続するなど,国民の権利行使を妨げることは許されない(行政手続法33条)。行政指導は,国民に対する協力要請にすぎないからである。
3 正  行政指導に携わる者が許認可権を行使する意思のないにもかかわらず,当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことは,不誠実であるから,そのような手段により相手方に行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことは許されない(行政手続法34条)。
4 正  行政指導も公権力の行使に当たるから,損害を被った者は国家賠償法1条による損害賠償の請求を行い得る場合がある。
5 正  行政指導は,事実行為であるから,抗告訴訟の対象とならない。

【問24】 正 解 4  出題範囲 行政指導
1 正  地方公共団体の機関が行う行政指導については,行政手続法に基づく必要はない(行政手続法3条2項)。地方自治の尊重の見地からである(問21肢1参照)。
2 正  行政指導に携わる者は,行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない(行政手続法32条1項)。
3 正  行政指導に携わる者は,その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として,不利益な取扱いをしてはならない(行政手続法32条2項)。
4 誤  行政指導に携わる者は,その相手方に対して,当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を,必ず明確に示さなければならない。しかし,書面で示すことまでは要求されていない(行政手続法35条1項)。
5 正  口頭による行政指導が,相手方に対しその場において完了する行為を求めるものである場合,書面交付請求があっても交付する必要はない(行政手続法35条3項1号)。また,書面交付請求が「既に文書によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの」である場合も,交付する必要はない(行政手続法35条3項2号)。

★ 書面交付請求
Ⅰ 書面による行政指導
  ・趣旨等を明確に示す
  (行政指導自体が書面で行われているので,書面交付請求は行われない。)
Ⅱ 口頭による行政指導
  ・趣旨等を明確に示す
  (書面で行う必要はなく,口頭でよい。)
  ・書面交付請求を受けたとき
  原則:行政上特別の支障がない限り書面を交付する(35Ⅱ)
  例外:次の場合は交付不要
  (1)相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの(35Ⅲ①)
  (2)既に文書によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの(35Ⅲ②)

【問25】 正 解 5  出題範囲 行政上の強制措置(全般)
 行政上の義務を負っている者が,その義務を任意に履行してくれなければ,行政目的を達することはできない。そこで,強制的に義務を履行させる手段が必要となる。民法上であれば,裁判所の助力を得て義務を履行を実現することになるが,行政上の義務は,行政が自ら強制手段を用いて実現できる点に特色がある。本問では行政上の強制手段について検討しよう。
ア 強制徴収が入る  強制徴収は,金銭債権の強制手段である。現行法上,強制徴収の一般法は存在しない。ただし,「国税滞納処分の例による」と定めた法律が多いので,国税徴収法が事実上,一般法のように機能している。
イ 代執行が入る  代執行は,代替的作為義務(他人が代わってすることができる作為義務)が履行されない場合に用いられる。行政庁又は第三者が義務者に代わって義務を実現し,その費用を義務者から徴収するのである。代執行の一般法として,行政代執行法がある。
ウ 執行罰が入る  執行罰は,不作為義務又は非代替的作為義務(他人が代わってすることができない作為義務)の履行がない場合に,過料を科す旨を警告しておき,その威嚇効果により義務が実現されることをねらったものである。間接強制ともいわれ,義務の強制手段であって,刑罰ではない。現行法上,立法の整備漏れで残されている規定もあるが,執行罰が行われることは皆無である。
エ 直接強制が入る  直接強制は,義務者の義務の不履行の場合に,直接に,義務者の身体又は財産に実力を加えて実現するものである。直接強制も現行法上認められているものは少ない。
オ 即時強制が入る  即時強制は,義務の履行を強制するためではなく,(1)目前急迫の障害を除く必要上義務を命ずる暇のない場合又は(2)その性質上義務を命ずることによってはその目的を達し難い場合に行われるもので,肢ア~エとは異なって,義務違反を前提としていない。
法律・行政行為・行政強制
法律・・・・・・即時強制

【問26】 正 解 3  出題範囲 行政上の強制措置(即時強制)
ア 誤  即時強制は,目前急迫の障害を除く必要上義務を命ずる暇のない場合に行われるものであるが,直接に国民の身体又は財産に実力を加え,もって行政上必要な状態を実現する作用であるから,法律による行政の原理の要請から,法令上の根拠が必要である。
イ 誤  即時強制は,直接に国民の身体又は財産に実力を加えるものであるから,憲法の適正手続の保障(令状主義)が及ぶ。しかし,目前急迫の障害を除く必要上義務を命ずる暇のない場合に行われるものであるから,常に令状が必要というわけではない。
ウ 正  即時強制は,義務の不履行を前提としていない。この点で,行政上の強制執行が義務の不履行を前提としているのと異なる。
エ 正  即時強制も,行政上の強制執行も,将来にわたり必要な状態を実現しようとする作用である点で共通する。行政罰が,過去の違反行為に対する制裁であるのと異なる。
オ 正  即時強制は,事実行為であるから,有効・無効という効力の問題を生じない。行政行為が権利義務を発生させる法行為であり,有効・無効という効力の問題を生じるのと異なる。
以上から,正しいものはウエオの三つであり,正解は3となる。

【問27】 正 解 4  出題範囲 行政上の強制措置(行政強制・代執行)
1 正  行政代執行法1条は,「行政上の義務の履行確保に関しては,別に法律で定めるものを除いては,この法律による。」として,行政代執行の一般法である旨を明らかにしている。したがって,他の法律に特別な定めのない限り,当然に行政代執行法が適用される。
2 正  代執行は,(1)法律により直接命じられ,又は(2)法律に基づき行政庁により命じられた行為について,義務者がこれを履行しない場合に行うことができる(行政代執行法2条)。
3 正  代執行を行うことができるのは,他人が代わってすることのできる義務(代替的作為義務)に限られる(行政代執行法2条)。非代替的作為義務,不作為義務についてはいずれも行うことができない。
4 誤  代執行は,行政庁が義務者に代わって自ら行うだけでなく,第三者にこれを行わせることもできる(行政代執行法2条)。
5 正  代執行のために現場に派遣される執行責任者は,その者が執行責任者たる本人であることを示すべき証票を携帯し,要求があるときは,いつでもこれを提示しなければならない(行政代執行法4条)。

【問28】 正 解 2  出題範囲 行政上の強制措置(行政強制・代執行)
 行政代執行法の手続の流れを理解しよう。例えば,違法建築物の除却命令を受けた者は,その建築物を取り壊す義務を負うが,任意に取り壊さない場合を想定してみるとよい。
1 誤  行政上の義務を負う者がその義務を履行しない場合,代執行をするには,義務者に対し,代執行を行うことをあらかじめ文書で戒告しなければならない(行政代執行法3条1項)。口頭での戒告は認められない。
2 正  戒告を受けた義務者が,指定の期限までに義務を履行しない場合,代執行令書により代執行の時期,責任者,費用の概算を通知しなければならない(行政代執行法3条2項)。
3 誤  非常の場合又は危険が切迫している場合に,代執行の急速な実施について緊急の必要があり,戒告及び代執行令書の手続を執る暇がないときは,これら(戒告・代執行令書)の手続を経ないで代執行を行うことができる(行政代執行法3条3項)。
4 誤  代執行に要した費用の徴収は,実際に要した費用の額及びその納期日を定めて,義務者に対し文書でその納付を命じなければならない(行政代執行法5条)。口頭による納付命令は認められない。
5 誤  義務者が代執行に要した費用を納付しない場合は,国税滞納処分の例によって徴収する(行政代執行法6条1項)。しかし,徴収した費用は,事務費の所属に従い,国庫又は地方公共団体の経済の収入となるのであり,すべてが国庫の収入となるのではない(行政代執行法6条3項)。

【問29】 正 解 4  出題範囲 行政上の強制措置(行政罰)
 本問では,行政罰(行政刑罰・秩序罰)と,刑事罰,執行罰,懲戒罰との違いを理解しよう。
1 正  行政罰とは,行政上の義務違反に対し制裁として科される罰をいう。行政罰には,行政刑罰及び秩序罰がある。
2 正  行政刑罰とは,行政上の義務違反に対し科される,刑法に刑名のある刑罰をいう。
★ 参考:刑法は,刑罰として,死刑,懲役,禁錮,罰金,拘留,科料,及び没収を定めている(刑法9条)。科料は刑罰であるが,過料は刑罰でない点に注意しよう。
3 正  秩序罰とは,行政上の義務違反であるが,軽微な義務違反に対して科す制裁であり,過料という刑法に刑名のない罰をいう。
4 誤  問題文は刑事罰と行政罰とが逆である。刑事罰の対象となる行為は,例えば殺人や窃盗など,それ自体が反道義性,反社会性を有するものである。これに対し,行政罰の対象となる行為は,行政上の目的のためにする命令禁止に違反するために,反社会性を有するものである。例えば,自動車の路上駐車は,駐車自体が反社会性を有するわけではない。法令で定められた駐車禁止区域で駐車をするからこそ反社会性を有するのである。
5 正  執行罰は,将来の行政上の義務の履行を目的とする強制手段として行われるものであり,過去の義務違反行為を罰する行政罰ではない。また懲戒罰は,行政組織の内部秩序を保つために公務員に行われるものであって,行政罰ではない。懲戒罰には,免職,停職,減給,戒告がある。

【問30】 正 解 4  出題範囲 行政上の強制措置(行政罰)
 行政刑罰と刑事罰及び執行罰との異同を問う出題である。
1 誤  刑罰は国民に強度の人権侵害を伴うものなので,原則として国民の代表者で構成される国会の立法で定めなければならない(憲法31条)。しかし,条例は,国会で制定する法律と同様に,地方議会という住民の代表者で組織された民主的な機関で定めるものなので,条例で行政刑罰を定めることもできる。
2 誤  行政刑罰も,刑事罰と同様に刑罰である以上,「法律なければ犯罪なし」という罪刑法定主義の原則(憲法31条・39条)が適用される。
★ 参考:罪刑法定主義とは,いかなる行為が犯罪であるか,またいかなる刑罰を科すかについて,あらかじめ法律で定めなければならないとする原則をいう(憲法31条・39条)。我々は,何が犯罪であるかについて事前に法律で定めてあるからこそ,犯罪を犯さないように行動できるのである。
3 誤  行政刑罰は,刑事罰と同様に刑罰であるから,刑法総則の規定が適用される(刑法8条)。なお,秩序罰は刑罰ではないので,刑法総則の規定は適用されない。
★ 参考:刑法8条「この編(筆者注:刑法第1編・総則)の規定は,他の法令の罪についても,適用する。ただし,その法令に特別の規定があるときは,この限りでない。」
4 正  刑事罰については,自己の行為についてしか責任を負わないという原則があるため,処罰されるのは行為者のみである。しかし,行政刑罰は,行政取締目的から,違反行為者だけでなく,その使用者や事業主にも科刑する両罰規定が置かれる場合がある。
5 誤  行政刑罰は,過去の義務違反行為に対する処罰であるから,一度しか科すことはできない(憲法39条)。履行を強制する手段としての執行罰が,同一の事実に対し義務の履行があるまで何度でも科すことができるのとは異なる。

【問31】 正 解 5  出題範囲 行政上の強制措置(行政罰)
1 正  行政刑罰は,刑罰であるから,裁判所が刑事訴訟法の定める手続によって科刑する(憲法37条1項)。
2 正  法令に基づく過料は,裁判所が非訟事件手続法の定める手続によって科する。
3 正  地方自治体の長等の定める規則違反による過料は,地方公共団体の長が行政行為の形式によりこれを科する。また,強制徴収の方法は,地方税の滞納処分の例による。
4 正  行政罰は,執行罰と併科することができる。執行罰は,将来の行政上の義務の履行を目的とする強制手段として行われるものであり,過去の義務違反に対して科される行政罰とは目的が異なるからである。
5 誤  行政罰は,懲戒罰と併科することができる。懲戒罰は,行政組織の内部秩序を保つために行われるものであって,行政罰と目的が異なるからである。


行政救済法



【問32】 正 解 1  出題範囲 国家賠償法(1条)
 行政は,様々な活動形式により,国民の福利のための活動を行うが,行政を行うのは公務員であり,公務員も我々と同じ人間なのであるから,間違いを犯すこともあり得る。そこで,公権力の違法行為により国民が損害を負った場合に,国民を救済するための制度が国家賠償である。本問では,国家賠償法1条の要件を検討しよう。
1 誤  国家賠償法1条の「公権力の行使」は広く解され,権力的作用のみならず,非権力的作用であっても公益的な行政作用(公立中学での教師の教育活動)はこれに含まれる。しかし,純然たる私経済作用(市営バスなど)は除かれ,国又は地方公共団体のすべての活動が含まれるわけではない。
2 正  国家賠償法1条の「公務員」には,民間人であっても権力的な行政の権能を委任されている者(戸籍事務を扱う機長や船長など)は含まれる。必ずしも公務員という身分を必要としない。
3 正  国家賠償法1条の「職務を行うについて」には,職務と無関係な行為は除かれる。しかし,職務行為そのものである必要はなく,客観的に職務執行の外形を備える行為も含まれる。判例では,非番の警察官が,制服を着て,職務質問を装い金品を持ち去ろうとしたところ,被害者に騒がれたのでピストルで射殺した場合も,「職務を行うについて」に当たるとしている。
4 正  国家賠償法1条の賠償責任は,通常,公務員の違法行為(作為)を念頭にしている。しかし,公務員が作為義務を負いながら,適切に権限を行使しなかった場合(不作為)であっても,国民の権利が害されることがあるので,不作為も含まれる。
5 正  国又は公共団体は,公務員の選任監督について相当の注意を払っているときでも,賠償責任を免れることはできない。国家賠償法1条の賠償責任は,国又は公共団体が公務員の選任監督を怠ったことによる責任ではなく,公務員の不法行為責任を肩代わりするものだからである(代位責任)。また,民法715条(使用者責任)は,使用者が被用者の選任監督につき過失のないことを立証すれば不法行為責任を負わないが,国家賠償法1条は,民法715条の特別法なので同条の適用はない。

【問33】 正 解 2  出題範囲 国家賠償法(2条)
 国家賠償法は,公権力の行使に基づく責任(国家賠償法1条)とともに,公の営造物による責任(同2条)を定めている。
1 誤  国家賠償法2条の公の営造物とは,公用又は公共の用に供している有体物をいう。動産・不動産を問わない。公用物の例として,パトカーや官庁の庁舎があり,公共用物の例として,河川,道路,公園などが挙げられる。
2 正  国家賠償法2条の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,その物が通常有すべき安全性を欠くことをいう。
3 誤  公権力の行使に基づく賠償責任(国家賠償法1条)が過失責任主義に立脚するのに対し,公の営造物の設置管理の瑕疵に基づく賠償責任(同2条)は,無過失責任主義に立脚する。したがって,国又は公共団体は,営造物の設置管理の瑕疵が過失に基づかなくても責任を負う。
4 誤  公の営造物の管理の瑕疵が,財政力の不足により生じた場合でも,国又は公共団体は,その管理の瑕疵による損害の賠償責任を負わなければならない。公の営造物の設置管理の瑕疵に基づく賠償責任(国家賠償法2条)は,無過失責任なので,財政力の不足は免責事由とならないからである。
5 誤  公の営造物の設置管理の瑕疵に基づく賠償責任(国家賠償法2条)は,無過失責任主義に立脚する。しかし,公の営造物の設置管理の瑕疵が,天変事変など,不可抗力による場合にまで賠償責任を負うわけではない。

【問34】 正 解 5  出題範囲 国家賠償法(責任負担者,求償等)
 国家賠償の賠償責任者,求償等についての出題である。
1 正  国家賠償法1条の責任は,加害公務員の責任を肩代わりするものなので(したがって,加害公務員自身は被害者に対して,直接,賠償責任を負わない。),国又は公共団体が損害を賠償した場合には,加害公務員に対する求償を認めることができる。しかし,公務員の軽度な過失についてまで求償を認めると,公務員が委縮してしまい,公務を遂行することが困難となるので,故意又は重過失の場合に限定しているのである(国家賠償法1条2項)。
2 正  公の営造物の瑕疵に基づく責任の場合には,求償権の相手方を公務員に限らず,その原因について責めに帰すべき者としているので(国家賠償法2条2項),国又は公共団体は,民間の業者にも求償することができる。
3 正  例えば,国の監督の下に地方公務員が職務を行う場合などは,当該公務員の監督に当たる者(国)と,公務員の給与その他の費用を負担する者(地方公共団体)とが異なることとなる。このような場合,法は,国及び地方公共団体のいずれもが賠償責任を負うこととして,被害者の救済の便宜を図っている(国家賠償法3条1項)。公の営造物の瑕疵による責任についても同様であり,公の営造物の設置管理に責任を持つ者と,その費用負担者とが異なる場合は,費用負担者も賠償責任を負う。
4 正  国が地方公共団体に対し単に補助金を交付しているだけであれば,営造物の費用負担者には当たらない。しかし,補助金を交付した国が,更に危険防止につき措置要求をすることができる立場にある場合には,費用負担者に含まれ,賠償責任を負う(国家賠償法3条1項)。
5 誤  外国人に対する国家賠償法の適用は,日本人がその外国人の国の公務員から不法行為を受けたとき,当該国家から賠償が受けられるときに限り認められるにすぎない(国家賠償法6条)。これを相互保証主義という。

【問35】 正 解 5  出題範囲 国家賠償法(判例の事案)
 国家賠償法に関する判例からの出題である。
1 正  国家賠償法1条の公権力の行使には,行政作用だけでなく,司法作用や立法作用も含まれる。ただし,裁判官がした瑕疵ある裁判(司法作用)が国家賠償法上違法となるのは,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認められるような特別の事情がある場合に限られる。
2 正  立法作用も国家賠償法1条の公権力の行使に含まれる。しかし,国会議員の立法行為が国家賠償法上違法とはなるのは,立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず,国会があえて当該立法行為を行うというような例外的な場合に限られる。
3 正  国家賠償は,公務員の違法行為を国や公共団体が肩代わりするものなので(代位責任説),本来ならば,具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定する必要がある。しかし,これを特定することができなくても,公務員による一連の職務上の行為の過程において他人の損害を生ぜしめた場合には,被害者救済の見地から,賠償責任が認められる。
4 正  水害が改修中の河川の未改修部分から発生した場合でも,改修中の河川については段階的改修が認められるので,河川管理に瑕疵があったとはいえない。河川などの自然公物については,道路などの人工公物とは異なる扱いがされているのである。
5 誤  公の営造物の設置又は管理の瑕疵により損害が発生した場合,当該営造物の利用者だけでなく,当該営造物の存在に起因してその周辺居住者等に被害が及ぶ場合には,その被害者も損害賠償を請求することができる。

【問36】 正 解 5  出題範囲 損失補償
1 誤  損失補償とは,「適法」な公権力の行使により特定人に生じた財産上の損失を,全体的な公平負担の見地から補償することをいう。「違法」な公権力の行使により損害が生じた場合は,国家賠償法の問題となる。ただし,国家賠償が認められるためには,公権力の行使が違法というだけでは足りず,更に加害公務員の故意・過失が必要となる。
★ 国家補償の谷間
 損失補償は,「適法」行為による損失を補償するものであり,また,国家賠償は,「違法」で「故意・過失」がある行為による損害を賠償するものである。そうすると,「違法」「無過失」の場合,両者の谷間に落ち込んでしまい,救済されなくなってしまうという問題がある。例えば,インフルエンザの予防接種により後遺症害が生じたり死亡した場合がある。裁判例では,過失を認定して国家賠償を認めるものと,財産権でさえ損失補償がされるのだから身体・生命の場合も損失補償が認められるとするものとに分かれていた。最近,この問題については立法により補償規定が設けられた。だが,このような特殊な補償制度が設けられていない場合には,「違法」「無過失」な行為による損害は賠償されないままであり,今後の課題となっている。
2 誤  損失補償は,憲法が国民に対して認めた具体的な権利であり(憲法29条3項),個々の法律に補償規定がない場合には,直接,憲法の規定に基づいて請求することができる。なお,この点に関する判例は,補償規定のない法令による処分は違憲であるとの主張に対して,直接,憲法の規定に基づいて請求することができるから,違憲ではないと判示したもので,直接憲法に基づいて補償請求を認めた事案ではない。
3 誤  道路,公園,庁舎など行政財産の目的外使用許可などの受益的処分が,行政財産本来の目的上の必要により取り消されたときなどは,補償が必要である。公益上の理由で撤回されると相手方はそれによって多大な損害を被ることになり,それを個人の負担とすることは公平に反するからである。なお,実定法上,補償規定を置くことが少なくないが,補償規定を欠く場合でも,類似の事例について実定法上補償が認められているときには,これを類推して補償が認められる(問20肢5参照)。
4 誤  ため池の破損,決壊を防ぐために堤とうでの耕作を禁止する場合には,それが,災害を防止し公共の福祉を保持するために社会生活上やむを得ないものであるときは,補償は不要である。
5 正  判例は,農地改革に関する事件では,合理的な金額を補償すれば必ずしも完全な補償でなくてもよいという趣旨を判示したので,憲法上では,相当な補償で足りると解されている。しかし,土地収用法に関する事件では,「土地収用法における損失の補償は,特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合,その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから,完全な補償,すなわち,収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償をなすべきである。」として,完全な補償が必要としている。

【問37】 正 解 4  出題範囲 行政不服審査法(不服審査法の目的・対象)
 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(主として行政行為)に対し,不服のある者を救済するための制度として,行政庁に対してする不服申立て(行政不服審査法)と,裁判所に対してする行政事件訴訟(行政事件訴訟法)とがある。本問では行政不服審査法の目的及び対象となる処分について学ぶ。
1 誤  行政不服審査法は,簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を主眼とするが,行政の適正な運営を確保することも目的としている(行政不服審査法1条)。
2 誤  行政不服審査の対象は,行政庁の処分と不作為である。そして,処分とは,行政行為及びこれに準ずる行為と,事実行為であっても継続的性質を有する行為を含む(行政不服審査法2条)。しかし,事実行為のうち一時的性質を有するものは含まれない。
3 誤  行政不服審査法は,その対象となる処分につき列挙することをせず,法律に例外がある場合を除いて,すべての処分について争訟を認めることとしている(行政不服審査法4条)。これを一般概括主義という。
4 正  行政不服審査の対象から除外される事項は,(1)行政不服審査法に基づいて行われる処分,(2)行政不服審査法4条1項ただし書各号で除外する11項目,及び(3)他の法律で除外している処分である(行政不服審査法4条1項)。例えば,行政庁の処分のうち,研修所において研修の目的を達成するために,研修生に対して行われる処分については,審査請求又は異議申立てをすることができない(行政不服審査法4条1項ただし書8号)。
5 誤  行政不服審査法4条1項ただし書で不服申立ての対象から除外された事項については,他の法令で当該処分の性質に応じた不服申立ての制度を設けることができる(行政不服審査法4条2項)。

【問38】 正 解 5  出題範囲 行政不服審査法(不服申立ての種類)
 本問は不服申立ての種類についての出題である。
1 正  行政不服審査法は,審査請求,異議申立て,及び再審査請求の三つ不服申立ての種類を定めている(行政不服審査法3条)。(1)審査請求は,処分庁の上級行政庁に対してする不服申立てであり,(2)異議申立ては,処分行政庁に対してする不服申立てである。(3)再審査請求は,審査請求に対する第二審である。
2 正  行政庁の処分についての不服申立ては,処分庁に上級行政庁があれば,審査請求によるのが原則である(行政不服審査法5条1項)。これを審査請求中心主義という。処分庁に申し立てるよりも公正な審理判断が期待できるからである。しかし,(1)処分庁に上級行政庁がない場合(知事・市長など)には,異議申立てによらなければならない(行政不服審査法6条1号)。また,(2)処分庁が主任の大臣(府大臣・各省大臣)又は外局若しくはこれに置かれる庁の長(内閣府に置かれる防衛庁の長官・防衛庁に置かれる防衛施設庁の長官)である場合も,最上級の行政庁に集中することを避けるため,これらの行政庁には上級行政庁がないものとされるので,審査請求をすることはできず,異議申立てによらなければならない(行政不服審査法6条2号)。
 なお,(3)処分庁に上級行政庁があっても,法律(条例に基づく処分については条例を含む。)で異議申立てをすることができる旨を定めている場合(税務署長の処分など)がある(行政不服審査法6条3号)。この場合など,当該処分につき審査請求と異議申立ての両方が認められているときは,審査請求は,原則として,異議申立てについての決定を経た後にしなければならない(行政不服審査法20条)。これを異議申立前置主義という。
3 正  (1)処分庁に上級行政庁がない場合,(2)処分庁が主任の大臣又は外局若しくはこれに置かれる庁の長である場合は,異議申立てによらなければならないが(肢2参照),第三者機関などに審査請求が認められる場合がある(行政不服審査法5条2号)。この場合には,審査請求中心主義の原則どおり,法律に特別の定めがある場合を除くほか,異議申立てをすることができない(行政不服審査法6条ただし書)。
4 正  行政庁の不作為については,処分についての不服申立てと異なって,異議申立て又は審査請求のいずれかを選択して請求することができる(行政不服審査法7条)。これを自由選択主義という。不作為についての不服申立ては,専ら事務処理の促進を求めるものなので,審査請求の方が異議申立てよりも優れているとはいえないからである。
5 誤  再審査請求については列挙主義が採られているが,(1)法律(条例に基づく処分については,条例を含む。)に再審査請求をすることができる旨の定めがある場合だけでなく,(2)審査請求ができる処分につき,その処分をする権限を有する行政庁(A)がその権限を他(B)に委任した場合において,委任を受けた行政庁(B)がその委任に基づいてした処分に係る審査請求につき,原権限庁(A)が審査庁として裁決した場合にも認められる(行政不服審査法8条1項)。

【問39】 正 解 3  出題範囲 行政不服審査法(申立期間)
1 誤  審査請求の申立期間は,原則として,処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内である(行政不服審査法14条1項)。30日以内ではない。この申立期間は,不服申立人が処分があったことを「知った日」の翌日から起算することから,主観的申立期間という。これに対し,処分の「あった日」の翌日から起算するのが客観的申立期間である(肢4参照)。
2 誤  異議申立ての主観的申立期間も,審査請求と同様に,原則として,処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内である(行政不服審査法45条)。30日以内ではない。
3 正  再審査請求の主観的申立期間は,原則として,処分があったことを知った日の翌日から起算して30日以内である(行政不服審査法53条)。
4 誤  審査請求,異議申立て,及び再審査請求は,たとえ主観的申立期間内であっても,客観的申立期間として,処分(再審査請求の場合は裁決)があった日の翌日から起算して1年を経過したときは,正当な理由のない限り,することができない(行政不服審査法14条3項・48条・58条)。6箇月を経過したときではない。
5 誤  不作為についての審査請求又は異議申立てについては,申立期間はない。行政庁がすべきことをしない間は,いつまででも違法又は不当な状態が継続しているからである。なお,不作為についての異議申立てがあったときは,不作為庁は,決定で,当該異議申立てを却下する場合を除くほか,当該異議申立てがあった日の翌日から起算して20日以内に申請に対する何らかの行為をするか,又は書面で不作為の理由を示さなければならない(行政不服審査法50条)。

【問40】 正 解 4  出題範囲 行政不服審査法(申立手続通則)
 不服申立て手続の通則についての出題である。
1 誤  不服申立ては,原則として書面でしなければならない(行政不服審査法9条)。口頭ですることができるのは,他の法律(条例に基づく処分については,条例を含む。)に口頭ですることができる旨の定めがある,ごく例外的な場合だけである。
2 誤  多数の者が不服申立てをする場合,共同不服申立人は,三人以内の総代を互選することができる(行政不服審査法11条1項)。二人以上の総代が選任されている場合,行政庁の通知その他の行為は,総代全員に対してする必要はなく,一人の総代に対してすれば足りる(行政不服審査法11条5項)。
★ 不服申立人は,自然人,法人に限られない。法人でない社団又は財団でも,代表者又は管理人の定めがあるものは,その名で不服申立てをすることができる(行政不服審査法10条)。
3 誤  不服申立ては代理人によってすることができるが,代理人の資格は,必ず書面で証明しなければならず,口頭での証明は認められない(行政不服審査法13条)。総代の資格についても同様に書面で証明しなければならない。
4 正  代理人は,不服申立てに関する一切の行為をすることができる。しかし,不服申立ての取下げは,特別の委任を受けた場合でなければ,することができない(行政不服審査法12条)。
5 誤  総代又は代理人がその資格を失ったときは,不服申立人は,書面でその旨を審査庁に届け出なければならない。総代又は代理人が届け出るのではない(行政不服審査法13条)。

【問41】 正 解 3  出題範囲 行政不服審査法(申立て,弁明書と反論書)
 審査請求の申立て及び弁明書と反論書についての出題である。
1 正  審査請求は,直接,審査庁に対してすることができるが,処分庁を経由してすることもできる(行政不服審査法17条)。例えば,審査請求人(A)が,処分庁(B)の処分に不服があり審査請求をする場合,審査庁(C)に審査請求書を提出することもできるし,処分庁(B)に提出することもできる。
2 正  審査請求が不適法であれば裁決で却下されるが(行政不服審査法40条1項),審査庁(C)は,補正することができるものであるときは,相当の期間を定めてその補正を命じなければならない(同21条)。
3 誤  審査庁(C)は,審査請求を受理したときは,審査請求書の副本又は審査請求録取書の写しを処分庁(B)に送付する。処分庁(B)は自己の立場を弁明するために弁明書を提出することができる。弁明書の提出がない場合,審査庁(C)は,処分庁(B)から相当の期間を定めて弁明書の提出を求めることができる(行政不服審査法22条1項)。しかし義務ではないので弁明書の提出を求めなくてもよい。
4 正  処分庁(B)から弁明書の提出があったときは,審査庁(C)は,その副本を審査請求人(A)に送付しなければならない。審査請求人(A)は弁明書により処分庁(B)の処分理由を知ることができるのである。しかし,審査請求の全部を認容すべきときは,審査請求人(A)の主張が全面的に認められるので,送付する必要はない(行政不服審査法22条3項)。
5 正  審査請求人(A)は,弁明書の副本の送付を受けたときは,これに対する反論書を提出することができる(行政不服審査法23条)。

【問42】 正 解 1  出題範囲 行政不服審査法(審理手続)
 審査請求の審理手続についての出題である。
1 誤  審査請求の審理方式は,書面審理による。ただし,書面主義の欠陥を補うため,審査請求人の又は参加人の申立てがあれば,口頭での意見陳述の機会を与えなければならない(行政不服審査法25条)。
2 正  利害関係人は,審査庁の許可を得て,参加人として当該審査請求に参加することができる(行政不服審査法24条1項)。また,審査庁から参加を求められることもある(行政不服審査法24条2項)。
3 正  審査庁は,審査請求人の申立てにより又は職権で,書類その他の物件の所持人に対し,その物件の提出を求めることができる(行政不服審査法28条)。審査請求の証拠調べは審査庁の職権で進められる(職権主義)。しかし,審査庁の独断に陥ることを避けるため,審査請求人や参加人に,職権の発動を促すための申立権も認められているのである(行政不服審査法27条~30条・33条)。
4 正  審査庁は,審査請求人の申立てにより又は職権で,必要な場所につき検証をすることができる(行政不服審査法29条)。
5 正  審査庁は,審査請求人の申立てにより又は職権で,審査請求人を審尋することができる(行政不服審査法30条)。

【問43】 正 解 1  出題範囲 行政不服審査法(教示制度,執行停止)
 教示制度と執行停止について理解しよう。
1 誤  行政不服審査法の不服申立て手続は複雑なので,国民が不服申立てをためらったり,また,審査庁を誤ったりするおそれがある。そこで,一定の場合((1)不服申立てをできる処分を書面で行う場合,(2)利害関係人からの請求があった場合)に処分庁は不服申立ての仕方を教示することとしている。教示の方法は,利害関係人から書面による教示を求められたときは書面で行わなければならないが,それ以外は,口頭で行ってもよい(行政不服審査法57条)。
2 正  審査請求をすることができる処分につき,処分庁が誤って審査庁でない行政庁を審査庁として教示した場合,その教示された行政庁が審査庁になるわけではない。しかし,当該行政庁に書面で審査請求がされたときは,当該行政庁は審査庁に審査請求書を送付しなければならず,送付されたときは適法な審査請求があったものとみなすこととして,誤った教示により不服申立人に不利益とならないよう配慮している(行政不服審査法18条)。
3 正  例えば,自動車運転免許の取消処分(撤回)を受けた者が,審査請求をしたとしよう。審査請求人としては,執行停止をしてもらわなければ自動車を運転することができない。しかし,処分行政庁は,審査請求人が無謀な運転をしたと認めて免許の取消処分をしたのであるから,そのような者に自動車を運転されては公共の安全が保たれなくなってしまう。そこで,行政不服審査法は,執行不停止を原則とし,処分庁は原則として処分を執行し,又は手続を続行することができるものとしている(行政不服審査法34条1項)。
4 正  審査請求がされた場合でも,執行不停止が原則であるが,審査請求人の申立てにより執行停止をすることができる。審査庁が処分庁の上級行政庁以外の行政庁の場合は,処分の効力,処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をすることはできない(行政不服審査法34条3項)。なお,審査庁が処分庁の上級行政庁の場合は,処分庁の監督機関であることから,審査請求人の申立てだけでなく,職権で執行停止をすることもでき,また,処分の効力,処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外にも「その他の措置」をすることができる(行政不服審査法34条2項)。
★ 執行停止の内容
(1) 処分の効力の停止: 例えば,自動車運転免許の取消処分を受けた場合に,その処分の効力が停止されなければ,自動車を運転できない。
(2) 処分の執行の停止: 例えば,違法建築物として建物の除却命令を受けた場合に,処分の効力が停止されれば除却義務もなくなるが,処分の執行を停止されるだけでも代執行されることはない。
(3) 手続の続行の停止: 例えば,土地収用の事業認定が公示されると土地の現状維持義務が生じるが,手続の続行が停止されると以後の収用手続を進められることはない。
5 正  処分の執行停止をした後において,執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼすことが明らかになったときは,審査庁は,その執行停止を取り消すことができる(行政不服審査法35条)。

【問44】 正 解 4  出題範囲 行政不服審査法(裁決,決定)
 不服申立ての手続は,審査請求・再審査請求の場合は「裁決」,異議申立ての場合は「決定」によって終了する。裁決(決定)には,却下裁決,棄却裁決,認容裁決がある。
1 正  審査庁は,審査請求が不服申立ての要件を欠き不適法であっても補正することができるものであるときは,相当の期間を定めてその補正を命じなければならない(行政不服審査法21条)。しかし,審査請求が法定の期間経過後にされたものであるときなど,補正することができないときは,審査請求人の言い分に理由があるかどうかを判断することなく,裁決で,当該審査請求を却下する(行政不服審査法40条1項)。
2 正  審査請求が適法に申し立てられたときは,審査庁は,その審査請求人の言い分に理由があるかどうか判断する。そして,理由がなければ棄却裁決を下す(行政不服審査法40条2項)。審査請求に理由があれば認容裁決により当該処分を取り消すことになるが,その全部を取り消すだけでなく,一部のみを取り消すこともできる(行政不服審査法40条3項)。
3 正  審査請求に理由がある場合,審査庁が処分庁の上級行政庁であるときは,処分庁に対して指揮監督権を有するから,審査庁は,審査請求に係る処分の全部又は一部を取り消すだけでなく,変更を裁決で命ずることができる。ただし,審査請求人の不利益に当該処分を変更することを命ずることはできない(行政不服審査法40条5項)。不服のある者が不利益に変更されることをおそれて審査請求をためらうことのないようにするためである。
4 誤  審査請求に係る処分が違法又は不当である場合には,審査請求人の言い分に理由があるので,審査庁は,本来,認容裁決により当該処分を取り消すことになる。しかし,当該処分を取り消すことにより公の利益に著しい障害が生じる場合において,諸般の事情を考慮した上で処分を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは,審査庁は,審査請求を棄却することができる(行政不服審査法40条6項)。これを事情裁決という。
5 正  裁決の効力発生時期は,原則として,審査請求人に送達された時である。しかし,審査請求が処分の相手方以外の者から提起され,その審査請求に理由があって処分の取消しや変更の裁決をする場合には,審査請求人に送達するだけでは不十分で,その処分の相手方にも送達することが必要である(行政不服審査法42条1項)。例えば,銭湯を営むAが,Bにされた公衆浴場の許可処分に対し,距離制限違反を理由として不服を申し立てたとしよう。Aの請求が認められるときは,Bの許可処分が取り消されるので,認容裁決が効力を生ずるためには,審査請求人Aだけでなく,処分の相手方たるBにも裁決書が送付される必要がある。

【問45】 正 解 1  出題範囲 行政事件訴訟法(種類)

┌──────────── 行政事件訴訟の種類 ─────────────┐
│                                    │
│               ┌ 処分の取消しの訴え          │
│               │                    │
│               ├ 裁決の取消しの訴え          │
│        ┌ 抗告訴訟─┤                    │
│        │      ├ 無効等確認の訴え           │
│        │      │                    │
│        │      └ 不作為の違法確認の訴え        │
│        │                           │
│        ├ 当事者訴訟(公法上の当事者訴訟・形式的当事者訴訟) │
│ 行政事件訴訟─┤                           │
│        ├ 民衆訴訟                      │
│        │                           │
│        └ 機関訴訟                      │
│                                    │
└────────────────────────────────────┘

1 誤  行政事件訴訟とは,(1)抗告訴訟,(2)当事者訴訟,(3)民衆訴訟,及び(4)機関訴訟をいう(行政事件訴訟法2条)。なお,抗告訴訟のうち,処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えを取消訴訟という(行政事件訴訟法9条)。
2 正  抗告訴訟とは,行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。処分の取消しの訴え,裁決の取消しの訴え,無効確認の訴え,及び不作為の違法確認の訴えが法定されている(行政事件訴訟法3条)。
3 正  当事者訴訟とは,当事者間の公法上の法律関係に関する訴訟をいう(行政事件訴訟法4条)。公権力の行使の違法を争うのではなく,例えば,公務員の身分や給与の支払請求権に関する訴訟など権利主体相互間における法的紛争を解決するものであり,民事訴訟(私法上の当事者訴訟)と同様の訴訟である。
 行政事件訴訟法は,「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」も当事者訴訟に加えている(形式的当事者訴訟)。例えば,A鉄道会社が路線を拡大するためBの土地を収用する場合に,Aが,収用委員会の決定した補償金に不服があれば,実質上は行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟となるはずであるが,土地収用法は,土地収用の法律関係の当事者の一方を被告とすると定めているので,AはBを被告として訴えを提起し,AB間で訴訟が行われる。
4 正  民衆訴訟とは,国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟をいう(行政事件訴訟法5条)。選挙人たる資格で提起するものとして,選挙無効訴訟があり,また,その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものとして,住民訴訟がある。
5 正  機関訴訟とは,国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう(行政事件訴訟法6条)。例えば,内閣総理大臣と県知事との権限争いのように行政機関相互の権限争いについての訴訟である。

【問46】 正 解 2  出題範囲 行政事件訴訟法(通則)
1 正  行政事件訴訟法は,自己完結的な法典ではないので,行政事件訴訟法に定めがない事項については民事訴訟の例による(行政事件訴訟法7条)。
2 誤  処分又は裁決の取消しの訴えは,行政権自身が行う不服申立てとは異なり,裁判所が行うものなので,不当(公益違反)な行政行為は取り消すことができず,違法(法令違反)な行政行為のみ取り消すことができる。
3 正  行政処分に対し,行政不服審査法の審査請求ができるときは,法律に特別の定めがある場合を除き,(1)審査請求を経ることなく処分の取消しの訴えを提起することもできるし,(2)審査請求と処分の取消しの訴えを同時に提起することもできる(行政事件訴訟法8条1項)。これを自由選択主義という。
4 正  処分の取消しの訴えと審査請求とは,自由に選択できるのが原則であるが(肢3参照),法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えをできない旨の定めがある場合には,審査請求を経なければならない(例外としての審査請求前置主義)。しかし,この場合でも,審査請求があった日から3箇月を経過しても裁決がないときは,処分の取消しの訴えを提起することができる(行政事件訴訟法8条2項1号)。
5 正  行政庁から行政処分を受けた者が,その違法を主張して,行政庁に対し審査請求を申し立てたが棄却された場合,(1)原処分の取消しの訴えと(2)棄却裁決の取消しの訴えの両方を提起できる。ただ,(2)裁決の取消しの訴えは,審査庁が不当に物件の閲覧を拒否したなどのように,審査請求手続に違法があったことを主張して裁決を取り消すためのもので,審査請求手続の違法と原処分の違法は別であるから,処分庁の原処分自体の違法を主張することはできない。処分庁の原処分自体の違法を主張するには,(1)処分の取消しの訴えによらなければならない(行政事件訴訟法10条)。

【問47】 正 解 5  出題範囲 行政事件訴訟法(取消訴訟)
 抗告訴訟のうち,最も重要な取消訴訟についての出題である。
1 正  取消訴訟の管轄は,被告となる行政庁の所在地の裁判所である(行政事件訴訟法12条)。
2 正  取消訴訟の出訴期間は,処分又は裁決のあったことを知った日から3箇月以内である(行政事件訴訟法14条1項2項)。また処分又は裁決の日から1年を経過したときは,正当な理由がない限り,提起することができない(行政事件訴訟法14条3項)。
3 正  取消訴訟の対象は,行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為である(行政事件訴訟法3条2項)。行政行為がこれに当たるが,公権力の行使に当たる事実行為も「その他公権力の行使に当たる行為」に含まれる。なお,事実行為は,行政不服審査法と同様に継続的性質を有するものに限られる(行政不服審査法2条1項参照)。
4 正  取消訴訟の原告適格は,処分又は裁決の取消しを求めるにつき,法律上の利益を有する者に限られる(行政事件訴訟法9条)。
5 誤  取消訴訟は,処分又は裁決の効果が期間の経過によりなくなった後においても,なお処分又は裁決の取消しにより回復すべき法律上の利益があるときは,提起することができる(行政事件訴訟法9条かっこ書)。これを訴えの利益という。例えば,自動車運転免許の取消処分を受けた場合,免許の有効期間を経過すれば取消処分の効果はなくなるが,取消処分が取り消されれば免許の更新手続を執ることができるので,訴えの利益が認められる。

【問48】 正 解 4  出題範囲 行政事件訴訟法(取消訴訟)
1 正  裁判所は,行政庁の裁量処分については,裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り,その処分を取り消すことができるので(行政事件訴訟法30条),自由裁量に属する行政行為でも,裁量権の限界を逸脱した場合や,不当な動機や目的で裁量判断をした場合には,取消訴訟の対象となり得る。
2 正  民事訴訟では,裁判が終了するまでに既成事実が積み重なって勝訴しても無意味とならないように,民事保全法で仮処分という制度を設けている。しかし,行政事件訴訟法は,行政不服審査法と同様に執行不停止を原則とし,必要なときは公権力の行使に適した方法での執行停止の申立てを認めているので(行政事件訴訟法25条),行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については,民事保全法に規定する仮処分をすることができない(行政事件訴訟法44条)。なお,執行停止の内容については,問43解説参照。
3 正  執行停止の申立てがあったときは,内閣総理大臣は異議を述べることができる。執行停止決定の前後を問わない(行政事件訴訟法27条)。異議があったときは,裁判所は,執行停止ができなくなり,また,既に執行停止を決定しているときは取り消さなければならない。
4 誤  訴訟は判決により終了する。判決の種類には,(1)却下判決(訴え提起の要件を満たしていないため,理由の有無を判断しない場合),(2)棄却判決(請求に理由がない場合),及び(3)認容判決(請求に理由がある場合)がある。処分の取消訴訟において原告の請求に理由があるときは,裁判所は,本来,請求認容判決により,当該処分を取り消すことになる。しかし,当該処分を取り消すことにより公の利益に著しい障害が生じる場合において,一切の事情を考慮した上で処分を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは,裁判所は請求を棄却することができる(行政事件訴訟法31条)。いわゆる事情判決である。
5 正  取消判決の効力は,第三者に対しても効力が及ぶ(行政事件訴訟法32条)。例えば,農地買収処分を受けた地主が取消判決を得た場合は,処分の時にさかのぼって土地の所有権を回復する。地主は,その取消判決の効力を,処分行政庁に対して主張することができるだけでなく,処分行政庁から農地を買い受けた者に対しても主張することができる。なお,訴外の利害関係人の権利利益を守る機会を与えるため,利害関係人は訴訟に参加することができる(行政事件訴訟法22条)。

【問49】 正 解 3  出題範囲 行政事件訴訟法(取消訴訟以外の抗告訴訟)
 取消訴訟以外の抗告訴訟(無効等確認の訴え,不作為の違法確認の訴え,及び無名抗告訴訟)に関する出題である。
1 誤  無効等確認の訴えは,処分又は裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟である(行政事件訴訟法36条)。行政行為が無効又は不存在であれば公定力が生じていないので,国民はこれを無視して自己の権利を主張すればよく,あえて無効等を確認してもらう必要はない。そこで,無効等確認の訴えは次の場合に補充的に認められるにすぎない。すなわち,(1)当該処分又は裁決続く処分により損害を受けるおそれのある場合(予防訴訟),(2)当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で,処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによって目的を達することができない場合(補充訴訟)である。
2 誤  無効等確認の訴えは,行政行為が無効又は不存在であり公定力や不可争力などが一切生じていないことを前提として提起されるものであるから,取消訴訟のような出訴期間の制限はない。
3 正  不作為の違法確認の訴えは,行政庁が法令に基づく申請に対し,相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきにもかかわらず,これをしないことについての違法の確認を求める訴訟であるから(行政事件訴訟法3条5項),訴えを提起できる者は,処分又は裁決についての申請をした者に限られる(同37条)。
4 誤  不作為の違法確認の訴えにおいて,裁判所が行政庁に代わって何らかの行政処分を行うことを求めることはできない。不作為の違法確認の訴えは,行政庁の申請に対する不作為の状態を違法であると確認するのみで,裁判所が,行政庁に対し何らかの行為をするよう義務づけることは認められないし,また,代わりに何らかの処分を行うことは三権分立に反し許されないからである。
5 誤  行政事件訴訟法は,抗告訴訟として,処分又は裁決の取消しの訴え,無効等確認の訴え,不作為の違法確認の訴えを法定しているが(行政事件訴訟法3条2項3項4項5項),これらは例示的に規定しているので,他の抗告訴訟も認められる。法定抗告訴訟以外のものを無名抗告訴訟という。ただし,判例上,認められた例はない。

【問50】 正 解 1  出題範囲 行政事件訴訟法(当事者訴訟,民衆訴訟,機関訴訟)
 本問では抗告訴訟以外のもの(当事者訴訟,民衆訴訟,機関訴訟)を検討する。
1 誤  当事者訴訟は,抗告訴訟と異なり,対等な当事者間の権利にかかわる紛争であるから,民事訴訟と実質的に異なることはなく,抗告訴訟の規定が若干準用されるほかは(行政事件訴訟法41条),民事訴訟の場合と同様の手続により審理される。なお,形式的当事者訴訟は,実質上は行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟であるが,公法上の当事者訴訟と異なる扱いを受けるのではない(なお,肢2参照)。
2 正  当事者訴訟のうち,当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの(形式的当事者訴訟)が提起されたときは,処分行政庁は訴訟当事者ではないので,裁判所は,当該処分又は裁決をした行政庁にその旨を通知しなければならない(行政事件訴訟法39条)。
3 正  民衆訴訟は,選挙人たる資格だけでなく,その他自己の法律上の利益にかかわらない資格でも提起することができる(行政事件訴訟法5条)。例えば,地方公共団体の住民には,地方公共団体の財務会計上の行為を監視するため,監査委員に対する住民監査請求が認められるが,監査委員が適切な措置を講じなかった場合に備え,裁判所に請求する権利として住民訴訟が認められている(地方自治法242条の2)。住民訴訟は,自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものである。
4 正  民衆訴訟及び機関訴訟は,国民の個人的権利救済を目的とするものではなく,行政の客観的な公正確保を求める訴訟であることから,客観訴訟と呼ばれる。これに対し,抗告訴訟及び当事者訴訟は,訴えを提起する個人の権利を保護するための訴訟なので,主観訴訟と呼ばれる。
5 正  民衆訴訟及び機関訴訟は,法律で認められた場合に限られる(行政事件訴訟法42条)。我が国の訴訟制度は国民の個人的権利利益の保護を主目的としているので,行政活動の客観的適法性の保障を直接の目的とした客観訴訟は例外的に認められるにすぎないからである。




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