This site is written in Japanese.

AIMONのホームページ

topcontentsopinionlinksbbs



AIMONの少数意見




◎真の意味での「法律家」への道
(2001/09/18)


 ここ2か月の間に,数十人の司法試験受験生,司法書士受験生及び合格者の方にお会いする機会がありましたが,あまり早く受かってしまうのも考えものだなという感想を持ちました。

 やはり法律学というのは大人の学問であり,また,本当に使いこなせるためには,ある程度の修業年数が必要なのではないでしょうか。

 他人の,その人にとっては一生に一度あるかないかという法律問題に首をつっこむ法律実務家には,ミスは許されないという厳しい職責が課されます。現実の事件は,まさに机上の空論ではなく血が流れるものであり,法律実務家のミスによって不利益を被った方は,最悪の場合には首を吊るかもしれないのです。法律実務家を目指す人は,このことを肝に銘じておく必要があります。

 ですから,法律に携わっている人は,試験の合否にかかわらず,生涯を通じて学習を続けていかなければなりません。これを怠るならば,小手先だけの「法律事務屋」にはなれたとしても,真の意味での「法律家」にはなれないでしょう。

 そのためには,優れた論理の流れや,難問を解決する方法に出会ったときに感動を覚えるという知的好奇心を持ち続けることが必要だと思います。

 そして,そのことに気づかれた人は,その知的好奇心を持ち続けている限り,既に試験の合否を通り越して,真の意味での「法律家」となる道を歩かれているのだと思います。


 病気を患っている方たちが,医学書を読んでもそこに書いてある意味を理解できない医者には診察してもらいたくないと思うのと同様に,法律問題を抱えている方たちも,法律書を読んでその意味を理解できない法律実務家には事件を依頼したくはないと思うはずです。

 きっと,不幸(?)にも小手先のテクニックだけで短期間のうちに合格してしまった人は,合格後に大変な苦労をされているのだと思います。

 早期に合格したとしても,また,合格するまでに時間がかかっているとしても,しっかりとした勉強を続けている人が,私は好きです。

※「もおたのホームページ・司法書士になりた〜い」に投稿したレスを修正して掲載しました。




◎学者本VS予備校本
(2001/04/15)


 法律を学ぶには大学の先生がお書きになった本(以下,基本書という。)のほか,最近は各種試験種ごとに予備校が出版した本もある。そこで,資格試験の勉強をするに当たっていずれを用いるべきかという点から,両者の比較をしてみたい。

 まず,基本書は,その科目を何十年も専門に研究された方がお書きになっているのであるから,内容の信頼性は予備校本の比ではない。予備校本を書いているのは,ほとんどがその資格試験に合格したにすぎない人たちであり,合格レベルにある受験生よりちょっとだけ詳しい人にすぎない。これは大学受験の参考書に例を置き換えてみれば理解しやすいと思う。例えば,大学受験の参考書で,大学の先生がお書きになったものと,(塾講師や家庭教師などで受験指導に携わることがあるであろうとも)大学の入学試験に合格したばかりの人が書いたものとを比較した場合,その内容の信頼性はいずれが高いかというと,前者であることは明らかだ(ただし,大学受験の講師には大学教授に劣らない方々が多数いるもの事実である。)。

 では,資格試験の受験勉強をはじめるに当たって基本書を読むのがベストか,というと,必ずしもそうではない。それは,基本書というものが想定する読者は,実はこれから勉強を始める人ではなく,同僚の研究者であるのが大半だからだ。このような本を,私は「体系書」と呼んでいる。


 しかし,基本書の中にも「体系書」ではなく,法律を学ぶ人を対象とした「教科書」を目指して書かれたものもある。特に最近は予備校本に刺激されたせいか,はたまた,大学の進学率が上がり最近の学生が昔の学生ほど勉強をしなくなったからか,この手の「教科書」が増えてきたようである。行政書士受験生には既に定番となっている「はじめて学ぶプロゼミ行政法」(石川敏行著)などは,その代表例である。また,かなりハイレベルなところにまで読者を導こうとしているものではあるが(だからこれを読みこなすにはかなりの気合いが必要となる。),教科書として書かれたものとして「民法TUV」(内田貢著)を挙げることができる。これらの本のよいところは,ウソがないということである。


 例えば,民法で消滅時効という制度がある。この制度を教える際に,研究者の書いた本であれば,「飲み屋の付けがあったとしても,その債務を10年間逃げ延びたら,時効によって消滅する。」などという説明はまずしない(どこにウソがあるかについては民法167条と174条を参照)。それだけでなく,長年,その科目を研究されている人が書いているのだから,説明のうまさにはキラリと光り唸らせるものがあることが多い。

 ただ,このように優れた「教科書」であっても,必ずしも資格試験受験用に使えるかというと,残念ながら必ずしも全面的に肯定することはできない。それは,資格試験の出題傾向を分析した上で書かれたものは皆無に等しいからである。「帯に短し襷に長し」という傾向がみられるのである(ただし,司法試験についてはそうでもないが。)。この点は,いまのところ完全に予備校本に優位性が認められる。

 そこで,(1) 試験勉強を始めたばかりの人は,予備校本を中心として,研究者の書かれた極めて易しい啓蒙書のような教科書(例えば,「プレップ民法」(米倉明著)や,「民法案内1・私法の道しるべ」(我妻栄著)など。)を併用し,(2) 過去問を潰し終えて試験上ではどこが重要なのかが分かるようになったら(行政書士試験の上級レベル,司法試験・司法書士試験の中級レベル),重要なところと,そうでないところとを取捨選択して「教科書」を読むことができるはずであるから,「教科書」(更には「体系書」)を中心にするのがよいように思われる。






topcontentsopinionlinksbbs